00 長い1ヶ月のはじまり
2014年 とある街道 sideシルク
???「[シャドーボール]!……ライト、いい感じね!」
ライト「本当に?」
私が放った漆黒の弾を、ライトという彼女……[ラティアス]が目を閉じたまま難なくかわした。
……うん、しっかり感じ取れているわね!
……あっ!
話の初めだから挨拶をしないといけないわね!
……私は[エーフィ]のシルク。
流石に、知ってるわよね?
どうやら、作者のお気に入りみたいで、また主人公に抜擢されたみたいね……。
……とにかく、5回目だから、私についての説明は省かせてもらうわね。
次に、私が相手している彼女……、[ラティアス]のライトも大丈夫よね?
……そう、〜導き〜でジム巡りをしている、
理由ありトレーナーの彼女よ!
……一応、私とライトの関係をおさらいしておくと、彼女とは親友であって師弟関係でもある…。
私は彼女を助けてるし……、逆に私も救ってもらってるわ。
……つまり、互いが互いの恩人ってワケ。
…あと、旅仲間でもあるのよ。
ユウキやフライと同じで、かけがえのない存在……、一言では語りきれないわ!
……と、こんな感じかしら?
私とライトの事を手短に言えたから、そろそろ物語に戻るわね。
難なくかわしたライトを、私は評価しながら、
シルク「ライト、日も傾いてきたからそろそろ終わりにしましょ!」
こう提案した。
……始まって早々、今の時刻は夕方。
西の空は朱く色付いて、私達の影が長くなっている…。
宵の明星が姿を表しはじめ、やがて訪れる星空の到来をささやかに告げる……。
……画になるわね……。
ライト「うん。」
シルク「……部屋を確保出来なくなるといけないから、そろそろ……」
{行きましょ!}
色付いた景色に趣を感じながら言おうとしているところに、
???「…あっ、シルクさん!ここにいたんですね!」
1つの声が私の言葉を遮った。
……?
この声は、もしかすると……、
シルク「シードさん、久しぶりね。 その様子だと、誰かに会ってきたってところね。」
ライトと同じ伝説の種族で、[セレビィ]のシードさん。
彼にも色んな意味でお世話になっているわ!
彼とは運命的な出逢いをして、貴重な体験をさせてもらったのよ!!
ライト「…シルク? このひとは?」
初対面のライトは、不思議そうに彼を見ながら言った。
シルク「紹介するわ。 彼は[セレビィ]のシードさん。 ライトと同じ、伝説よ! シードさん、彼女は[ラティアス]のライト。私の親友のうちの一匹よ!」
ライト「はじめまして。ライトと言います。」
シード「こちらこそ!」
……こんな感じで大丈夫よね。
私は手短に彼らをそれぞれに紹介した。
2人とも、快く思ってくれたみたいで、浮遊したまま笑顔で握手をかわした。
……どうやら、仲良くなってくれそうね。
私は[絆]の名に恥じない行為をしたことに満足し、彼らを見上げた。
シルク「……あっ、そうだ。 シードさん? シードさんがわざわざ訪ねてきたって事は、何か用事があるのよね?」
シード「…? ああー、そうでした!」
私は彼に提起して、それがきっかけで用事を思い出したみたいね…。
彼はポンと手をたたき、{すっかり忘れてましたよー。}って半ば笑いながら言った。
シード「フライさんは都合がつかなくて無理だって言ってたんですけど…、7000年代に遊びにきませんか? どうです? きっとチェリーも喜ぶと思いますよ!」
そして、揚々とした様子でこう言った。
シルク「そうね………。ラテ君達は来てくれたから会えたけど……」
ハクやチェリー達とは別れて以来会えてないから……。
………会いたいわ……。
……でも、こっちではユウキの事もあるし……。
……いや、折角休暇をもらったのに利用しないのは勿体無い!
……よし!
シルク「……なら、お願いしようかしら?」
おそらく、この機会を逃したらいつ会えるか分からない……。
……だから、行くわ! 7000年代に!!
私はしばらく考えて、答えた。
シード「シルクさんならそう言ってくれると思いましたよ! …ライトさん? もし良かったらライトさんも来てみませんか?」
ライト「えっ!?私も?」
シルク「はい! こうして会えたのも何かの縁です。 戻ってくる時間は僕の方で調整できるので、どうでしょうか?」
……そうね、いいかもしれないわね!
みんなにも紹介できるし、何より思う存分研究や特訓ができる!
ライトにとっても、いい刺激になるに違いないわ!
ライト「…でもわたし、伝説の種族なんだけど大丈夫なの!?」
シード「ええっと、世代交代しない種族……、[レックウザ]とか[カイオーガ]は無理ですけど、ライトさんの[ラティアス]なら可能です!」
もし前者も出来たらひとつの時代に同じひとが2人いることになるわね……。
……伝説ならではの制約ね……。
私には全く関係のない話だわ。
シルク「…それに、向こうは色んな意味で特訓しやすい環境なのよ! トレーナーとしても、ポケモンとしても、いい経験になると思うわ!」
フライが、何よりの証拠ね。
彼は向こうで色んな経験をしてから見違えるほど強くなったのよ!
……私も、放っておくと抜かれるかもしれないわね……。
ライト「そうなの?」
シルク「ええ。」
そうよ。
私はオススメするわ!
ライト「……じゃあ、わたしもお願いします!」
ライト、決めたわね?
彼女は肯定の意を込めて大きく頷いた。
シード「…なら、決まりですね!」
シルク「ええ!」
もちろんよ!
私も、にっこりと笑いながら頷いた。
シード「シルクさん、ライトさん、荷物は大丈夫ですか?」
シルク「ええ! すぐに準備出来るわよ! [サイコキネンシス]!」
そして、道の脇に寄せていた自分たちの鞄を超能力で手繰り寄せた。
維持したまま、私は鞄の紐を首に通し、ライトにも斜めにかかるように通してあけだ。
ライト「シルク、ありがとね。」
シルク「どういたしまして。 ……シードさん、準備出来たわ。」
…鞄には私の持ち物が全部入ってるから……問題ないわね!
[未来]から持ち込む事は出来ないけど、[過去]から持ち込むのには何の問題もない…。
……その時に見られないだけで、実際に存在していたからね!
……逆に、[未来]からだとその先の時代には無い技術を使っている可能性が高い……。
よって、結果的にその時代からの[未来]を変えてしまう事になる…。
…だから、注意が必要ってワケ。
鞄を背負うと、私は浮遊するシードさんをまっすぐ見つめて言った。
シード「了解です!! ……じゃあ、僕にもう少し近づいてください。」
シルク・ライト「ええ!」「? うん。」
……いよいよね…。
シード「……じゃあ、いきますよ…。…」
彼は目をつむり、意識を集中させ………、
シード「
[時渡り]!!」
激しい光と共に、自身の[チカラ]を発動させた。
ライト「!?」
その光は瞬時に私達を包み込んだ。
間髪を入れず、さらに激しく発光したかと思うと、一気に収束した。
………その場には、空一面に広がる星屑のキャンパスと、静寂に包まれた空気と山からのそよ風だけが残った。