15 LS 事故
正午 ニビシティー sideテトラ
ライト「ティル、テトラ、お待たせ!」
ティル〈テトラ、やったね!〉
テトラ〈うん! ティルも!〉
私達はボールから出るとすぐに、お互いの健闘を讃え合った。
ティル、すごかったよ!
たぶんティルが守りを下げてくれてなかったら勝てなかったと思うよ!
それに、森では[妬み]や[僻み]に苦しんでいた私がまさか進化できるなんて想像できなかったよ!
……この触手、意識しないとまだ動かせないな……。
13年間二本の前脚と二本の後ろ脚だけで生きてきたから、慣れないよ。
きっと、時間さえ経てば何とかなるよね?
あと、このリボンみたいな飾り、案外かわいいかも……。
私は慣れない触手でティルと握手を交わしながら言った。
ティル〈あっ、そういえば、[電光石火]ってノーマルタイプの技だよね?〉
テトラ〈言われてみれば、[スピードスター]も効いていたような………。ライト?どうして?〉
ティル、そうだったね。
……確か、私の記憶が正しければ、ノーマル技って岩にはいまひとつだよね?
でもさっき、明らかに普通に効いてた。
ノーマルのはずなのに、どうしてだろう…………。
ライト「そういえば何でだろう……。ごめん、わたしにも分からないよ…。ユウキくん、分かる?」
ライトにも、分からないんだ……。
なら、どうして?
ライトは首を傾げながらユウキさんに聞いた。
ユウキ「………なるほどね。………[特性]の効果だね。」
一同「〈〈〈[特性]?〉〉」でもユウキ?あなたの話によると、[ニンフィア]の特性って[メロメロボディー]だったわよね?〉
[メロメロボディー]?
異性から直接攻撃をうけるとその相手を魅了して攻撃しにくくするんだよね?
でも、直接触れてたのにそんな事なかったよ?
ユウキ「それであってるよ。……でもシルク?ポケモンには少数派だけど別の特性があるのは知ってるよね?」
シルク〈ええ。[エーフィ]の場合、[マジックミラー]よね?………って事は、テトラちゃんはそのパターン?〉
少数派………?
って事は私は珍しいって事?
………元々私、色違いだがらもう慣れてるけど……。
ユウキ「そう。 君たちの話を聞いて確信したよ。テトラさん、君の特性は[フェリースキン]っていうものだよ。」
テトラ・ライト・ティル「〈〈[フェアリースキン]?〉〉」
なに?それ?
私達の声が重なった。
ユウキ「文献によると、その特性を持つポケモンのノーマル技はフェアリータイプになるみたいだよ。……それも、威力が高くなるっていう特典付きでね。」
テトラ〈……フェアリータイプ……。だから効いたんだ……。〉
そうなんだ……。
ティル〈テトラ、凄いじゃん!きっと強くなれるんじゃない? 俺も頑張らないとね!〉
テトラ〈でもティルには勝てないよ。〉
だってティルの闘い方って凄いから!
私にはあんなスピードは出せないよ。
私、素早さというより守りの方が強いし……。
………ちょっと照れるけど、私達はお互いに褒めあった。
………そういえば、私にこんな感情があったんだ………。
それに、心の底から笑えてる……。
………私、変われるかも………。
………
荒野(お月見山までにある道です。 何番か忘れました。 by @) sideライト
ライト「……ティルは[火の粉]、テトラは[スピードスター]!!」
ティル〈うん![火の粉]!〉
テトラ〈これで最後だね![スピードスター]!〉
テトラは間合いを詰めながら黄色い星を放出し、テトラはそれを補助するように火片を放つ。
二匹の連携、いい感じだね。
ダブルバトルは初めてだけど、なんとかなりそうだよ。
テトラはまだ慣れない身体に悪戦苦闘してるけど、ティルがそれをカバーしてくれている……。
いいコンビになるね、きっと。
A「くっ、負けた……。」
テトラ〈ティル、やったね!〉
ティル〈うん! テトラも、よかったよ!〉
2人の連携で、相手のポケモンはほぼ同時に崩れ落ちた。
シルク〈初めてとは思えないくらい息ピッタリだったわよ。〉
ティル・テトラ〈〈本当に?〉〉
シルク〈ええ。〉
目を輝かせている2人に、シルクは笑顔で答えた。
………あのあと、ユウキくんとは別れたんだよ。
コルドと一緒にスーナ達に研究テーマを伝えにいくんだって!
