第3章:「それぞれの物語」編
キーワード13:「ルーキーたちの決意」の巻
 8年ぶりとなる悲願のリーグ制覇を託されたナインズの新監督、キュウコン。


 彼の打ち出した“キャンプ前の紅白戦”という大胆な案に、グラウンドに集まった選手は動揺を隠せずにはいられなかった。


 何しろただ試合をするのではく、1軍のレギュラー、控え選手、2軍に甘んじてる選手、ベテラン、中堅、そして僕たちルーキー関係無くメンバーを振り分けると言うのだから。



 しかしそのシステムを聞いた僕は最初こそビックリしたものの、意外にもそのあとは今までに無いほどの冷静さを保っていた。


 (でも……ここで自分の力を上手く出しきってキュウコン監督にアピール出来れば……ずっと夢見てきたこの球場で……1軍のメンバーとして……セカンド(二塁手)として野球が出来るかも知れない!!)


 ……そう。横一線ということは、本来オープン戦以外あまりアピールの出来る場所のない僕たちルーキーも、試合という形で先入観無くキュウコン監督に、実力を見てもらえるということ。そこで結果を残せば……夢の1軍の舞台への切符が手に入る可能性があるということだ。


 (私だって1軍で頑張りたい……今まで一緒に頑張ってきたヒトカゲくんともっと野球がしたい……!もちろん入団会見で仲良くなったみんなとも……。確かに先輩たちの壁は厚いけど……この自慢のスピードなら負けない!!)


 背番号“7”を背負うピカチュウだって同じだ。ただでさえ男性選手でも厳しい世界なのに、彼女の場合は……ただ僕とずっと二遊間を組みたい……という気持ち一つだけで、ここまで頑張ってきた。


 その夢を実現するためには、キャリアも男女も関係ないこの“サバイバル”で勝ち抜くしかない……。


 (そうね。確かに厳しい戦いになるかも知れないけど、“一緒に頑張ろうね♪”って笑顔で言ってくれたピカチュウの言葉を、裏切るわけにはいかないでしょう。結果はどうであれ、思い切り力を出しきるだけよ!!)
 (ピカチュウには悪いけど、私は負けないよ!!)


 この世界で初めて僕やピカチュウが友達になった背番号“8”のチコリータと背番号“13”のパチリス。ともに女性選手とはいえ、気持ちでは誰にも負けなさそうだ。


 (期待されてこの世界にやって来たんだ……。ここで自慢の速球……一球一球魂をぶつけるぞ!!)


 並々ならぬ闘志を燃やす、背番号“31”のトロピウスさん。大卒ルーキーとして、ドラフト1位としてのプライドをのぞかせた。


 (ここしかチャンスはない!!僕の自慢の打撃でみんなを驚かせてやる!!)


 背番号“35”のコアルヒーもこの試合の活躍を誓った。



 選手の調子をチェックするコーチ陣からは、「キャンプ前の怪我や開幕にあわせて絶好調に持ってきたい選手の調子を崩すのでは」などと、疑問視する声も多数あった。


 しかし選手たちの力を早く知りたいキュウコン監督の意向を尊重したのか、とりあえずキュウコン監督の手助けに回ることに決定した。


 「とりあえず赤組、白組のメンバーは私が独断で決めさせてもらった。後でメンバー表を一塁側ベンチのホワイトボードに張っておく。試合は10日後、1月25日14時開始だ。場所はこのスタジアムだぞ。それでは解散!!」



 果たして紅白戦ではどんなドラマが待っているのだろうか!?

オレンジ色のエース ( 2014/05/13(火) 17:12 )