9 LS 白銀色
夜 ポケモンセンター内 sideティル
ライト「ティル、お待たせ!」
ティル〈…やっぱり、凄いよ!〉
俺は人間の技術に感動しながらボールから飛びだした。
だって……、凄いんだよ!!
あんなに毒で弱ってたのに、たった数十分で完全に回復するんだよ!!
野生だった時だと軽く2日はかかったのに……。
それにもう一つ。
[エーフィ]のシルクさん………。
見た感じ大人っぽいけど、幼さもある……。
あと、何かただ者ではない気がするのは気のせい?
………うん、きっとそうだね!
シルク〈私達では、まず発見できないような定理とか、法則を使ってるのよ。 ………私の場合、化学以外でね!〉
シルクさんは満面の笑みで言った。
本当に、不思議なポケモンだよ……。
ライト「……なら、わたしは尚更だね。」
ティル〈……何かよく分からないけど、そうなんだー。 ……ねえシルクさん?〉
シルク〈敬語は使わなくていいわよ!〉
シルクさ……いや、シルク、笑顔、可愛いよ……。
俺は思いきってシルクに話しかけた。
ティル〈なら……、シルクってもう大人だったりするの?〉
シルク〈みんなによく言われるわ。 ………でも、私はまだギリギリ未成年………19よ!〉
ティル・ライト〈えっ!?まだ俺と同じで子供だったの!?〉「えっ!?シルクってわたしと1つしか変わらなかったの!?」
えっ!?全然そうは見えないよ!!
俺はてっきり24、5かと……。
シルク〈そういえば、まだ言ってなかったわね。ちなみに、オルトは18、リーフとスーナは20、フライは知ってるかもしれないけど16、コルドでもまだ22なのよ。〉
ライト「わたしとあまり変わらなかったの!?」
シルク〈ええ、そうよ。〉
シルクの話だと、リーグを3ヶ所も制覇したって言ってたけど、そんなに若いんだ……。
オルトさんには会ったことがあるけど、他のポケモンにも会ってみたいなー。
きっとシルクも、相当強いんだろうな……。
シルク〈ところでライト? ライト達は明日にも[ニビシティー]に行くつもりなのよね?〉
シルクは突然、話題を変えた。
……会話、止まったもんね。
ライト「うん。地図も買ったし、このまま[ハナダシティー]を経由して[ヤマブキシティー]に行くつもりだよ。」
シルク〈なら、[ハナダシティー]まで一緒ね!そこまで一緒に行きましょ!〉
えっ!?行き先同じなの!?
ライト「一緒なの!? うん!もちろんだよ!!旅は1人でも多いほうが楽しいもんね!!」
ライトはパッと明るい声で言った。
ティル〈本当に!? なら、他にいろいろ聞いてもいい?〉
シルク〈ええ、いいわよ!………でも、今日はもう遅いから明日に備えて寝ましょ!〉
ライト「あっ、ほんとだ!もうこんな時間!?」
えっ!?
シルクに言われてライトと同じ方をみると、長い針はちょうど真上を指して、短い針もそれに重なりそうだった。
……どういう意味か分からないけど……。
………という訳で、俺はこの辺でお喋りを切り上げて眠りについた。
……………
朝 トキワシティー sideシルク
ティル〈………みんな揃ったし、早く行こうよ!!〉
ティル君は今にも走り出しそうな勢いで言った。
ティル君が寝た後、ライトに聞いていたけど、本当にせっかちなのね……。
……これも個性……、否定するつもりはないわ。
ライト「うん!じゃあ、行こっか。」
シルク〈そうね。〉
ええ、もちろんよ!
私達は会話の華を咲かせながら歩き始めた。
………もちろん、野生とかトレーナーのポケモン達と戦いながらね!
……………
午前中 トキワの森 sideシルク
シルク〈この森を抜ければ、すぐに[ニビシティー]に着くわよ。〉
小高い木々が争うように立ち並び、木漏れ日が所々に差し込む森に、私達は揚々と足を踏み入れた。
時々柔らかな風が吹き抜け、森の木々が絶妙なハーモニーを奏でる………。
やっぱり、こういう所は落ち着くわね。
ティル〈森って事は、炎タイプの俺の出番だね!!〉
ティル君は私の隣で自信満々にいった。
ライト「草タイプとか、虫タイプが多いもんね!」
ええ。どこの地方も、大抵がそうよ。
…………森といえば、ライトと初めて出会ったのも森だったわね。
……懐かしいわ。
思い出s……
???〈痛っ!………だから………いい加減に…………やめてよ………!!〉
???〈俺達がお前如きの言う事を聞くと思うか?〉
???〈そもそも、お前の存在自体が気にくわないんだよ!!〈[乱れ突き〉!!〉〉
???〈[糸をはく]!!〉
???〈っぐ………!!〉
……uわ………えっ!?
静寂に包まれた午前の森に、自然では有り得ない音が響いた。
ライト・ティル「〈何!?今の!?〉」
シルク〈わからないわ!! でも、何かが起きているのは確かね。〉
……でないと、こんな音がするはずないわ!!
私は音の出所をつきとめるべく、意識を集中させた。
…………!
分かったわ!!
シルク〈北のほうよ!!〉
ティル〈北だね?〉
私の言葉を聞くと、ティル君は一目散に駆けだした。
ライト「ティル!!」
シルク〈ライト、いくわよ!!〉
私も、すぐに彼のあとを追った。
ティル〈ライト、シルク!大変だよ!!〉
ライト「!!」
シルク〈…………これは酷いわね……。〉
!!
