[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜 - 第9章 積み蓄えし成果
78 L 対面
午後 セキチクシティ付近 Sideライト


レイ「…ねぇライトちゃん?」
ライト《ん?レイちゃん、どうしたの?》
レイ「さっきの群れの[チルット]、ついてきちゃってるけどいいの?」

 海岸で休む[チルタリス]の群れと別れて数分後、わたしの背中に跨っているレイちゃんが多分斜め後ろの方を見ながら首を傾げた。問われたわたしは彼女の方をチラッと見、声ではなく言葉を念じて彼女の疑問に答えた。午後の空を滑空するわたしのすぐ後ろには平均よりも小さめの[チルット]が続き、遅れまいと必死に綿みたいな翼を羽ばたかせていた。

…さっきの会話、普通の人間のレイちゃんには聞こえてないから仕方ないよね?わたしが“テレパシー”で通訳してたら話は別だけど、ポケモンの方が文字を書かない限り直接は分からないもんね?
 …あっ、そうそう。さっき加わったラフちゃんはまだ野生の扱い…。姿を変えれるわたしは例外だけど、ポケモンがポケモンを捕まえるって変でしょ?それにずっとレイちゃんを乗せたままだから急に姿を変える訳にはいかないし、何より一々変えてたら時間がかかっちゃうでしょ?だからまだ野生のままなんだよ。

ライト《うん。彼女とはホウエンにいた時からの知りあいでね、次会った時に一緒に旅をする約束をしてたんだよ〈》ラフちゃん、このくらいのスピードでいい?もうすぐ着くけど…〉
ラフ〈うん!群れで移動するときけっこう早かったから大丈夫だよ〉

…そっか。群れの飛ぶスピードが速かったなら、そこそこのスピードでも慣れてるんだね?…確かに、そうかもしれないね。海岸から出発してからもう5分ぐらい経つけど、ラフちゃんの息はまだ上がってない…。わたしもそれなりの速度で飛んでたけど、ついて来れてるから問題ないね!おまけにこのペースで飛べばあと2〜3分で着くし。

 わたしについてくるラフちゃんの事を知らないレイちゃんに彼女の説明をし、そのままラフちゃんに視線を移した。横目でしか見れないけど、彼女に声をかけて様子を伺った。でもわたしの心配は杞憂に終わり、飛行タイプらしい明るい声で答えてくれた。

レイ「そうなんだー。…あっ、ライトちゃん、もう着いたよ」
ライト《あっ、もう?ってことはあれがそうなんだね?》
レイ「うん」

…やっぱり飛んだら早いね。

 彼女はわたしの背中から下の景色を見下ろし、たぶんある一点を指さしながらわたしに知らせてくれた。その彼女に言われて地上に目を向けたわたしはその場所を探し当て、その町がそうなのか彼女に訊ねた。

…なら、町に入る前に姿を変えないといけないね。町の中で迂闊に変える訳にはいかないもんね。

ライト《…なら町に入るのちょっと待っててくれる?姿変えたいから》
レイ「姿…?うん」
ラフ〈ライトお姉ちゃん、この人誰とはなしてるの?〉
ライト〈わたし。“テレパシー”を使ってね《〉レイちゃん、ちょっと目を瞑っててくれる?》
レイ「いいよ」

…ラフちゃんには一回だけ“テレパシー”で話しかけた事あるから、これだけ言えば分かってくれるかな?

 わたしはそれだけ言うと、上げていた高度を徐々に落とし始めた。3mぐらいまで下げてから、わたしは彼女を乗せたまま激しい光を纏った。少しすると光は治まり、人間としてのわたしが姿を現した。

…もちろん、レイちゃんを背負った状態でね!

 飛んでいた勢いをそのままに、左足から順番に地面に着地した。そして勢いを逃がすために数歩ほど走り、次第に速度を緩めていった。

ライト「レイちゃん、もう降りても大丈夫だよ」
レイ「うん、ありがとね」
ライト「ティル、テトラ、ラグナ、お待たせ!」

 そして背負っていた彼女を降ろし、その手で鞄にしまっていた3つのボールに手をかけた。

ティル〈ライト、着いたんだね〉
ラグナ〈予定より時間がかかっていたが、何かあったのか?〉
ライト「うん、ちょっとね」
テトラ〈レイさんとずっと話してたとか?〉

 ボールから放たれた赤い光が治まると、ティルとテトラ、ラグナはいつもと変わらない様子で飛びだした。

…ちょっと待たせちゃったけど…。

ラフ〈ライトお姉ちゃん、この3匹がそうなの?〉
ライト「うん」
ティル〈…あれ?ライト、この子は誰?〉
テトラ〈見た事ない種族だけど、知り合いなの?〉

 わたしの傍で控えていたラフちゃんはティル達が出たのを確認すると一匹ずつ視線を移し、こう呟いた。ラフちゃんの存在に気付いたティルとテトラも、見知らぬポケモンを見ながら首を傾げた。

