19 LS ワザとチカラ
午前 お月見山 sideテトラ
ライト〈………だから、わたしには特殊な能力はないから、みんなと殆どかわらないんだよ。〉
シルク〈そういうことよ!〉
ライトとシルクは、真剣に、でも明るく言った。
………でも、びっくりしたよ……。
私はてっきり、ライトは特殊な人間かと思ってたけど、本当にポケモンだったんだ。
おまけに伝説…。
ショウタ君がなった種族もそうだけど、伝説の種族って堅苦しいイメージがあったし……。
………やっぱり、イメージだけで決めつけたらいけないね!
ティル〈……そういえば、ライトってどんな技が使えるの?〉
ライト〈あっ、言ってなかったね。〉
テトラ〈私もきになるよ。〉
ティル、私も気になってた!
ライトが戦っているところ、見たこと無いし、……唯一知ってるのが[癒やしの鈴]だけ。
[ラティアス]っていう種族はどんな技を使えるんだろう?
私達は興味の眼差しをもってライトに訊ねた。
………相変わらず、コロナちゃんとショウタ君は唖然としてるけど……。
ライト〈[サイコキネンシス]、[竜の波動]、[癒やしの鈴]、そして専用技の[ミストボール]の4つ。………ちなみに、わたしはドラゴン、エスパータイプなんだよ。〉
テトラ〈……どれも上級技ばかりだ……。〉
ティル〈でも、その[ミストボール]ってどんな技なの?〉
専用技かー。
……なら、ショウタ君は覚えられないんだね?
ライト〈[エナジーボール]のエスパータイプ版っていったら分かりやすいかな?〉
シルク〈専用技に相応しく、威力も高いのよ!〉
ティル・テトラ〈〈へぇー。〉〉
一回、見てみたいなー。
コロナ〈………専用技なら、ショウタには無理って事だね。…〉
あっ、コロナちゃん、やっと我に返ったみたい。
コロナ〈ちなみに、わたしは[鬼火]、[火の粉]、[電光石火]……、それと、5回に1回ぐらいしか出来ないんだけど、お父さんから受け継いだ[フレアドライブ]……かな?〉
ティル〈えっ!?コロナちゃんってそんな凄い技を使えるの!?〉
[フレアドライブ]!?
それって、炎タイプの中でも最上級の技でしょ!?
シルク〈………つまり、コロナちゃんは遺伝で受け継いだのね?〉
コロナ〈うん!………やっと最近かたちになってきたぐらいだけど……。〉
シルク〈…完璧に出来るようになるといいわね!…………
遺伝………か……。〉
技って、受け継がれる事があるんだ……。
知らなかったよ。
………なぜかシルクは一瞬だけ暗い表情になったけど……。
………気のせいだよね?
ティル〈それに、シルクが使える技も教えてくれる?…ちゃんと聞いたことなかったし!〉
シルク〈……えっ?私の?…………………わかったわ。〉
ティル、やっぱり気が早いね。
あの時、シルクが戦ってくれてたけど、早すぎて見えなかったんだよね……。
………それ以前に、私は倒れる寸前だったし……。
シルクは、何かを考えてから頷いた。
シルク〈みんなとは[絆]を紡いだ仲、だから、ライトがそうであるのと同じように、私の秘密も話そうかしら?〉
一同〈〈〈〈〈秘密!?〉〉〉〉〉
シルクの、秘密!?
シルクも特殊だって言ってたけど、その事なのかな……?
私達はみんな、声を揃えた。
シルク〈そうよ。……まず、技から言うと、[瞑想]、[サイコキネンシス]、[シャドーボール]、[目覚めるパワー]………。……でも、これだけでは終わらないわ。…〉
えっ!?
シルク〈他にも、[10万ボルト]、[ベノムショック]………。……つまり、普通では覚えられない技を含めて6つ、使えるのよ。〉
6つ!?
ポケモンって、4つしか使えないんじゃないの!?
ショウタ〈6つも!? 4つしか使えないのに!?〉
ティル〈……でも……どうして?〉
シルク〈………それは、……私はある伝説に関わってるからなのよ。〉
!?
