5 L 秘密
昼過ぎ 1番道路 sideティル
ライト「なるほどね。 [ひっかく]と[尻尾をふる]、[火の粉]だね?」
ティル〈そうだよ!!〉
俺はパートナーになったライトに言った。
………あっ、俺はティル、よろしくな!
俺、実は一匹で迷ってる所を保護されたんだよ。
……ちょっと恥ずかしい話だけど……。
港で友達と遊んでいる時に脅かそうと思ってコンテナに隠れていたんだけど、来る前に扉が閉められちゃって出れなくなったんだよ……。
その時は正直焦ったけど、閉じ込められたのがたまたま木の実を積んだやつだったから何とかなったよ……。
それに………、俺達ポケモンの言葉が分かるなんて、この地方には珍しい人間もいるんだね…。
ティル〈ねえライト? さっそくバトルがしたいんだけど、いい?〉
俺は期待を込めて彼女に訊ねた。
ライト「うん。ティルの実力もみたいし、いいよ!」
ティル〈やった!じゃあさっそく……、あの[コラッタ]から……。〉
ライト、俺のバトル、ちゃんと見ててよ!
俺は初戦の相手を見つけるとすぐに走って接近した。
ライト「あっ、ティル……。………ティルって、せっかちなのかな?」
俺を追いかけながら、ライトは何かを呟いた。
………よく聞こえなかったけど……。
ティル〈そこの君、さっそく勝負だ!![引っかく]!〉
コラッタ〈えっ!? [体当たり]!〉
先手必勝!
俺は前脚の爪で相手をひっかいた。
それに応じて、相手も俺に突っ込んでくる。
ティル・コラッタ〈〈っ!〉〉
結果、相打ち。
俺の攻撃は相手を、相手の攻撃は俺を、それぞれ捉えた。
ライト「ティル、[尻尾をふる]で相手の守りを下げて!!」
ティル〈? うん、わかったよ![尻尾をふる]!〉
ライト、OK!
俺はライトの指示通り、尻尾を振って愛敬を振りまいた。
コラッタ〈? 余裕だね? [体当たり]!〉
ライト「かわして!!」
ティル〈っ!〉
守りを下げるのは成功したけど…、俺は…ダメージを受けた。
ライト「ティル、大丈夫!?」
ティル〈これくらい…平気だよ!〉
たった一撃で倒れる訳には…いかないよ!
俺は力強く答えた。
ライト「なら、もう一度[尻尾をふる]!」
ティル〈えっ!?二回も!? [尻尾をふる]!〉
何で!?
俺はライトの指示に疑問を感じながらも、もう一度繰り返した。
さっきので守りは下がってるはずだけど……?
コラッタ〈戦う気あるの? [体当たり]!〉
ライト「ギリギリまで引きつけて[引っかく]!」
ティル〈?……そっか!そういうことだね!!〉
ライト、作戦がわかったよ!!
[尻尾をふる]で相手を油断させておいて…一気に攻撃するんだね!!
俺はライトの意図を理解し、大きく頷いた。
その間にも、相手は俺との距離を詰める…。
その距離、4m………。
3m…………、
…………まだだ……。
2m………、
あともう少し。
1m………、
今だ!!
ティル〈[引っかく]!!〉
前に跳び、そのままの勢いで切り裂いた。
0m………。
コラッタ・ティル〈くっ!?………何……で……?〉〈よし、当たった!!〉
前に跳んだから、今度はダメージをうけずに攻撃できた。
俺の爪がまともに命中し、コラッタは崩れ落ちた。
やった!勝った!!
ライト「ティル、やったね!」
ティル〈うん!!俺、やったよ!!〉
俺はバトルの結果に興奮し、彼女の元に飛びこんだ。
バトルって、本当に楽しいね!!
ティル〈野生で勝てたから、今度はト……〉
???「お前がトレーナーか……。笑わせるな……。」
俺が話しているところに、誰かが割り込んだ。
ライト・ティル「えっ!?ガンマ!?どうしてここに!?」〈さっそく来た!!〉
探さなくても来てくれたなんて、ツイてるよ!!