ライト「うん。ホウエンにいた時からの友達でね、さっき再会したんだよ」
ラグナ〈だから時間がかかっていたんだな?〉
ライト「そういうこと。紹介するね。[チルット]のラフちゃん、わたしと同じホウエンの出身なんだよ」

 そう言い、彼女の方に視線を移した。

ラフ〈うん!わたしは[チルット]のラフで年は11。まだ野生だけど、よろしくね!〉

 彼女は揚々とした様子で声をあげた。

…この様子なら、仲良くなってくれそうだね。

テトラ〈こちらこそ![ニンフィア]のテトラ、年はキミの3つ上で14だよ。ラフちゃん、よろしくね!〉

 そう言い、テトラは自分のリボンみたいな触手を彼女の方にさし出した。

ラフ〈うん!テトラおねえちゃん!〉

 その彼女に、ラフちゃんは右側の翼を出し、互いに握手を交わした。

…テトラ、何か嬉しそう。きっと初めて〈お姉ちゃん〉って呼ばれたからかな?だってテトラは兄弟では末っ子みたいだし、何よりみんなテトラよりも年上だもんね。……だから、きっとそうだね!

ラグナ〈俺は[グラエナ]のラグナだ。俺もお前と同じホウエンの出身だ。流石に俺の種族は知ってるだろ?〉
ラフ〈うん!知ってるよ!〉
ラグナ〈なら話しが早いな。年はこの中では最年長の26だ。…ちなみに、テトラはこの地方のトキワの森の出身、それも色違いだ〉

…よく考えたら、わたし達ってみんな年がバラバラなんだよね。

ラフ〈そうなんだー。よろしくね!ラグナお兄ちゃん!〉
ラグナ〈おっ、お兄ちゃん!?〉

…ラグナのこの反応、ちょっと貴重かも!

 ラグナは彼女に呼ばれ慣れてない呼び方で呼ばれ、急に声を荒げた。普段は落ち着いている彼は咄嗟には対応しきれず、半ばパニックに陥りながら素っ頓狂な声をあげていた。
 その彼を見て、わたしをはじめティルとテトラも堪え切れず、思わずふき出してしまった。

ティル〈ラグナってシルク達からも“さん”付けされてるもんね!…で、俺は[マフォクシー]のティル、年は14だよ。ライトとは一番長く旅してるからパートナーになるのかな?そういう事だから、よろしく!〉

…旅立った時から一緒だから、そう言えるね!

 まだラグナの余波が残ってるティルは笑いを堪えながらも何とか言葉を紡ぎ、彼女に自分の事を紹介した。

ラフ〈うん!ティルお兄ちゃん、よろしくね!〉
ライト「ラフちゃん、流石にわたしのことは言わなくても分かるよね?」
ラフ〈もちろん!……じゃあライトお姉ちゃん、そろそろお願い!〉

…その様子だと、もう覚悟は出来ているんだね?

 わたしの言葉に彼女は大きく頷き、〈待ちきれない〉といった様子でわたしに迫る……。その目は人生を左右する“決心”と共に、“希望”に満ち溢れていた。
 彼女の決心を正面から受け止めたわたしは、その彼女を見据えたまま手探りで鞄の中にある目的の物を探った。左手に丸くて硬い物が触れるとそれを握り、空のソレを取り出した。

ライト「うん!いくよ!」
テトラ〈えっ!?モンスターボール?って事は仲間になるって事?〉
ティル〈空のボールって事は、そういう事でしょ?〉
ラグナ〈そうなるな〉

 そしてそれをふわりと投擲した。それを見た彼女も軽く飛び上がり、自ら頭にそれを命中させた。すると彼女はボールから発せられた赤い光に包まれ、それと共に収まった。彼女が入ったボールが地面に落ちると2〜3回バウンドし、その後で左右に揺れる……。しばらくするとそれもおさまり、前からだけど彼女がわたしに心を許してくれたことを告げた。


………ラフちゃん……、いや、ラフ、これからもよろしくね!

@ ( 2015/02/26(木) 18:20 )