シルクが……伝説に!?
コロナ〈伝説!?〉
シルク〈ええ。最近証明されたばかりだけど、[英雄伝説]を知ってるかしら?〉
[英雄伝説]?
………聞いたことないよ……。
ショウタ〈うん。……一年半ぐらい前に[ユウキ]っていう考古学者が発表したやつだよね?〉
シルク〈ええ、そうよ。……実は、彼は私のトレーナー……、パートナーなのよ。〉
ショウタ〈えっ!?そうだったの!?〉
コロナ〈……つて事は、ユウキさんって、3つ星のトレーナーだったんだ……。〉
シルク〈それだけじゃないわ。…〉
!?
シルクは淡々と話を続ける。
シルク〈公表してないけど、ユウキも伝説の当事者なの。………彼は初代から数えて18代目の[絆の賢者]という位置づけ……。……その関係で、私には18代目の[絆の従者]という肩書きがあるのよ。…〉
…………………凄い……。
シルク〈………話を戻すと、私が着けているこのスカーフの[チカラ]で、技を6つ使えるのよ。〉
そういいながら、シルクは首もとに着けている水色のスカーフを指した。
シルク〈………ただ、強大な[チカラ]の影響で、私には守備力が殆ど無くて自分の技以外では回復出来ないのよ。他にも、毒とかの状態に弱くなったり、自然回復力もかなり下がってるわ。〉
…………って事は、良いことばかりじゃないんだ……。
ティル〈………何か大変なんだね……。……ねえシルク?もしそのスカーフを別のポケモンが着けたら同じ[チカラ]が使えるの?〉
ティルは不思議そうに聞いた。
シルク〈……授けられた時に聞いたんだけど、これを[絆の従者]以外の者が着けたら、その者の[記憶]、[理性]が無くなるそうだわ。………言い伝えでしかないけど……。〉
テトラ〈……なら、とてもじゃないけど、試せないね。〉
…………つまり、シルクにしか効果がないって事だね。
ショウタ〈…………こんなに凄いひとに、教えてもらってたんだ………。〉
………何か、雲の上の存在みたいな………。
………でも、そんなこと、何故か感じない……。
………伝説といい、シルクといい………不思議だよ……。
………この後、シルクに技を見せてもらったんだけど……、本当だったよ。
…………伝説、………事実なんだ………。
………
昼前 お月見山出口付近 sideライト
ティル〈…あっ、あれって出口じゃない?〉
うん、間違いないね。
言葉の華を咲かせているわたし達の視線の先に、一筋の光が差し込んだ。
………とは言っても、ポケモンであるわたしは人間よりも視力はいいから、暗闇でも鮮明に見えたんだけどね。
ショウタ〈ずっと暗いところにいたから眩しいよ。〉
シルク〈急な激しい光だから、仕方ないわ。……さっ、いきましょ!〉
テトラ〈うん!〉
……原理は知らないけど、そうだね。
ポケモンでも、よくなる事だし。
………ちなみに、今のわたしは人間の姿。
わたし、トレーナーって事になってるもんね!
ティル、テトラ、シルクは嬉しそうに駆けていった。
シルク、わたしでも忘れそうになるけど、まだ子供なんだよね。
…………わたしとたったひとつしか、変わらないんだよね……。以外だと思うけど……。
きっと、経験の差だね。
コロナ〈あっ、待って!〉
コロナちゃんも、笑顔を浮かべながら追いかけた。
ショウタ〈……ライトさん、シルクさんって不思議なポケモンだよね。〉
ライト「大人っぽいけど子供らしさもある………。遠い存在のように思えるけど、凄く接しやすい………。………それがシルクなんだよ。」
……わたし、ユウキくん達ほど長いつきあいじゃないんだけどね。
ライト「………とにかく、わたし達も行こっか。」
ショウタ〈……うん、そうだね!〉
理由ありトレーナーのわたし達も、和やかな風と共に光へのアーチをくぐった。
ライト「えっ!!また!?」
洞窟を抜けると、ティルが戦意をむき出しにして、1人のトレーナーを睨んでいた。
テトラ〈ティル?この人間は誰なの?〉
ティル〈この人は前にライトを捕まえようとしたんだよ!!〉
ライト「ガンマ、いい加減しつこいよ!」
………そう。
わたしを捕獲する事に固執している
グリースの幹部…………。
わたしは珍しい種族だから、捕まえたいのはわかるけど……。
ガンマ「……何度も言わせるな……[ラティアス]……。今日こそは捕まってもらうぞ![ラッタ]、[マンキー]、あいつを捕まえろ!!」
ラッタ〈先輩に………〉
マンキー〈続いてやるぜ!〉
ダブルバトルをする気!?