ガンマ「それは言わなくても分かるだろ?[グラエナ]、あのポケモンに[噛み砕く]だ!!
おまけにバトルなんて……最高だよ!
ライト・グラエナ「くっ…。!? ティル!!相手が悪いよ!!今すぐ引き返して!!」〈ハァ……。いい加減諦めたらどうだ………。〉
ティル〈[火の粉]!!〉
この人はポケモンを出し、技を指示した。
俺も、迎え撃つため、火片を放出した。
さっき勝った俺なら……いける!!
グラエナ〈誰かは知らんが……効かないな……。〉
ティル〈えっ!?嘘でしょ!?〉
!?
俺の最大威力の技なのに、全然効いてない!?
自信過剰になっていた俺は突然現実に引き戻され、呆然と立ち尽くした。
…………恐怖で………身体が………動かない………。
俺は大ダメージを覚悟して、目を堅く閉じた。
ライト「ティル!! ………仕方ない………こうなったら………………」
???〈[サイコキネンシス]!!〉
ティル・グラエナ〈〈!?〉〉
えっ!?何!?
俺は何か見えない力で強く引っ張られた。
こんな状態の俺の上を、1つの赤い陰が通過した。
???〈ティル、相手が悪すぎるよ。だからここはわたしが行く!!〉
その影が、俺の目の前に降りたった。
全体的に赤と白で、飛行タイプ……なのかな?
翼があって、浮遊している……。
ガンマ「やっと正体を現したか……」
………でも………この声……、もしかして………、
ティル〈ライト…………なの?〉
半信半疑で、パートナーの名前を呼んだ。
ライト・ガンマ〈ティル、訳は後で話すよ!![ミストボール]連射!!〉「[悪の波動]だ!!」
グラエナ〈[悪の波動]!〉
やっぱりこの声、ライトだ!
でも、どうして!?
相手は漆黒の波を発生させ、ライト?は真っ白な弾を3発飛ばしながら上昇した。
何をするつもりなんだろう……?
黒い波と純白の弾は衝突し、後者は消滅した。
ええっと、ライトは………?
えっ!?もうあんなところに!?
凄い!!速い!
もしかして、相手の気を逸らす作戦だったの!?
ライト〈[竜の波動]!!〉
ガンマ「!?上だ!!」
グラエナ〈上!?〉
ライトはいつの間にかグラエナの真上に移動し、暗青色のブレスを放った。
グラエナ〈ぐっ………。だから言っただろ……………。諦めろって…………。〉
それだけ言って、崩れ落ちた。
ライト、強いよ……。
ライトって、人間なの……?
それとも、ポケモンなの…?
指示に気迫があったし………、でも技の威力が高かった……。
本当に、どっちなの?
ライト《何でわたしにこだわるのかは知らないけど、いい加減諦めたらどうなの?》
ガンマ「それはお前が希少なポケモンだからな……、[ラティアス]!」
えっ!?今度はなに!?
ライト、喋ってないのに声が響いてる!?
それに、あの人と会話が成り立ってない!?
ライト《だからって、わたしに付きまとわないでよ!!〈》[サイコキネンシス]!〉
ガンマ「ぐっ!!」
ライトは半ばキレ気味であの人を超能力で拘束した。
ライト〈ティル、このストーカーから逃げるよ!!〉
ティル〈えっ?あっ、うん。〉
ライト〈背中に乗って!〉
ティル〈でも、どうやって乗ればいいの?〉
ライトは俺のほうに飛んで来ながら言った。
ライト?浮いてるから俺じゃあ届かないよ……。
ライト〈そうだったね。[サイコキネンシス]!〉
ティル〈!?……痛くない……。〉
ライトはあの人を縛りつけた技を俺にかけた。
同じ技なのに、痛くない!?
俺は身体の内側から持ち上げられ、宙に浮いた。
ライト〈強さを調整してるからね。じゃあいくよ!〉
俺の脚がライトの背中につくと、技は解除された。
ティル〈う、うん。〉
そして、俺を乗せたまま高度をあげた。