04 性格
午前 林檎の森中部 sideシルク
フレイ「…[電光石火]! リル! そっちは頼んだぞ!」
リル「うん! [まねっこ]……[毒針]!!」
それぞれに対峙している2人は、両方とも技を命中させた。
まず、フレイ君に向けて放たれた[毒針]を、彼は技を使ってかわし、そのまま別のポケモンを攻撃した。
不意に攻撃を受けた[キャタピー]は咄嗟には反応出来ず、力尽きた。
一方のリル君はというと、さっき放たれた[毒針]を真似して、また別のポケモンを狙った。
その針は運良く[チェリネ]にヒットして、一発で倒れた。
……ここまで何回か2人の戦いぶりを見せてもらって、ある程度彼らの実力がわかったわ。
まず、活発で積極的なフレイ君は、飛行タイプらしく素速さを生かした戦闘をしている。
技の威力は平均的で、守りもそこそこ……。
……ただ、せっかく特性が[炎のからだ]なのに、生かしきれてない……。
ちょっと、勿体無いわね………。
次に、控えめで消極的リル君は、“ノーマルランク”とは思えないほどの物理技の威力を持っている……。
[電光石火]の威力からすると、“シルバーランク”ぐらい……かしら?
……でも、自信がないみたいで、一歩下がって[まねっこ]で相手の出方を伺っている……。
…あくまで私の考察だけど、こんな感じかしら?
ツチニン「[吸血]!!」
リル「うわっ!!」
フレイ・ライト「リル!! [火の粉]!!」「リル君!! [癒やしの鈴]!」
シルク「〈場所変え玉〉!! くっ……!!」
技を発動させた直後で反応が遅れたリル君に、背後から[ツチニン]が迫る……。
真っ先に反応したのは、一番近くにいたフレア君。
彼は即効で嘴に炎をため、標的めがけて放出した。
……でも、その技は外れ、別の一体に命中した。
……それと同時に反応したのはライト……。
彼女はすぐに天に祈りを捧げ、心地いい音色を響かせた。
私はというと、鞄から〈場所変え玉〉を引っ張り出し、リル君と場所を入れ替えた。
ライト「シルク!!!」
……くっ………!!
腰が抜けたリル君の代わりに………攻撃をうけた私は……、[代償]の影響もあって………、大ダメージを被った。
私の[代償]を………知っている……ライトは……、
ライト「[ミストボール]!!!」
血相を変えて……、純白に輝く弾を連射して………残りの相手全てに……命中させた……。
シルク「よかった………、間にあって……。」
本当は[サイコキネンシス]で……………助けたかったけど……、彼は格闘タイプ………。
ただでさえ[チカラ]で………特殊技が強化されてるから………彼が耐えられないのは……目に見えてる………。
リル「あっ……ありがとうございます。」
フレイ「……でもシルクさん? 大丈夫っすか?」
シルク「ええ…………、なんとか……ね…………。」
リル「でっ、でもシルクさん! 今にも倒れそうですよ!?」
……確かに、今の………私の状況は………力尽きる………寸前ね………。
私はふらつきながら立ち上がり…………、心配させまいと………力なく笑った……。
フレイ「シルクさん! 確かシルクさんって〈オレンの実〉持ってなかったっすよね!?」
私の気持ちとは………違って、フレア君は……その木の実を……差し出した。
シルク「気持ちは嬉しいけど………受けとれないわ……。」
ライト「残念だけど、シルクは訳あって道具では回復出来ないんだよ…。」
シルク「ライト……、ありがとね………。 ……[朝の日差し]……。」
……他にも、私以外の技では無理……。
……だから、彼の気持ちだけを……受けとって、天に……祈りを捧げた。
フレイ「……シルクさん? 本当に……?」
私は、ゆっくりと目を閉じて、身を委ねた。
すると、森の木々の合間を縫って、私だけに強い木漏れ日が差し込んだ。
光に照らされた私の傷はある程度癒え、体力が半分回復した。
シルク「……よし……と。 このくらい回復すれば…大丈夫ね。」
リル「……もしかして、回復技ですか?」
ライト「そういうこと。」
シルク「攻撃技だけじゃなくて、回復技と変化技も大切よ!」
フレア「そうなんっすか?」
ライト「そうなんだよ!」
……何事にも、バランスが大切よ!
