第4話 旅の始まり
「さ、流石に・・・・・・ここまで来れば・・・・・・、大丈夫だろ。」
真っ暗な森の中を10分程走り続けた所でサルサの足が止まった。
ずっと頭の上に乗っていた僕を降ろすと、その場に仰向けになって倒れるように仰向けに寝転び、荒い呼吸を繰り返している。
技を継続して出し続けるのが、そんなに大変なのか記憶が無いため分からないが、恐らく相当な負荷がかかるのだろう。
「サ、サルサ・・・・・・。助けてくれてありがとう。」
息を整えようとしているサルサに近づき、心の底からのお礼を伝える。
ポチエナに襲われたときに、もしサルサが助けてくれなければ、例え殺されなくてもどこかに連れて行かれたかもしれない。
そう思うと、今もあのポチエナが追ってきているかもしれないと、つい考えてしまう。
だが仮に追ってきていたとしても、サルサが『でんこうせっか』を使って全力で走ったんだ、すぐには追い付かれないと思う。
それに逃げるときに、ポチエナが゛一旦戻る゛みたいな事を言っていた気もする。
「目の前でいきなり噛みつかれてるんだぜ、助けるに決まってるだろ。それと大丈夫かチピ、怪我は無いか。」
「大丈夫だよ。噛まれたところがちょっと痛いけど平気。」
ポチエナの牙に突き刺された所を軽く前足で撫で、血が止まっているのをサルサに教える。
けど、あのポチエナは一体なんだったのだろう。
思い当たることがあるはずもなく、いくら考えても仕方がないのは分かっているが、気になるものは気になってしまう。
「とりあえずあの家に戻るのは危ないな・・・・・・、これからどうするか・・・・・・。チピはどこか行きたい所とか、やりたいこととかあるか?」
ようやく息を整えたらしいサルサは、寝転んでいた体を起こしてこちらを見てきた。
やりたいこと・・・・・・、あのポチエナが襲ってきたのは何故、僕には記憶がないのは何でだ。
記憶が無くなる前の僕は何をしていたのだろう。
「・・・・・・僕は記憶が無くなる前に何をしていたか知りたい。そうすれば何でさっきポチエナに襲われたのかも分かるかもしれないし。」
今の僕は僕の事を知らなさすぎるし、このままサルサに助けられ続けるわけにはいかない。
いつになく真剣に見つめてくるサルサに、こちらも見つめ返すように視線を合わせた。
「分かった。なら俺もチピの無くした記憶を取り戻すのを手伝ってやるよ。一緒に頑張ろうぜ。」
「ありがとう、サルサ!」
にこやかな笑顔で僕の頭を撫でてくるサルサに、こちらも笑顔になるチピだった。