[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜























小説トップ
第9章 積み蓄えし成果
80 L 改心
午後 セキチクシティジム前 Sideライト


ライト「ティル、ラフ、お疲れ様。テトラにラグナもお待たせ」

 最後のジム戦も無事に幕を閉じ、一度メンバーを戻したわたしは彼らに労いの言葉をかけた。それと同時に戦わなかったテトラとラグナが入るボールにも手をかけ、同じタイミングで出してあげた。

…いつもはジム戦が終わっても戻さないんだけど、今日は違う……。その理由は分かるよね?……そう、ラフが発動させた[滅びの歌]。あのまま出てたら何もしなくても力尽きちゃうでしょ?本当はもう少し早めに指示して発動してもらうつもりだったんだけど、ラフが思った以上に速く動いてくれたからタイミングを逃しちゃったんだよ。だからラフの[電光石火]で倒せなかった時の保険として発動してもらったってワケ。
 ……えっ?なら何でポケモンのわたしは戦闘不能になってないのかって?そっか、それも説明しないといけないね。まずラフに指示をしたのはわたしっていうのはいいよね?だからそこは省略するよ。…確かにわたしは元々[ラティアス]だから人間の姿でも[滅びの歌]の対象になる……。でもそれは歌を聴いたらの話し。だからレイちゃんにお願いしてジムに来る前に雑貨屋に寄ったんだよ。何を買ったのかは言わなくてもわかるよね?……そう、ある程度の音を遮断してくれる耳栓。これさえすればちゃんと聴き取れなくなるでしょ?だからわたしは倒れなかったんだよ。
 [滅びの歌]はポケモンにしか効果を発揮しないから、もしかすると元々人間のユウキくんに使っても意味が無いかもしれないね。

テトラ〈ラフちゃん、初めてのバトルがジム戦だったけどどうだった?〉
ラフ〈すごく楽しかったよ!それにティルお兄ちゃんにいろんな事教えてもらったからあんまりダメージをうけなかったんだよ〉
ラグナ〈なるほどな。…っという事は最後はやはりティルだな?〉
ティル〈ううん、違うよ。二匹目を倒したのはラフ。先にまわり込んでもらって[電光石火]をお願いしたんだよ〉

 まず色違い特有の効果と共に飛び出したテトラは2〜3回翼を羽ばたかせて着地したラフに試合の感想を訊ねた。その彼女は目を爛々と輝かせながら朗らかに言い放った。それから向けていた目線をティルに変え、率直な感想を午後の風に解き放った。彼女の言葉からバトルの様子を推測していたであろうラグナは〈納得〉と言った感じで頷いた。そしてその仮説を訊ねるようにわたしのパートナーへと話題をふった。初めてのバトルで慣れていないラフを守りながら戦ってくれたティルは首を横に振りながら答えた。そして簡単に説明を始め、最後に〈だから今回の俺は防戦だったかなー〉と言って話を締めくくった。

…ティルの実力なら、もしかすると2対1でも勝ってたかもしれないね。この一か月間、ハートさんとルクスさんに特訓してもらってたのもあるけど、やっぱり流石って感じだね。ラグナは別として一番戦闘経験があるのはティル。話からして休暇の全てを特訓に使ってたのもティルだけ。パートナーとして頼もしい存在だよ。

ライト「攻めるなら武術を使ってるはずだもんね。……ところでレイちゃん?」
レイ「っん?ライトちゃん、どうしたの?」

 と、ここでわたしはアンズさんと話していたレイちゃんに徐に話しかけた。当然心の準備が出来ていないレイちゃんは変な声をあげ、彼女にしては珍しく驚いていた。

ライト「レイちゃんってこの後どうするの?中途半端な時間だし……」

…読んでくれてる人には分からないと思うけど、今の時間は午後4時半ぐらい……。何かをするにしても中途半端過ぎて始められない時間なんだよ。何かをしようと思っても中途半端になっちゃうし、何もしないにしても陽が沈むまでまだ時間がある……。わたしはもう決めてるけど、レイちゃんはどうするんだろうね?

