22 L 水タイプ
昼過ぎ ハナダシティー sideライト
ティル〈……初めて来たけど、結構良さそうな街だね!〉
テトラ〈うん! 噂には聞いてたけど、{水の街}って言うのは本当だったんだー。〉
遅めの昼食ぐらいの時間帯に、わたし達は水の街にたどり着いた。
街全体に浅い水路が張り巡らされていて、小川のせせらぎが心地良く響いている………。
……水タイプのポケモンには最適な街だね。
ティル〈ショウタ君?ショウタ君達は来たことあるの?〉
ショウタ〈うん。………人間時代……って言うのは何か変な感じがするけど、あるよ。〉
コロナ〈確か、3年前だったかな?〉
へぇー、来たことあるんだ。
きっと、家族旅行かな?
[ニビシティー]に住んでるって言ってたし。
ショウタ君は、尻尾を風に靡かせながら回想した。
ラグナ〈俺は初めてだな。〉
ライト「任務では来なかったって事だね?」
さっき加わったラグナも、落ちついた様子で呟いた。
ラグナ〈そうなるな。〉
シルク〈私は、前来た時はジムにしか寄らなかったから、観光するのは初めてなのよ。……その前に、用事を1つ済まさないといけないけどね。〉
ライト「そっか。シルクはここで一度別れるんだったね。」
一応、そうなってたね。
確か、会う予定の人がいるんだったっけ?
シルク〈ええ、そうよ。……ライト、待たせているひとがいるから、私はそろそろ行くわね。〉
彼女は、にっこりと微笑んだ。
………しばらくは、お別れだね……。
テトラ〈また、会えるよね?〉
シルク〈ええ、もちろんよ!〉
ティル〈きっとだよ!〉
シルク〈この地方にいる間なら、すぐに会えるわ。 ライト、ティル君、テトラちゃん、それに皆も、いい旅を。〉
ライト「うん!シルクもね!」
わたし達は互いに顔を見合わせ、しばしの別れを惜しんだ。
シルクは、わたし達ひとりひとりに笑いかけた。
シルク〈ええ!〉
そして、彼女は街の北側へと歩いていった。
…………さあ、わたし達はジム戦、頑張らないと!
わたし達も、目的の場所へと歩みを進めた。
………ショウタくんとコロナちゃんには申し訳ないけど、宿泊するために予約するセンターの部屋で待っててもらう事にしたよ。
ショウタくん、伝説の種族だし、まだ完全に馴染んでないみたいだから……。
…………
ジム sideライト
ライト「すみません! ジム戦お願いします!」
わたしはジムの自動扉をくぐるとすぐに、大きな声で宣言した。
…三ヶ所目のジム……、やっぱりこの緊張感は慣れないよ…。
わたしは胸の高鳴りと共に、その人の到来を待ちわびた。
…………フィールドに水が張られてるって事は………、水タイプかな?
……だったら、ティルはやめておいた方がいいかもしれないな……。
………という事は、テトラとラグナかな?
……予め使える技を聞いておいてよかったよ。
カスミ「はいはい!今いくよ!」
すると、………あの人かな?
清楚な雰囲気の人が奥から駆けてきた。
カスミ「ごめん、待った?」
ライト「いいえ、そんな事ないです!」
結構、馴染みやすそうな人だね。
…いきなりタメ口、わたしもつい使いそうになったよ……。
カスミ「ならいいわね。 ジム戦よね?」
ライト「はい! ライトと言います! カスミさん、早速お願いします!」
カスミ「ライトちゃんね? じゃあ、始めましょ!」
ライト「はい!!」
カスミさんも、わたしと同じ気持ちだね?
彼女は、テンション高めにバトルの開始を宣言した。
そして、ほぼ同時にボールに手をかける。
………さあ、いくよ!!
………
sideラグナ
ライト・カスミ「ラグナ、お願い!!」「[ヒトデマン]、Take on!」
ラグナ・ヒトデマン〈…ジム戦か。……懐かしいな……。〉〈まっ、任せな!〉
俺は、いつもとは違った想いを胸に、戦場に脚をついた。
………一応、こうして話すのも初めてだな。
〜kizuna〜を読んでる奴は流石に知ってるだろ?
