その4 星屑に奏でる旋律
29 戦慄の三連符
午後 星屑の空洞 奥地 Sideシルク

シルク「[サイコ・・ンシス]、[シャドーボール]、[目覚めるパワー]!!」

 {従者の証}を奪われ、…まともに働かない五感を頼りに相手との…位置関係を確認した私は……二色のエネルギー塊を超能力で拘束した。
 そして、いつもとは違うものを背負い、……壁の宝石が煌めく中で……負けられない戦いが幕を開けた。

…正直言って…3分という短時間で勝てる確率は……五分五分……。
 聴覚が阻害されてきただけでなくて、声も出しにくくなってきた……。
……その一方でいつもと変わらないのが体の軽さ……。
 最悪の状態にもかかわらず普段以上に敏感になっている……。

……これが、{自我を失う}って事なのかもしれないわね………。

シルク《ルアン君!》
ルアン「!? なに!?」
シルク《ひとつ頼みたいことがあるんだけど、いいかしら?》

……どうやら、{テレパシー}は普通に使えるみたいね……。

 私は何とか集中を維持しながら彼に意識を向け、駆け出しながら語りかけた。

シルク「化合、拡・ん!」

ルアン・フーディン「えっ!? うん!」「[・・コキネンシス]!!」

シルク「{群生ノ種}! これで動きヲ・じさせてもらうわ!!」《私の思考を読み取り続けて!! そして今以上に読めなくなったら教えて!!》

ルアン「! うん!!」

…バトルにいつも以上に集中しなければならない今……、私の状態を探れるのは…、ルアン君!! あなたしかいないわ!!

 留めていた二色を混ぜ合わせ…、細かく分裂させながら相手に向けて放出した。
 それと同時に持っている種のうちの1つを手に取り、黒青色のドットに紛れ込ませるように投げ飛ばした。

 フーディンも行動を開始し、私と同じ技で攻撃を受け流した。

……さすが、ゴールドクラスのダンジョンを突破するだけの実力者ね……。

 私の弾丸は土壁を捉え、種の蔓と共に消滅した。

シルク・フーディン「コレならどう!?」「[未来・……]……! [炎のパンチ]!!」

…策が一つ失敗したら、…次の一手を打つだけ……。

 私は相手との距離を詰め、小瓶に入った試薬を取り出した。
 超能力で蓋を開け……、相手の目を狙ってばらまいた。

……試薬じゃなくて、調味料と言ったほうが正しいわね……。
 さっき私が取り出したのは塩化ナトリウム……、いわゆる食塩……。
 私の状態も危ないんだから、手段を選んでいる暇は一秒たりとも残されてないわ…。

 調味料を浴びた敵は咄嗟に目を閉じ、閉じられた瞳のまま炎の拳で殴りかかってきた。

 それに空気の対流で気づいた私は体を捻り、ギリギリでそれをかわした。

シルク「[シャドーボ・ル]、[ベノ・ショッ…]…クっ……、{猛毒の種}!」
フーディン「ッ!!」

…{証}を奪われてるから…、[チカラ]で使える技も…封じられるのね……。

 結果的に…背後をとった私は漆黒の弾をヒットさせ、次なる行動に移った。
 立て続けに毒素を放出しようとしたけど……、失敗……。
 その代わりとして別の…種で代用した。

 後ろを取られた敵は反応できず、二つの攻撃をまともにうけた。

……命中させたけど、{証}がないから本来の威力はこの程度って事ね…。

 それでも相手は吹き飛ばされ、壁に激突した。
 そしてふらつきながらもなんとか立ち上がり、目を閉じて集中し始めた。

……何か、来るわね……。
 でもあの様子だと、あと一発当てれば……勝てる!!


ルアン・A・B「・・ク!! そ・そろマズ・・!!」「!! ルアン!! ・・・見つけたぞ!!!」《!! シルク!!》

シルク「!! この声ハ……、・イ・!?」

…!!
 この声は間違いないわ!!