レイ「私は5時ぐらいにシオンに帰ろうかなって思ってるよ。そのくらいにしかバスがないからそれまでアンズさんと話してくつもり」
アンズ「セキチクみたいな田舎に来る人はあまりいないから仕方のない事だけど…。10年ぐらい前まではサファリゾーンがあってそこそこ賑わってた……」
レイ「ライトちゃんは?」

…そういえばシオンからここに来るまでに一台もバスを見なかった気がする……。

 彼女は左腕の時計を見ながら呟き、その目線を目の前にいるアンズさんにチラッと変えてから言った。アンズさんは半ばため息交じりに言の葉を紡ぎ、言い切る前にレイちゃんによって遮られてしまった。

ライト「わたしはこのまま一度マサラタウンに行くつもりだよ」
テトラ〈マサラタウンに?もうすぐ夕方なのに、何で?セキチクに泊まらないの?〉

 わたしの提案に、多分ここでゆっくりするつもりだったテトラが首を傾げながら疑問を投げかけた。

ティル〈そっか。研究所でリーグに挑戦する………〉

A・ティル「やっと見つけた……」〈ために……!!〉

…ティル、あってるよ。

 この後の予定を言おうとしているわたしの代わりにティルが……!!

…えっ!?また!?

 わたしの代わりに予定を言おうとしたティルの言葉を遮って、ある人物がわたしの元を訪ねてきた。

ライト・ラグナ「ガンマ、いい加減しつこいよ!!」〈カトル!まだ諦めてなかったのか!〉

ティル・テトラ〈どうせまたライトを狙うつもりなんでしょ!〉《ライトには指一本も触れさせないよ!!》

 振り返ると、そこには密猟組織の元幹部(わたしにつきまとうストーカー)が息を切らせて立っていた。
 その男の事を知ってるラフ以外の3匹はわたしの前に立ち、戦闘態勢に入った。真っ先にわたしの正面に立ったラグナは体勢を低くし、牙をむき出しにしながら嘗てのパートナーを睨む。テトラはその左側に出て声を荒げ、ティルは真っ先に懐に手を伸ばし、炎を帯びるステッキを構えた。

ラフ〈この人、知り合い……〉
ティル〈この人はライトを捕まえようとしてる密猟者なんだよ!!〉
ラフ〈密猟……〉
ラグナ〈人目も憚らず(はばからず)執拗に追い回す様な奴だ!〉
ライト「だからティル、テトラ、ラグナ、今日はやられる前に……」
ガンマ「待ってくれ!!

…わたしの前に現れたって事は絶対にそう…。ガンマと会ったときはいつもそう……。だから今日もわたしを捕まえにきたに違いない!!

 訳が分からずあたふたしているラフにティルは吐き捨てるように言い放った。続いてラグナは複雑な思いを胸に秘めながら言葉を噛みしめ、完全に敵意をむき出しにして再び睨みつけた。
 一方のわたしは立ちはだかるように前に出た三匹に指示を出す為に………はい?!
 そのわたしの声を事の元凶が大声で遮った。

ガンマ「俺もいい大人だ。…だから[ラティアス]!もうお前を追い回すような事はしない!」
ライト「追い回さない!?一体わたしに何年付きまとってると思ってるの!今更そんな事言っても絶対に信じないからね!!わたしだけならともかくお兄ちゃんにまで手を出そうとしたんだから!!
ガンマ「頼む!!俺の事を信じてくれ!!
ライト「絶対に嫌だよ!!

…ガンマ今までわたしにしてきたことを分かってるの?付き纏うだけ付き纏っていきなり「信じろ」だなんて、都合が良すぎるにも程があるよ!!第一にポケモンを道具としてしか見ていない人の言う事なんか誰が信じるの?そんなの、同じような人しかいないよ!!

 彼の無理な頼みを聞いたわたしは急に頭に血が上り、怒りを顕わにしながら対象に罵声を浴びせた。もちろんそれだけでわたしの十何年分の“怒り”は治まるはずもなく、むしろ感情が爆発する結果となった。

