10 ひときわ輝く………(中編)
午前 超輝石の洞窟浅層部 sideシルク
シルク「…ライト、そっちに行ったわよ!」
ライト「うん! [竜の波動]!」
ハク「[アクアテール]!」
シリウス「[捨て身タックル]!」
口にくわえた{銀の針}を武器のように使っている私は、[突進]してきた[サイホーン]をそれで後ろに受け流しながら滑空しているライトに注意を促した。
私の忠告をうけたライトは真下に目を向けて、どこからか放たれた岩に竜のブレスを命中させて打ち消した。
ハクは対峙していた[イシズマイ]に水を纏った尻尾を打ちつけ、その反動で飛び上がった。
その彼女の行動にいち早く反応したシリウスは予め出現させていた自身の分身に突撃させ、ライトとハクがダメージを与えた相手にトドメを刺した。
……私は相変わらず道具を使っても物理的なダメージは与えられないけど、ハク達はいつも通りね!
直前に打ち合わせをしてないにもかかわらず、まるで{[テレパシー]で伝え合っているの?}っていうぐらい息ピッタリ……。
{阿吽の呼吸}とは、こういうことを指しているのかもしれないわね。
シルク「ハク、こっちもお願い! {氷結の種}!」
ハク「うん! [アクアテール]!」
サイホーン「!?」
ハク、相手のステータスを下げておくから…、頼んだわ!
私は瞬時に銀の小刀を鞄にしまい、その流れで自作の種を取り出した。
その種を相手の口の中に放り込んで、私自身はすぐにその場から退避した。
種を不本意ながら食べた相手に、ハクの水撃がヒットした。
苦手な水をうけた相手は地面に叩き付けられ、そのまま倒れた。
ライト「…ふぅ、とりあえず倒せたね。」
シリウス「そうですね。 新手が来ないうちに息を整えておきましょうか。」
ハク「そうやな! ……にしてもシルク?さっきは[サイホーン]に何したん? 岩タイプにしては冷たかった気がするんやけど……。」
…そうね、その説明をしないといけないわね。
尻尾で汚れを払いながら、ハクは私に問いかける…。
ライト「そういえば、青い種を投げてたよね?」
シルク「ええ。 私のオリジナルで{氷結の種}って言うのよ。 状態とか攻撃じゃなくて、実用的な道具として開発した道具なのよ!」
シリウス「{実用的な}…ですか?」
シルク「ええ。」
これは昨日、たまたま思いついたのよ!
シルク「実際に使うのは初めてだけど、{温度を下げる}効果があるわ。 この反応を利用すれば、風邪をひいた時に解熱剤として使えるでしょ?」
補足説明をすると、氷状態を治す薬品から創ったこの種は、戦闘に使うと相手の行動を鈍くすることができるのよ!
…だって、そうでしょ?
スポーツをする時は必ずウォーミングアップで体を暖めてから始めるのが一般的。
…その事を前提として、逆のことをしたらどうなると思う?
…もちろん、パフォーマンスがあまり良くなくなるわね。
シルク「…化学的にいじって、逆の反応を起こしたのよ。」
種の効果と作り方を簡単に説明した私は、{こんな感じよ!}という言葉と共に締めくくった。
…専門的な用語はできるだけ避けたから、分かってもらえたわよね?
ハク「……とにかく、古代の技術を使っとるんやね?」
シルク「そういう事よ!」
ライトとシリウスは化学について知ってるはずだから、きっと大丈夫ね!
彼女の問いかけに、私は笑顔で答えた。
……さあ、解説も済んだところで、先に進みましょ!
と、いうわけで、息も整ったから止めていた足を再び動かし始めた。
…………
数時間後 深層部奥地 sideライト
シルク「…一応、ノルマは達成したわね。」
ライト「うん。 見た感じここで行き止まりみたいだね。」
あれから何時間かかけて、ダンジョンを二つ攻略したんだよ。
{そこそこレベルが高い}って聞いてたけど、何とかなたったよ。
わたしは[深層部]では手ごたえがあったけど、シルクとハクさん、シリウスさんはまだ物足りないみたい………。
…{さすが!}って感じだね!
