24 S 時代を越えた交流
昼過ぎ 24番道路(確か) sideシルク
ベリー〈……ねえリーフさん? リーフさんはどんな技が使えるの?〉
リーフ〈技? 僕は[リーフブレード]、[リーフストーム]、[ソーラービーム]、[逆鱗]の4つだよ〉
よく晴れた昼下がりに、楽しそうに話す5つの声が辺りに響く。
……もちろん、私達のよ。
ベリーちゃんはリーフに興味津々で、矢継ぎ早に質問しているわ。
一方のリーフは、全く嫌そうな表情は見せず、快く答えているわ。
ラテ〈やっぱり、上級技ばかりだ。〉
ウォルタ〈技だけでも強さが伝わってくるよ〜。ぼく達の時代では、[ソーラービーム]なんて、よっぽど経験を積んで無い限り使えないなんだ。〉
リーフ〈そうなんだー。 あと、君達の時代では年を重ねないと進化出来ないっていうのは本当なんだね?〉
ベリー〈うん。一回進化する種族は20歳以上で、二回だと15歳以上と25歳以上でしか進化出来ないんだよ。……ええっと、ラテは別なんだけどね。〉
シルク〈別の知り合いが言うには、ある時代を境に、身体の細胞の造りが変わるらしいのよ。〉
やっぱり、住む時代が違うからその事で会話が弾むわね。
………ん?造りが違う理由?
ええっと、話したいのは山々なんだけど、長くなるから〜交錯〜を読んでもらってもいいかしら?
……決して面倒くさいからじゃないからね!
ラテ〈……そうみたい。 シルクから聞いてるよね?僕のこと。〉
リーフ〈うん。 ……元々人間で、5100年代の出身なんでしょ?〉
ウォルタ〈そこまで知ってたんだ〜。 ねえリーフさん? 突然だけど、僕と一回戦ってくれる〜?〉
一同〈〈〈〈えっ!?〉〉〉〉
バトルを!?
ウォルタ君は、唐突にリーフにバトルを申し込んだ。
………ウォルタ君、あなたの性格は健在ね。
私達は、声を揃えて驚いた。
ウォルタ〈だって、せっかく来たんだから、やり残す事が無いようにしたいんだよ〜。いいでしょ〜?〉
彼は、まるで子供が物をねだるような目つきで訴えた。
………一応、リーフ以外は未成年なんだけど……、私を含めて…。
リーフ〈………うん、わかったよ。………ならシルク?お願いしてもいい?〉
シルク〈…………[絆の加護]ね?……わかったわ。それなら、認めるわ。〉
………そうね。[絆の加護]を発動させれば、全員の守備力が各段に上がるから、ダメージは殆ど蓄積しないわね。
ラテ・ベリー〈〈[絆の加護]……?〉何なの?それ?〉
向こうの時代にいた時はまだ私にはなかった能力だから、知らないのも当然ね。
……私も、言わなかったし……。
リーフ〈[絆]の[チカラ]のうちの1つだよ。〉
シルク〈私自身の守備力の全てを捨てる代わりに仲間の守りを強化する事ができるのよ。………能力というよりは特性と言った方がいいかしら?〉
リーフ〈そうだね。発動させると、シルクの[シンクロ]はなくなるしね。〉
……そういう事よ。
私とリーフは、その事について簡単に説明した。
ラテ〈特性………なの?〉
シルク〈ええ。……実際にしたほうが早いわね。…〉
正直言って、言葉で説明するのはむずかしいわ。
私はそう言いながら目を閉じ、意識を集中させた。
シルク〈………{[絆]により………我らを護り給へ………。}〉
そして、呪文めいたセリフを唱える……。
………何故かこれを言わないと発動しないのよ……。
コルドが言うには、{自分に言い聞かせて意識を覚醒させるため}……だそうだわ……。
私の[チカラ]は解放され、私自身の守備力は皆無となった……。
……そして、私はゆっくりと目を開ける。
シルク〈……こういう事よ。〉
ベリー〈!? 何なの!?これ!?〉
ウォルタ〈これが、シルクのもう一つの[チカラ]なの………?〉
ラテ〈何か不思議な感じ………。〉
さんにんとも、驚きを隠せないみたい……。
私はいつもとは違って、水色の瞳で呟いた。
リーフ〈それが発動している証拠だよ。……さあウォルタ君、始めようか。〉
ウォルタ〈あっ、うん。〉
リーフは、守りが強化されたのを確認すると、掛けていたバッグを下ろした。
……戦闘体制ね?
穏やかな目つきが嶮しいものにかわったわ。
ウォルタ君も、身軽になって構えた。
………でも、この勝負の決着はつかないわ。
………何故かって?