ガンマ「俺の事を許せとは言わない!!だから頼むから俺のいう事を……
ライト「何回言ったら分かるの?どれだけ頭を下げても絶対に許さないよ!!
ガンマ「頼む……!!」
ライト「そもそも他の人の気持ちを考えたことあるの?ラグナの事だってそう。あれだけ信じてついてきてくれてたラグナを道具扱い……。パートナーに裏切られたラグナ……[グラエナ]の気持ちを一度でも考えたことあるの?ラグナは組織を追放されてからは〈ガンマに元の自分を取り戻してほしい〉って願ってた……。折角パートナーがそう思ってくれてたのにその思いを踏み躙る(ふみにじる)なんて……、人間のする事じゃないよ!!
ガンマ「だから……
ライト「そんなにわたしを捕まえたいなら、いいよ。わたしが直接相手してあげる……。その代わり手加減はしないからね!!さぁ、かかってきなよ!!そのポケモンじゃなくてトレーナーに攻撃させる、卑怯で卑劣な方法でね!!
テトラ〈ライト……気持ちは分かるけど落ち着い……〉
ライト「わたしは逃げも隠れもしない!ガンマのメンバー全員でこの一匹の[ラティアス]を捕まえてみなよ!!
ティル〈ライト、テトラの言う通りまずは落ち着いて!この人はメンバーを出してないし本当に……」
ライト「ティルは黙ってて!!!これはわたしの戦いだから!!〈」[ミスト……]……

 わたしは姿を元に戻し、手元に………

ラグナ〈[影分身]………[悪の波動]!!……ライト……すまな……〉

純白の……っぐっ……!!

 怒りを爆発させるわたしの意識は急に襲った痛みによって薄れていった………。


…………

   Sideティル


ライト「ティルは黙ってて!!!これはわたしの戦いだから!!〈」[ミスト……]……
ラグナ〈[影分身]………[悪の波動]!!……ライト……すまない………〉

 完全に負の感情に支配されたライトは姿を元に戻し、“怒り”に身を任せて膨大なエネルギーを手元に凝縮させ始めた。
 その彼女の様子を見たラグナはやむを得ないといった様子で分身を8体も創りだした。そして本人を含めた9匹で彼女を取り囲んだ。その後完全に前が見えなくなってるライトに向けて断腸の思いで暗黒の波動を解き放った。弱点の属性をうけたライトはその技によって撃ち落とされ、地面に墜落すると同時に気を失った。

…あんなにキレたライト、初めて見たよ……。一応俺も[サイコキネシス]で止めようとしたけど無理だった……。“怒り”で満たされてたから人間の姿だったけど無意識のうちに振り解かれた……。
 ……確かに、ライトの気持ちも分かるけど………。

ガンマ「………」

 怒りで我を忘れていたライトに土下座までしていたガンマは、彼女の様子に言葉を失っていた……。

テトラ〈ライト………〉
ラグナ〈………〉
ガンマ「……信じる訳……ないよな……」



 辺りには沈黙と重苦しい空気だけが流れていた………。


ラグナ〈………ティル〉
ティル〈……ん?ラグナ、どうかした……?〉

 夕焼け色に染まった空の下、気まずい空気の中でラグナが俺に向けて重い口を開いた。

ラグナ〈通訳……頼んでもいいか?〉
ティル〈いいけど……、何で?〉
ラグナ〈カトル……、いや、ガンマと……話がしたい……〉

…ガンマと………?

テトラ〈ライトに散々付き纏った……あんな奴と……?〉
ラグナ〈ああ……。何があったのかは知らないが、昔のあいつに戻っていた気がしたからな……〉
ラフ〈昔……?昔って…?〉
ラグナ〈俺があいつのパートナーだった……組織に入る前のあいつにな……〉

…組織に入る前……?……そういえば、ラグナが仲間になった時、〈俺達は組織を追放された〉って言ってたっけ?幹部だったみたいだから、相当前になるだろうね……。

 辛うじて声を絞り出すラグナはその人の方をチラッと見、一言一言言葉を選びながら話す…。

ティル〈組織の……?うん、わかったよ〉

 その彼の頼みに俺は二つ返事で承諾した。

ティル《……ええっと、ちょっといいですか?》
ガンマ「………?…誰だ?」

 そして、その人に俺は声を発する事なく会話を試みた。

ティル《俺はライト……[ラティアス]のパートナーの[マフォクシー]なんですけど、この[グラエナ]が話したい事があるみたいです》
ガンマ「グラエナが……?」
ティル《うん。このグラエナの事は知ってますよね》
ガンマ「知ってるも何も…、俺のポケモンだったグラエナだ…」
ティル《彼が君と〈話がしたい〉って言ってるんです〈》ラグナ、話して〉
ラグナ〈なら、頼んだぞ。……カトル、どうしてあれほどこだわっていたライトを諦めようと思ったんだ〉
ティル《〈どうして[ラティアス]を捕まえるのを止めたんだ?〉って言ってます》
ガンマ「やっぱりそうだったか……。それはあるポケモンに出逢って諭されたからな……。一週間ぐらい前だ…。懲りずに[ラティアス]を探していた俺はあの考古学者の[コバルオン]に出逢った…」

