25 S three on three
午後 24番道路 sideシルク
ベリー〈……あれ!?そういえばシルクって、目、青かったっけ?〉
ふたりの戦闘が一段落して、ひと息ついている時、ベリーちゃんが私の変化に気づいて頓狂な声をあげた。
……きっと、バトルに夢中で気付かなかったのね?
私自身も、たまに解除するのを忘れるぐらいだし。
ラテ〈言われてみれば…。[エーフィ]の瞳、白のはずだけど?〉
シルク〈……[絆の加護]の影響なのよ。[絆]を象徴する色は青でしょ?[チカラ]を使ってる事になるから、その関係で瞳が変色するのよ。〉
晴れ渡る空にも似た色の瞳で、私は補足を加えた。
ベリー〈…[チカラ]で? 他には影響とかってあるの?〉
ベリーちゃん、興味津々といった様子ね?
相変わらずで安心したわ。
シルク〈ええっと、意識を覚醒させているから、今の状態は一種の興奮状態ってぐらいかしら? それ以外はさっき言った通りよ。〉
ベリー〈へぇー。 ……なら、落ち着けば元に戻るって事だね?〉
シルク〈ええ、そうよ。……見てて。〉
ベリーちゃん、あたりよ!
私は笑顔で答えると、目を瞑って高まる意識を鎮めた。
……。
そして、ゆっくりと目を開ける。
シルク〈………こんな感じよ。〉
ラテ〈…本当だ。元の色に戻ってる。〉
そして、私の目は黒地に白という配色に戻っていた。
リーフ〈……この様子だと、解除したんだね?〉
シルク〈ええ。 ひとまず、一段落したから、早いうちに仕事を片付けてしまいましょ!〉
……でないと、そっちの方に意識がいって、せっかく来てくれているのに申し訳ないわ。
リーフ〈そうだね。 日が暮れないうちに行こっか。〉
ウォルタ〈…さっきからずっと気になってるんだけど、その仕事って何なの?〉
シルク〈一言で言うと、調査資料の印刷、かしら?〉
言うのが遅くなったけど、この道の先に住んでいる[マサキ]さん、っていうコンピューター関係の技術者に頼みに行くのよ。
……実は、彼とはイッシュに引っ越す前からの知り合い………、というよりは、同じ街の出身で昔からお互いに知っていたのよ。
…………私自身、会うのは10年ぶりぐらいだけど……。
リーフ〈そう。 終わったら別の仲間が取りに来る事になってるから。…だから、少しだけ時間くれる?〉
ウォルタ〈うん。仕事なら断る訳にはいかないもんね〜。〉
ラテ〈………でも、シルクはともかく、その仲間はどうやって言葉を伝えるの?………人間にはポケモンの言葉は伝わらないし………。〉
[テレパシー]を使えないポケモンならね。
シルク〈その事なら、心配ないわ。私を含めた仲間の6匹はみんな、文字の読み書きが出来るから、[筆談]をすれば伝わるのよ。〉
それなら、例え聴覚では理解出来なくても、視覚では理解出来る。
………読める事が前提となってるけど……。
ラテ〈それなら、大丈夫そうだね。〉
そうよ。
……この後、早々とその彼の元に向かって、依頼してきたわ。
……ちなみに、出来上がった資料はスーナが受けとる事になってるわ。
………
夕方 sideシルク
A「! 珍しいポケモンがこんなに沢山! まとめてゲットだ!!…」
…………えっ?
あまりに唐突すぎて状況が把握できない?
