20 LS ヒカリ
昼前 お月見山出口付近 sideライト
テトラ〈ティル!?〉
ライト「この光は、もしかして……。」
ティルが力を振り絞って立ち上がったその瞬間、彼激しい光に包まれた。
これは………、絶対に進化の兆候だよ!
彼の変化を目の当たりにして、わたしは確信した。
ガンマ「何っ!? 進化か!?」
もちろん、相手も驚きを隠せない……。
……やがて、それは大きくかたちを変えていく………。
………そして、あるところで変化は止まり、包み込んでいた光も雲散する……。
そこには、ボロボロだけど少し逞しくなった彼………、種族、わからないけど、二足で立ったポケモンがそこにいた。
ティル〈……よし……。この姿なら……、いける!!テトラ……!ライト……!〉
ライト「……えっ!?あっ……うん!…」
進化して少し低くなった彼の声で、わたしは我に返った。
ティルの体力はあまり残ってないはずだから…………、
ライト「ティルは距離をとりながら[火の粉]、テトラは[スピードスター]から[電光石火]。ティルをサポートして!!」
[猛火]が発動している!
ティル〈うん……[火の粉]!〉
テトラ〈[スピードスター]!! ティル、あとは私が何とかするから!〉
ティル〈………頼んだよ。〉
ティルは斜めに移動しながら火片を放出し、テトラは威勢良く流星を放つ。
ティルは歯を食いしばりながら、何とか後退する……。
ラッタ・マンキー〈〈!?〉〉
当然、油断していた相手に命中する。
ガンマ・テトラ「!? しまった!!」〈ティルには、触れさせないよ!![電光石火]!!〉
ストーカーが気づいた時には、既に両者に火と星が命中していた。
………あの様子だと、相手はあまり保ちそうにないね。
若干ふらついてるし……。
テトラは、ティルが後ろに下がったのを確認すると、風の如く駆け抜けた。
標的を見据え、脚に力を込める……。
マンキー〈……!?俺!?っ!〉
テトラ〈どう? 格闘タイプが[電光石火]をまともに受ける感想は?〉
マンキー〈………ノーマル…………タイプ……なのに……。〉
テトラ〈さあ? 何でだろうね?〉
勝ち誇ったように言い放つテトラに対して、疑問に捕らわれながらマンキーは崩れ落ちた。
ガンマ「!?クソっ!」
ライト《追撃して!! ティルは[尻尾をふる]で守りを下げて!!》
ティル〈うん………。そうさせてもらうよ………。〉
ティルには申し訳ないけど、もう少し頑張って、サポートにまわってもらわないと………。
……体力が限界とはいえ、[ニトロチャージ]の追加効果で素早さが上がってるから行動が速いね。
テトラ〈任せて!! [電光石火]!!〉
テトラは速度を緩めず、慌てふためいているラッタめがけて走りだした。
ラッタ・ガンマ〈っ…………! ………嘘………だろ………?〉「[電光せ………]………。」
ガンマは反応が遅れ、指示をし損ねた。
それが仇となって、ラッタも倒れた。
………あとは、多分[グラエナ]だけ。
ガンマ「………手駒はあとあいつだけか………。[グラエナ]!!」
グラエナ〈……………。〉
やっぱり………。
グラエナは神妙な様子でボールから飛びだした。
……何か考えこんでいるみたいだけど…。
ガンマ「奴の駒は無視して直接[ラティアス]を捕まえろ!!」
グラエナ・ライト・シルク〈……!? ………やっぱり………、俺の想いは無駄だったのか……。〉「また!?」〈……相変わらず、卑劣な男ね!![絆]の名において、許せないわ!!〉
ガンマは、トレーナーとして有り得ない指示をだした。
シルクは、彼の態度に頭にきたのか、怒りを顕わにしてまえに躍り出た。
グラエナ・シルク〈…………変わる事を期待した俺が馬鹿だった………。〉〈{[絆]により…………}……〉
……でも、グラエナは何故か動かない……。
?
ガンマ・シルク「ちっ。 お前も堕ちたな……。俺に刃向かわず、とっとと働け!!」〈{我らを…………}……!?〉
グラエナ〈!!?〉
!?
何て酷い事を………。
まるで、ポケモンを[道具]としてしか見てないような言い方………。
ショウタ・コロナ〈ポケモンの僕が言うのもあれだけど……、この人、本当にトレーナーなの…?〉〈………嘘でしょ?……トレーナーからこんな言葉が出るなんて………。〉
[チカラ]を発動させるために集中していたシルクでさえ、とんでもないフレーズに絶句した。
…………ただ一匹を除いて……。
グラエナ〈!!? ………大切なパートナーだから素直に従ってきたが、もう我慢できん!!俺の言葉は伝わらないか、一匹の[グラエナ]………、[ラグナ]として言わせてもらう!!
[カトル]!! お前はトレーナー失格だ!! 流石に俺でも愛想が尽きた!!これからはお前を敵とみなす!!〉
溜まっていたものが爆発したのか、呆れと怒りに満ち溢れたグラエナ………、[ラグナ]が涙ながらに怒鳴った。
ガンマ「大人しく……」
ラグナ〈……[悪の波動]………!………あの時までは……、こんな奴じゃなかったのに………。〉
ガンマ「………!!?」
えっ!?
辺りは、あまりの光景に騒然とした。
ラグナは決心したかのようにガンマの方に向きを換え、暗黒の波動を彼に向けて放出した。
………[諦め]と、[失望]、[拒絶]の意を乗せて…………。
……初めて襲われた時からいたポケモンだったけど、パートナーだったんだ……。
だったら、相当辛いはず………。
ガンマ「……!?お前……」
ラグナ〈
黙れ!!もう[ラティアス]………ライトには近づくな!!………そして、もう二度と俺の前に姿を見せるな!! [突進]!!〉
ラグナの瞳から、大量の[ヒカリ]が流れ落ちた。
ラグナはパートナーに思いっきり突撃した。
ガンマ「……っ!!」
ラグナ〈[噛み砕く]!!〉
倒れた彼の腰の辺り……、ちょうど[モンスターボール]がセットされている一点を噛み砕いた。
さっきの一撃で、ガンマは気を失った。
ライト「…………一体………」
ラグナ〈……これで良かったんだ…………。………だから、なにも言うな………。………良かったんだ………。
良かったんだ……………。〉
ラグナは、まるで自分に言い聞かせるように、そして悲しそうに呟いた………。
テトラ〈………でも、それって………。〉
ラグナ〈………俺の、ボールだ……。〉
…………ラグナは、自分自身のボールを、自らの手? いや、牙で破壊した。
ティル〈……どうして………〉
ラグナ〈聞きたい事は分かってる……。………しばらく、心の整理をさせてくれ………。……訳は、それから話す………。〉
……………うん。
…そうするよ……。
何か
理由ありみたいだから………。
去年のラグナを知ってるから………。
………そういえば、ティルと旅立った日も、前とは様子が違ってた………。
あと、[カトル]って、ガンマの本名なのかな………?
…………すぐにでも聞きたいけど、待たないと……………。