14 悠久の風
朝 ギルドB2F Sideシルク
フラット「…それでは、今日も張り切っていくよ♪」
ギルドメンバー「「「おおー!!」」」
ハク「この感じ、久しぶりやわー。」
シリウス「懐かしいですね。」
フラットさんのお決まりの
台詞と共に、今日もまた新たな一日が幕を開けた。
…やっぱり、これがないと朝がきた気がしないわね!
私、こういうのは嫌いじゃないわ。
ライト「ここの恒例行事らしいもんね!」
シルク「そうね!」
活気の溢れる朝礼に参加している私達からも、自然と笑顔が溢れた。
……ええっと、昨日の夜の事が省かれたから、ここでまとめて伝えておくわね。
…まず、シリウスが[メガ進化]に成功してからなんだけど………、私を含めてみんな知らなかったからライトの解説が始まったのよ。
終わってから聞いたんだけど……、ライトが知ってたのは同族の[ラティアス]………、のパートナーができたかららしいわ(〜導き〜参照)。
私は会ったことがないけど、その彼女は警察官をしているらしいわ。
…一度会ってみたいわね!
…で、その後はシリウスの姿が元に戻ってから彼とハクは自分たちの家に帰ろうとしたけど、ラックさんに呼び止められて泊まることになったのよ。
今回の調査のおかげでライトと仲良くなってくれたみたいで、4匹で夜遅くまで雑談に明け暮れたわ。
ハク達とゆっくり話すのは1年ぶりだったから、本当に楽しかったわ!!
…こんな感じかしら?
フレイ「ハクさん! もっといろんな事、聞かせてもらってもいいっすか?」
リル「ちょっ…、ちょっとフレイ、“明星”の2人が……」
あっ、そうそう!
話した後からフレイ君がハク達に興味津々なのよ。
実は彼、探検隊になってからハク達の功績を聞くうちに憧れるようになったらしいのよ。
…それもそうね!
ハク達はふたりで2年連続で検挙率No.1になったもの。
これほどの功績があるから新人達の目標になってるって噂されているほどだわ!
憧れのひとを目の前に、フレイ君は目を爛々と輝かせてハクに迫った。
リル「僕達の……」
ハク「ええよ!」
リル・フレイ「…はい?!」「えっ!」
シリウス「自分達、今日は休みにするつもりでしたから。」
ハク「連続で調査やったからね。」
さすがに私でも未開の地の調査は3回連続では厳しいかもしれないわね。
ハクは持ち前の明るさで快く答えた。
リル「いっ……いいんですか…?」
ハク「もちろん! シリウスもええよね?」
シリウス「はい!」
…どうやら、交渉は成立のようね?
ライト「フレイ君、リル君、よかったね!」
フレイ「はい! 俺、本当に嬉しいっす!!」
フレイ君、よっぽど嬉しかったのね?
興奮した熱が私まで伝わってきたわ。
シリウス「…ではシルク、それからライトさんも、自分たちはそろそろいきますね。」
シルク「トレジャータウンね? わかったわ。」
ハク「…じゃあ、またあとでね!」
シルク「ええ!」
ハクもシリウスもこの町に住んでいるから、またすぐに会えるわね!
私とライトは上機嫌で階段に飛んでいくフレイくんをはじめ、リル君と“明星”のふたりを見送った。
……さあ、これから私達は何をしようかしら?
………
数分後 Sideライト
シルク「…ライト? 今日は海岸のほうに行かない?」
ライト「えっ? うん、いいよ。」
海岸だね?
ハクさん達と別れて部屋に鞄をとりに行ったわたしは、徐にこう提案された。
…シルク?
シルクは本当に海岸が好きなんだね?
わたしが寝てる間にも行ってたみたいだから、よっぽどだね?
ライト「でもシルク? そこで何をするの? …浜と海しかないし……。」
海水浴…ていう気分でもなさそうだから、何をするつもりなんだろうね?
浮遊しているわたしは彼女を見下ろして言った。
シルク「忘れかけてるかもしれないけど、この時代に来た本当の目的の……、特訓をね! ここに来てからあまりできてないわよね?」
ライト「{特訓}? ……あっ! そういえばそうだったね! すっかり忘れてたよ!」
そうだったね。
発見と驚き……、楽しいことが多すぎて忘れてたよ。
彼女の一言で、わたしの奥底で眠っていた目的が再び目を覚ました。
シルク「やっぱり、ライトもそうだったのね? ……実はシリウスに言われるまで私もそうだったのよ!」
{楽しいことがあると、ついそうなってしまうわね!}
シルクは{ハハハ}って、自分の事を笑い飛ばしながら言った。
シルクでも、忘れる事、あるんだね?
凄く強いから、こんな風に抜けている一面を見ると安心するよ……。
例え[チカラ]を持っていても、一匹のポケモンには変わりないもんね!
ライト「シルクも?」
シルク「ええ! …こうなったら、お互い様ね!」
ライト「そうだね!」
ここでもう一度、笑いの華が咲き乱れ……
ホール「ポケモン発見!!」
ヘルツ「誰の足型だ?」
シルク「あら、こんなに早い時間に珍しいわね。」
…た……ん?
