プロローグ:「色あせぬ栄光」の巻
プロ野球“カントリー・リーグ”。
……それは人間が存在せず、ポケモンたちが平和にのんびり暮らしている“ポケモン・カントリー”を舞台に6つの球団が激戦を見せて頂点を目指す闘いだった。
……今から7年前、一つの球団が輝かしい栄光を手に入れようとしていた。
《いよいよナインズの今季最終戦はオレンズと同点のまま、9回の裏のナインズの攻撃に突入しました。右打席は若き4番のバクフーンです。》
“あさひポケナインズ”。カントリーの東部に位置する“あさひタウン”にある屋外球場“あさひスタジアム”を本拠地とするプロ野球チームで、優勝を何度も知るリーグの常勝チームでもあった。
《その4番のバクフーンへピッチャーが1球目を投げました。打った!打ちました!!バクフーンが思いきりバットを振り抜きました!!打球はぐんぐん夜空へ伸びていきます!間違いない!これは間違いなくホームランです!!ベンチの選手たちはもう勝利を確信してベンチから飛び出してきました!サヨナラです!!サヨナラホームラン!!見事な一発で試合を決めました!!おめでとう、ナインズ優勝です!》
優勝を信じて詰めかけた大勢のファン、興奮混じりに実況を続ける放送席……どこからか届いているのかわからぬほど地鳴りのような声援を浴びながらホームランを打ったバクフーンはグラウンドを一周し、ホームイン。ついに歓喜の瞬間が訪れたのだった。
優勝……なかなか簡単には得られないものの、ライバルたちをしのぎながら幾多の苦境をものともせず、140試合にも及ぶ長い戦いを制しての掴む栄冠は何度味わっても飽きない格別な味だった。
そんな格別な勝利の余韻に浸る中、背中でナインを牽引してきたナインズ一筋18年のベテランのキュウコン、大卒でプロ入り5年目ながら若き4番として活躍したバクフーン、同期生でお互いに実力を認めながらライバル心を持ち続けてきたラグラージ……、更にはこの年台頭してきた熱き闘志を持ったバクフーンたちと同世代エースのリザードンや、大卒ルーキーながら、プロ野球史上初となる女性選手として活躍を見せたラプラスらが中心となってチームの指揮官のムクホーク監督を胴上げした。
その歓喜の胴上げを見守るナインズのファン、グラウンドで闘ってきた選手たちはライバルたちを寄せ付けない強さに、今後何度もこの栄冠を得られると信じていたに違いない。
………だが、この栄冠を最後に“あさひポケナインズ”はリーグ制覇に手が届きそうで届かない歯がゆい闘いを強いられることになった。