……言うまでもなく、[グラエナ]のラグナだ。
……きっと前作より登場回数が多くなるだろうな。
当然といえば当然だが……。
……あの後聞いて分かった事だが、ライトのメンバーの中で俺が最年長のようだな。
ライトは18、ティルは14、テトラは13、そして俺が26だ。
それに、名前で呼ばれるのは初めてだな……。
嬉しくもあり、恥ずかしくもあり………、複雑な気分だ。
カスミ・ライト「まずは[水鉄砲]!」「[悪の波動]で様子を見て!」
ヒトデマン・ラグナ〈任せな![水鉄砲]!〉〈タイミングを図るという訳か。 了解した。[悪の波動]!〉
奴は正面から俺に対して水片を放つ。
……定石だが、甘いな。
俺は言うほど実力はないが、経験だけはある。
判断力なら……、負けない!
俺は、イメージを黒一色に染め、それをエネルギーに変換する。
そして、これを放射状に解き放つ。
両者は互いにぶつかり、消滅した。
……加減したが、まだまだだな。
ライト・カスミ「接近戦に持ちこむよ!!《」気づかれないように[威張る]!》「[高速スピン]で接近して!」
ラグナ・ヒトデマン〈!? これが[テレパシー]か!? ……流石は[ラティアス]。人の姿でも使えるのか。〉〈攻めか?…〉
俺の脳内に、ライトの声が直接響いた。
俺は一瞬驚いたが、すぐに状態を立て直した。
…伝説、ならではの戦法だな。
ライト・ヒトデマン「[噛み砕く]で受け止めて!」〈[高速スピン]!〉
ラグナ〈……試した事ないが、やってみるか。〉
それに、技で受け止めるとは、俺でも思いつかなかった…。
トレーナーが代われば、技の使い方も変わるのか……。
俺は奴に向けて走り、相手も回転しながら俺に接近した。
………あんなに回って目が廻らないのか……?
………奴まで5m。
ヒトデマン〈俺の攻撃をよけられるか?〉
奴は挑発する。
………3m。
ラグナ〈そんな事、簡単だ。〉
俺は、その言葉にわざとのった。
相手に調子に乗らせれば、大概作戦がうまくいく。
………1m。
ラグナ〈[噛み砕く]!〉
俺は大口を開け、奴に狙いを定める。
ヒトデマン〈!?〉
当然、急には避けられない。
………0m。
ヒトデマン〈っ!!〉
俺の口内に見事に収まり、その瞬間を見計らって思いっきり噛み砕いた。
そして、そのまま前に放り投げる。
ラグナ〈まっ、どうせお前如きが俺にかなうはずがない。お前は俺以下だ!〉
ヒトデマン〈っ……。一度…止めたからって調子に乗るな!!〉
よし、作戦は成功だな!
ライトの策略にまんまとはまり、奴はイラついた表情?を見せた。
………顔、どこだ?
俺は、密かに、相手を混乱状態にさせる技、[威張る]を発動させた。
カスミ・ライト「もう一度[高速スピン]!!」「ラグナ、しばらく交わし続けて!《」相手の目をまわすよ! 危ないと思ったら[悪の波動]で牽制して!》
ラグナ・ヒトデマン〈流石だな!〉〈ちっ。[高速スピン]!!〉
ポケモンしか知らない事を利用するという訳か。
おそらく、人間達は技を無限に出せると思っているからな。
流石に俺達、ポケモンでも技を出すためにスタミナを使う。
続けて同じような技を出し続けると威力が落ちるのはそういう理由だ。
接近してきた奴を、俺は右、左にと、勘を頼りにかわす。
………混乱状態だから、相手はしっかりとした思考回路が働いてないはずだ。
ヒトデマン・ライト〈クソッ! 何故当たらない!?〉「[噛み砕く]から[突進]!」
奴は、自身のトレーナーの言うことも聞かず、闇雲に俺に突っ込む。
俺は冷静にライトの指示を理解し、奴の突進に備え、身構える。
ラグナ〈[噛み砕く]!!〉
ヒトデマン〈くっ………!またか………。〉
この流れなら、決着がつくな。
俺はまた同じように牙で相手を捉え、斜め上に飛ばす。
ラグナ〈これで最後だ!…〉
すぐに駆け出し、奴の着地点に狙いを定める。
ラグナ〈[突進]!!〉
位置関係を確認し、後ろ脚に力を込める。
ヒトデマン〈!?〉
空中で為す術がない奴に、俺は捨て身で突っ込む。
ラグナ・ヒトデマン〈〈くっ!〉…………負けた……。〉
見事に命中し、奴は着地と共に力尽きた。
カスミ・ライト「なかなか、やるわね。…[ヒトデマン]、戻って。」「ラグナ、お疲れ様。一旦下がって。」
ラグナ〈交代だな? 理解した。〉
作戦通りいくと、テトラと交代か?
