14 L 再戦
午前 二ビシティー sideシルク
シルク〈さてと……、私もそろそろいこうかな?〉
私はさっき買ってきた木の実や薬品
云々を片付けながら呟いた。
………ええっと、あの後の出来事を簡単に整理すると、
博物館を出た後、ユウキと一緒にティル君とテトラちゃんの実力を見ることになったのよ。
ティル君は性格からも分かるとおり、素早さに長けていたわ。
テトラちゃんは、良いことか悪い事か判断しかねるけど、つい最近までの影響から守備力が優秀だったわ。
………それに、これまでスルーしてきたけど、テトラちゃんの[つぶらな瞳]っていう技、どういう効果なのかしら?
属性はノーマルだと思うけど……。
で、夕方まで特訓した後、センターの部屋で雑談。
気づいたら9時になっていたわ。
おかげで、テトラちゃんもユウキに慣れたみたいだし、尚更よかったわ!
………夜が明けて、今に至るって訳。
ユウキ「……あれ?シルク?ライトのジム戦を見に行かないの?」
そこに、出発するために荷物をまとめた私の兄が姿を現した。
シルク〈ジムから近かったから、木の実の調達をしてから行こうと思ったのよ。〉
ユウキ「そっか。………あっ、そうそう。ライトのメンバーの[イーブイ]、確かテトラっていう名前だったね?」
シルク〈えっ、ええ。そうだけど?〉
徐に、ユウキは話を持ちだした。
テトラちゃんがどうかしたのかしら?
ユウキ「彼女、強くなるね。……それに、今回のジム戦、波乱な展開になると思うよ?」
シルク〈えっ!?ユウキ!?それってどういう事!?〉
波乱!?
私は凄い勢いでユウキに迫った。
ユウキ「あくまでトレーナーとしての勘だけど、[進化]の時が近づいているね……。」
シルク〈!? 進化……!?〉
………
同刻 ジム sideライト
ライト「タケシさん、再戦お願いします。」
私は昨日の雪辱を晴らすため、再びその地を訪れた。
シルクとユウキくん、コルドにも特訓につき合ってもらったんだ!
今度は負けないよ!!
タケシ「………来たな…。ルームは昨日の通りでいいかな?」
ライト「はい!今日は負けませんよ!ティル、今日こそ勝つよ!」
わたしはすぐにボールに手をかけ、パートナーを出場させた。
ティル、いくよ!!
………
sideティル
ティル〈うん!ライトも、頼んだよ!!〉
俺はボールから出るとすぐに、彼女の方にふりむいた。
今日の俺達は、昨日とは違う!!
だから、負けないよ!
タケシ「さすがに、かえてきたね……。イシツブテ、今日一発目だ、いくぞ!」
イシツブテ〈俺にとってもリベンジすべき相手だ。任せろ!〉
やっぱり、イシツブテだったね。
タケシ・ライト「[岩落とし]!」「右によけて!《」そのまま[尻尾をふる]!》
イシツブテ〈昨日みたいにはいかないぞ![岩落とし]!〉
ティル〈それはこっちだって同じだよ!!〉
……それに、今回の切り札は俺じゃない。
………何でかは知らないけど………。
……でも、ライトの師匠っていうユウキさんの言葉だから、何か意味があるのかもしれない……。
……うん、きっとそうだね!
俺は相手に気付かれないように尻尾を揺らした、フィールドを駆け抜けながら。
タケシ「[転がる]で接近だ!」
ライト「そのままかわし続けて!」
イシツブテ〈防戦だな。[転がる]!〉
ティル〈これも作戦だよ!!〉
すると、相手は俺に迫って来た。
………よし、ここからだね!
ライト「[火の粉]!」
ティル〈[火の粉]!〉
即座に、火片を放出する。
タケシ・ライト「かわすんだ!!」《ティル、作戦通り行くよ!!》
ティル〈任せて!!〉
俺の攻撃は、いとも容易くかわされた。
………でも、これは想定内。
気を逸らす作戦だよ!
俺は相手の行動を詠んで左に進路を変えた。
………よし!
いける!!
ティル〈もらった!![引っ掻く]!!〉
イシツブテ〈!?〉
タケシ「上から!?」
よし!当たった!
