[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜























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第11章 栄光への最終決戦
106 L 光導く夢現の軌跡 終幕 第1節
 リーグ 王者の間 Sideライト



 〈…これで、決める! [フレア…ドライブ]…っ!〉
 〈絶対に…負けたく…ない!! 一か八か…、[ギガインパクト]…!〉

 大技を連発したせいでバテている[ウィンディ]は、残るエネルギーの全てをかき集め、燃え盛る炎を纏う。若干ふらつきながらも何とか堪え、炎の塊となって相手に突っ込んできた。
 意識が遠のき始めているテトラも、歯を食いしばって立ち上がる。気力だけで力を蓄え、捨て身で対戦相手へと走り始めた。

 〈ライトとみんなのためにも…、勝つんだ!〉

 両者は正面から対峙し、薄れる意識の中で狙いを定める。テトラは2mまで迫った相手に、こうはき捨てた。

 〈それは俺も…、同じだ!〉

 彼も何とか声を絞り出し、気迫だけで押し返す。

…たぶんこの一発で決着がつくと思うけど、正直どうなるか分からないね。今のテトラの状態は、エネルギーはまだまだ残ってるけど、体力が残りわずか。[フラッシュ]で命中率を下げても、嗅覚が発達してる[ウィンディ]には意味が無い。それに対して、彼の方は、[フレアドライブ]の反動を耐える体力はあると思うけど、テトラの攻撃はどうなるか分からない。反動で動けなくなるテトラに追撃しようとしても、当の本人に技を発動させるだけのエネルギーは残されていない…。
 テトラの言う通り、一か八かの賭け、だね。

 「テトラ、耐えて!」
 「ウィンディも、堪るんだ!」

 私は終結しつつある戦闘に、祈りながら声をあげる。カエデさんも、どうなるか予想できないみたいで、最後の大技に全てを賭ける戦士に、大声でエールを送る。

 そして…、

 〈っぐ…!…まさか…、こんな大技を…、隠し持って、いたとはな…〉
 〈あんたも…ね…〉

鈍い音が、フィールド一面に響き渡った。炎を纏って突撃したウィンディ、全身の力を爆発させたテトラ、その両方が逆方向に飛ばされた。まず始めに、テトラを炎が包み込み、熱と共に対象を弾き飛ばす。3秒ほど宙を舞い、直後に地面に叩き付けられた。次に相手のウィンディ、彼にはテトラの重撃と自分の反動の両方が襲いかかる。もちろん彼も耐え切れず、テトラとは真逆の方向に弾かれた。
 そして、彼女達は、全く同じタイミングで崩れ落ちてしまった。

…もしかして、引き分け?

 「…テトラ、お疲れ様」
 「ウィンディも、よう頑張ったな」

 第四戦目を引き分けで終えたテトラに、わたしは優しく声をかけてあげてから、ボールに戻す。彼も労いの言葉をかけ、控えへと戻した。

…テトラが負けちゃったから、今のわたし達は1勝1敗2分け。だから、ここまでだと引き分けだね…。でも、残ってるのは、あと一戦。ティルなら大丈夫だと思うけど、油断はできないね。

 テトラをボールに戻してあげてから、わたしは自分の状況を確認する。そうする事で自分に言い聞かせ、気合を入れ直した。

 「さすが、ライトさんやな。ここまで追い込まれたのは久しぶりやよ」
 「って事は、他の人はもう少し強かったりするんですか」

 メンバーを戻した彼は、一度わたしに向き直り、声をかける。その言葉には、称賛の意が含まれているような気がした。それにわたしは、声には出さないけど、謙遜しながら疑問を投げかけた。

 「その逆やよ。俺が就任してルールを変えてから、難易度が上がったらしいんよ。…やから、いつもは四天王戦で終わるか、良くても俺がストレート勝ちするっていう感じやな」

…へぇ、やっぱり、そうだよね。ただでさえ難しい四天王戦なのに、途中で入れ替えが出来ないサドンデス。おまけに道具を使って回復してあげる事も出来ないから、尚更だよね、エネルギーも、温存できるか際どい位だと思うし…。

 「これだけ難しいから、そうなるのも分かる気がしますよ。…でもカエデさん」
 「ん? どうしたんや」

 彼の言葉に、私は頷きながら納得する。でもわたしは、そんな彼に、こう続けた。当然カエデさんは、突然話題を切り替えたわたしに首を傾げる。

 「ここまで頑張ってきたんだから、他の人と同じようにはいきませんよ!」

…もちろん、わたしはそんなつもりはないよ!