私の[チカラ]によって強化された守りは、伝説のポケモンか、それと同等の実力を持つポケモンしか貫かないわ。
去年対峙した[デオキシス]と、考古学協会会長のシロナさんのメンバーがその例ね。
……これまでの一年間に一度手合わせさせてもらったんだけど、強化されているにも関わらず攻撃が通ったのよ……。
……おかげで、5対0で惨敗だったわ……。
私達6匹が全力で挑んでも、やっと一匹を倒せるぐらいだった……。
リーグ最難関と言われるのも、わかるわ……。
リーフの宣言と共に、時代を越えた親善試合が幕を開けた。
ウォルタ〈まずは僕からいかせてもらうよ〜![ハイドロポンプ]!〉
リーフ〈!!? 速い!? っ。〉
開始早々、ウォルタ君は目にも留まらぬ速さで高圧の水流を命中させた。
……ウォルタ君、強くなったわね。
ウォルタ〈[ミズゴロウ]のぼくがこんなスピードを出せるから驚いたでしょ〜?〉
リーフ〈流石に、僕でもビックリしたよ。[真実の英雄]って言うのも、伊達じゃないね!……じゃあ僕も、遠慮なくいかせてもらうよ![リーフストーム]!〉
リーフも負けじと深緑の嵐を発生させる。
そして、隠れるように接近を開始した。
ウォルタ〈!? 凄い勢い!? [地震]!〉
リーフ〈そうはさせないよ!![リーフブレード]!〉
目まぐるしい速さで、バトルが展開される……。
ウォルタ君を震源にして、けたたましい揺れが発生した。
それをかわすべく、リーフは尻尾の草刀で地面を叩き、跳び上がった。
ウォルタ〈!? いない!?〉
持ち前の素早さで嵐をかわしたその先には、既にリーフの姿はなかった。
リーフ〈上だよ!![リーフブレード]!!〉
ウォルタ〈!? っ。〉
頭上をとったリーフは、身体を鞭のようにしならせて、自身の尻尾をウォルタ君に打ちつけた。
まともにダメージを受けたウォルタ君は、何事もなかったかのように立ち上がった。
……もちろん、私の[チカラ]のおかげでね!
ベリー〈えっ!?草タイプの技なのに!?〉
ラテ〈全然効いてないの!?〉
ふたりはあまりの事に目が点になっていた……。
シルク〈あれが、[絆の加護]よ。伝説の種族か、私以上の実力者でないと、破れないわ。………本当は戦闘用の特性じゃないんだけど……。〉
………[英雄伝説]によると、[絆の賢者]はこの能力で戦に巻き込まれた一般市民を護ったそうだわ。
……きっと元々の目的が戦闘じゃないから、使用者の守りが無くなるのね?
ウォルタ〈やっぱり、リーフさんも強いね〜!〉
リーフ〈ウォルタ君もね!〉
ウォルタ〈……でも、これならどう?〉
そう言って、距離をとっていたリーフに接近し始めた。
………光を纏いながら……。
……姿、変えるのね?
リーフ〈この光は……、きっと……。………なら……。〉
状況を理解したのか、リーフも光を蓄え始めた。
………[ソーラービーム]ね?
接近と共にかたちが変わり、ウォルタ君は[ウォーグル]へと姿を変えた。
ウォルタ・リーフ〈[燕返し]!!〉〈[ソーラービーム]!!〉
両者が技を発動させるのはほぼ同時だった。
ウォルタ君は低空飛行をしながら加速し、翼に力を蓄える。
対して、リーフは蓄えた光をエネルギーに変換し、一気に放出する。
ウォルタ君はそれを見切ってかわす。
この時、両者の距離は5m。
リーフ〈[逆鱗]!!〉
リーフはかわされることを予想していたのか、すぐに技を解除して次の行動に移った。
持っている力を解放し、彼に襲いかかる……。
リーフ・ウォルタ〈〈っ!!〉〉
……結果、相討ち。
両者は鈍い音と共に別々の方向に飛ばされた。
ラテ〈……凄い衝撃…。〉
ベリー〈強化されてない状態だったらただでは済まなかったかもしれないね……。〉
相性的にどうなったかは分からないけど、恐らく引き分けだったかもしれないわ……。
リーフには飛行タイプの[燕返し]は効果抜群。
ウォルタ君も、[チカラ]の[代償]で守りが弱くなっているから、その状態で[逆鱗]をうける事になる………。
リーフ〈……ウォルタ君、なかなかの威力だね。〉
ウォルタ〈リーフさんも。まともに受けてたらやられてたよ〜、きっと。〉
リーフ〈……そうだね。僕もきっと、倒れてたよ。………じゃあ、そろそろ終わろうか。〉
ウォルタ〈うん!〉
気が済んだのか、二匹は戦闘の緊張を解いた。
………実力は、互角ね?
ウォルタ君も、きっと沢山の経験を積んだのね?
[水の波動]が[ハイドロポンプ]に強化されてたから、間違いないわ!
私は、喜びと共に確信した。