回復して楽になった私は、みんなに笑いかけながら言った。
そして、何事もなかったように、
シルク「……さあ、戦闘も済んだ事だから…集めながら先に進みましょ!」
ライト「うん! そうだね!」
リル「はっ……はい。」
フレイ「……そうっすね……。」
私の言葉をきっかけに歩みを進めた。
……フレイ君とリル君、私の変貌ぶりに言葉を失ってたけど……。
…………
午後 林檎の森奥地 sideシルク
ライト「……ここが奥地、なのかな?」
リル「そっ、そうみたいですね。」
赤い木の実がすずなりに実った木々の間を歩くこと数時間、私達は視界の開けた場所にたどり着いた。
一本の大木がまるで海原に取り残されたようにそびえ立ち、それを中心に広場が広がっている……。
広場が円形に広がり、そこだけ日の光が差し込む…。
そこにはダンジョン特有の空気は無く、静寂に包まれている……。
……もう気づいたかもしれないけど、ここはダンジョンの終着点……最奥部なのよ。
本当はもう少し早く来ることもできたけど、ちょっとした訳があってね…。
……いわゆる、指導ね。
この時代に初めて来たライトもそうだけど、フレア君とリル君に効果的な道具の使い方を教えていたのよ!
フレア「やっと着いたっすね。 ……それにしても大きな木っすね。 こんなに大きな木、初めて見たっすよ!」
リル「ぼっ、僕も初めてですよ。 …でもシルクさん? この木以外に何もないのに、何をしに来たんですか?」
ふたりとも、
この木に圧倒されているわね。
ライト「[林檎]みたいな木の実が実ってるけど……。」
ライトも、同じみたいね……。
浮遊しているライトも、顎にあたる部分に手をあてて首を傾げた。
シルク「そう。
この木以外はね! ……でも、この木が目的なのよ。」
ライト・フレイ・リル「「「この木が?」」」
シルク「ええ、そうよ。」
……読者の皆さんは、私の目的が分かったかしら?
まだ分からない方のために、ヒントをだすわね。
……まず一つ目。
今、私達がいる場所は?
二つ目。
原作で、この場所であった事は?
……これだけ言えばもう分かったわよね?
私は、広場の中心にそびえる大木を見上げながら……、
シルク「この木になっている木の実は[セカイイチ]という名前で、どこの店にも売ってない高級品なの。 ……それに、ギルドの責任者のラックさんの大好物なのよ! [サイコキネンシス]!」
超能力で10個ほど収穫した。
……自然のものだから、取りすぎは禁物ね。
フレア・リル「そうなんすか!?/そうなんですか?」
ライト「……って事は、私達の時代では[ナゾの実]とか[リュガの実]みたいな感じ?」
シルク「そういうことよ。」
……どっちの木の実も、生育する環境が特殊すぎるのよ……。
2000年代では、そういう研究結果がでているわ。
三人とも違った意味で言ったけど、私はみんなに対して同じように頷いた。
ライト「……なら、そのラックさんっていう人へのお土産に丁度いいね!」
……それに、“焔拳”の2人の評価も上がると思うわ!
……フラットさん、2人に期待してるのね?
私はこの時、フラットさんの意図が分かった気がした。
……だって、{食料調達}なら、[オレンの森]みたいなダンジョンでもできるもの……。
難易度的にも[林檎の森]のほうが難しいから、きっとそうね。
シルク「ええ!」
私は{もちろん!}っていう感じで頷いた。
……この後、私達はフレア君達〈探検隊バッチ〉でトレジャータウンに帰還した。
……時間もまだ早いから、戻ったら挨拶まわりで忙しくなるわね……。