〜ハクダンシティー〜

午後8時40分



お腹が空いた････。
自分が何なのかも知らずまた何をすれば良いかも分からなかったが、何か食べなければまずいと言うことを本能で悟った。
体はもうポロボロで至るところに傷があり怪我もしている。
それでもただ歩き続けている。
そんな時、今まで嗅いだことの無い甘く疲れきった自分を誘惑するような臭いを感じとった。
そして気がつけば臭いのする方へと引き寄せられていっていた。



午後8時50分


太陽は沈み街は静まり返り、ぽつんと置かれている街灯やポケモンセンターから漏れるものだけが光を帯びている。
六九人とコンは、売店でハチミツ漬けを買い噴水の近くにあるベンチに座って食べていた。

｢このハチミツ漬けとパンって本当よく合うね｣
パンの量に対し少ししか塗っていないにもかかわらず、濃厚な味がしとても美味しく感じる。
【だよねー】
コンは軽く返事をし、パンなどの主食も無い状態でただハチミツ漬けだけをとても幸せそうな顔で食べている。
そんな食事の時間を楽しく過ごしていると、かすかだが近くの草むらから『ガサッ』と言う音が聞こえた気がした。
｢あれ？今何か聞こえたような････｣
【んっ･･･そんなの聞こえたー？】
コンは相変わらずハチミツ漬けだけを食べながら返事をする。
｢まぁたぶん気のせ････｣
『ガサガサッ!』
言い終わる前に草むらから何かが勢いよく飛び出し六九人達の方に突っ込んでくる。
【なっ、何？きゃっ！】
｢コ、コン大丈夫！？なにかが飛び出して来て凄い痛いでぶつかったみたいだけど･･･｣
【だ、大丈夫っ･･･】
コンは食事中で油断している時に思いっきりぶつかられ少し飛ばされてベンチから落ちて始末っていた。
｢なら良かったけど、いったいなんだったのか･･･｣
【あっ！！ろ、六九人！！】
コンはいきなり慌てた様子で大声で六九人を呼ぶ。
｢な、何どうしたの！？｣
【ハ、ハチミツ漬けが無い！！】
｢え？なら近くに落ちてるんじゃない？｣
【今探したけどどこにも無いんだよ！!】
｢じゃあどこに･･･あっ!もしかすると、さっきぶつかった時に盗られたとか････？｣
【それだ！！よし六九人、早く追いかけるよ！！】
そういったとたん、コンは草むらから飛び出してきた者が逃げた方向に向かって"でんこうせっか"を使いながら全力で追いかけ始める。
｢ちょっ置いていくなよ！｣
食べ物が絡むとコンはなにをするか分からないので、何も起きませんようにと祈りながら全力で追いかける。






【見つけた！！】
当然ながら"でんこうせっか"を使っているコンは六九人よりも早くハチミツ漬けを盗んだやつを見つけた。
【おとなしく止まれ！止まらないなら無理矢理にでも止めるよ！】
かなり追いつき、もうすぐそこまで来た所で、今すぐに飛びかかると言わんばかりの怒った声で言うが、返事がいっこうに帰ってこない。
【仕方ない、なら無理矢理止めるかね！とうっ！】
止まってくれはしないと判断し、仕方な盗んだやつにく飛びかかる。
【わっ！】
【はい捕まえたー！！】
走っているときに飛びかかられ二匹とも勢いが殺せず転がってしまった。
【いたた････。あっ、ハチミツ漬けは無事だ･･･良かった！さて次は君のかな】
転がり続け、ようやく止まるとコンはまずハチミツ漬けの安否を確認してから、盗んだやつはあまり大きくなかったので逃げられないようにうつ伏せにしてから馬乗りにのる。
【や、やめてよ！】
【やめるわけ無いでしょ！いったい何で私のハチミツ漬けを盗んだの？】
逃げようと暴れるが上から押さえつける。
【ハ、ハチミツ漬け？な、何それ？】
【とぼけても意味無いわよ！】
コンは取り返したハチミツ漬けを見せるように近づける。
【えっと、これがハチミツ漬けなの？】
【当たりまえでしょ！あんたが盗んだ物の事！】
【盗む？】
【だから君が盗んだんでしょっ！！】
初めて聞き、どんな意味があるのか分からないと言うような感じの様子で聞き返してくる。
【もう良い、なら名前は？】
全く話が通じないやつにイライラしながら質問を変えてみる。
【名前？】
【とりあえず名前くらいは教えてよ！】
【な、何それ？】
【だから、自分の名前！！】
【自分？】
【はぁ･･･。とりあえず六九人が来るのを待とうかな･･･】
相変わらず話が噛み合わずどうしようも無くなり六九人が来てくれるのを待つことにした。