12 S 氷の気象予報士
昼 ニビ博物館 sideシルク
シルク〈とりあえず、時間通りね。〉
私は、兄がいるであろう建物に到着した。
この地方のジムを巡ってる時は殆ど観光はしなかったから、実質初めてね。
これで、また1つ用事が片付くわ。
私は自動扉をくぐった。
イッシュのはポケモンも入れたけど、ここも大丈夫そうね?
受付中の人に何も言われなかったし。
シルク〈確か、会議室だったわね。〉
[シロガネ山]の調査に行く前、ここで会う約束をしたのよ。
私の荷物も預けてあるし、ユウキ経由で実験用の指示薬を受けとることになってるわ!
やっと、本格的に研究ができる!!
私は念願の物品の入手に心を躍らせながら、鼻歌混じりに廊下をつき進んだ。
シルク〈この部屋がそうね。…〉
そうこうしているうちに、一つの扉の前にたどり着いた。
シルク〈[サイコキネンシス]!〉
身体の構造上届かないから、私は超能力でドアノブを回した。
シルク〈ユウキ!!待たせたわ…………ね?〉
扉を開けると、右頬に火傷の痣があり、左腕に青いバンダナ……、[絆の証]を着けた私の兄……。
ユウキ「シルク、待ってたよ。」
その隣には私の旅仲間であり[絆の守護者]でもある、ユウキを含めたメンバーで最年長のポケモン……。
コルド〈[シロガネ山]の調査はどうでした?〉
シルク〈あいにく、空振りだったわ。〉
そしてもう1人………。
???「[シロガネ山]ですか……。あそこは気象が不安定だから大変だったでしょう……。それに、野生のポケモン自体も強いから、苦労したでしょ?」
初対面の人………。
…………誰?
…………!?[テレパシー]使ってないのに私の言葉に答えた!?
私はあまりの事に驚き、彼のほうをハッと見た。
ユウキ「そっか……。何も……」
シルク〈ちょっと待って!!ユウキ!?この人は誰!?私の言葉を分かってるみたいだし!?〉
ポケモンの言葉が分かる人といったら、ユウキ、N、ベル、チェレン(シリーズ1参照)しか知らないわ!?
彼は一体何者!?
???「あっ、ごめん。紹介がまだだったね?僕は[セツ]といって某テレビ局で気象予報士をしているんだけど、知ってるかな?」
気象予報士………?
シルク〈………あっ!思い出したわ!でも、どうしてここに?〉
ジョウトにいた頃、見ていたニュース番組に出演していたのよ!!
地方放送だったから引っ越してからは見る事が無かったから忘れてたけど……。
セツ「知ってくれてて嬉しいよ。……ちょっと局から休暇をもらってね、妻と息子と観光旅行だよ。」
セツさんは嬉しそうに言った。
観光旅行ね……。
シルク〈……でも、ポケモンである私達の言葉をどうして分かるのかが謎ね。〉
コルド〈シルクさん。それはシルクさんが一番分かっているんじゃないですか?〉
シルク〈えっ?〉
私が?
どういう事?
私はコルドの言葉が理解出来ず、首を傾げた。
セツ「見てもらった方が早いかな?」
ユウキ「そうですね。 シルク、簡単に言うよ?」
見たほうが……?
セツさんは腰のボールに手をかけた。
その数、2つ。
ユウキ・セツ「セツさん伝説の当事者なんだよ。」「[ウェズ]、[スノウ]、出てきて!」
普段見せる事がない、気象予報士のメンバーね……。
シルク〈伝説に!?〉
ユウキが結論を述べるのと、セツさんがメンバーをだすのはほぼ同時だった。
ウェズ〈スノウ?中で出るのは久しぶりなんじゃない?〉
スノウ〈そうね。私は身体がおおきいもの。そうしょっちゅう出れるものじゃないわ。〉
シルク〈!!? そういう事だったのね!?〉
私はあまりの事に驚愕した。
一匹目は、気象予報士らしく[ポワルン]。
……つまり、天職だったって訳ね?
そして、もう一匹は、全体的に水色で、ユウキ達より大きく、気高くて美しい鳥ポケモン………。
シルク〈[雪の化身]と言われている伝説のポケモン……、[フリーザー]……。まさか、こんな所で会えるなんて思わなかったわ…。〉
スノウ〈あら?そういうあなたも、伝説の関係者なのよね?〉
ウェズ〈ユウキさんから聞いてるよ。君は[絆の従者]なんでしょ?〉
確か、[フリーザー]ってこの地方に君臨する伝説の三柱のうちの一匹よね?
コルドの種族である[コバルオン]と同じような位置付けなのかしら?