…[コバルオン]って事は、きっとコルドさんだね…。

 彼は通訳する俺を通して嘗てのパートナーと話始めた。

ガンマ「その時の俺は当然トレーナーのポケモンにもかかわらず捕まえようとした。…その時そのポケモンは何かの能力を使ったのだろう…。白く光る角で俺を貫いた…。気付くと俺はポケモンセンターのベッドの上で寝ていた。だが貫かれた俺の腹には傷一つなかった。その時そのポケモンに言われた……、《あなたの悪しき心を浄化させていただきました》と…。…それからだな…、俺の考えが変わったのは…」
ラグナ〈なるほどな……。お前が何故心構えを変えたのかは分かった。次はどうしてまた俺達の前に現れたかだ〉

…そっか…。だからライトを目の前にしても捕まえようとしなかったんだね?それにコルドさんの能力って事は、コルドさんの種族が持ってる“チカラ”のことかもしれないね。心構えが変わったって事はこの人の“悪しき心”はライトを執拗に追い回す事だったのかもしれない…。

ティル《〈何で襲わなかったのかは分かったから、今度はどうして俺達に会いに来たのか聞きたい〉だって〈》ラグナ、俺も気になるよ〉

…なら、こうなる事が分かってるはずなのにどうして来たんだろうね…?

ガンマ「俺がラティアスに会いに来た目的は二つ……。一つ目は散々付き纏ってストーカーじみた事をし続けた悪行を謝る為だ…。…だかこうなってしまっては無理だよな……。二つ目は……、グラエナ、また俺と昔の様に旅をしてくれないか?」
ラグナ〈……カトル……、お前とか……〉

…ラグナって元々はこの人のメンバーだったもんね……。一度拒絶したとはいえ長い間苦楽を共にしてきた大切な存在……。もちろん俺達の事も大切だと思ってるはずだけど………、ラグナはどうするんだろう……。

 話し始めた時には朱かった空はいつの間にか暗くなり、辺りには白く輝く星が散りばめられていた。
 かつてのパートナーに究極の選択を迫られたラグナはそれを復唱すると黙り込んでしまった。

ティル〈…ラグナ……〉
ラグナ〈ティル、テトラ、そんな事、言わなくても分かるだろ?〉

ティル・テトラ・ラフ〈〈〈……えっ…?〉〉〉

…〈言わなくても分かる〉って事は……まさか……。

 ここまで共に旅をしてきた俺と、多分テトラも、それぞれの脳裏にある単語が過った。
 それに対して、その事について決断をしたラグナの表情に迷いは無く、清々しい顔をしていた。

ラグナ〈テトラ、[フラッシュ]で照らしてくれるか?〉
テトラ〈いいけど…、何で?ティルに伝えてもらえばいいと思うんだけど……〉
ラグナ〈これだけは俺の言葉で直接伝えたい…。ティルも、いいか?〉
ティル〈って事は、俺は[サイコキネシス]で維持すればいいね?〉
テトラ〈うん……。[フラッシュ]…〉
ティル〈[サイコキネシス]〉

…って事は、筆談で伝えるつもりなんだね…?

 彼に言われたままテトラは触手に妖艶なエネルギーを蓄え、それを発光させずに俺に向けて撃ちだした。その弾を俺は超能力で受け止め、決意に満ちたラグナの方に移動させた。
 そして、簡易的な照明に照らされたラグナは自身の右前足でスラスラと空中に文字を描き始めた。



■筆者メッセージ
ラグナはどっちのトレーナーについてゆくと決めたのでしょうか…?気になる真相は次回明かされます。
@ ( 2015/03/04(水) 21:49 )