23 S 未来の友達
昼過ぎ ハナダシティー北部 sideシルク
シルク〈ええっと、確かこの辺に………〉
私はライト達と別れ、仲間と待ち合わせているある場所に急いだ。
……正直、危なかったわ。
ライト達が悪い訳じゃないけど、ここに着いたのが予定時間のギリギリだったのよね……。
本当は、昨日にはここにいるつもりだったのよ。
で、今日の午前中は観光、その予定だったわ。
シルク〈……あっ、いたいた。リーフ、ごめん、待たせたかしら?〉
リーフ〈ううん、僕もついさっき来たところだよ。〉
ちょうど私とは反対側、街の東側から、私の仲間の[ジャローダ]、リーフが落ち着いた様子で向かってきた。
そっちから来たって事は、あなたもさっき着いたばかりなのね?
遅れたかと思ったけど、これで安心したわ。
シルク〈そうなのね? 良かったわ。〉
リーフ〈シルク? オルトから聞いた話なんだけど……、知ってるかなー?〉
シルク〈ん? 話?〉
彼は徐に、話題を提起した。
オルトが?
リーフ〈うん。 ライトがトレーナーになったんだって!〉
あっ、ライトのことだったのね?
シルク〈ええ、知ってるわ! ついさっきまで一緒にいたのよ。〉
リーフ〈えっ!? 一緒にいたの!?〉
シルク〈ユウキに調査結果を伝えに行く途中で偶然出会ったのよ!〉
いつも冷静なリーフが、私の発言に驚いてちょうど肩にあたる部分から掛けていたバッグを落としそうになった。
まっ、それもそうよね?
私も、驚いたし。
リーフ〈で、一緒にいたなら、何処へ?〉
シルク〈ジムに向かったわ。ライト、2ヶ所攻略したのよ。……で、今から3つ目なのよ。ちょうど戦ってる頃だと思うわ。〉
ライト、無事に勝てるといいわね。
ティル君だと不利だけど、ライトとテトラちゃんなら勝てるわよね?
経験豊富なラグナさんもいるし……。
リーフ〈そっかー。会いたいけど、用事が終わってからだね。〉
シルク〈そうね。〉
時間的に明日になるかもじゃないけど、まずそれが先よね?
リーフ〈ちょっと後ろ髪を引かれるけど、行こっか。〉
シルク〈あっ、リーフ。ちょっと待ってくれるかしら?〉
リーフ〈えっ!? 何?〉
私と合流して、北に歩みを進めようとしたリーフを、私は慌てて呼び止めた。
リーフはハッと立ち止まり、不思議そうに私のほうに振り返った。
シルク〈もう一組、合う予定のポケモンがいるのよ。〉
リーフ〈? 僕以外に?〉
シルク〈そうよ。 私がちょうどこの辺に来る
時間帯に、合う予定なのよ。〉
リーフ〈??〉
私の意味深な発言に、リーフは首を傾げた。
……ずっと、楽しみにしてきたわ、この日を!
本当は皆にも紹介したいけど、難しいかもしれないわね……。
………と、そこに、待ち合わせている彼の宣言通り、私の近くに一筋の光が収束し始めた。
シルク〈リーフ、言っていたらちょうど来たわ!〉
リーフ〈この光って、[テレポート]?……でも、何か違うような……。〉
シルク〈そう。[テレポート]じゃないわ。〉
これは、[時渡り]の光よ!
……これだけ言えばもう分かったわよね?
???〈よし、ピッタリだね。〉
シルク〈ええ。流石ね!〉
光が収まると、そこには4匹のポケモン。
一匹目は……、
シード〈[時渡りポケモン]として、簡単な事ですよ!〉
[セレビィ]のシードさん。
二匹目は、
???〈シルク、久しぶり!!〉
シルク〈ベリーちゃんも!〉
高めのテンションで笑う、[アチャモ]のベリーちゃん。
三匹目は…、
???〈元気そうで何よりだよ。〉
シルク〈ラテ君、私もあなた達も元気そうで安心したわ!〉
礼儀正しい、[ブラッキー]のラテ君。
そして最後に、
???〈本当にそうだよ〜。 シルクは相変わらず、変わってないね!〉
シルク〈ウォルタ君、あなたもね!〉
白いスカーフに、銀のネックレスを着けた、マイペースな[ミズゴロウ]のウォルタ君。
……そう。私が待ち合わせていたもう一組は、この4匹。
7000年代の、私の友達。
〜交錯〜を読んでくれた人は知ってるわよね?
だから、説明は省かせてもらうわ。
私は、それぞれに笑顔で答えた。
本当に、久しぶりね!!
リーフ〈あっ、シルク! このひと達が、シルクが言ってた7000年代の友達だね?〉
シルク〈ええ、そうよ。〉
リーフは、納得したように大きく頷いた。
元の時代に帰ってから、向こうでの出来事を日記を交えて話したのよ!
だから、みんな知ってるわ。
リーフ〈どうりで、[セレビィ]の君がいるわけだ……〉
ベリー〈ねえシルク? さっきから気になってるんだけど、このポケモンは誰なの?〉
シルク〈あっ、そういえばまだ紹介してなかったわね。…〉
言われてみれば、そうだったわね。
シルク〈…紹介するわ。 彼は[ジャローダ]のリーフ。 仲間のうちの一匹よ!〉
リーフ〈シルクとフライから君達の事は聞いてるよ。…よろしくね!〉
リーフは笑顔で答えて、蔓を伸ばした。
ラテ〈うん、よろしくお願いします!僕は[ブラッキー]のラツェル。ラテって呼んで下さい・〉
リーフ〈ラテ君だね? よろしく!〉
ラテ君は右前脚で、リーフは蔓で、握手を交わした。
ラテ君、今は人間だった頃の名前を名乗ってるのね?
ベリー〈で、わたしは[アチャモ]のベリー。よろしくね!〉
リーフ〈こちらこそ!〉
ウォルタ〈そして、ぼくは[ミズゴロウ]のウォルタ。シルクから聞いてるよね〜?〉
リーフ〈うん。[チカラ]の事も、ちゃんと知ってるよ。〉
ベリーちゃんにウォルタ君も、手段は違うけど同じように交わした。
シード〈一応、僕も……。[セレビィ]のシードです。僕は7000年じゃなくて、この時代の出身です。〉
リーフ〈あっ、そうだったんだ。〉
聞いたところによると、シードさんは[セキチクシティー]の出身らしいわ。
そこも広大な森が広がっているから、きっとそこね!
シード〈はい!………と、まだまだ話したい事があるんですけど、僕はこの辺で失礼します。〉
ラテ〈そういえば、幼なじみに会いに行くって言ってましたね?〉
なら、一緒には行けないわね。
ウォルタ〈僕達と合流するのが、明後日だったよね〜?〉
シード〈はい。 場所は僕の方で何とかするので、気にしないで楽しんで下さいね!〉
ベリー〈うん! 時代を越えて来たんだから、思う存分楽しまないとね!〉
ラテ〈注意しないといけない事も聞いてるので、大丈夫です!〉
……きっと、この時代の事ね?
向こうの時代とは随分と違うから、それは大切よね?
……第一に、この時代には[ダンジョン]はないし……。
リーフ〈聞いてるなら、安心だね。〉
シード〈ですね。……では、失礼します。 [テレポート]!〉
シードさんはそれだけ言うと、光を纏って姿を消した。
………さあ、行きましょ!