66 L 集いし四匹
正午過ぎ 街道(ヤマブキ⇔シオン) Sideライト
テトラ〈……私はこんな感じかな。ライトにティル、ラグナは何をしてたの?〉
ティル〈俺はずっと特訓だな。 ラグナは?〉
ラグナ〈俺も同じような感じだな〉
太陽の位置が少しだけ低くなってきた昼間の街道に、わたしを含めた4つの声が一か月ぶりの再開に歓喜に沸き立っていた。そのわたし達の心情を表すかのように空は澄み渡り、秋の風が軽快なメロディーと共にみんなの傍を駆け抜けていった。
……本当にみんな、久しぶりだね!
みんなとは行先が全然違ったから全く会えなかったんだよね!
わたしの前半はヒイラギがいる[ヤマブキシティ]で仕事の手伝い、そして後半がシルクと技の特訓……。シルクとは殆どここにしか来てなかったから「[ヤマブキ]から出てない」って言っても過言じゃないかな?
次に「シオンタウン]に行ってたティル。
ティルはハートさんとルクスさんに特訓してもらってたみたい。たまたま一昨日会った時に見たんだけど、わたしが思ってた以上に強くなってたんだよ。技と身のこなしは言うまでもないけど、戦略が凄く変わってたかな?前はスピードを生かした戦い方だったんだけど、一昨日手合せした時は遠距離と近接、その両方をうまい具合に使い分けてた。[サイコキネシス]も完全に使いこなせていて、わたしの[龍の波動]を受け流していたんだよ!
……わたしも負けてられないね!
その次はテトラ。テトラもこの一か月で特訓してたみたいだね。まだテトラの戦いは見てないけど、「私、[ムーンフォース]が使えるようになったんだよ!」って言ってた。[ムーンフォース]はフェアリータイプの中でも上位に位置する技……、もしテトラと戦う事になったら油断はできないね。
……フェアリータイプって、わたしの弱点だし……。
最後はラグナ。ラグナはリーフとイッシュ地方を旅してたみたい。使える技は殆ど変らないみたいなんだけど、リーフが言うには「僕が偉そうなことは言えないけど、ラグナさん、判断力と話術が凄い事になってる」……らしい。一か月前も凄かったのにそれ以上って……、わたしには全然想像できないよ。
……もしかするとエスパータイプ並みの推理を発揮するかもしれないね!
……みんなも強くなってるみたいだし、これからが楽しみだよ!
ライト「…そっか。みんな結局は特訓がメインだったんだね」
……やっぱりみんな考えてる事、同じだったんだね。
わたし達は久しぶりの仲間との話に興奮しながら、互いの軌跡を分かち合った。その散らばっていた4色の道が、わたしのはこの秋空の元で再び混ざり合ったような気がした。
テトラ〈当たり前でしょ?私達、この地方のジムを巡ってるんだよ?〉
ティル〈その後にはリーグもあるんだし、強すぎるぐらいが丁度いいでしょ?〉
ラグナ〈それに俺達が戦わなければトレーナーのライトは誰が守る?アイツから守れるのも俺達しかいないだろ?〉
そんな私の言葉に、パートナーの[マフォクシー]をはじめとした仲間たちが当然とばかりに声を揃えた。
…みんな、頼りにしてるよ!
ライト「みんな、ありがとね。……じゃあ、みんなの一か月も聞けた事だし、ジム巡り、再会しよっか!」
そして、わたしは頼れる仲間に順番に視線を送り、高らかに宣言した。
ティル〈もちろんだ!〉
テトラ〈うん!〉
ラグナ〈…となると、次の目的地は[セキチクシティ]だな〉
…そうだね。
今わたし達が制覇したジムは7か所。あと[セキチクシティ]を攻略すればリーグに挑戦できる……。……[シオンタウン]のは勝ち抜いたとは言えないけど……。
わたしの号令に、みんなの声が幾多にも反響した。
そしてわたし達は溢れる闘志と共に次なる目的地への再スタートを切った。
……みんな、いくよ!!
…………
数十分後 シオンタウン Sideライト
テトラ〈……やっぱり話してるとあっという間だね!〉
ティル〈さっき出発したばっかりなのにもう[シオンタウン]だよ〉
…うん、本当にそうだね。
…でも、結構時間経ってるのかな?さっきまでは全然長くなかったのに今は自分の影がハッキリとわかるよ。[ヤマブキ]からここまでは飛ばなかったら一時間ぐらい使っちゃうから、きっとそうだね。
久々の雑談に華を咲かせているわたし達は順調に突き進み、気がつくとジムがあるタワーがそびえ立つ地下都市に辿りついていた。いつもならある程度はいる地上には三連休という事もあって人影は少なく、そこにはわたし達以外に僅かばかりの通行人と[ポッポ]や[オニスズメ]達の
囀りだけが響いていた。
ライト「うん。まさかこんなにすぐに着くとは思わなかったよ」
ラグナ〈……だな〉
ティル〈そうだな。…[ヤマブキ]と[シオン]ってこんなに近かったっけ?〉
テトラ〈うーん……、私はちょっと分かんないかな…?前来た時は私達、ボールの中だったし、地下鉄使ったから歩いてないもんね〉
…あの時は丁度通勤ラッシュだったから仕方ないんだけど……。
ライト「そうだ………」
A「私もこんなに早く会えるとは思わなかったよ!」
ライト「ひゃっ!!」
……!!!
何!!?
ティル達との会話に夢中だったわたしは、背後から忍び寄る人影に気付くことが出来なかった。その影の主は突然にわたしの肩を軽くポンポンと叩き、その対象を驚きと共にとびあがらせた。
……効果は……抜群……。
………ビックリした………。
ティル・テトラ・ラグナ〈〈〈!?〉〉〉
ティル達も不意を突かれたらしく、わたし程じゃないけど驚いていた。
予想だにしない奇襲のせいで早鐘を打つ鼓動と共に、わたしはその方に振りかえった。
ライト「……レイちゃん……、ビックリさせないでよ……。…わたし、エスパータイプなんだから……」
レイ「だってここまで驚いてくれるのはライトちゃんぐらいしかいないんだもん。…それにゴーストタイプ使いにとって人を驚かすのは本職でしょ?」
わたしが振り返ると、まるで悪戯を成功させたような子供のような笑顔を魅せている少女……、わたしの秘密を知っている数少ない人物でここのジムリーダーの友達がそこにいた。
テトラ〈…ライト、また驚かされちゃったね〉
ラグナ〈100点のリアクションだったな〉
ライト「ははは……。……そっ、そうだね……」
そんなわたしは、彼女達の言葉に空返事しか出来なかった。
ティル《ちょっと違うけど、俺も含めて弱点だから仕方ないよ……》
……ティルも、一緒だったみたい……。
わたしと同じエスパータイプを持つティルも、明らかに動揺しながら言葉を念じた。
レイ「!?テレパシー!?誰なの?!」
ティル《俺だよ。今は[マフォクシー]だけど、ジム戦の時の[テルーナー]……。覚えてるかな…?》
わたしの代わりに、ティルがテレパシーという名の武器で反撃し、もう一つの声が驚きでとびあがっていた。