それで、ユウキくんはコルドの背中に乗って南に向かったんだよ。
そして、わたし達は[ハナダシティー]に行くために東へ……。
ライト「ふたりとも、お疲れ様。」
ティル〈ライトもね! じゃあ、行こっか!〉
ティルはわたしが賞金を受けとるのを確認すると、一目散に歩きはじめた。
テトラ〈……やっぱりティルって、せっかちなんだね。〉
テトラは笑みを浮かべながら彼を追いかける。
………つい昨日まで暗かったのが嘘みたいだね。
[心]の[影]が晴れてよかったよ。
シルク〈本当に、仲がいいわね。〉
ライト「シルクに、ユウキくんもね!」
そんな二匹の微笑ましい姿をわたし達も追う。
辺りに穏やかな風が吹き抜ける……。
……それはまるでわたし達をどこかに誘うかのように……、髪を靡かせる……。
???〈………あっ、良かった……。やっとトレーナーが来てくれた……。〉
ティル〈……ん? どうしたの?〉
……と、そこに、何故か疲弊した様子の[ロコン]が駆け寄ってきた。
何か凄く焦ってるみたいだけど……。
シルク〈? コロナちゃん?ショウタ君は?〉
コロナ〈シルクさん!! ショウタが…………ショウタが……大変なんです!!〉
テトラ〈シルク?このポケモンの事を知ってるの?〉
コロナと呼ばれたロコンは、切羽詰まった様子でシルクに迫った。
……名前しってるって事は、知り合いなのかな?
シルク〈ショウタ君が!? コロナちゃん! 今すぐ案内して!! テトラちゃん、詳しくは走りながら話すわ!ライトにティル君も!〉
ティル・テトラ・ライト「〈〈う………うん。〉〉……行こっか。」
シルクはそれだけ言うとコロナという彼女に連れられて走っていった。
わたし達は、そのふたりの様子に困惑しながら一度顔を見合わせ、頷いた。
そして、若干戸惑いながらも彼女達の後を追った。
………
数分後 sideシルク
シルク〈ショウタ君!?〉
テトラ〈えっ!? ……でも、気を失ってない!?〉
ティル〈こっちのポケモンもそうみたいだよ!〉
コロナちゃんに案内されて少し走ると、1人の少年と一匹の[ニドリーノ]が倒れていた。
…………見たところ、ぶつかったって感じね……。
ライト「……倒れてから何分ぐらい経つの!?」
コロナ〈たぶん40分ぐらい経ってると思う……。〉
コロナちゃんは心配そうに………でも焦った様子で言った。
シルク〈40分………。……このままだと両方とも危ないわ!今すぐに手当てをしないと大変な事になるわ!!〉
私は彼のそはに立ち、脈を計りながら事の緊急性を伝えた。
………呼吸は辛うじてしているけど、脈が弱くなってるわ!!
……急がないと!!
ライト「……なら、ティル、テトラ、少しの間だけボールに戻っていてくれる?」
テトラ〈うん!〉
ティル〈……って事は、[飛ぶ]んだね?〉
ライト・コロナ「うん。 少しでも早い方がいいでしょ?」〈えっ? [飛ぶ]って……。きみ、人間だよね!? ……飛行タイプがいれば別だけど………。」
そう言いながら、彼女は自分のメンバーをボールに戻した。
……それが、最善策ね。
ライト「……よし。 シルク、シルクはその子とこのポケモンを頼んでもいい?」
シルク〈ええ!最初からそのつもりよ![サイコキネンシス]! コロナちゃん、走っている間にどうしてこうなったのか話してもらってもいいかしら?〉
私は、そう言いながら超能力で二匹を持ち上げる。
その間にも、ライトは何とかショウタ君を背負い終えていた。
コロナ〈うん……。……でも、[飛ぶ]って言ってたけど、飛行タイプがいるんですか?〉
シルク〈いいえ、いないわ。〉
ライト「こうするんだよ。」
ライト、頼んだわよ!
コロナ〈!!?〉
ライトは彼を背負ったまま光を纏う。
この光景を見て、コロナちゃんは言葉にならない声をあげた。
ライト〈………シルク!〉
シルク〈ええ!!〉
コロナ〈えっ!?どうなって………〉
もちろんよ!!
ライトは姿を戻すと、すぐに滑空を始める。
私は、四肢に力を込めて大地を蹴った。
………ただ一匹、訳が分からず戸惑ってるけど……。
………確か[お月見山]の麓に[ポケモンセンター]があったはず………。
………そこに行けば、ショウタ君も診てもらえるかもしれない……。
だから、少しでも………早く……。
コロナちゃん!
絶対に、あなたを独りにはさせないわ!!!