3 L 迷い狐
正午 船上 sideライト
アナウンス{間もなく、当船は[マサラタウン]に到着いたします。}
オルト〈もうすぐ着くらしいな。〉
甲板のベンチに座って思い出話に華を咲かせていると、待ちに待ったアナウンスが流れた。
いよいよ………、わたしの旅が始まるんだ……。
ライト「うん!じゃあ降りる準備しよっか。」
オルト〈そうだな。〉
今ぐらいから出口に向かえば、丁度いいよね。
わたし達は座っていたベンチを離れた。
そしてわたしは乗る前に買った乗船券を取りだした。
…………あっ、そっか。
オルトの場合、ポケモン一匹だけだから実質無料だっけ?
第一に、文字を読み書き出来るポケモンは滅多にいないもんね!
わたしはそれを係の人に渡し、未知なる大地に足を踏み入れた。
……………
マサラタウン 研究所前 sideライト
ライト「この建物がそうなの?」
わたしはオルトに導かれ、ある建物の前にたどり着いた。
オルト〈ああ、そうだ。〉
ライト「ここがね。 オルトは書類を届けるために来たんだっけ?」
オルト〈ユウキの知り合いに頼まれてな。ライトはここでトレーナーの登録をするために来たんだろ?〉
オルトは掛けている鞄から1つのファイルを取りだしながら言った。
いわゆる、配達かな?
ライト「うん。」
オルト、そうだよ。
わたし達はそのまま、研究所の入り口をくぐった。
………
研究所内 sideライト
ライト「すみませーん、オーキド博士はいらっしゃいますか?」
入るや否や、わたしは大声でその人の名前を呼んだ。
オルトの話だと、ポケモンに関する研究の第一人者みたいだよ。
どんな人なのかな?
???「おー、来たか来たか。君がライト君じゃな?」
ライト「はい!」
わたし………女なんだけど……、君って………。
研究所の奥から、1人の老人が姿を現した。
オーキド「連絡はしっかり受け取っておるぞ。トレーナー登録じゃな?」
ライト「お願いします!」
オーキド「なら、この書類に必要事項を書いてもらおうかな?」
そう言って、彼は一枚の紙とペンをわたしに手渡した。
必要事項って、住所とか生年月日とかかな?
わたしはその紙の上でペンを走らせた。
ええっと、住所は……[南の孤島]でいいのかな………?
僻地だから知られているか分からないけど……。
とりあえず、それに書き込んだ。
オーキド「………1つ聞くが、ライト君、君はポケモンを連れているかな?」
ライト「えっ、ああ。誰もいないです。」
書き終えたそれを手渡すと、不意に質問された。
いきなりだったから、わたしは変な声をだしてしまった。
オーキド「そうかそうか。 ………じゃが、あいにく最近この町から新人トレーナーが旅立ってしまって初心者用のポケモンが残っていないんじゃよ……。…」
ライト「そうですか……。」
オルト〈ライト……、タイミングが悪かったな……。〉
ポケモンを持ってない新人トレーナーは最寄りの研究所でもらえる事になっているんだけど…、今はいないんだ………。
初めての出逢いに期待したけど、残念だ………
オーキド「…おおー、そうじゃった!!確かあのポケモンがおったな! ライト君、ちょっと待っていてくれんかな?」
ライト「はい?」
…よ………えっ!?
わたしはその言葉に耳を疑った。
わたしの反応を待たずに、彼は奥に走っていった。
……?
わたしは訳が分からず、首を傾げた。
数分後
オーキド「すまないな。待たせてしまったな。」
ライト「いいえ、大丈夫です。」
何分かすると、彼は1つのモンスターボールを手にとって戻ってきた。
オーキド「なら、このポケモンの面倒をみてもらおうかな?」
そう言い、彼は一匹のポケモンをボールから出した。
???〈? あれ?いつもと時間が違うような……?〉
そこには、全体的にクリーム色で、耳元に赤いアクセントがある狐みたいなポケモンがキョロキョロと辺りを見渡していた。
種族………分からないよ……。
ホウエン地方にいないポケモンっていうのは確かだね……。
ライト「博士?このポケモンは……?」
わたしは彼にそのポケモンの種族を訪ねた。
ここの地方にいる種族なのかな……?
オーキド、このポケモンは遠くの地方に生息する、[フォッコ]というポケモンじゃ。」
ライト「[フォッコ]……?」
オルト〈確か、[カロス地方]にしかいない種族だったな。〉
[カロス地方]………?
フォッコ〈もしかして、俺もやっと旅に出れるのかな!? きっとそうだな!!俺はティルっていうんだ!よろしくね!〉
せっかちなのか、ティルという彼は早々と自己紹介した。
すぐに答えたいのは山々なんだけど……、ポケモンと話せる人は滅多にいないし……、後々面倒だからな………。
だから、わたしはにっこりと笑顔で、彼の言葉に答えた。
オーキド「そうじゃ。頼んでもいいかな?」
ライト「わたしでよかったら、喜んで!!」
博士、ぜひ、お願いします!!
オーキド「そうか。なら、頼んだぞ!」
ライト「はい!!」
ティル〈やった!!〉
任せてください!!
わたしは大きく頷いた。
ティル、これからよろしくね!!
…………
マサラタウン sideライト
あの後、わたしはオルトの事を待とうかと思ったけど、彼に〈長びくから俺の事はいいから行っててくれ。パートナーと話したいだろ?〉って言われて……。
オルト、相変わらず勘が鋭いよ………。
って訳で、わたし1人で研究所から出てきたんだよ。
ライト「……へぇー。ティルっていう名前なんだー。」
ティル〈えっ!?俺の言葉が分かるの!??〉
頃合いを見て、わたしは徐に彼の名前を呟いた。
もちろん、人間と会話するのは初めてなティルは、凄い表情で驚いた。
ライト「ちょっと訳があってね。 わたしはライト、これからよろしくね!!」
わたしはしゃがんで、ティルに話しかけた。
ティル〈訳………?まっ、いっか。よろしくね!〉
少し考えて、うん、って頷いた。
………やっと話せたよ………。
ティル、改めて、よろしくね!