 殆ど機能しなくなった聴覚が、待ちに待った人物の接近を辛うじて伝えてくれた。

……でも、もう限界のようね……。

シルク《ライト!! 一度しか言わないからよく聞いて!! あの[フーディン]から{従者の証}を取り返して私に身につけさせて!! そして、敵を倒して!!》
ライト《!!? いきなりどうし……》
シルク《今の私は{自我}を失いかけてるのよ!! 時間がないから後はあの[イーブイ]に聞いて!!》

 到着した“ヒカリ”に、私は希望を託した。

シルク・ライト「ルアン君、タスカッタわ! もう、いいわよ!」「・・!!? シルク!!? ・・・・事なの!!?」

シルク「…[サイコ・・・・・]、[シャドーボール]、化合……」




……だから、あとは私が自滅するだけ………。




シルク「…拡散………」




……ライト、あとは頼んだわよ………。



























シルク「収束!!!」



























…………


   Sideライト



シルク「収束!!」
ライト《シルク!!!》

コスモ・ルアン「!! 凄い威力!!」「シルクーっ!!!」

…シルク!!?
 何が起きてるのかさっぱり分かららないんだけど!?

 途中で出逢った[ラクライ]のコスモ君とダンジョンを突破したわたしは轟く轟音を聴きつけ、その現場に駆け付けた。
 その瞬間、シルクの声が頭の中に響いてきて………、

……もう!
 説明なんて後回し!!
 長すぎて終わりそうにないよ!!

 …結構端折るけど、無数の[シャドーボール]がシルクを取り囲み、その中心に向けて凝縮していく……。
 自らの手で自身に技を命中させたシルクはそのすべての攻撃で吹き飛ばされ、悲鳴をあげることなく意識を手放した。

コスモ「ルアン! 心配し……」
ルアン「コスモ!! 僕よりも……」
ライト《コスモ君!! それからキミも力を貸して!!》

 それぞれがそれぞれの言葉を遮った。

……あの[フーディン]を倒すのも大事だけど、シルクの手当てもしてあげないと!!

ライト《コスモ君はわたしと一緒に戦って!! [イーブイ]のキミは倒れてる[エーフィ]に{復活の種}を食べさせてあげて!!》

ルアン「!!? 誰!?」
コスモ「ルアン!! 話は後だ!! [エレキフィールド]!!」

…急に押しつけちゃってごめんね……。

 わたしは姿を消したまま、{テレパシー}でふたりに指示を出し……

ライト「くっ!! まさか、[未来予知]!!? いつの間に!?」

…っ!!

 わたしの知らない間に予言されてた相手の技が発動し、維持していた{ステルス}が解除されてしまった。

 指示を聞いたコスモ君はすぐに行動に移ってくれて、辺りに微弱な静電気を放出した。

ルアン「うっ…、うん」
コスモ「[雷]!!」
ライト「[サイコキネンシス]!!」

…コスモ君、なかなかやるね!!

 電気を帯びたコスモ君は高電圧のエネルギーを放出した。

 その電撃をわたしの超能力で拘束し、わたしのそばに留めた。

コスモ「[目覚めるパワー]!!」
ライト「シルク、使わせてもらうよ!!」

…見た感じ、コスモ君の[目覚めるパワー]は草タイプだね?
 なら、シルクの戦法が使えそうだね!

 コスモ君はその場にとどまって若草色のエネルギーを蓄え、相手に向けて撃ちだした。
 それをわたしが再び拘束し、二つに分けてさっきの電塊と混ぜ合わせた。

フーディン「[サイコキネンシス]!」
コスモ「[放電]!!」

……コスモ君には悪いけど、その[放電]、囮としてつかわせてもらうよ!

 わたしたちの動きをいち早く察知した相手は技を構え、コスモ君は辺りに電撃を放出した。

 その黄色い壁は相手の技によって止められ、容易く受け流された。

……でも、これは作戦……。

フーディン「っ!!!」

 電気に気を取られていた敵はわたしの攻撃に気づかず、まともにダメージを受けた。

……えっ?
 何をしたのかって?

…コスモ君が技を発動させてる間に空から相手の背後にまわり込んで、混ぜ合わせた黄緑色の弾で攻撃したんだよ。
 それに撃ちだした時に時計回りに捻りながらしたから、混ぜた効果で弾けながら飛んでいったの。
 で、立体的に増えながら弾けて、奇襲成功……。

…こんな感じかな?

…あの攻撃を命中させたから、もう少しでたおせそうだよ。
 きっとシルクが戦ってダメージを与えてくれてたんだね!

ライト「これで最後!! [ミストボール]!!」

 空にいるわたしは相手めがけて急降下し、手元に専用技を蓄えながら狙いを定めた。
 それを球状に形成し、4発連続で撃ちだした。

フーディン「グっっ!!!」

 それは余すことなく命中し、衝撃で砂煙があがった。


 茶色い霧が晴れると、そこには意識をなくした[フーディン]が力なく横たわっていた。

……よし、倒した。

@ ( 2014/09/07(日) 18:21 )