 彼の問いかけに、わたしは自身と共に真っ直ぐ答えた。

 「そうやないと戦い甲斐がないで! ライトさん、泣いても笑ってもこれが最後や! カントーでの旅で学んだこと、感じた事、全部俺にぶつけてくれよ!」

 チャンピオンの彼は、挑戦者のわたしの宣戦布告を正面から受け止めてくれた。そして、それを威厳という名のラケットで対戦相手に打ち返した。

 「もちろんです! カエデさんも、わたしが知りあいだからって、手を抜いたら許しませんからね!」

 わたしも、ここまで戦ってきた想いを胸に、言い放つ。そして、挑戦者のわたし、チャンピオンのカエデさん、両方がほぼ同じタイミングで最後のボールを手に取った。

…わたしのメンバーはパートナーのティル、テトラ、ラグナそれからラフの4匹だけだから…。残ってるのは、炎・エスパータイプのティルだけ。…でもカエデさんは、去年から誰かが加わってなかったら、水タイプの[フローゼル]だけのはず…。パートナー同士の戦いだけど、相性的にはティルの方が不利…。でも、わたし達には、もうティルしか残ってない!

 「ティル! これが最後だよ。だから、絶対に勝つよ!
 「[フローゼル]、俺達のコンビネーション、魅せるで!」

 それぞれが、一番一緒にいる時間が長いメンバーを、溢れる闘志と共に出場させた。

 〈ライト、折角さっき温存したんだから、最初からそのつもりだよ!〉

 わたしの相棒は、わたしの期待に快く答えてくれて、威勢よく言い放つ。

…ティル、あとはきみだけ…。だから…、

 〈カエデ、ずっと僕の出番が無くて退屈だったんだ…。だから、僕も、全力で戦うよ!〉

 彼のパートナーも、威勢よく飛び出した。

 「ティル、まずは…」
 「ちょっ、ちょっとライトさん! 待ってくれへんか」

何が何でも…、はい?!

 彼のパートナーが使える技をある程度把握している私は、先手を取られまいとすぐに指示を出そうとする。しかしそれは、わたしの5番手を確認したカエデさんの慌てた声によって遮られてしまった。

 「せっ…えっ? 待つって、何をですか?」

 もちろんわたしは、その意味が分からずに彼に迫る…。ティルも、その言葉に慌てて静止した。

 「その[マフォクシー]、[ライチュウ]の時のやろ」
 「そうですけど」
 「なら、別のポケモンやないとあかんな」
 《俺じゃあダメなの!?》
 〈残念だけど、それが決まりなんだよ〉

…でっ、でも、もうわたし達にはティルしかいないんだけど…。勝ち越しても負け越してもいないのに…。

 わたしは、それに言葉を濁す…。

 〈でもライト? もう俺しか残ってないんだよね?〉
 「うん。ラフが負けちゃって、テトラとラグナは引き分け…。だから戦えるのはもうティルだけだよ…」

…この場合って、どうなるんだろう…? もう戦ってるティルは、出場できない。だから、メンバーがいないわたしは、普通ならここで負け…。でも、4戦中1勝1敗2分け。

 〈なら、俺達の負け、だよね〉
 「うん。そう…、そう、だよね。ティルが戦えないなら、そうなる、よね…」

…ティル、きみもそう思うんだね…。

 パートナーと言葉を交わすうちに、わたしの脳裏に敗北の文字が浮き上がり始める。次第に声の調子も暗くなり、大きさも小さく…

 「いや、ライトさん、まだ終わっとらんで」
 「えっ、でも…」

なっていった。
 そんなわたしに、彼はそのままのトーンで言葉をかける。

 「ルールだと、もう戦えるメンバーが残って…」
 「おるやろ」
 〈…あっ、そっか! ライト、まだいるよ、戦える仲間が!〉

 腕を組んで考えていたティルは、何かを思いついたらしく、溌剌とした様子で声を張り上げた。

…急に大声出してたから、ちょっとビックリしたけど…。

 「その様子やと、マフォクシーは気付いたみたいやな」

…でも、どう考えてもいないよ、ティル以外に…。

 「…つまりライトさん、ライトさん戦えばええって事やよ」
 「わたしが、ですか」
 〈だって、ライトさんもポケモンでしょ〉

…うん、確かに、わたしは[ラティアス]だよ?