わたし達が笑いあっている所に、ギルドの見張りをしている[ディグダ]のホール君と[ドゴーム]のヘルツさんの声が反響した。
…突然の大声だったからビックリしたよ……。
ホール「足型は……、[ブラッキー]!!」
ヘルツ「…という事は、“悠久の風”だな?」
ホール・シルク「はい!」「“悠久の風”!!?」
ヘルツ「わかった! 今すぐにいく!!」
“悠久の風”?
探検隊のチーム名なのかな……?
シルク「遠くに出かけてるって聞いたけど、まさかこんなに早く会えるなんて思わなかったわ!!」
…誰なんだろう……。
何かシルクはシリウスさんとハクさんに再会したときみたいなテンションになってるげど……。
歓喜に沸いているギルドから、わたし
だけが取り残された。
ライト「シルク…?知りあい?」
シルク「ええ!! ハク達とはまた別の親友よ!! ライト、上に行きましょ!!」
ライト「うっ……うん…。」
こんなにはしゃいでるって事は、ハクさん達と同じくらい仲がいいって事かな?
シルクはそのひと達との再会を待ちきれないみたいで、わたしを誘うように階段に駆けていった。
対してわたしは、頭の上に{?}を浮かべながら彼女についていった。
…………
ギルドB1F Sideシルク
ライト「…うわぁ……凄い……。」
シルク「{プラチナランク}……っていうのもわかる気がするわ……。」
私達がギルドの地下1階にあがると、そこにはそれなりの人だかりができていた。
…まだ早い時間だから、この人数で済んでいるのかもしれないわね。
見た感じ探検隊4組分ぐらいかしら?
もしこれが昼だったらこの階から溢れてたかもしれないわ。
でも、これは想定内だわ。
だって彼らは名の知れているチーム。
…それも去年世界を救ったことで有名なのよ!
私達は階段をのぼりきり、そのひとだかりの元へと向かった。
ブラウン「……で、向こうはどんな感じだったでゲスか?」
A「一面真っ白だったよ!」
B「霰が降り続けていて鬱陶しかったけど、何とかなりました。」
C「ぼく達、タイプのバランスがいいからね〜。」
D「…でも、すごく寒かったでしゅ…。」
やっぱり、質問攻めにあってるわね……。
囲まれている彼らは何とかその問いに答えていた。
……わりと最近会ってるけど、やっぱり成長したわね。
…ひとりだけ知らない子がいるけど……。
シルク「降りやまない吹雪のせいで探索が進んでいないと噂されていた程だもの…。 みんな、久しぶりね!」
A・B・C「「「シルク!!」」噂は本当だったんだね!?/この時代に来てたんだね!?」
シルク「ええ!」
私は人ごみをかき分けて、探検結果で盛り上がっている会話に入った。
シルク「まだ着いてから一週間も経ってないわ!」
ライト「わたしはやっとこっちの時代に慣れたぐらい…、かな? …ええっと、シルク?この子達が言ってた親友だね?」
シルク「ええ、そうよ!」
ライトも私に追いついて、群衆のうえから参加した。
C「[ラティアス]か〜。 初めて会ったよ〜。」
D「ラテ、この[エーフィ]が言ってたひとでしゅね?」
ラテ「うん、そうだよ。」
B「わたし達にとっての師匠でもあるんだよ!」
……厳密には、そうなるわね。
ライト「{師匠}? …って事は、わたしといっしょ?」
シルク「そうなるわね。 …」
{ラテ}と言われた[ブラッキー]が、…種族、分からないけど、見た感じ草タイプの子の問いに答えた。
ライトも[アチャモ]の彼女の言葉に首を傾げた。
……ここまで言ったら、もう誰か分かった人がいるかもしれないわね。
たぶん、その予想は当たっていると思うわ!
シルク「ライト、紹介するわ。 彼は[ブラッキー]のラテ君。 隣の[アチャモ]がベリーちゃん。 その隣が[ミズゴロウ]のウォルタ君。 赤の他人から見たら、ライトにとっては弟弟子になるかもしれないわね。」
私が前にこの時代に来たのはカントーのジム巡りをしてる最中だったから、そうなるわね。
ウォルタ・ベリー「よろしくね〜!」「よろしく!」
ラテ「よろしくお願いします!」
ライト「よろしくね! わたしは[ラティアス]のライト。 この時代でもちょっと珍しい存在……なのかな?」
シルク「そうなるわ。」
そう言いながら、私にとっての親友達は互いに握手を交わした。
この様子だと、仲良くなってくれそうね!
D「[ラティアス]は人前には姿を見せない種族として知られていましゅからね。 ……あっ、ミーは[シェイミ]のソーフでしゅ。 まだ新入りだけど“悠久の風”のメンバーでしゅ。」
へぇー。
彼? 彼女?……の種族が[シェイミ]なのね?
初めて会ったわ。
声も見た目も中性的だから分からないけど……。
シルク「…という事は、ラテ君達と行動してるのね? …で、私は[エーフィ]のシルク。 私の事は聞いているわよね?」
ラテ君達のメンバーなら、知っていてもおかしくないわね………、いや、絶対に知ってるはずだわ!
ソーフ「はいでしゅ!!」
ソーフ………とりあえず、{ちゃん}としておくわね。
ソーフちゃんはべりーちゃんに負けないぐらいの笑顔で、私を見上げながら頷いた。
……きっと、{す}が{しゅ}になってるのは癖ね?
そして、私もソーフちゃんと{絆の架け橋}を繋いだ。
…ソーフちゃん、よろしくね!