17 LS ココロとカラダ
夕方 ポケモンセンター病室 sideショウタ
シルク〈……が言っていたのはあなただったのね?〉
リヴ「シードの事を知っているなんて……君は一体何者……?」
…………?
………声?
それに、ここは病室?
僕は近くで話している声で目を覚ました。
……でも、僕達って外にいたはずだよね?
……何かに躓いて転んだのは覚えているけど……。
ショウタ〈………うっ!〉
頭、打ったのかな………?
結構、痛いかも……。
僕は思わずこめかみを手で押さえた。
ライト「………? 起きた?」
ショウタ〈………うん。でも、君は?〉
ライト「わたしはライト。きみと同じで、新人のトレーナーなんだよ。……それよりショウタくん、目覚めたばかりであれなんだけど……」
僕の様子に気づいたのか、ライトという人が神妙な様子で僕に話しかけてきた。
……僕のほぅが、年下かな?
でも、どうして僕の名前を知ってるんだろう……。
ライト「……ショウタくん、きみの身に起きた現実を受けいれる[覚悟]はある?」
[覚悟]……?
それに、僕に起こった事って?
僕は彼女の言葉が理解できず、首を傾げた。
ショウタ〈[覚悟]?何のこと?〉
シルク〈……こういう事よ。………あなたの頭には私の声は響いてないわよね?〉
ショウタ〈えっ!?〉
言われてみれば、そうかもしれない……。
なら、何で?
シルク〈私、今[テレパシー]を使ってないわ。…………という事は、どういうことか分かるかしら?〉
ショウタ〈……もしかして、ポケモンの言葉が分かるようになったって事?〉
ライト「合ってるようで、違うんだよね……。」
えっ!?違うの!?
ショウタ〈何で?? 君の言葉、ちゃんと聞こえているのに?〉
シルク〈ええ。私達、ポケモンの言葉が分かるのは、ポケモン自身と伝説に関わっている人間だけなのよ。〉
ショウタ〈伝説に? なら、どうして僕はわかるの?〉
関わってないとわからないなら、何で?
僕、一般人だし……。
ライト「なら、身体を起こして自分の後ろを見てみたら?」
ショウタ〈後ろ?〉
後ろ?
そういえば、僕ってまだ横になったままだったっけ?
……仰向けじゃなくて……。……何故?
僕はとりあえず、身体を起こした。
そして、僕は後ろを見る。
何か体に違和感を感じながら………。
ショウタ〈…………えっ!?………これって、明らかに尻尾だよね!?それに、指が3本しかない!!?〉
!?
訳が分からないよ!?
そこには、僕にあるはずのないもモノがあった。
僕のお尻のあたりから、薄い桃色で長い尻尾………。
それに意識を向けると、同じように動く……。
………今気づいたけど、僕の身体、絶対に小さくなってるよね?
ベッドから見える時計とか、側にある棚とか………いつもより大きく見えるし……。
あと、指の数が5本から3本に減ってる………。
ショウタ〈………これだと……、まるで……〉
リヴ「そう。ポケモンって訳さ。」
僕の言葉を遮って、
ぼくが代わりに言った。
…………!?
ショウタ〈えっ!?何で僕が!?いるの!?〉
どうして!?
何で、僕が目の前に!?
僕、人間でしょ!?
それに、僕はココにいるはずなのに!?
リヴ「……驚くのも無理ないよね。僕も驚いたから………。……つまり、君は[ミュウ]である僕と[ココロ]と[カラダ]が入れ替わったって訳さ。」
ショウタ〈[ココロ]と……[カラダ]………が……?〉
リヴ「そう。……この[エーフィ]のシルクが言うには、中途半端にね。」
………?
ショウタ〈中途半端に?〉
リヴ「そうさ。今の僕は普通の人間である君の[カラダ]だけど、君の言葉が分かる。」
ショウタ〈言われてみれば……。〉
リヴ「だから、君も人としての性質がそのまま残ってる可能性があるっていう話しさ。」
人としての…………性質が………?
僕は頷きながら彼……なのかな?……声的に………。
とにかく、聞いた。
ショウタ〈性質……?〉
リヴ「そうさ。 ちなみに、僕が使えた技は[サイコキネンシス]、[指をふる]、[自己再生]、[テレポート]の4つ。僕の[カラダ]だから使えるはずだよ。………ちなみに、種族上専用技以外の全部を使えるから、いろいろ試してみたらどうかな?変えてもいいから。」
全種類………?
ショウタ〈何でも、使えるの………?〉
リヴ「そうさ。」
シルク〈………言い忘れたけど、ショウタ君、あなたがなった種族はあなたしかいないのよ。〉
えっ!?どういう事!?
僕だけ!?
ライト「……つまりショウタくん、きみは伝説の種族ってこと。」
伝説!?