守りが弱化した相手に、俺の斬撃が命中した。
たとえ相性が悪くても、守りを下げればそれを補える!
俺の期待通り、相性の猛進は止まった。
ライト「[火の粉]で追撃!」
ティル〈これで最後![火の粉]!!〉
そして、その隙に火片で追い討ちをかけた。
イシツブテ〈………[引っ掻く]なのに……威力………高い……だろ……。っ……!〉
ティル〈守備力が落ちてるのに気づかなかったの?〉
俺の期待通り、技が命中すると相手は倒れた。
よし!!
タケシ「…ご苦労だった。イワーク!昨日の通りにいくんだ!」
イワーク〈ノーマルに炎では、俺達には勝てないぞ?〉
………遂にきた……。
……俺が初めて負けた相手……。
………でも…俺は攻撃しない!
タケシ・ライト「[岩雪崩]!!」《テトラのために守備力を下げるよ!!》
イワーク〈[岩雪崩]!!〉〈うん!作戦だもんね!!〉
俺はさっきと同じように、岩のフィールドを縦横無尽に駆けまわる。
これをしばらく続ければ………。
タケシ「[穴を掘る]!」
イワーク〈一気に攻める作戦だな?[穴を掘る]!!〉
………よし………きた……。
あとは…、テトラの番。
俺はある程度守備力を下げたから、ここまでだよ。
ライト「ティル!交代!」
ティル〈うん!!〉
俺は相手が潜ってる間に、フィールドから下がった。
テトラ、後はたのんだよ!
………
sideテトラ
ライト「テトラ、たのんだよ!」
テトラ〈うん! 私を軽蔑する奴なんかに、負けてなるものか!!〉
私は白銀の毛並みを靡かせ、フィールドに躍り出た。
ティルが守りを下げてくれているから、大丈夫なはず……。
………でも、私はノーマルタイプの技しか使えないから、心配だよ……。
私は因縁の相手を思いっきり睨んだ。
交代していたから、相手の攻撃は虚しく外れた。
タケシ「ここで交代か……。[締めつける]!」
イワーク・ライト〈接近だな?〉「動きを見極めて[スピードスター]!」
テトラ〈うん!……[スピードスター]!〉
岩石の巨体は、身体をくねらせて私に接近する。
それに対抗すべく、私は黄色い流星を放つ。
ライト「この隙に接近して!!」
私が命中して、砂煙があがった。
テトラ〈うん!………あれ!?いない!?〉
茶色い霧が晴れると、そこには岩の巨体の姿が無かった。
まさか、[穴を掘る]!?
いつの間に!?
ライト《!? テトラ!脚で地面の振動を感じて!!》
テトラ〈うん。振動………〉
イワーク〈そこだ!!〉
テトラ〈!?左から!?〉
!?
気づいたら、足元の地面に亀裂が入っていた。
テトラ〈……くっ!!〉
突然の攻撃に対処出来ず………、私は派手に………吹っ飛ばされた……。
…………痛い……。
ライト「テトラ!!」
………大分………体力を持ってかれたな………。
………でも、……諦める訳には………いかない!!
私は何とか力を振り絞り………、立ち上がった。
テトラ〈………みんなが…………こんな色が違う私を………信じてくれて…………いるんだ!………だから…………負けない!!〉
私は、……その言葉を………自分に言い聞かせた。
………………?
ライト・タケシ・ティル・イワーク「「〈〈!!?〉〉」この光って……、もしかして……。」
………何だろう…………、この感じ……。
力が………解き放たれるような………。
私はその力に……身を委ね、目を閉じた。
すると、私の身体は眩い光に包まれる………。
…………まるで感覚が研ぎ澄まされるような不思議な感じ………。
痛みが和らいでいくような………なんというか………、経験したことがないような………。
………でも何か暖かい物で包まれてる錯覚を覚える………。
ティル〈………これが………、[進化]……?〉
不思議な感覚が収まり、私は目を開けた。
テトラ〈ライト!私、勝てる気がしてきた!だから、指示をお願い!!〉
………?
視線、高くなった……?