……わかったわ。
依頼を終えて、話ながら[ハナダシティー]に戻ろうとしたら、トレーナーと遭遇したのよ。
……見たところ、戦闘になりそうだから、身構えているつて訳。
A「[ピチュー]、[カメール]、[ニドラン]、一気にいくよ!」
ピチュー〈任せて!〉
カメール〈……一匹ずついったほうが確実だと思うけど?〉
ニドラン♀〈……まっ、いいんじゃない?〉
未来組〈〈〈えっ!? 何でポケモンがあんなボールの中から!?〉〉〉
ラテ君、ベリーちゃん、ウォルタ君は、衝撃的な光景に声を荒げた。
……驚くのも、無理ないわね…。
7000年代には[モンスターボール]なんて無いし、それ以前に人間は存在しないもの。
……時代のギャップね……。
リーフ〈この時代のポケモンは君達の時代とは少し違うって事は知ってるよね?人間と生活を共にしているポケモンはああやって登録? されているんだよ。〉
シルク〈私はそういうのは好きじゃないけど、主従関係、と言った方がいいわね。主従関係と言っても、対等な関係も、入るわ。………ちなみに、私達もトレーナー就きのポケモン。 だから同じように登録されているわ。………ラテ君達にとっては変な感じかもしれないけど……。〉
私達の場合、後者ね。
ベリー〈主従関係……〉
シルク〈とにかく、今この状況は戦わないと進まないわ!〉
私は疑問に捕らわれているベリーちゃんの言葉を遮った。
ラテ〈戦う……?ちゃんと自我があるのに?〉
リーフ〈そう。 挑まれたらそれに応える……。それはこの時代ではトレーナーにも、ポケモンにも当てはまる、[礼儀]なんだよ。〉
シルク〈だから、………さっきリーフとウォルタ君は闘って消耗してるから、ラテ君、ベリーちゃん、私と一緒に戦ってくれるかしら?〉
例え私達がポケモンだけだとしても、当てはまるのよ。
ラテ〈えっ? うん。〉
リーフ〈こっちの時代でのバトル方式の体験、って事でいいんじゃないかな?〉
シルク〈ルールも、簡単よ! これは[トリプルバトル]っていう方式なんだけど、文字通り3対3で戦うのよ。 ………つまり、チームワークが大切って訳。 他に、道具は使えないわ。……で、どちらかが全滅したら終了。……こんな感じよ。〉
私は、相手をまたせているから必要最低限の事だけ伝えた。
ベリー〈………って事は、いつものバトルと変わらないんだね?〉
シルク〈ええ、そうよ! ………じゃあ、始めましょ!〉
ラテ・ベリー〈〈うん!〉 [悠久の風]としての実力が試されそうだよ!〉
ふたりとも理解してくれたわ。
……そして、彼らも身構えた。
……………さあ、いくわよ!!
カメール〈………終わった?〉
シルク〈……待たせて悪いわね。〉
A「……[エーフィ]に[ブラッキー]と[アチャモ]か……。……なら、カメールはアチャモに[水鉄砲]、ピチューはブラッキーに[電磁波]、ニドランはエーフィに[毒針]!!」
カメール〈[水鉄砲]!〉
ピチュー・ニドラン〈[電磁波]!〉〈[毒針]!〉
……きたわね!
カメールは真っ先に攻勢に移り、あとの二匹は戦闘を有利に進めるべく、状態効果のある技を放った。
…私達の動きを悪くする作戦ね?
ラテ〈ベリー、いつも通りいくよ!![守る]!〉
ベリー〈もちろん![火炎放射]!!〉
シルク〈ふたりがどれだけ成長したか見せてもらうわ!![シャドーボール]、[サイコキネンシス]!!〉
ラテ君は私達の前に立ち、緑のシールドを出現させた。
ベリーちゃんは、回り込むように迂回し、燃え盛る炎で牽制。
私も漆黒の弾で牽制した後、超能力を発動させた。
ラテ君が発動させたシールドによって、3つの技は難なく防がれた。
A「[守る]か……。厄介だな…。[高速スピン]、[電気ショック]、[二度蹴り]!〉
ピチュー・ベリー〈防がれた!?[電気ショック]!〉〈ラテ、あれいくよ!![オウム返し]………、[毒針]!!〉
カメール・ラテ〈うわっ!………[高速スピン]!〉〈いつものだね!? [悪の波動]!!〉
ニドラン・シルク〈接近戦だね?〉〈お手並み拝見といきましょうか。……[10万ボルト]、[目覚めるパワー]!〉
牽制によって気が逸れていたピチューは、慌てて電気を放出する。
対して、ベリーちゃんはさっき相手が使った技を、そっくりそのまま真似した。
カメールは、軽い身のこなしで炎をかわし、甲羅に手足を引っ込めて高速回転した。
ラテ君は、ベリーちゃんとタイミングをあわせるように黒の波をベリーちゃんのそれに衝突させた。
………私の、戦法を使うのね?
