08 Bright Star
午前 第三区画カフェ sideライト
ハク「…ウチは[ハクリュウ]、年は22。これでも“明星”のリーダーしとるんよ! そういうことやから……、よろしくね!」
ライト「うん! じゃあわたしも…。 わたしは[ラティアス]のライト。18歳で、シルクが言うには2000年代の出身……になるのかな? ……とにかく、よろしくね!」
ハク「こちらこそ!」
ハクさん、これからよろしくお願いしますね!
ハクさんは満面の笑みで尻尾をだし、わたしも、彼女につられるように笑顔で応じた。
……何て言うか……、凄く馴染みやすいんだよ!
スーナに負けないくらいの明るさで、溌剌としてる。
わたしとは4つしか離れてないし、話しやすいんだよ。
……シルクが親友っていうのも、わかる気がするよ!
シリウス「……なら、自分と同じ[過去]のポケモンなんですね?」
シルク「そういうことなのよ! ……ちなみに、私達の時代ではライトの種族は3匹しかいないのよ。」
ハク「そうなん?」
ライト「うん! ……ハクさん、こっちの時代ではどうなんですか?」
時代は違うけど、いるはずだよね?
……もしいたら、会ってみたいなー。
ハク「この辺で{見た!}っていうひとはいないんやけど、どこかにはいるって噂なんよ。 ……ただ、元々の姿を見たって言う情報が全く無いんよ。 何か姿を変える能力があるみたいやし……、もしいても気づかんのかもしれやんね!」
シルク「そうなのね。 やっぱり、どの時代も変わらないのね?」
シリウス「どうやら、そのようです。」
へぇー。
この時代でも姿を変えてとけ込んでいるんだー。
シルクはテーブルに前脚を乗せるように座って、その右側でカップを持ちながら呟いた。
シリウスさんも同じ様に座って、{オレンの実}の料理をちょっとずつ摘みながら頷いた。
ハクさんには腕と呼べるものがないから、自分の尻尾で器用にカップを持って中の飲み物を啜っている……。
…なんか見慣れない光景だからちょっとビックリしちゃったよ……。
だって、シルクはこういう時はいつも[サイコキネンシス]で浮かせているし、4足歩行する種族はみんな口から直接食べてるから……。
ちょっと呆気にとられているわたしは、他の種族では脚にあたる部分を地面につけて、体勢を起こした状態でいるんだよ。
ハク「……なら、ライトちゃんはちょっと変わっとるね。 [ラティアス]なら姿変えとるはずやろ?」
ライト「うん、いつもならね。」
ハクさんはふと思いだしたように言った。
……この時代にはいないみたいだから、きっと{別の種族に変えないの?}って言いたいのかもしれない……。
……うん、きっとそうだよ!
シルク「この時代では逆に目立つ事になるのよ。」
ライト「だって、わたしは別の種族に姿を変えれないからね。」
ハク「えっ!? それって、どういう事なん!?」
ハクさん?
いくらなんでも驚きすぎじゃない?
彼女は驚きで上づらせながら声を荒げた。
ライト「見てもらった方が早いかな?」
シルク「そうね。……でも、ここではやめておいた方がいいと思うわ。《」ライト? よく考えてみて! ここはカフェの中……。 当然、変化する瞬間を見慣れてないひとがほとんどのはずよ? ……そんな中でしたらどうなると思う?》
ライト《ええっと………》
………あっ、そっか!
シルク、言いたい事がわかったよ!
ライト「…わたしのもう一つの姿は、この時代のポケモン達は見たことが無いからだよね?」
ふっと、わたしは閃きと共にシルクの方に振りかえった。
シルク「そういうことよ。 シリウス、3100年代もそうなのよね?」
シリウス「はい。 そこでも[ラティアス]と、その♂の[ラティオス]はそうだと聞いたことがあります。」
{3100年}……?
そう言えば、さっきシリウスさん、{自分と同じ[過去]の出身なんですね?}つて言ってたっけ?
ライト「……ううんと、だからここでは無理なんだよ。」
だって、時間的にも丁度これから増えてくる時間帯だし、そんな中でやったら騒ぎになるもんね。
シリウス「……だから、そろそろ会計を済ませて[海岸]にでも行きましょうか。」
シルク「そうね。 その方がいいかもしれないわね。」
ハク「??」
うん、そうだね。
ハクさんだけは疑問に押し潰されちゃってるけど、彼女以外のわたし達は意見が一致して互いに頷いた。
シルク「……すみません、お会計をしてもらってもいいかしら?」
そして、シルクは喉が痛まない程度の大声で担当のひとを呼んだ。
……そして、わたし達は会計を済ませて、ランチ時が間近に迫って賑わいつつあるい憩いの場を後にした。
……もちろん、目指す先は海岸……。
地平線の見える砂浜だよ!
…………
数分後 海岸 sideシルク
シルク「……やっぱり、誰もいないわね。」
シリウス「大概この時間帯は町に行くひとがほとんどですから……。」
……本当に、そうよね……。
この時間帯なら探検隊は出発した後だし、一般のポケモンも食料の買い出しで忙しい頃だもの……。
店がない海岸には誰も来ようとは思わないわね。
ふと海原に目を向けると、ほど良く昇った太陽が
水面に映ってゆらゆらと揺れている………。
陽光は海水に反射し、絶妙な具合に煌く…。
早朝とはまた違って、新鮮だわ……。
私はこの画になる光景に趣を感じながら、海辺の砂を踏みしめて呟いた。
ライト「うん。 ここに来るまでにたくさんすれ違ったもんね!」
ハク「それがいつもの光景やからね。 ……で、シルク? 何でここじゃないとあかんかったん?」
…そうだったわね…。
まだ説明してなかったわね。
相変わらず疑問符が浮かんでいるハクは、首を傾げながら呟いた。
シルク「ここなら出来るから、見てもらったほうが早いわ。 ライトもいいわよね?」
ライト「うん!」
もし、私ならそうするわ。
ハク「{見たほうが}って?」
シリウス「…聞いたそのままです。」
ライト「そういうこと。 ……じゃあ、いくよ!」
ええ、頼んだわ!
ライトはハクのほうを真っすぐ見て、威勢よく言った。
そしてそのまま目を閉じ、すぐに光を纏った。
次第にそのかたちが変わり、別の姿が形成されていく……。
ものの数秒で変化が終わり、彼女が纏っていた光も雲散した。
ハク「……!? ライトちゃん!? その姿って……。」
ライト「見ての通りだよ。」
ハク「………[人間]………?」
シルク「あってるわよ。」
………つまり、そういうこと。
ライトのもう一つの姿を目撃したハクは、あまりの事に言葉を失ってる様子…。
この時代には[人間]はいないことになっているから、無理ないわね……。
ライト「2000年代ではわたし達……[ラティアス]は[人間]として社会に紛れ込むのが普通なんだよ。」
{寧ろ、ポケモンに姿を変えれるひとは一部を除いていないくらいなのよ。}
私は彼女の説明にそうつけ加えた。
ハク「…………。」
………ハク、完全に思考が止まったわね……………。