俺はライトの指示通り、向きを180度変え、後退した。
……テトラ、任せたぞ。
………
sideテトラ
カスミ・ライト「[スターミー]、Take on!」「テトラ、いつも通りいくよ!!」
スターミー・テトラ〈………。〉〈うん!〉
私は自信満々に飛び出した。
それと同時に、薄い光がキラッと輝いた。
………色違いだと、こんな風になるみたい……。
………前よりは色違いって事を[個性]って思えるようになってきたけど、もう少し時間がかかるかな?
………カントーでは[ニンフィア]はあまり見かけないみたいで、見せ物を観るような目で視られる事は殆ど無くなったから、もう自分次第……。
そもそも、私が色違いって事を殆どの人間は気づいてないかもしれないよ。
ティルに対する反応と変わらないし。
カスミ「ライトちゃん、そのポケモンつて[ニンフィア]よね?」
ライト「知ってましたか。」
カスミ「可愛いし、一度会ってみたかったのよ!」
かっ……可愛いって………。
ライト達とシルク以外から言われたの……初めてだよ……。
……ちょっと、嬉しいよ……。
私の頬がポッと、赤くなった。
テトラ〈らっ、ライト。早く始めようよ!〉
照れ隠しに、私は彼女を急かして自分を誤魔化した。
………だって、褒められるの、慣れてないんだもん………。
ライト《うっ、うん。「》とにかく、その事はあとで。 再開しましょう! テトラ、[妖精の風]!!」
テトラ・カスミ〈実践では初めてだけど、やってみるよ!![妖精の風]!〉「あっ、……[水の波動]!」
スターミー〈………[水の波動]。〉
私は相手より一歩先に、技を発動させた。
身体全体を神秘的なイメージで満たして、そのまま天に祈る………。
相手も一歩遅れて、音波を乗せた水塊を放った。
やがて、妖艶な風が私の背後から吹き始める。
………これが実質初めての、フェアリータイプの攻撃技。
風によって、若干水の勢いが弱まった。
ライト「かわして[スピードスター]!」
カスミ・テトラ「もう一発!」〈最初からそのつもりだよ!![スピードスター]!!〉
この技、必中だもんね!
それに、私の特性で普通よりも威力が上がってるし、使い勝手がいいんだよね!
私は水塊の軌道を見切って左にかわし、触手に妖艶なエネルギーを蓄積させる。
それを振って、いくつもの星を放出する。
それに対して、また水塊が放たれた。
……むこうはきっと、様子見だね?
なら……、私も……。
テトラ〈ライト! この次はあの技だね?〉
ライト《うん! タイミングはわたしが指示するよ!》
ライト、たのんだよ!
私は技を解除して、左回りに走りだした。
カスミ「[水鉄砲]!」
スターミー〈………[水鉄砲]!〉
今思ったけど、私の相手、無口だね……。
渦を巻くように、私は徐々に接近する。
ライト「[電光石火]で接近して!《」その直後にお願い!!》
テトラ〈待ってました!! [電光石火]!〉
やった!
やつと使える!!
私は急に進路を変え、急接近した。
カスミ「!? [高速スピン]!」
彼女も、咄嗟に指示をだす。
スターミー〈…![高速スピン]!〉
テトラ・スターミー〈〈っ!!〉〉
結果、相討ち。
私も相手も、ダメージをうけた。
…でも、思いがけず森で鍛えられた私には、そんな攻撃は効かないよ!!
ライト・テトラ「追撃して!!」〈[電光石火]!〉
私とライトの考えが一致し、私は彼女の指示を聞く前に行動した。
空中で身を翻し、逆に飛ばされた相手を狙う……。
そして、地に後ろ脚がつくと同時に、力を込めた。
すぐに距離は詰まり、私は攻撃をせずに、技を解除した。
ライト・テトラ「〈[欠伸]!!〉」
相手を眠らせる為に……。
私は相手の正面に移動し、睡眠作用を秘めた吐息をはいた。
スターミー・カスミ〈……?〉「[欠伸]!?」
よし。作戦成功!!
ここからは完全に私の流れだ!!
ライト「テトラ、時間を稼いで!!」
テトラ〈うん! 眠るまで少し時間がかかるもんね!!〉
[欠伸]は即効性が無いのが玉に瑕かな?
………………。
カスミ「眠りに!?」
よし、今がチャンス!!
ライト「一気に攻めるよ!![スピードスター]!!」
テトラ〈もちろん!![スピードスター]!!〉
私は相手の状態を確認するとすぐに、フェアリータイプの星を放った。
カスミ「[スターミー]!?」
よし!
命中!!
眠らされて身動きが取れない相手に、次々に命中した。
そして、為す術なく、相手は倒れた。
………よし、勝った!!