ニドランは接近戦に持ち込むために、私めがけて走り始め、私は黄色と暗青色のエネルギーをストックする。
ラテ・ベリー〈[真空切り]!〉〈[炎の渦]!〉
ニドラン〈[二度蹴り]!……!?〉
ラテ君、実力上げたわね!
彼は右前脚にエネルギーを蓄え、そのまま縦、横、斜めと振りかざした。
その間にも、黒と紫は混ざり合い、藤色となった。
その弾に私が及んで、速度をそのままに、細かい粒子に細分化された。
そうなる前にニドランは私と距離を詰め、斜め前に跳ぶ。
シルク〈当てさせないわよ!! 発散!!〉
ニドラン〈えっ!? 何!? うわっ!!〉
四足歩行ならではの事情を逆手にとって、完全に両前脚、後脚が離れているニドランを吹き飛ばした。
キープされていた黄色のエネルギー塊は、内側からニドランに向けて発散した。
風が発生する……。
ラテ〈[守る]!〉
カメール〈なっ!?〉
ラテ〈[真空切り]!………ベリー!!〉
ベリー・ピチュー〈うん![炎の渦]!〉〈えっ!!何!?これ!?〉
ラテ〈[シャドーボール]!!〉
相手の攻撃をシールドで受け止め、そのまますぐに、下から上に向けて切り裂く。
その後、ラテ君は標的を変更して、ピチューに向けて漆黒の牽制球を放つ。
彼からバトンを引き継いだベリーちゃんは、空中に投げ出されたカメールを炎で拘束した。
……見事な連携ね!
細かく裂かれた藤色の弾は、その内のいくつかがピチューに命中した。
………上手い組み合わせね。
毒は守備軟化効果を、悪は混乱作用を秘めている…。
………これをくらったら、完全に丸腰になるわね。
私は、飛ばしたニドランめがけて走り、
シルク〈拡散!!〉
キープしていた竜のエネルギーを分裂させ、それで取り囲んだ。
ニドラン〈!?〉
シルク〈収束!!〉
ニドラン〈っ!!!〉
取り囲んだ中心……、標的めがけて凝縮……。
………そして、ニドランはまた飛ばされ、力尽きた。
A「!? 強い!? [殻に籠もる]、[電気ショック]!」
カメール・ピチュー〈っ、…炎技なのに……。[殻に籠もる]…。〉〈!? !!?〉
カメールは炎に捕らわれたまま、守りを強化するべく身構えた。
ピチューは視覚、聴覚の自由を奪われ、慌てふためく。
………勝負合ったわね……。
ベリー〈……これで決めるよ!![二度蹴り]!〉
カメール〈っ! 今度は格闘!?〉
ラテ・シルク〈〈[シャドーボール]!!〉[目覚めるパワー]!!〉
ベリーちゃんは地面に着地したカメールめがけて走り、二発の蹴りをヒットさせ、ラテ君は漆黒の弾で彼女を援護した。
私は、身動きがとれないピチューを狙い、口元で漆黒と黒のエネルギーを混ぜ合わせる。
A「カメール!! ピチュー!!」
カメール・ピチュー〈〈っ……………!!〉〉
ベリーちゃんはすぐに離れ、それと同時に漆黒の弾がカメールに命中。
私の元から離れ、紺の暗球は膨張しながらピチューに迫る……。
………ほぼ同時に命中し、崩れ落ちた。
…………ラテ君、ベリーちゃん、強くなったわね!