そこには、とんでもない光景が広がっていたわ………。
姿は木が邪魔で見えないけど、そのポケモンを十数匹の[スピアー]を初めとした虫タイプのポケモンが集団で襲って………、いや、リンチって言った方がいいかもしれないわ……。
……何があったのかは知らないけど、[絆]の名を持つ者として……、許せないわ。
集団で一匹を襲う行為は[絆]の理に背く………。
ティル〈ライト、シルク!すぐにでも……〉
シルク〈ティル君、私がいくわ!だから下がってて!〉
私はすぐにでも走りだそうとしているティル君の前に立ち、行く手を阻んだ。
ティル〈でもシルク!〉
シルク〈野生とはいえこの数。油断はできないわ。それに、複数となると、ジム戦のようには行かないわ!………それに、私の前で理に背く行為をするなんて、許しておけないわ!!〉
私はそれだけ言うと修羅場に躍り出た。
シルク
《そこまでよ!!これ以上は集団で攻撃はさせないわ!!》???〈〈〈!? 誰だ!?〉〉〉
???〈だ……………れ…………?〉
私はその争いをとめるべく、力一杯念じた。
シルク〈あなた達は[絆]の理に背いた。 集団リンチなんて、許されないわ!!〉
取り囲んでいたポケモン達の目線が一斉に向けられた。
……凄い殺気ね……。
………でも、未来の世界で正気を失った[ディアルガ]と戦った私にとっては、[コイキング]のそれよりも弱いわ。
私は時の化身に向けたそれと同じ睨みを効かせた。
スピアーA〈ハッ、[エーフィ]のお前一匹で俺様達にかなうとでも思ってるのか?〉
スピアーB〈それに姉ちゃん、♂相手に刃向かわないほうがいいぜ?〉
私は奴らに構わず、襲われたポケモンの安否を確認した。
……………、酷い怪我ね………。
…………種族は[イーブイ]で、色違…………い!!?
奴らが取り囲んでいる下で、通常とは異なって、銀の毛並みを持った[イーブイ]が、何とか意識をつなぎ止めていた。
………なら、尚更放っておけないわ!!
それ以前に、[差別]や[偏見]、[妬み]、[僻み]は私が最も嫌いな事のうちの1つ………。
この状況から容易に推測できるわ!!
…………なら、まずは[イーブイ]の彼女の安全を確保しないと!!
スピアーC〈姉ちゃん、痛い目に遭いたくなければ、今のうちに引き下がった方がいいぜ?〉
奴らの言葉を無視し、両目を閉じる………。
………[チカラ]を、使わせてもらうわ!!!
シルク〈{[絆]により…………我らを護り給へ………。}〉
強く念じ、自分の[特性]を入れ替える……。
そして、僅かばかりに残った自らの守備力を、全て[絆]に捧げる…………。
ティル〈……!?何!?この感じ!?〉
???〈…………??〉
私の背後で、驚きの声があがった。
ライト「守られるようなこの感じ………、もしかしてユウキ君の[絆の加護]……?」
………そう。
ライトの言う通り、私も[絆の加護]を使えるわ。
私も[絆の従者]として[証]を持つから、使えるのよ。
……[チカラ]を解き放ち、私は目を開けた。
私もユウキと同じように、いつもは白い瞳が変色する……。
私の場合、水色だけど……。
でも、同じ[チカラ]には変わりないわ!
スピアー達〈〈〈〈[毒針]!!〉〉〉〉
奴らは一斉に攻撃を開始した。
……私の守備力はゼロだから、攻撃をうける訳にはいかないわ!!
だから、全力で!!
シルク〈[シャドーボール]、[サイコキネンシス]、発散!!〉
漆黒の弾を拘束し、すぐにそれで上昇気流を発生させる。
………相手の反応はキリがないから省略差せもらうわ。
シルク〈[目覚めるパワー]、[ベノムショック]、化合!!〉
飛ばされながら維持している超能力で暗青色、紫のエネルギーを混ぜ合わせる。
この説明も、割愛させてもらうわ。
……もし知りたかったら“絆の軌跡〜過去と未来の交錯〜”を見てくれるかしら?
二色の弾は混ざり、藤色に変色した。
それを2つに分け、丁度最高点で放った。
…弾は衝突し、竜の効果で膨張し始める……。
それと同時に、核分裂のα崩壊の原理で無限に増殖する………。
やがて、藤色の弾は守備軟化作用を秘めた雨となった。
シルク〈[サイコキネンシス]!〉
それが彼女に及ばないように、超能力で保護する……。
シルク〈[シャドーボール]、[10万ボルト]、拡散!!〉
漆黒の弾と高電圧の電撃を同時に放ち、超能力で粒子状に細分化する。
そして、それらで相手の群れを取り囲み……、
シルク〈収束!!〉
中心に向けて一気に凝縮させた。
[従者のチカラ]の影響で、私には物理攻撃と守備力という概念が無い代わりに、特殊攻撃が限界を遥かに超えた段階まで強化されてるから、タダでは済まないわよ!!
これ以外にもある[代償]を考えてようやくつりあう[技の制限の緩和]と[特殊技の強化]……。
だから、あなた達は私には勝てないわ!!
……案の定、私の技が命中した群れは次々に倒れていった。
ティル〈………凄い………。〉
???〈…………強い…………。〉
ライト「オルトの言う通り………、凄い事になってる…………。」
私以外の、意識がある誰もが言葉を失った。