34 investigation
午前 番人の洞窟 入り口 Sideシルク
ウォルタ「着いたよ〜。 ここが[番人の洞窟]だよ」
ティル「……何かただの洞窟みたいだけど、こんな所に遺跡なんてあるの?」
…調査というものに慣れてなかったらティル君の言う通りね。
降りしきる雨の中、ウォルタ君の案内でその場所にたどり着いた。
空は灰色に染められ、[トレジャータウン]程ではないけど冷たい水が硬い地面に撃ちつけている……。
ライトが元の時代で使っているらしいレインコートを羽織っているティル君はフードを手で押さえながら不審そうに呟いた。
フライ「ティル君、遺跡ってそういうものなんだよ」
その彼に、私の超能力で灰空の降水から守られているフライが続いた。
…炎タイプと地面タイプにとっては今日の天気は最悪ね……。
フライが言うには湿気が多いだけでも体中が痺れるらしい…。
そんな中でのこの雨…、濡れすぎると命にかかわるかもしれないわね。
……逆に水タイプのウォルタ君は楽しそうだけど……。
フレイ「そうなんっすね」
ウォルタ「そういうこと〜。 …じゃあ、中で“チャームズ”の三人が待ってるから早く入ろっか」
シルク「そうね」
フライと同じようにライトに守ってもらっているフレイ君をはじめ、私達は揃って彼の言葉に頷いた。
…“チャームズ”の3にんはもう中にいるのね?
…それもそうよね。
何しろ洞窟の外はこの雨……、炎と地面タイプでなくてもあまり良いとは言えないわ…。
私達は我先にと、ロマンの溢れる未開の洞窟へと潜入……、いや、避難した。
…………
番人の洞窟 石碑の広間 Sideシルク
ウォルタ「アリナさん、ミリアさん、サナさん、お待たせしました〜」
ライト「ここまで来ると遺跡っぽくなってきたね」
シルク「いよいよって感じね」
洞窟に潜入し歩き続けて数分…、私達の前方に松明に照らされた大部屋が姿を現した。広い部屋の壁には幾何学的と言えそうな不思議な模様が描かれ、それが訪れた研究者達を歓迎する……。
その部屋の中央には何かの石碑が堂々と鎮座している。
A「ウォルタ君、来たわね」
B「待ってたわ」
と、そこに、私達よりも先に来ていた3つの影が後続隊の到着に気付き、落ち着いた様子で手招きした。
…ウォルタ君の話からすると、あの3にんがそうね?
ブラウン「すっ…、凄い…。 本物でゲス!」
シャイン「夢みたいですわー!」
C「話は聞いているわ。 この人数を3組に分けるのよね?」
…シャインさんとブラウンさんはテンションが上がってるけど、ふたりにはお構いなしなのね?
先に待っていた3にんのうちのひとり……、[チャーレム]の彼女は盛り上がっているふたりの声を聞き流し、辺りを見渡していたウォルタ君に声をかけた。
ウォルタ「そうですよ〜。 どの組にも1人は考古学者が入るようにしたので、その人と調査してください」
フライ「……って事は、ボクとシルク、ウォルタ君は別々になるね」
シルク「そうなるわね」 ……で、組み合わせはどうなってるのかしら?」
…どんな種族が生息しているのかは分からないけど、場合によっては組みなおす必要があるわね…。
考えたのはウォルタ君だからその必要はないと思うけど…。
豪雨のせいでずぶ濡れの私はプロジェクトリーダーのウォルタ君に疑問をなげかけた。
ウォルタ「ええっとまずは……、アリナさんとミリアさんとサナさんはシルク……、[エーフィ]の彼女とお願いします」
ミリア「この子とね?」
…フラットさんによると、“チャームズ”のさんにんはハク達よりも上のマスターランク……。きっとウォルタ君はプロジェクトの成功率を上げるために、さんにんはバラバラにしなかったのかもしれないわね。
ウォルタ「はい」
シルク「よろしくお願いしますわ」
ウォルタ「次にシャインさんとブラウンさん。 2人はフライとライトさんとお願いします」
ライト「フライ、ふたりで組むのっていつ以来だっけ?」
フライ「確かボクはまだ進化してなかったから……、3年ぶりぐらいだったかな?」
…そういえばふたりが組んで戦ってるところ、見たことが無かったわね。
二組目に指名された4にんは互いに目線を合わせて頷き、士気を高め合った。
ウォルタ「そして最後に、リル君とフレイ君、ティルさんはぼくと来て!」
フレイ「よろしくっす!」
ティル「うん、よろしくな!」
リル「はっ、はい!」
…残りは、必然的にこの4にんになるわね。
それにこの組み合わせ、どう活躍するのか楽しみだわ。
ここ最近頑張っているリル君達はブロンズランクに上がったけど、それぞれがランク以上の実力を秘めている……。
プロジェクトリーダーで考古学者のウォルタ君は見た目からは想像もできない動きを見せてくれる……。
ティル君は一か月の間に特訓をしていたらしくて、どこまで鍛えられているのか全く分からない……。
個人的には、ウォルタ君達のチームに一番期待できそうね!
最後の組を読み上げたウォルタ君はそのメンバー全員に視線を移し、期待に満ち溢れているフレイ君は溌剌とした様子でその彼の言葉に答えた。続いてティル君が組むことになった3にんに「任せな!」って付け加えながら揚々と声を上げ、リル君はティル君の声に若干驚きながらも辛うじてそれに応じた。
ウォルタ君をはじめ、遺跡の広間に集まった12筋の波長は互いに共鳴し合い、探究心という名の合成波で決起の空間を奮い立たせた。
……燃えてきたわ!!
ウォルタ「……さぁ、いくよ〜!」
一同「
おおーっ!!」
そして、
漲る好奇心と共にまだ見ぬ迷宮へと足を踏み入れた。