20 遭難事件の真相(後編)
昼前 死相の森 Sideライト
ウォルタ「……さあ、いくよ〜!」
ライト・ソーフ「うん!!」「はいです!」
文字通り風に乗って滑空してきたわたし達は[ウォーグル]のウォルタ君のかけ声と共に気合を入れなおした。
[空の頂]からあまり離れていないこの場所は薄気味悪い空気が漂い、エスパータイプのわたしにとっては過ごしにくい環境になっている……。
……本当にいやーな感じだよ…。
ここに来てから何回か戦ったけど、シルクの言った通り悪とかゴーストタイプばかり。
…本当は毒タイプとか炎タイプとも戦いたいんだけど、それだとここに来た意味がないよね?
でも正直そこまで余裕が無いのが現状かな?
元の時代ではティル達に指示するのがほとんどだったから、ちょっと鈍ってるんだよ…。
ライト「ウォルタ君、ソーフちゃん、ここからはわたしがふたりに合わせるから!」
ウォルタ・ソーフ「いいよ〜!」「今度はライトさんですね?」
わたしはそう言いながら飛ぶスピードを遅くして彼らの後ろに下がった。
……えっ!?
何故かって?
実は今、{モンスターハウス}の中にいるんだよ…。
おまけに、ここのダンジョンの性質なのかは知らないけど、黒い霧のせいで5mぐらい先しか見えない。
{光玉}買っておけばよかったって公開したけど、今更仕方ないよね?
ライト「うん。 [ラティアス]らしく、姿、消させてもらうよ! その間に敵の数を確認して!」
言うよりも早く、灰のベールの中で目を閉じ、精神を統一する……。
声を張り上げると同時に、わたしは霧をも晴らしそうな眩しさの光を纏った。
……姿を消すと言っても、完全にいなくなるんじゃなくて、羽毛で光を全反射させて周りと同化してるんだよ。
そんな事したら無敵だって思った人もいるかもしれないけど、良い事ばかりじゃない……。
{テレパシー}を使えるから問題ないんだけど、声が出せなくなる…。
それと、光を反射させるのに集中してるから技の威力も落ちる。
さらに、1回でもダメージを受けたり集中が切れると解除される……。
…こんな感じかな?
{ステルス}を発動させたわたしは、光が治まるとそれと同じように姿を消した。
ソーフ「!! 消えた!? これが[ラティアス]の能力ですか!?」
ウォルタ「ぼくも見るのは初めてだけど、そうだよ〜。 …うーんと、15匹ぐらい…かな?」
15匹、だね?
…なら、不意打ちを食らわないように注意しないと……。
…だから、念のため{ふらふら玉}を使っておこうかな?
同化しているわたしは鞄に手をのばしてそれを掴みとり、相手に気付かれずに発動させた。
すると何匹かの[ゴルバット]が平行感覚を失ってバタバタと堕ちていった。
それ以外の種族も混乱状態になり、文字通りふらついている…。
ソーフ「そっ…、そうみたいですね。 [葉っぱカッター]!」
ウォルタ・相手「[燕返し]〜!」「「っ!!?」
若干取り乱していたソーフちゃんは何とか気を取り直し、いくつもの若草色の葉っぱを風に乗せて放出した。
若草の幕に隠れるようにウォルタ君が敵の群れに接近し、それが達すると同時に敵の[ヤンチャム]に翼を打ちつけた。
…ウォルタ君、なかなかやるね!
相手の状態を確認せずに、彼も光を纏った。
それと同時に、わたしは高度を上げ、勢いをつけて急降下を始める…。
ウォルタ「[地震]!!」
ソーフ「[エアスラッシュ]!」
姿を元に戻した彼は着地と同時にエネルギーを解放し、高威力の技で相手を殲滅する…。
ソーフちゃんは風に乗って距離を詰め、[シャドークロー]をしようとしていた[ゴースト]を空気の細針で切り裂いた。
ゴースト「っ! !!?」
その[ゴースト]に狙いを定めて、わたしは力任せに指の爪で攻撃した。
全く予想していなかった相手は反応できず、多分訳が分からないまま力尽きた。
……ハクさんから教えてもらった[通常攻撃]、初めて使ったよ…。
技のエネルギーを使わないからすぐにできるんだけど、まだまだ練習が必要……かな?
ウォルタ・ライト「[ハイドロポンプ]!」([竜の波動]!!)
これで、敵は全部倒せるかな…?
ウォルタ君は瞬時に口内に大量の水を溜め、圧縮して一気に放った。
それは攻撃するために近づいてきていた[マニューラ]に直撃し、効果は普通にもかかわらず一発で倒した。
わたしはというと、残り1匹となった群れの背後にまわり込み、暗青色のブレスを死角から命中させた。
ライト《…ふぅ。 これでひとまず……!!「》[サイコキネンシス]!!」
ソーフ「!!?」
ウォルタ「ソーフ!?」
…よし。
全員倒せたね。
戦闘が終わり、わたしは一いk……!!!
ソーフちゃん!!危ない!!!
薄暗い視界の端で、わたしは何か赤いひかりを察知した。
それは光線となり、斜め上からソーフちゃんに向けて放たれた。
……一体…誰が…。
……ダメだ…。
暗くて誰がしたのか見えない……。
位置的に飛べる種族だと思うけど……。
この状況が危険だと判断したわたしは{ステルス}を解除し、咄嗟に超能力で無理やり彼女を退避させた。
移動させられて黒い霧だけとなったその場所を赤黒い光線が通過し、それと接した地面を派手に
抉り取った。
……ギリギリ…だった…。
ソーフ「…………ライトさん、……ありがとうです…。」
ライト「……どうも…。」
ウォルタ「……もしかして…、これが……、事故の原因……?」
……シルクの[絆の加護]があるから大丈夫だと思うけど、もしあれをくらったらタダでは済まないかもしれない………。
光線が抉った地面を見たわたしは背中にゾッとするものを感じた。