絆の軌跡 〜導かれし光〜 - その1 再会
05 親友を訪ねて……(前編)
午後 ギルドB2F sideライト

リル「ふっ…、フラットさん、チーム“焔拳”…、たっ、ただいま帰りました。」
フラット「うむ、ご苦労だった。 シルクさんにライトさんも、ありがとうございました♪」
シルク「私のほうこそ! 一年ぶりだったから、ダンジョンでの感覚を思い出すのにすごく役立ったわ!」
ライト「わたしもです!  いろんな道具の使い方がわかって凄く勉強になりました!」

[林檎の森]っていうダンジョンから脱出したわたし達は、町に戻るとすぐに[ペラップ]のフラットさんの元に向かった。

{地下}だって事になってるけど、丘の上に建ってるから外が見えるんだよ!

……すごくない!?

今日で二日目だけど、まだ胸の高鳴りがおさまらないよ。

……なにしろ、見るものが全部新鮮で、初めての事ばかりだからね!

まだ興奮が冷めないわたし達は、揃って目を輝かせながらフラットさんの言葉に笑顔で答えた。

フレイ「俺達も凄く勉強になったっすよ!! シルクさん、凄く強かったんすよ!! 道具も俺達以上に使いこなしてたし、感激っすよ!!」
リル「フレイが挑んでいたんですけど、全く歯が立たなかったんです。 先輩達の師匠っていうのは本当だったんですね!」

……二匹とも、わたし達とは理由は違うけど、気持ちは同じなんだね?

フラット「私は二度しか見たことがないが、参考にさせてもらっているくらいだからな♪ ……シルクさんが本気を出せば“明星”のお2人以上だ♪」
リル「“明星”って……、ハクさんとシリウスさんの……ですか!?」
シルク「そうよ! [ハクリュウ]のハクと、[アブソル]のシリウス……。 二匹は私の親友なのよ! ……フラットさん? ハク達、帰ってるかしら? 確か今日中には戻ってるって言ってたわよね?」

シルクの、親友?

わたしも彼女の事はそう思ってるから、凄く気になるよ!

シルクは凄く嬉しそうにフラットさんに迫った。

フラット「はい♪ シルクさん達が出発したすぐ後に帰ってきたんですよ♪ きっと今頃は[トレジャータウン]にいると思います♪」
ライト「[トレジャータウン]? ……確か……ここの麓の町でしたよね? ……まだ行ったことないけど…。」

だって、こっちの時代に着いたのは夕方だったし、今日は朝すぐに出ていったからね、まだ見れてないんだよ。

……シルクから聞いた話なんだけど、凄く賑わってるんだって!

早く行ってみたいよ!

シルク「時間がなかったからね……。 私も挨拶まわりがまだだからちょうどいいわね! ……こうしてはいられないわ! リル君、あとはお願いしてもいいかしら?」
リル「えっ、あっ、はい。」
シルク「ライトも! ねっ?」
ライト「えっ、うん。」

シルク、笑顔が可愛いすぎるよ…。

もし、わたしが[ラティオス]だったら、惚れてたかもしれないよ。

シルクはわたしにウィンクしながら言った。

……横で見ていフレイ君の顔が少し赤くなってたのは気のせい?

わたしは彼女の笑顔に見とれながらも、何とか頷いた。

シルク「そうと決まったら早速行きましょ!」
ライト「うん! シルク、どんな店があるか教えてくれる?」
シルク「もちろんよ!」

シルク?

ついでにそのハクさんとシリウスさんも紹介してくれる?

結構はしゃいでいるシルクに、わたしは高揚感で声のトーンが上がりながら言った。

彼女は大きく頷いた。


……そしてわたし達は、荷物を借りた部屋に置きに行ってから、ダンジョンで拾ったメダルの入ったケースだけを持って目的の場所まで走った。

……わたしは浮遊してだけどね。


………

午後 トレジャータウン第一区画 sideシルク

ライト「うわぁー、話には聞いていたけど、凄く賑わってるね! 毎日こうなの?」
シルク「ええ! 時間的にも買い物するポケモンが多い時間帯だからより一層賑わってるのよ!」

夕方の買い物時にギルドのお膝元を訪れた私達は、町の賑わいを肌で感じながら足を踏み入れた。

……町と言っても、[ヤマブキシティー]みたいに高層ビルは建ち並んでいなくて、どちらかというと[カイナシティー]みたいな露店の方が近いかもしれないわね。

町は大雑把に分けて4つの区画に分かれていて、今私達がいる、ギルドに一番近い場所は{銀行}や{食料品}、{日用雑貨}みたいな生活必需品や機関が多く建ち並んでいる…。

探検隊だけではなくて、一般のポケモンも、多く集まる場所ね。

ライト「そうなんだー。」
シルク「一般のポケモンだけじゃなくて、探検隊のポケモンも多く……」
A「…あっ! シルクさん!! [過去]の世界から来てたんですね! 噂は本当だったんだー!」

{…来るのよ!}

私の隣を浮遊しているライトを見上げながら話す私に、聞き覚えのある声が話しかけてきた。

……この声は、あの子ね。

シルク「ブルー君、久しぶりね!昨日着いたばかりなのよ。」

声がした方に振り返ると、そこには一匹の♂の[マリル]……、ブルー君が袋一杯の〈林檎〉を抱えていた。

ブルー君、一年ぶりね!