 「そうだけど、わたしは一応トレーナーって事になってるし…。そもそも、わたしって野生だから…」
 「博士から了承もらっとるから、特別や」
 「博士って、オーキド博士ですか?」
 「そう言う事や」

…先代の[ラティアス]と関わりがあったみたいだけど、それとは話が違うよね、絶対に。

 反論しても、カエデさんは一向に首を横に振らず、こう答える。

 〈ライト、折角いいよ、って言ってくれてるんだから、そうしようよ〉

 ついにティルまで、相手側に就いてしまった。

 「でも…」
 〈じゃないと、何のために勝ち抜いてきたの? 何のために特訓してきたの? …何のために、ここまで旅してきたの? もしここで負けを認めて戦わなかったら、この一か月間の努力が無駄になるよ〉

…確かに…。

 〈一緒に戦ってきたテトラ、ラグナ、それにラフが頑張ってくれたのに、それも無かったことになる…。せっかくチャンスを貰ったのに使わなかったら、それが無かったことになる…。みんなの事を考えると…、俺にはできないよ、諦めるって事を…。
 …ライト、パートナーとして言わせてもらうよ? 元々この地方にはいないはずの俺は、研究所で保護されてても、外に出ることは殆ど無かった。俺より先に、初心者用のメンバーとして旅立っていったひとを何匹も見てきた…。友達ができてもすぐに旅立っちゃってたから、表には出さなかったけど、寂しかった…。正直、諦めてたよ。…でもそんな時、ライトが来てくれた。ライトがこの地方でトレーナーになってくれたから、俺はライトと出逢えた。…本当に、嬉しかったよ!…だからライト、俺は戦ってほしい。俺を旅立たせて、パートナーになってくれたライトに、戦ってほしい。そして、勝ってほしい…。もちろん、ライトがポケモンでも、人間でも、この気持ちは変わらないよ。俺は、ライトに喜んでほしい! だからライト、請けよ、この挑戦を
 「ティル…」

 彼は私の方に向き直り、真っ直ぐ目を見て語る…。想いが乗った暖かい彼の言葉が、わたしの心を優しく包み込んだ…。

…はじめて逢った時、ティルは本当に嬉しそうだった。バトルで初めて勝った時も、そう…。二ビシティで味わった、初めての敗北…、ティルと経験した、いろんなひと達との出逢い、事件……。どれも…。

 彼との出逢い、思い出が、わたしの中を駆け巡っていく…。

 「…うん、ティル、ありがとう。この挑戦、請けるよ! わたしは1人のトレーナーであってポケモンでもある…。 ここまで一緒に旅してきた仲間…、ティル、テトラ、ラグナ、ラフのために…。カエデさん、わたしは[ラティアス]として戦います!」

 そして、わたしは遂に決心し、彼らの想いを受けながら、声を張り上げた。

 「だからティル、もしもの時は、よろしくね」
 〈ライトはこうじゃないと! うん、もちろんだよ〉

…ティル、みんなのためにも、全力で戦うよ。だから…。

 励ましてくれた、わたしの大切なパートナーに、わたしは声をかける。それと同時に、目を閉じ、意識を集中させ、光を纏う…。

 「カエデさん、お待たせしました」
 《みんなの為にも、戦います!》

 元の姿…、[ラティアス]のわたしは、彼に向けて言葉を念じ、士気を高めた。それと同時に、気持ちを戦闘に切り替え、真っ直ぐに対峙する相手を見据えた。




…カエデさんのフローゼルは一年前、“チカラ”が覚醒する前のシルクと互角の実力を持ってた。その時でもそのレベルだから、今はそれ以上…。当然、使える技の種類と使い方も、あの時とは違う…。
 それは、わたしも同じ…。一年前のわたしは、守られるだけの、弱い[ラティアス]だった。でも今は違う。この一年で、わたしは守られる立場から、守る側になった。だから……、





     カエデさん、覚悟してくださいよ!!

@ ( 2015/06/22(月) 23:31 )