α 衝突
正午 ニビシティー付近 side???
???〈シード、元気そうで良かったなー。〉
[ピジョン]の姿のぼくは手にあたる翼を羽ばたかせながら、適当な場所に降りたった。
シード、少し前に凄く落ち込んでいたって聞いたけど、あの様子だと大丈夫そうだね。
???〈………さてと、そろそろ解ける時間だから、適当な場所を見つけてまた変えないとね……。〉
……正直、ずっとこの姿のままでいられると一番いいんだけど、あいにくぼくの実力不足で1時間が限界なんだよね……。
こんなことを一匹で思いながら、適当な物陰を探す。
………人間に見られたらえらいことになるからね……。
………あっ、ごめん、突然で紹介がまだだったね。
ぼくの名前は[リヴ]。
今は[ピジョン]の姿だけど、本当は別のポケモンなのさ。
リヴ〈…よし。この辺なら大丈夫だな。〉
この岩陰ならいいかな?
ぼくはそこに隠れると、心を無にして目を閉じた。
すると、ぼくは眩い光に包まれる………。
リヴ〈姿変えるのは楽しいけど、やっぱり本来の姿が一番だなー。この尻尾も気に入ってるし。〉
収まると、ぼくは元の姿に戻っていた。
全体的に薄い桃色で、長い尻尾が特徴的な小さな身体………。
脚は四足歩行をするそれに近くて、手は二足歩行のそれに近い……。
ぼくの種族は今のところ自分しかいない………。
………つまり、ぼくは伝説のポケモン………、[ミュウ]なのさ。
ぼくは浮遊せず、すぐに光を纏う。
本来の姿でいてもいいんだけど、シードは密猟者に襲われた事があるって言ってたから、用心のためって訳さ。
リヴ〈この辺なら、[ニドリーノ]でいいかな。たくさんいるし。〉
変化を終え、ぼくは[ニドリーノ]の姿となった。
四足歩行する種族に変える時はいつもこれ。
特性は[毒の棘]だから、他のポケモンは簡単には触れられないからかな。
ぼくは四肢を巧みに使って歩きはじめた。
………
同刻 sideコロナ
ショウタ「タケシさんにも勝ってお父さんの許しももらえたし、さっそく次の街に行こっか!」
コロナ〈そうだね。〉
わたしは大きく頷いて肯定の意を示した。
………本当は直接話せたら一番いいんだけどね……。
でも、ショウタと旅ができるだけで十分だよ。
……わたし達の事、覚えてるかな?
一応、4話目にでているんだけど……。
忘れてるかもしれないから、自己紹介しておくよ。
わたしは[ロコン]のコロナ。
生まれも育ちも[ニビシティー]。
わたしの父さんと母さんはトレーナーのポケモンだから野生の暮らしを知らないんだよね……。
してみようとは思わないけど……。
……で、わたしの隣にいるのがわたしのトレーナーであり、親友でもあるショウタ。
まだ新人で、メンバーはわたしだけ。
わたししかいないけど、あのお洒落な[エーフィ]のシルクさんにバトルのコツを教わったから、バトルには自信があるよ!
相性的に不利な[ニビシティー]のジムも一発で攻略できたから、今のわたしは絶好調だよ!
ショウタ「……ええっと、一番近いのは[ハナダシティー]かな。 コロナ、いくよ!」
コロナ〈うん。………でも、そんなに焦らなくてもいいと思うよ?……それに、足元に気をつけてね。……凸凹してるし……。〉
わたしは伝わらないと分かっていても、言葉に出さずにはいられなかった。
ショウタ、小さい時に躓いてよく転んでいたんだよね……。
……当然、ショウタは我先にと走り始めた。
……そんなに焦らなくてもいいんだけどね……。
ジムは逃げていく訳じゃないし……。
コロナ〈まっ、いっか。ショウタらしいし。〉
わたしは彼の微笑ましい姿を追いながら感嘆の声をもらした。
ショウタ「ほら、コロナ!早く!」
コロナ〈わかったから、ちゃんと前を見ないと転ぶよ?〉
前を走るショウタは、わたしの方を見ながら駆け抜ける。
わたしもその微笑ましい背中を追いかける。
ショウタ「早く早……く?」
コロナ〈ショウタ!?〉
!?
ショウタは突然、何かに躓き、前のめりになった。
あれだけ注意したのに……。
………ここからはまるで時が止まっているような感じがした………。
コロナ〈えっ……?[イシツブテ]……?〉
ショウタの足元に目を向けると、転がる小石に紛れて一匹の[イシツブテ]がそこにいた。
ショウタはだんだんと前に倒れていく………。
???〈さっ、早いうちに町を越えないとね。〉
そこに、一匹の[ニドリーノ]……。えっ!?
しかも運悪く、何も知らずにバランスを崩したショウタの前に……。
コロナ〈
そこのきみ、よけて!!〉
リヴ〈えっ!?何!?〉
手遅れかもしれないけど、わたしはありったけの声量で叫んだ。
どうか………間に合って!!
ショウタは、もう[ニドリーノ]に覆い被さるところまで倒れていた。
わたしの声に反応して、[ニドリーノ]は立ち止まる。
呼び止めない方が良かったかな……?
ショウタ・リヴ「〈っ!!〉」
ゴツッ………!
両者の頭と頭がぶつかり、鈍い音が辺りに響いた。
コロナ〈ショウタ!!大丈夫!?〉
わたしはすぐに駆け寄り、彼らの安否を確認する……。
彼の体を前脚で揺さぶる……。
コロナ〈…………。〉
しかし、打ちどころが悪かったのか、ショウタと[ニドリーノ]に反応は無かった。
コロナ〈……気を………失ってる……?でも、どうすれば………〉
誰かに助けを求めようと思ったけど、周りに誰もいない……。
野生のポケモンだとどうにもならないし、わたしではショウタはともかく、[ニドリーノ]も運べない……。
わたしのほうが身体が小さいから………。
わたしは為す術がなく、途方に暮れた。
本当に………どうしょう…………。