この場にはいないけど、彼には妹がいるのよ。

私は彼に笑いかけながら言った。

ブルー「なら、まだ来たばかりなんですね?」
シルク「ええ、そうよ! シズクちゃんは元気かしら?」
ブルー「はい! フライさんも元気ですか?」
シルク「ええ。 今回は来てないんだけど、変わらず元気よ!」
ライト「シルク? この子は?」

和気藹々と話す私達に、ライトは上から伺った。

…あっ、紹介しないといけないわね!

シルク「この子は[マリル]のブルー君。この町の出身なのよ。」
ブルー「はじめまして。[マリル]のブルーです。 …きみは?」
ライト「わたしは[ラティアス]のライト。シルクと同じ、2000年代の出身なんだよ! よろしくね!」
ブルー「こちらこそ!」

浮遊しているライトは、体勢を低くして右手を差し出した。

彼のほうも、彼女を見上げながら笑顔で応じた。

……ふたりとも年が近いし、仲良くなれそうね!

ライトは18、一度進化しているブルー君は16。

……確か妹のシズクちゃんは今年で8歳だったと思うわ。

シルク「…ブルー君? ハク達って、見た?」
ブルー「ハクさん……ですか? …はい!見ましたよ! 確か今頃第四区画にいると思います。」
シルク「第四区画…ね? ありがとう、助かったわ!」

……ええっと、[第四区画]は確か……、ここの西にある区画で、探検隊を対象にした店が多かったわね。

……きっと、探検での荷物を整理しているのかもしれないわね。

私は彼と再び右前脚で握手を交わした。


…そして、私達は二言、三言、言葉を交わしてから隣の区画へと歩きはじめた。


………

数分後 第四区画 sideシルク

ライト「…ねえシルク? さっきから気になってる事があるんだけど、いいかな?」
シルク「気になること?」

第一区画から小川を挟んだ西側にある区画にたどり着いたところで、ライトは私の前に回り込みながら疑問をぶつけた。

そんな彼女に、私は復唱して応じた。

ライト「うん。 [第一区画]が普通の店の集まりっていうのは分かったんだけど、その区画ってどれだけあるの?」
シルク「4つよ!」

この町は用途に応じて分けられているのよ。

ライト「4つ?」
シルク「ええ。 さっきの所が[第一区画]で、見ての通りよ。 そこから南にあるのが、[第二区画]。 そこが一番広くて、居住区が中心に公園とかが広がっているの。」

{[トレジャータウン]を生活の拠点にしているポケモンはみんなそこに住んでいる}と言っても過言ではないわ。

さっき会ったブルー君も、そこに住んでるのよ。

ライト「簡単に言うと、住宅街だね?」
シルク「そういうことよ! ……多分、ギルドにお世話になる私達にはあまり関わりのない区画かもしれないわね。 ……で、今私達がいる[第四区画]は、探検隊や救助隊…、[ダンジョン]に行くようなポケモンを対象にした地区なの。 ここで探索に必要な道具が買えたり、それを預けたり出きるわ。 きっと、一番利用する事になるかもしれないわ。 ……で、最後に[第三区画]。 飲食店とか娯楽施設が中心の場所だわ。 …そこでいろんなポケモンが交流したりして楽しんでいるわ。 ……こんな感じかしら?」

大まかに言うと、このくらいね。

私はある程度場所ごとの情報をまとめながら、彼女にわかりやすく(?)説明した。

……これで、分かってもらえたかしら?

ライト「……って事は、[第四区画]のここに探検隊のポケモンがたくさんいるって事だよね?」
シルク「そうよ! フレイ君とリル君………、そしてギルドのみんなもよく使ってるわ。 ……ほら、言っていたらシャインさんも来てたみたいよ! ……シャインさん! こんな場所で会うなんて奇遇ね!」

あの[キマワリ]は、間違いないわね!

私はその彼女の姿を視界に捉え、大きな声で呼んだ。

シャイン「…本当にキャーですわね!! ライトさんにシルクさんも買い物?」

たぶん私が今まで会ってきたポケモンの中で一番テンションが高いシャインさんは、私達のば姿を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。

……きっと、ライトが少し高い所で浮遊していたからすぐに分かったのね?

ライト「わたし、初めてだからシルクに案内してもらってたんだよ!」
シルク「ライト、早速仲良くなったのね? ハク達が戻ってるって聞いたから、探しついでにね! ブルー君から{[第四区画]に行くのを見}たって聞いたから、もしかしたらと思ったのよ。」
シャイン「…ハクさんとシリウスさんとさっきまで喋っていたところなのよー! …これって、すれ違いってやつですわねー。 キャー!」

シャインさん、相変わらずね?

ライト「さっきまで?」
シャイン「そうですわー! 分かれた後で{カフェに行く}って言っていましたわー!」
シャイン「カフェというと……、[第三区画]の[パッチールのカフェ]かしら? 去年はまだ準備中で行ったことはないけど……。」

噂によると、そこで飲める〈グミ〉で作ったドリンクが評判らしいのよ!

種類も沢山あって、町のポケモン質の憩いの場になっているそうよ!

ライト「カフェ……? ……なら、シャインさんも一緒にどう? 門限までまだ時間があるし……」
シルク「日の傾きからすると、あと二時間ってところかしら?」
シャイン「……せっかくだけど、遠慮しておきますわ。 [第一区画]にブラウンを待たせてるから……また今度にしておきますわ。」
シルク「……なら、仕方ないわね。」

待たせてるひとがいるなら、一緒にはムリね。

彼女は残念そうに………でも、ハイテンションで明るく言った。

……それが、シャインさんの長所ね。

彼女と一通り話し終えて、再び歩みを進め始めた。


……会いたいのは山々なんだけど、本当にすれ違いばかりね……。

@ ( 2014/03/28(金) 01:54 )