……でも、このメンバー、初めて見た……。
コロナ〈えっ!?……でも…、捕まえるって……〉
シルク〈去年いろいろとあってね、それ以来つきまとわれているの……。私達も、以前ある伝説をめぐって敵対関係にあったの……。相手のトレーナー、ガンマは密猟組織の幹部………。だから、ここは……〉
ティル〈シルク!ここは俺達がいく!!〉
テトラ〈私達はライトのメンバー…。だからこんな卑劣なストーカー野郎から守らないと!だから、いかせて!〉
みんなは次々に言葉を遮り、自分の想いを訴えた。
ティルー……、テトラ………。
ライト「……うん、ありがとう!…………なら……いくよ!!」
ティル・テトラ〈〈うん!!〉〉
いくよ!!
シルク〈ショウタ君、他のトレーナーのバトルを見るのも肝心よ!〉
ショウタ(うん。〉
ガンマ・ライト「ラッタは[電光石火]、マンキーは[気合い溜め]!」《テトラ、[スピードスター]。ティルはその後ろから[ニトロチャージ]!》
ラッタ・テトラ〈よし![電光石火]!〉〈うん![スピードスター]!〉
マンキー・ティル〈任せな![気合い溜め]!〉〈さっき使えるようになった技……。うまくいくかわからないけど、[ニトロチャージ]!!〉
わたしも相手も、ほぼ同時に指示をだす。
ラッタは正面からつっこみ、マンキーは攻撃に備えて力を溜める。
対して、ティルは自身の炎を纏って走り始め、テトラはそれを隠すようにフェアリータイプの星を放つ。
テトラ、技の出し方変えたね?
触手の方にエネルギーを溜めて、それを振る。
ガンマ「かわして突っ込め!」
ティル・ライト〈そうはさせないよ!〉「テトラ、ラッタに[つぶらな瞳]!」
ラッタ・テトラ〈多い!?っ!〉〈攻撃力、下げさせてもらうよ!!〉
完全にはかわせず、ラッタにいくつか命中する。
一瞬揺らいだ隙を突いて、炎を纏ったティルが立ちはだかる。
テトラは、星によって身動きがとれないマンキーを真っ直ぐ見つめた。
ガンマ「[必殺前歯]、[けだぐり]!」
ラッタ・マンキー〈[必殺前歯]!!〉〈[けだぐり]!!〉
ティル〈えっ!?集中攻撃!?……………っ……。〉
ライト・テトラ「〈ティル!!」[電光石火]!〉
星が止み、道が開けたところで相手の一斉に攻撃をはじめた……。
グリース……、戦ってみて常識的な人もいたけど、ガンマは………、卑劣だよ……。
目的のためなら、手段を選ばないって感じ………。
わたしもティルも、思わぬ反撃に対応出来なかった……。
そこに、テトラが割って入った。
ラッタ〈くっ………。〉
テトラ〈ティル!!大丈夫!?〉
ティル〈…………結構………厳しいかもしれないよ………。………でも、俺達は…負ける訳には……
いかないんだ!!〉
大ダメージを被ったティルは、ふらつきながらも何とか立ち上がり、[遠吠え]に近い声で言い放った。
ライト「ティル、さg……」
テトラ〈ティル!?〉
えっ!?
言い放つと突然、ティルは激しい光に包まれた。
この光は、もしかして……………。