8 LS 初めてのジム戦
夕方 トキワシティージム sideライト
ライト「すみませーん!」
わたしは目的の建物に入るや否や、大きな声で言い放った。
ライト「ジム戦お願いします!!」
一回、言ってみたかったんだよね!これ!
去年シルク達と旅した時、横で聞いてて凄く引き締まった気持ちになったんだよ!!
なんか重要な局面、って感じだったし!
シルク〈やっぱりこのセリフ、気合いが入るわね!〉
わたしの隣でシルクが呟いた。
ちなみに、ティルはボールの中。
ジム戦って、正式なバトルだもんね!
???「あっ、ごめんごめん!今行くよ!」
すると、奥の方でやや低めの声が響いた。
……ジムリーダーかな?
ライト「ジム戦お願いします!!」
わたしはもう一度、高らかに宣言した。
???「見た感じ、新人だね?」
ライト「ライトと言います。」
???「ライトって言うんですね。………で、この[エーフィ]は?」
彼は、わたしの隣にいるシルクに目を向けた。
シルク《私の事、覚えているかしら?シズイさん。》
シズイ「………!?喋る[エーフィ]って事は……、ユウキさんの?」
シルク《当たりよ! だから、私は戦わないわ。》
………あっ、そうだったね!
シルク達は一度戦ってるんだったね!
シズイ「……でないと、有星者ルールでも僕がストレート負けするよ。」
シズイさんはハハハって笑いながら言った。
シルク《さて、おしゃべりはこのくらいにしておこうかしら?》
シズイ「うん、そうだね。…………ごめん、待たせたね。始めよっか?」
ライト「あっ、はい。お願いします!」
……終わったね?
シズイさん、シルクとならポケモンでも会話ができるから嬉しいんだろうね。
……見た感じ、わたしと年が近そうだし……。
気を取り直して、わたしとシズイさんはバトルの定位置についた。
シルクは軽い身のこなしで離れていき、フィールド全体が見える位置に座った。
シズイ「……じゃあ、使用ポケモンは2匹、交代はチャレンジャーのみで始めようか。」
……わたしはティルしかいないけど………、
ライト「はい!!」
わたしはティルが入ったボールに手をかけた。
ライト・シズイ「ティル、いくよ!!」「[トランセル]、勝つよ!」
ティル・トランセル〈一杯特訓したんだ!絶対に勝つよ!!〉〈……任せて。〉
ティル、いくよ!!
ライト・シズイ「接近して[火の粉]!」「[糸をはく]!」
ティル〈よっしゃ![火の粉]!!〉〈……[糸をはく]!〉
ティルは一目散に走り出し、同時に火片を放出した。
対して、トランセルは口?から糸を放出した。
きっと、素早さを下げる作戦だね?
2つの技はぶつかり、糸は燃焼した。
ライト「[遠吠え]で攻撃力を上げて!!」
ティル・シズイ〈うん!〉「[硬くなる]だ!」
ティルは吠えで志気を高め、トランセルは身を硬くした。
……結局、±0だね。
…………なら、
ライト「そのまま回り込んで!《」バレないように[尻尾をふる]!!》
ティル〈!? OK!〉
守りを上げる技を持ってるなら、こっちだって作戦があるよ!!
わたしは[テレパシー]でティルに指示をだした。
………わたし、[ラティアス]だからこの姿でも使えるんだよね……。
一応、準伝説だし。
だから、ティルには[テレパシー]を使うって、始まる前に伝えておいたよ。
ティルは進路を変え、尻尾を揺らしながら相手の周りを駆け抜けた。
シズイ「何をするつもりか知らないけど、攻めるよ![体当たり]!」
昼間に特訓したんだよ!
走っている時って、自然と尻尾は揺れるでしょ?
だから、相手が気づかないうちに守備力を下げれるってわけ。
いい作戦でしょ?
トランセル・ライト〈[体当たり]!〉「ティる、くるよ![引っかく]!」
ティル〈あれだけ下げたから……いける!!…〉
ずっと動かなかった相手が遂に動き出した。
ティルに向けて一直線に突っ込む。
ティルまで3m………。
ティルは踏ん張り、立ち止まる。
2m………。
ティルは前脚に力を溜める……。
1m………。
前に跳び、
ティル〈[引っかく]!〉
相手の上をとり、右前脚を振りかざした。
0m……。
トランセル〈っく!!〉
ティル〈よし!!〉
彼の爪は獲物を捉えた。
シズイ「えっ!? 一発で!?」
シルク〈ライト、考えたわね……。〉
わたしの作戦が功を征し、相手は倒れた。
ライト「ジム戦のために特訓したんですよ!」
わたしは適当に誤魔化した。
………一応、特訓したのは事実だけど………。
シズイ「なら、尚更だね![スピアー]任せたよ!」
スピアー〈今回はオレか。よし、わかった!〉
……とうとう、2匹目か……。
相手は飛んでいるからティルにとっては不利だけど、わたし自身も浮遊してるからその弱点もわかってる!
