21 VS乱れし死の象徴(前編)
午後 死相の原 黒の花園 Sideシルク
ラテ「……ここで、良いんですね?」
フラー「…はい、ありがとう…ございます」
あの後で2組の探検隊を救助した私達は、ダンジョンの奥地……、珍しい黒い花が咲き乱れる[黒の花園]にたどり着いた。
漂っていた薄暗い霧もここでは晴れ、青い空が一面に広がっている…。
その青いキャンパスには白い綿が散りばめられ、気の向くままに風に身を任せる……。
嗅覚に意識を向けると、砂糖にも似た甘い香りが鼻をくすぐる。
それが度重なる戦闘で疲れた体を精神的に癒してくれる……。
……色みが少ないけど、何故か落ち着くわね…。
目的地に辿りついて、控えめなフラーさんはゆっくりと一礼した。
ベリー「どういたしまして! …でも、何でここに来たかったの?」
シルク「私も気になるわ」
確かに、こんな時にわざわざ来るって事は、よっぽどの理由があるはずよね?
……でも見た感じでは待ち合わせしている人もいなさそう…。
観光なら、立ち入りが制限されているはずだから、依頼しても不可能……。
…今回みたいに非公式なら話は別だけど………。
彼女がここに来た理由が気になり、とうとうその言葉を口にした。
フラー「……わたし、喫茶店経営してるんですけど………、メニューの一つにこの花が……必要なんです」
シルク「……という事は、ドリンクか何かかしら?」
フラー「……いいえ、…調味料の材料なんです」
……つまり、砂糖の原料になるのね?
これだけ強い香りなら、可能かもしれないわね。
ラテ「調味料……なら、砂糖ですか?」
フラー「…はい。 …この花の砂糖でないと…いい味がでないんです」
シルク「花によって成分も違うから…!! みんな、伏せて!!!」
ラテ・ベリー・フラー「「えっ!!?」」「?!」
ラテ君も、そう思ったのね?
視界の端に赤黒い光を感じながら……!?
赤黒い光ですって!!?
化学的な論述を始めようとした私の脳内が、ただならない警告を発し始めた。
赤い光ということは……、まさか……。
……絶対にそうだわ!!
身の危険を悟った私は後遺症で掠れる限界の声量で叫んだ。
そしてそれと同時に伏せ、彼らにもそうする様に促した。
救助した人から聞いた情報によると、あの光は悪タイプ……。
[サイコキネンシス]は使えない……。
……なら……、
シルク「[10万ボルト]!!」
持続して出せるこれで軌道を変える!!
即座に体中に電気を纏い、それを一気に放出した。
狙うのはもちろん、悪タイプの光線……。
…{絆}の名に賭けて、絶対に止めてみせるわ!!
ベリー「シルク、わたしも手伝うよ!! [オウム返し]…、[10万ボルト]!!」
ベリーちゃん、助かるわ!
彼女は私が使った技をコピーし、その電撃の勢いをさらに増してくれた。
…ベリーちゃんも、成長したわね。
自分が使えないものを使う[オウム返し]でここまでの威力を出せるひとは滅多にいないわ!
ラテ「[真空切り]!! これでどう!?」
ベリーちゃんの行動を見たラテ君も、自分の技を発動させた。
おそらく右前脚に力を溜め、空から放たれた赤黒い光線に斜線を引くようにそれを振り上げた。
すると、その部分が一瞬だけ途切れ、私達の電撃が圧し始めた。
……これなら、いけそうだわ!!
シルク《ラテ君、今のうちにフラーさんを脱出させて!! 戦闘になりそうだわ!》
ラテ「うん!」
ここまでは仕方なかったけど、一般人を戦闘に巻き込む訳にはいかないわ!!
私は放出する電圧を上げながら、直接彼の脳内に指示を出した。
…ラテ君、フラーさんの事は頼んだわよ!!
シルク「[シャドーボール]、[サイコキネンシス]!! ベリーちゃん、まだいける!?」
ベリー「ちょっと痺れてきたけど、まだいけるよ!」
シルク「なら、技を解除して[火炎放射]を頼んだわ!!」
ベリー「うん!! [火炎放射]!!」
…このままではキリがないから、まずは事の元凶を撃ち落とさないと!
漆黒の弾を生成し、電撃を維持したまま超能力で操った。
シルク「…! 当たったわ!!」
ベリー「本当!?」
シルク「ええ! この感覚、間違いないわ!」
これでひとまず、危機は去ったわね!
恐らく放出し続けた電撃と2色の追加攻撃が命中すると、空からの光線がピタリと止んだ。
シルク「ラテ君、そっちは大丈夫!?」
ラテ「うん! おわったよ!」
……これで、全力で戦えるわね。
少し離れたところから、ラテ君の声が風に乗って届けr……
???「
……っ! ……くっ……来るな!! [悪の波動]!!」
シルク・ラテ・ベリー「「「!!?」」」
a……!!?
何!?あの影!!?
大きい!!
光の発生元である分厚い雲から、光とと似たような色の何か……、いや、何者かが降下してきた。
……飛行タイプ……?
…でも、あの種族は見たことがないわね……。
種族名も知らないし……。
落下している赤と黒の巨大なポケモンは黒いh……
シルク・ラテ・ベリー「くっ………!!?」「!! 避けき…うわっ!!!」「きゃっ!!」
a…っ!!!
………嘘…でしょ…?
……という事はまさか……。
予想だにしない……ダメージを受け、守備力というものがない………私は、派手に吹き飛ばさた………。
シルク「………{加護}が………、破られた………!? 《」……ラテ君、……ベリーちゃん、……悪いけど……{加護}が解かれたわ………。 …だから、これから言うことをよく聞いて……!》
朦朧とし始めた意識で……、私は何とか……声なき言葉を………紡ぐ…………。
シルク《……ラテ君の…[真空切り]で…技を遮断出来たことから……推測すると……、あの種族は……恐らく……
伝説の種族……。 …だから、注意して…!!「》 ……[朝の日差し]……」
普段通りの…白に戻された……瞳で……、自分なりの結論を……彼らに伝えた。
……{加護}では防げなかったから………、間違いないわ……。
ラテ「伝説…!? …うん、わかったよ」
べりー「…兎に角、シルクは休んでて!! わたし達が何とかするから!!」
……ふたりは……、耐えられたらしい…わね…。
……よかったわ………。
シルク《…わかったわ……。 …なら、回復するまで……頼んだわ……》
………伝説となると……、ふたりだけでは……厳しいかも……しれないわね……。
……おまけに、…下から見た感じだと……あのポケモンは……、おそらく混乱状態……。
明後日の方向に……あの光線を放ってるから、……視覚が十分に……機能してない……。
………それとも……{惑わしの種}……?
……もしそうなら、……謎の言動の……説明が出来る……。
……何故なら、……誰もいない方向に……叫びながら……攻撃してるから……。
……閉じられた瞳の中で………天に祈りながら、持論を展開し始める……。
……分からないことが多いけど……、これだけは確実に言えるわ……。
『あの伝説のポケモンは今、正常な状態じゃない』と……。