ハク「うん。 いわゆる、[奥地]やな!」
シリウス「…壁画以外何もありませんが……。」
うん、シリウスさんの言う通り、それ以外に何もないね……。
他に何も無さそうだから……、やっぱり[最深部]は無いのかな……?
{画}があるだけで何もない空間を目にしたわたしの脳裏に、{失敗}の二文字が
過りはじめた。
シルク「壁画ね……。 何かの暗号のような気がするけど……。……分からないわ……。」
ハク「ウチら、前にもここに来たことがあるんやけど、何かの{光}を表してるのが分かっただけで、意味不明なんやよね……。」
そっか…それだけしか分かってないんだね?
ハクさんも半ば諦めたような感じでため息をついた。
シルク「{光}ね……。………?{ひかり}? …ちょっと目を瞑っててくれるかしら?」
シリウス「? シルク? 何か思いついたんですか?」
シルク「ええ…。自信はないけど…。」
……
sideシルク
シルク「ええ…。自信はないけど…。」
そう言いながら、私は例のものを取り出した。
…画を見ても、私には全く見当がつかないのよ…。
だから、ダメ元で。
ハク「…{光の玉}……?」
ライト・シルク「……あっ! そっか!」「…じゃあ、いくわよ!」
ライト?
どうやら私と同じ結論に行きついたようね?
彼女はたぶん、私と同じことを閃いた。
それと同時に、私は右前脚で持っているそれを高く掲げて道具の効果を発動させた。
すると、まばたきするかしないか…、兎に角一瞬強い光を発してすぐに収束した。
シリウス「……何も、起きませんね…。」
シルク「…特に変化がないから、そのようね……。」
……失敗だったわね…。
発光してからしばらく待ってみても特に変化がないから、予想が間違っていたって事ね。
実際に試した私をはじめ、結果を見守っていたシリ……
ライト「…でも、{強い光}っていうのはあってるんじゃないの?」
シルク・ハク・シリウス「「「えっ!?」」」
ウ……はい?
期待が外れて沈みかけている私達を遮るように、ライトは確信と共に言の葉を並べた。
…ライト?どういうこと!?
ライト「シルクは分かるかもしれないけど、ここのダンジョンって漢字だと{すごく輝く石の洞窟}って書くでしょ?」
シルク・シリウス「「あっ……。」言われてみれば、そうかもしれないわね!」
ライト!!ナイスよ!!
そこまでは気づかなかったわ!
{光}という名前を持つライトの発言で、[過去]組の二匹に閃きの電流が流れた。
そのことがきっかけで、私の中でモヤモヤしてた何かが一気に晴れた気がするわ!!
ハク「??」
シルク「なら、もう一つ試してもいいかしら? [サイコキネンシス]!!」
急に秘策が浮かんだ私は、他の三匹の是非を聞かずに鞄から一つの小瓶と種を取り出した。
ハク「……シルク?何すんの?」
そんな私を見て、親友は不思議そうに首を傾げる…。
シルク「ちょっと化学的な実験をね! …とにかく、見ててくれるかしら?」
ライト「うん!」
シリウス「{化学}ですか…。 懐かしいですよ……。」
{化学}は私の専門分野……。
その知識でなら誰にも負けない自信があるわ!!
自信満々に、小瓶の中から超能力で金属粉…、
Mgの粉末を取り出した。
ハク「……古代の技術やね?」
シルク「ええ! ……さあ、いくわよ!!」
そして、手に取った種……、比較的簡単に手に入る[爆裂の種]を漂う粉末を狙って投げた。
弧を描いて投げ出されたそれは綺麗な軌道を描いて宙を舞い………、
………
ある反応を起こした。
……その反応は如何に!