[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜























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第11章 栄光への最終決戦
104 L 漲る闘志と武勇の第3幕
 リーグ 王者の間 Sideライト


 「ラグナ、ありがとね」
 「ジュゴンもよーやったな」

 わたし達のチャンピオン戦も前半戦が終わり、両者は気を失った戦士に一言声をかける。その彼らからは返事はないけど、たぶんわたし達の労いの気持ちはが伝わった、はず。

…ここまでの結果は、ラフが負けてラグナは引き分けだったから、0勝1敗1分け。今のところ敗け越してるから、あまり順調とはいえないかな。今残ってるのは、フェアリータイプのテトラと、炎・エスパータイプのティル。それに対して、去年からメンバーが増えてなかったら、カエデさんは炎タイプの[ウィンディ]と、ユウキ君の進化系でノーマル・電気タイプの[ライチュウ]。それから、忘れたらいけないのが、“チカラ”が覚醒する前のシルクとほぼ互角の実力だった、水タイプの[フローゼル]。相性的にティルは厳しいかな。でも、このままいくとサドンデスルールだと負ける…。だから、どうにかして流れを変えないと。

 わたしは倒れたラグナをボールに戻してあげながら、こう整理する。それと同時に相手のメンバーを思い出しながら、後半戦の作戦を練り直す。

…この次はテトラにいってもらうつもりだったけど、ティルに変わってもらった方がいいかな。テトラが頼りないっていう訳じゃないけど、わたしより実力が上のティルに戦ってもらった方が、チャンスがあるかもしれない。そうすれば引き分けの状態でテトラに戦ってもらえるから、わたしが勝てる可能性が高くなる…。だから…。

 「ライトさん、このままだと敗けてまうで」
 「そんなこと、わかってますよ。カエデさんこそ、油断しない方がいいですよ」
 「ということは、まだ手はある、ということやな」
 「当然です」

 知ってか知らないでかは分からないけど、カエデさんはわたしの様子を見て声をかける。その言葉には半ば挑発にも似たニュアンスが含まれているように感じられた。それにわたしは何とか平生を装い、同じように注意を促した、自分に言い聞かせるように。最後にわたしはこう断言し、三番手が控えるボールを手に取った。そして、わたし達はほぼ同時に戦士を出場させた。



――――


 Sideティル


 「ティル、ここから流れを変えるよ!」
 〈流れを…? うん!〉
 「[ライチュウ]、このまま圧しきるで!」
 〈当たり前じゃん!〉

 俺は焦りを必死に押さえるパートナーの声援を受けながら、仲間達が戦った戦地に出陣する。両足同時に着地し、相手との位置関係を確認する。その後、彼女の声のトーンから状況を判断し、自分がおかれた状況を認識した。

…ライトの様子からすると、あまり良くないのかな。待機してた時間から計算すると、たぶんこれからチャンピオンとの第3戦目。ここで俺が任されたってことは、ラフかラグナが負けちゃったってことだよね。だから、たぶんライトは俺が戦って、確実に勝つつもりなのかもしれないね。…なら、この後に控えてるためにも、絶対に勝たないと!

 俺はパートナーの言葉無しに、ここまで判断する。それから、彼女の方に振り返り、

 〈ライト、だいたい状況はわかったよ。ここで俺が勝てば有利になるんだよね〉
 「うん」
 《もし引き分けになったらまた戦ってもらう事になるかもしれないけど、大丈夫?》

俺が察したことを直接伝えた。それに彼女は頷き、その続きを俺の頭の中に語りかけてきた。それに俺も、言葉を発すること無くコンタクトをとる。振り返っていた顔を正面に向け、頷く。そうすることで、俺は背中で彼女の頼みに返事した。

…そういえばライト、俺の声に直接声で答えてたけど、よかったのかな?

 〈ごめん、待たせたね〉
 〈いいよいいよ、そんなに待ってないから。だって“テレぱシー”で作戦会議してたんでしょ〉
 〈えっ、なっ、なんでそ…〉
 〈[十万ボルト]!〉

…えっ、何でその事を知ってるの!?

 そう言おうとしたけど、相手の技によって書き消されてしまった。その結果、俺は驚きで出遅れてしまい、相手に先制攻撃を許してしまった。
 相手は俺が驚いている間に、電気袋にエネルギーを蓄える。そしてすぐにそれを解放し、バチバチ音をたてながら攻撃してきた。
 電撃の先端と俺までの距離は、だいたい6m。

…そんなことはどうでもいいから、今は戦わないと!