リヴ「……僕には[ホウオウ]とか[ディアルガ]みたいに凄い伝承はないんだけどね。……せいぜい、決して人前には姿を現さないってぐらいかな。」
シルク〈[幻]の種族って言われているのも、肯けるわね。………だから、彼の言うとおり、伝承が殆ど残ってないのも事実なのよ。〉
そんなに、珍しいポケモンなんだ………。
テトラ〈カントー出身の私でさえ知らなかったぐらいだから………。……それに、リヴさんって言ったね…………。
疑って………ごめん…………。〉
リヴ「いやいや、分かってくれたらそれでいいから。」
何があったのか知らないけど、色違い、なのかな?
クリーム色の[ニンフィア]が申し訳なさそうに頭を下げた。
テトラ〈………本当に………?〉
リヴ「もちろんさ! それより、君には僕より話したいポケモンがいるんじゃないかな?」
ショウタ〈話したい…………ポケモン………? …………コロナ!〉
コロナ〈……ショウタ…………。やっと………、やっと話せた………。…………前とは違うけど………、本当に無事でよかったよ!!〉
コロナ………………。
…………まさか、こんなかたちで話せるなんておもわなかったよ………。
………夢が………叶った……。
自分も、ポケモンになった訳だし………。
………この後、僕達は日が暮れるまで、積もりに積もった話に明け暮れた。
…………今気づいたけど、何でライトさんは僕とかの言葉が分かるんだろう………。
………
翌日 sideライト
…………まさか、[ココロ]と[カラダ]が入れ替わるなんておもわなかったよ……。
リヴさんにショウタくん、これからどうなるんだろう…?
………でも、心配ないかもしれないよ!
リヴさん、{人間の姿になって、こそこそしなくてもよくなったから本当によかったよ!}って言ってたし、ショウタくんはショウタくんで、{ポケモンになって話せるようになったし、技とか使ってみたかったからこれで良かったのかもしれないよ。}って言ってたから。
………コロナちゃんは複雑な表情だったけど………。
………で、昨日は寝るまで話し続けて、夜が明けたって感じかな?
ライト「………一応、ショウタくんはわたしが保護する事になったけど、コロナちゃんはどうする?」
わたしは、ショウタくんのパートナーであるコロナちゃんに聞いてみた。
リヴさん、わたしもだけど、野生の扱いだから……。
リヴさんはリヴさんで、文字の読み書きができないって言ってたし、トレーナーの決まりとか知らないみたい……。
見た目はショウタくんなんだけどね。
コロナ〈ライトさん、そんなの、聞かなくても分かるでしょ?ショウタはポケモンになっちゃったけど、中身はショウタにかわりないでしょ?だから、私も君についていく!〉
ティル〈なら、決まりだね!〉
テトラ〈これから楽しくなるね!〉
………当然だよね!
だって、物心ついた時から一緒だったらしいし、今更離れられないよね!
……何かシルクとユウキくんと似てるなー。
それに、元々持ってたショウタくんの荷物とトレーナーカード、コロナちゃんのボールもわたしが預かる事になったから。
シルク〈そうね。……ショウタ君、一応、ライトのメンバーって事になるのだけど、ボールに入る?それとも、入らない?……規定だから……。〉
ショウタ〈………そっか……。なら、入らないといけないよね?僕、ポケモンだから。〉
わたしもそうなんだけどね……。
ショウタくんは身体を浮かせずに、地に脚をつけたまま言った。
ライト「覚悟はできているんだね?」
ショウタ〈うん。〉
コロナ〈何か複雑な気分……。〉
ショウタくんは見上げたまま、大きく頷いた。
その言葉を聞いて、わたしは鞄から空のボールを取りだした。
ライト「じゃあ、いくよ。」
わたしの手からそれは離れ、弧を描いて、ショウタくんにぶつかった。
ショウタ〈………あれ?作動しない?〉
?
それは作動せず、ぶつかっただけで特に何も起こらなかった。
リヴ「……そっか。人としての性質で、作動しないって事か。僕、一応野生だから。」
だから、作動しなかったんだ。
シルク〈なるほどね。〉
リヴ「………とりあえず、僕達の事については片づいたから、僕はそろそろいくよ。」
テトラ〈ええっと、……そういう話になっていたもんね。〉
テトラの言うとおり、リヴさんはひとりで行動するんだって。
会う約束をしているポケモンがいるって、昨日言ってたから。
ティル〈なら、ここでお別れだね?〉
リヴ「うん。………じゃあ、ショウタ君、[ミュウ]として旅、楽しんでね!」
ショウタ〈そっちも、人としての生活、良いものになるといいね?〉
リヴ「もちろんさ! あとシルクさん、たのんだよ。」
シルク〈ええ。……こういう[絆]もあるのね……。〉
うん。
そして、リヴさんは[ニビシティー]のほうへ、わたし達は次なる町、[ハナダシティー]に向けて歩き始めた。
………その前に、[お月見山]を越えないとね!