18 LS 浮遊
午前 お月見山 sideショウタ
ショウタ〈尻尾があるって、何か不思議な感覚だよ。〉
ティル〈え? 俺達にとっては普通の事だけど?〉
僕は入れ替わった[カラダ]を馴染ませなからてくてくと歩く。
洞窟の中だから薄暗いはずなんだけど……、[ミュウ]のリヴって視力いいのかな?
暗さを全然感じないよ。
………ただ、見やすいのはいいんだけど、なんか凄く歩きづらいんだよね…。
いつも通り歩こうとするとバランスを崩して倒れそうになるし、両手をついて歩こうとしても腰が痛くなる……。
リヴさんって、どうやって移動していたんだろう……。
コロナ〈元々人間だから、違和感を感じても仕方ないよ。………でもショウタ?歩きづらそうだけど大丈夫?〉
テトラ〈歩くペース、落とそうか?〉
僕が歩くのに悪戦苦闘していると、みんなが心配そうに僕の様子を伺う。
みんな、ありがとう。
……でも、この体に慣れないとね。
ショウタ〈ううん、大丈夫。〉
シルク〈ショウタ君、無理しなくてもいいのよ。…〉
……それもそうなんだけどね……。
シルク〈リヴさんは言うのを忘れてたみたいだから代わりに言わせてもらうけど、ショウタ君、[ミュウ]の移動方法は違うのよ。〉
ショウタ〈えっ!?どういう事!?〉
違うって!?なんで!?
普段のと、コロナみたいな4足歩行しか知らないよ!?
僕はハッと、シルクさんのほうを見た。
……今気づいたけど、僕とライトさん以外はみんな4足歩行だね。
ライト「あんまりイメージ湧かないかもしれないけど、[ミュウ]は浮遊できるんだよ。」
ショウタ〈[浮遊]?〉
コロナ〈何なの?〉
コロナも同じ事を思ったのか、僕と同じように首を傾げた。
ティル〈そっか。だからぎこちなかったんだね?〉
ライト「知り合いからそう聞いてたんだよ。種族によるんだけど、エスパータイプとかゴーストタイプが利用しているんだよ。」
ティル君とテトラちゃん、知ってたのかな?
ライトさんとシルクさんの言葉に頷いていた。
ショウタ〈って事は、僕ってエスパータイプなの?〉
シルク〈そう。私と同じ、純粋なエスパータイプなのよ。………種族上、私にはできないんだけど。〉
ライト「……でも、簡単だから。……身体の力を抜いて、リラックスしてみて?」
リラックス?
布団で寝る時みたいに?
ショウタ〈力を、抜けばいいの?〉
ライト「うん!簡単でしょ?」
それだけ?
ティル〈ショウタ君、試してみたら?〉
テトラ〈私も、触手を動かすのに何回か試してみたら使えるようになったんだよ!〉
ショウタ〈………うん!〉
そっか。
何事も挑戦だよね?
……よし、やってみよう!
僕は大きく頷き、目を閉じた。
………。
………………。
………………………………。
コロナ〈………あっ、ショウタ、目を開けてみたら?〉
……?
僕は身体がふわりと浮かび上がるのを感じた。
………重力から解放されるって、こんな感じなんだ…。
僕は、ゆっくりと目を開けた。
ショウタ〈………ほんとだ………、僕………、浮いてる……。〉
開けると、僕の身体はどこにも触れてなかった。
………凄い……。
ポケモンって、こんな事もできるんだ………。
僕は人生で初めての体験に感動…………、もう大感激だよ!!
ショウタ〈ライトさん、浮けたけど、どうやって行動するの?〉
ライト「ちょっと説明が難しいんだけど、ショウタくんの場合、身体でもっていく感じかな?」
身体で?
………やるしかないよね?
僕は言われた通りに実践………。
ショウタ〈………こう?〉
シルク〈ええ。できてるわよ!〉
ショウタ〈本当に!?〉
ライト「うん!」
………歩くより、楽かも……。
………本当に、僕ってポケモンになったんだ……。
………でも、何か重要な事を忘れてるような………。
出来たのは嬉しいんだけど、何かモヤモヤする……。
何故だろう……。
コロナ〈ショウタ、やったね!〉
あっ!
よく考えたら………、
ショウタ〈うん!やったよ!………でもライトさん?どうして方法を知ってるの?普通の人なのに僕達の言葉にも答えているし……。〉
ライトさん、ポケモンの言葉を理解してる………。
それに、浮遊の仕方まで知ってるなんて、どう考えてもおかしいよ!!
コロナ〈……言われてみれば……。〉
テトラ〈あれ?気づかなかったの?〉
シルク〈やっと、って感じね……。〉
伝説に関わってないと言葉は分からないって言ってたのに、これだと言ってる事と違いすぎるよ!
ティル〈ライト?いっそのこと秘密を明かしちゃったら?〉
秘密!?
やっぱり、伝説に関わっていたんだね!?
僕はティル君の言葉がきっかけで、予想が確信にかわった。
絶対にそうだよ!!
ライト「…そうだね。ここなら殆ど人通りもないし、最適だね。……ショウタくん、コロナちゃん、わたしがみんなの言葉が分かる理由、教えよっか?」
ほら、やっぱり!
コロナ〈うん。 薄々感じていたけど、伝説に関わっているんでしょ?〉
やっぱり、コロナもそう思っていたんだね!
シルク〈………50点、ってところね。〉
ショウタ・コロナ〈〈えっ!?違うの!?〉〉
だったら、なに!?
僕とコロナは、揃って素っ頓狂な声をあげた。
テトラ〈伝説、っていうのは合ってるけど、別の意味なんだよ。〉
ショウタ・コロナ〈〈別って?〉〉
ティル〈これはライトの本当の姿じゃないんだよ。〉
シルク〈そう。……単刀直入に言うと、ライトもポケモンなのよ。〉
ライト「それも、伝説のね!」
!!?
ティル〈ライトの種族は3匹しかいないんだって!〉
コロナ〈でも、どう見ても人間だよ!??〉
ライトも、トレーナーでしょ!?
なのに、ポケモンってどういう事!?
ライト「……見てもらったほうが早いかな?」
シルク〈そうね。{百聞は一見にしかず}とも言うから、その方がいいわね。〉
………??
ライト「だから、見てて!」
それだけ言うと、ライトさんは目を瞑り………、
ショウタ・コロナ〈〈!!?〉〉
僕達は言葉にならない声をあげた。
次第に、彼女は眩い光に包まれていく……。
僕達はその眩しさに思わず目を閉じる。
テトラ〈終わったよ!〉
……?
さっきのは何?
僕はゆっくりと目をあけた。
ショウタ・コロナ〈〈えっ!?〉〉
そこには、ライトさんの姿はなかった。
代わりに、赤と白の見たことがないポケモンが僕と同じように浮遊していた。
僕、身体が小さいから、大きく見えるよ…。
ライト〈知らないと思うけど、わたしは[ラティアス]っていうポケモンなんだよ。〉
ティル〈テトラはまだ見たことがないと思うけど、凄く強いんだよ!〉
ラテン〈いやいや、シルクには勝てないよ。〉
ライトさんは謙遜したけど、僕とコロナはあまりの事に、ただ立ち尽くすしかなかった。