 〈何で知ってるのかは知らないけど…、[マジカルフレイム]!〉

 俺はふと湧きだした疑問を無理矢理塞き止める。咄嗟に口に炎を蓄え、念を混ぜながら一気に放出した。それらはちょうど俺たちの中間でぶつかり合い、激しい音と共に消滅した。
 その間に俺は足に力を込め、距離を詰めるべく走り出す。それと同時に、体温を一気に高め、それを熱波として耳から放出させた。

…たとえチャンピオンのメンバーでも、フィールドの温度が40℃を越えれば全力で戦えないでしょ?

 〈凄い熱…。ここまでの熱を出せる[マフォクシー]、はじめて会ったよ。[ボルテッカー]!〉
 〈でも俺の熱はまだまだ…。本気を出せばこんなものじゃないよ〉

…本当はもっと出せるけど、始めから飛ばしすぎるとね…。だから、まずはこのくらいから。

 相手は俺の威嚇に若干怯みながらも、何とか技を発動させる。さっき溜めていた電気を全身に纏わせて、全速力で駆けてきた。
 相手の言葉に、俺は冷静に返事する。5mまで迫られたタイミングで右斜め後ろに跳び下がり、懐に手を伸ばした。

 〈かわそうとしても無駄だよ!〉

 もちろんそれに相手も反応し、軌道を修正する。俺との向きを正確に合わせ、腹の辺りを狙って飛びかかってきた。

…でも、これは狙い通り…。

 〈かわすんじゃない、攻撃だよ! [サイコキネシス]!〉
 〈なっ…!〉

 俺は正面から迫る相手を超能力で拘束し、スピードを緩める。それを同時に、手を伸ばしていた懐からステッキを抜き放ち、居合いの如く切り上げた。空気との摩擦で、剣の軌跡に炎が描かれる。その結果、炎の斬撃は相手の顎をとらえた。見えざる力も借り、相手は真上に電気を纏ったまま飛ばされた。

…第一段階、突破。でも、このままでは終わらせないよ!

 〈[未来予知]〉

 相手が空中で身動きが取れない隙に、俺は次なる行動を開始する。相手を縛るのに使っていたエネルギーを祈りに変え、数分後の攻撃を準備した。それと同時に、振り上げた勢いをそのままに、縦に円を描いた。再び上に振ると同時に手を放し、降下を始めた相手を狙って投擲した。

 〈[アイアンテール]! 思うようにはさせないよ〉
 〈その言葉、そのまま君に返すよ。[サイコキネシス]!〉

…あの[アイアンテール]は、きっと、相手が地面タイプだった時の切り札だね。

 空中で体勢を建て直した相手は、長い尻尾を硬質化させる。それを体を回転させることで振り回し、俺が投げたステッキを叩き落とした。

…尻尾で叩き落とすのは良かったけど、俺なら技を発動させずに対処したかな。

 売り言葉に買い言葉で、俺は相手を言葉で牽制する。その後に中断していた超能力を再び発動させ、自分のステッキを拘束した。

 〈防がれたステッキをそのまま放置すると思った?〉
 〈くっ!〉
 〈[火炎放射]!〉

 それを巧みに操り、堕ちてくる相手を思いっきり殴りつけた。その真下に俺は移動し、エネルギーを炎に変換する。喉元に凝縮させ、それを3m上まで落下した相手めがけておもいっきり発射した。

…俺の計算が正しければ、あれがもうすぐ発動されるはず。だから、この調子で相手に攻撃させる隙を与えなければ、勝てるね!

 〈…っぐ!  !! 連続で…!〉

 2mまで落ちると、俺は炎ほはきだすのをやめる。代わりに左足を一歩下げ、射程を確認する。距離を調整し、それを基に勢いをつけて蹴り上げた。それは相手の顔面にヒットして弾かれ、弧を描くこととなった。

 〈これで決めさせてもらうよ! [火炎放射]、[サイコキネシス]!〉

 相手の高さが頂点に達した時に、俺は速行で炎を放つ。それをすぐに見えない力で拘束し、形を変えながら後を追わせた。二つに分け、針みたいに形成して、相手を左右から挟み込む。

 〈っ!〉

 そして、相手が地面に叩きつけられると同時に、それらを2方向から刺し込んだ。

 〈これは…、[未来予知]…。いつの間に…〉

 そこに俺が予言した攻撃も加わり、相手に大ダメージを与えることに成功した。そして彼は、悔しそうにそう呟くと、呆気なく崩れ落ちた。

…流石に、連続で攻撃しすぎたかな…。でも、引き分けまで持ち直すためだから、許してくれるよね?

■筆者メッセージ
あと2〜3話ぐらいで完結予定です
@ ( 2015/06/07(日) 01:09 )