ライト「……………あっ、うん![スピードスター]!」
私の言葉で我に返り、ライトは指示を出した。
……何か身体に違和感があるけど………、
テトラ〈[スピードスター]!!〉
相手が油断している今がチャンスだ!!
私は技に自信を乗せて放出した。
タケシ「…! かわすんだ!!」
イワーク〈……!!〉
相手は咄嗟に身を翻し、私の攻撃をかわした。
ライト《[電光石火]で追撃!》
テトラ〈[電光石火]!!〉
完全に形勢逆転したね!
私は不利な技だけど、勝利を確信して突っ込んだ。
………スピードが上がった気がするのは気のせい?
イワーク〈っく!!〉
テトラ・ライト〈「えっ!?技が効いた!?」〉
!?
……とにかく、今は戦わないと!
私は謎の現象に驚きながらも、気持ちを切り換えた。
テトラ〈ライト!この勝負、勝てるよ!!〉
ライト・タケシ「あっ、うん! [スピードスター]!!」「!? [岩雪崩]!」
テトラ・イワーク〈[スピードスター]!!〉〈!? [岩……雪崩]!〉
さっきの、本当に効いたんだ……。
私は力いっぱい流星を放出した。
対して、相手も岩石で迎え撃つ。
テトラ〈絶対に………勝つんだ!!〉
私は星の勢いを強めた。
イワーク〈………!!!〉
そしてそれは、降りそそぐ岩をも砕き、相手に命中した。
タケシ「イワーク!!」
砂煙が上がり、それが晴れると岩の巨体は地響きと共に崩れ落ちた。
テトラ〈………やった……。勝った!!ライト!やったよ!!〉
結果を確認すると、私はライトの元に駆け寄り、飛び込んだ。
私、勝てたんだ!!
私はいつもはない所に風を感じながら………えっ!?
ふと違和感を感じ、自身の身体に目を通すと、それは見慣れた姿じゃなかった。
テトラ〈ライト!! 私、どうなってる!?〉
白銀ので長いはずの毛並みは短く、薄いクリーム色になっていた。
………そして何より、私に新たな器官が出来たような感じにおそわれる。
触手………?って言ったらいいのかな………?
それに意識を向けると、私の思い通りにそれも動く………。
これは一体何!?
私は勝利の喜びよりも、身体の変化に驚いてライトを問いただした。
ライト「テトラ。君は[進化]したんだよ。………種族、分からないけど……。」
ティル〈追い込まれた時に、なったみたいだよ。〉
………[進化]………?
私が……?
私は疑問の輪廻に捕らわれた。
………なら、私は何に進化したの!?
シルクやトリ姉さんの[エーフィ]でもないし、ジル兄さんの[リーフィア]でもない……。
モノ兄さんは進化する前に捕まったから知らないけど、父さんや母さんの[サンダース]や[グレイシア]でもない……。
???〈……やっぱり、[進化]したわね。〉
???「思った通りだよ。」
一同「「〈〈!?〉〉」」
不意に声がして、私達はそっちのほうに振り返った。
シルク〈兆候が見られていたからもしかしたらと思ったけど、本当に起きたわね。〉
そこには、状況を悟ったようにシルクとユウキさんが立っていた。
私はいてもたってもいられず、シルクの元に駆け寄った。
テトラ〈シルク! なら、私は何に進化したの!?〉
私は凄い勢いで彼女を問いただす。
シルク〈………ええっと、この感じだと………[ニンフィア]という種族ね。〉
テトラ〈……[ニン………フィア]……?〉
………聞いたことないよ…。
シルク〈私もさっきユウキから聞いて知ったんだけど、[フェアリー]タイプという属性に派生した種族らしいわ。〉
???
そんな属性があったの……?
テトラ〈でも、どうして私が?〉
シルク〈[ニンフィア]になるには使える技が関係しているらしいわ。 [フェアリー]タイプの技を使えたら進化できるみたい……。テトラちゃんの場合、[つぶらな瞳]がそれにあたるらしいのよ。〉
…………そうなんだ……。
………知らない事が多すぎてパニックになりそうだよ………。
………とにかく、私は[ニンフィア]っていうポケモンなんだね?
……って事は、本当はこのじゃないって事だね?
………これが、新しい自分か………。