だから勝敗はティル次第………。
ライト「ティル、そのままいくよ!!」
ティル〈同じ作戦だね?わかったよ!!〉
シズイ「そういえば、そのポケモンはこの辺では見かけないね?」
ライト「わたしもティルも別の地方の出身ですから!ティル、そのまま走り続けて!」
ティルの種族、[フォッコ]は遠くの地方にしかいないらしいもんね!
わたしの種族も、ホウエンだけだし……。
ティル・シズイ〈うん!もちろんだよ!!〉「どうりで……。[毒針]!」
スピアー〈[毒針]!〉
ライト「ティル!![火の粉]で防いで!」
[毒針]!?
特殊技!?
わたしは慌てて指示をだした。
練習の時に、特殊技を使える相手がいなかったから、大丈夫かな……?
ティル〈えっ!? [火の粉]!!〉
わたしは不安をかんじながらも、結果を見守った。
相手は毒々しい細針を幾つも撃ちだし、ティルは火片で対抗する。
ちょうど中間でぶつかる……。
ティル・スピアー〈〈くっ!!〉……毒!?〉
両者の技は威力を抑えただけで、それぞれの標的に命中した。
ティルの顔色が若干悪くなった。
ライト「ティル!!大丈夫!?」
ティル〈毒状態になったけど、……何とか……。〉
そっか……。
でも、あまり長くは保ちそうにないね……。
毒状態になると頭痛とか吐き気に襲われるし、ダメージもあるから……。
……でも、相手にも結構ダメージを与えたはず……。
息遣いが少し荒くなってるし……。
ライト《なら、ティル、よく聞いて!飛んでいるポケモンは威力の高い特殊技を使えない限り相手に決定的な一撃を与えたられない……。虫タイプにその技はあまりないから[スピアー]にも当てはまるはずだよ。》
わたしは念じ、話す事なく会話を試みた。
ティル〈って事は、攻撃を仕掛けてきた時に反撃すれば………。〉
ティル、わかってくれたかな?
ライト《そう。[火の粉]をすれば勝てるよ!》
わたしは言葉を強めた。
攻撃する時が一番無防備になるからね!
フライと二匹で特訓していた頃に身をもって感じたから、間違いないよ。
シズイ「接近しながら[毒針]!」
スピアー・ライト〈攻めだな?[毒針]!!〉《だから物理技を仕掛けてくるまで耐えて!!「》[火の粉]!!」
ティル〈うん!やってみるよ![火の粉]!!〉
接近してきたから、その可能性は高いね!!
ティルもわたしの意図を理解してくれたらしく、大きく頷いた。
ティルはしばらくの間、火片を放ち続ける。
相手とティルの距離は7m………。
シズイ「[乱れ突き]でトドメだ!!」
ライト「きたよ!!攻撃に備えて!!」
相手は技を中断する。
5m………。
ティル・スピア〈うん………!〉〈呆気なく終わりそうだな!〉
ティルは毒の影響で意識が朦朧とし始めたけど、何とか踏ん張る。
スピアーも、最後の一撃のために構える。
3m……。
シズイさんはたぶん、次にわたしが指示する技は[引っかく]って思ってるはず…。
ライト《ティル、今のティルなら[猛火]が発動するはずだよ!だから………》
2m………。
ライト「[火の粉]!!」
1m……。
ティル〈うん………![火の粉]!!〉
スピアー〈!?しまった!!〉
0m………。
シズイ「!?かわし……」
スピアー〈っぐ………! ………不意打ち………か……。〉
ティル〈やっ………た……。〉
加速して、急には止まれないスピアーに、ティルの特性[猛火]によって強化された火片が命中した。
シズイが気付いた時には、既に結果はでていた。
ティルは毒に侵されながらも、何とか踏ん張り、耐えてくれた。
ティル、お疲れ様。
シズイ「………ライトさん、僕の負けだよ……。………はい。これがバッチだよ。」
ライト「ティル、ありがと。ゆっくり休んでて。 あっ、はい。」
ティル〈うん……。流石に………毒はキツかったよ……。〉
わたしは頑張ってくれたティルをボールに戻し、リーグ公認のバッチを受け取った。