シルク〈えっ、ええ。そうだけど……。〉
スノウ〈……という事は、ユウキさんやセツみたいに特殊な能力があるのよね?[証]だってあるし……。〉
………伝説のね……。
この地方のはまだ調査出来てないからまだわからないけど……。
スノウさんは氷のように透き通った声で私に訊ねた。
シルク〈確かに、あるわ。色々な[代償]がある代わりに、普通では覚えられないタイプの技を2つ使えるのよ。〉
スノウ〈俗に言う、[チカラ]ね?〉
シルク〈そうなるわね。〉
私は彼女に簡単に説明した。
………でも、待って?
さっき、ユウキにセツs………
???「ここって言ってたかな?すみません!入りますよ!」
a……?
私は疑問に思った事を聞こうとした時、会議室の扉が開けられた。
この声って……。
ライト「シルク、ここだった…………えっ!?ユウキくん!?」
ライトね。
ジム戦、どうだったのかしら?
……あっ、そうじゃないわ!
ユウキ・シルク「ライト!?」〈セツさんもって言ってたけど、どういう事??〉
ライト・セツ「ジム戦が終わったらここに来て、シルクに言われたんだよ!」「それは、僕もユウキさんと同じだからね。」
えっ!?ユウキと同じ!?
………って事は……もしかして………。
ユウキ・シルク「ジム戦……、って事はトレーナーに?」〈同じって事は、姿を……?〉
同じって事は、そうなるわよね?
ライト・スノウ「うん。ニビシティーのは相性が悪くて負けちゃったけど、バッチ、1つ持ってるよ!ティル、テトラ、お待たせ!」〈その通りよ。〉
……それしか考えられないわ!
ライトは話しながらボールに手をかけた。
そっか……負けちゃったのね……。
ティル・テトラ〈やっぱり相性……えっ!?誰!?〉〈強かった……!? 人間!り〉
初対面のふたりは、驚きの声をあげた。
………テトラちゃんは違う意味でだけど……。
ライト「ユウキくん!?どうして[フリーザー]のこのひとがここにいるの!?」
シルク〈テトラちゃん。彼らは大丈夫よ。 それに、痣がある彼は私の兄だから!〉
人間不信のテトラちゃんが2人を見るとすぐに敵意を表した。
そんな彼女を、私がなだめる。
ユウキ「へぇ。ティルにテトラって言うんだね?」
セツ「[フォッコ]、初めて会ったよ。」
テトラ〈えっ!?私、色違いなのに、驚かないの!?〉
ティル〈それに、俺達の言葉、わかったの!?〉
広い会議室は様々な驚きで満ち溢れていた。
ユウキ「それも個性の1つでしょ?」
セツ「僕達は人間だけど、半分ポケモンみたいなものだからね。」
ユウキ「つまり、この部屋にはライトを含めてポケモンしかいないって事だよ。」
ライト・セツ「「えっ!?どういう事!?」
スノウ〈という事は、彼女も!?〉
…………確かに、そうよね。
私、全てを知っているユウキ以外は互いに顔を見合わせた。
コルド〈お察しの通りです。〉
この場をコルドが総括した。
シルク〈………なら三人とも姿を変えたらどうかしら?〉
ウェズ〈そのほうが、はやいね。〉
ライトはともかく、2人が人の姿のままだとまだ慣れてないテトラちゃんが怯えてしまうからね……。
それに、広くて部外者が殆ど立ち入る事がないこの部屋なら、姿を変える事も可能だわ!
私は全員を見渡し、こう提案した。
ユウキ「そうだね。」
セツ「鍵さえかけておけば、大丈夫だね。」
シルク〈わかったわ。[サイコキネンシス]!〉
ライト「ティル、テトラ、あの人は知らないけど、よく見てて!人間の中にはこんな人達もいるんだよ!」
私は念のため、この部屋唯一の入り口の鍵をかけた。
これで準備はいいわね。
ユウキ「じゃあ、始めようか。」
ライト「うん!」
セツ「そうだね。」
三人は互いに顔を見合わせ、意識を集中させた。
まず、ライトは眩い光を纏う。
ユウキとセツさんは、次第に姿がレンズの焦点がズレるように歪み始めた。
……性質は、同じなのね?
ライト〈よし。〉
ユウキ〈こういう事。〉
セツ〈人前で見せるのは久しぶりだよ。〉
変化が終わると、一匹は持っていた鞄を掛けたまま浮遊する[ラティアス]、一匹は左腕に[絆の証]を着けている[ピカチュウ]。
そしてもう一匹は、右脚に青いリングを着けている……種族名、何だったっけ……?
……………あっ!思い出したわ。
黒と白の羽毛を持ち、主にシンオウ地方に生息する鳥ポケモン………。
シルク〈……へぇ……。セツさんは[ムクバード]に姿を変えられるのね?〉
セツ〈そうだよ。〉
ティル・テトラ〈〈……………。〉〉
なる程、そういう事だったのね!
私が納得している横で、ティル君とテトラちゃんは言葉を失っていた。