[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜























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第9章 積み蓄えし成果
72 L 光の成果(心理)
昼過ぎ   Sideラグナ


レイ「[ゲンガー]、お疲れ様。ライトちゃん、流石だね!」

 ジムリーダーとの第1幕はティルの勝利に終わり、その彼女は一番手に労いの言葉をかけながらボールに戻した。それから彼女は対戦相手のライトに向き直り、先手を取られたにもかかわらず清々しい笑顔で話した。

ライト「ううん。勝てたのはティルが頑張ってくれたおかげだから…」

 一方のライトは「だからそんなこと無いよ」と付け加えてから首を横に振り、遠慮がちに謙遜した。

…ティルのバトル、見事だったな。
 まず第一に[サイコキネシス]をかなり使いこなしていた。あの[エーフィ]シルクもそうだが、本来は相手を見えない力で縛り上げるだけの技を軸として闘っている……。あの使い方はティルとそいつ以外では見たこと無いな……。
 次に身のこなし。ティルはあまり動いてなかったがそれでもって上手く立ち回っていた。おまけに人間の護身術を戦闘に取り入れるとは、恐らく誰も考えつかないだろう。……何しろダメージを殆ど与えられない護身術は技を使えるポケモンには必要無いからな。……だが心理的な観点から見ればある意味相手の意表を突く事が出来る……。ティルがしていたステッキを使った戦法のようにな。

…この一ヶ月間特訓を積んできた以上、俺も負けてられないな……。

 テトラと共に戦闘を見守っていた俺はこう思いながら彼女と実況じみた事をしていた。その事は恐らく俺だけではなくテトラの気をも引き締める事となった。

ライト「ラグナ、次、頼んだよ!」
ラグナ〈んぁ?ああ〉
ティル〈次はラグナなんだね?〉

…ん?
 二番手は俺か。

 戦闘を終えて後ろに下がってきたティルも加えて話していた俺は、ライトの呼びかけにすぐに反応できず変な声を上げてしまった。その声は排気口から湧き出すガスと混ざり、昼間の地下都市を駆け抜けていった。
 何とか持ち直した俺は彼女の前に跳びだし、既に出場していた相手を見据えた。

ラグナ〈俺の相手は[サマヨール]か。よっぽどの事が無い限り問題無いな〉
サマヨール〈余裕だな。……だかその長っ鼻へし折ってやるよ!〉
ラグナ〈やれるものならやってみな!〉

…この[サマヨール]はジム戦の時にはいなかったな。
 ……だがこの勝負、俺が勝たせてもらうぞ!

 俺はバトル前にお決まりの台詞で相手に言葉の罠を仕掛ける……。だが相手はそれを上手く回避し、俺に挑発した。
 そして、両者がほぼ同時に行動を開始し………

サマヨール〈お前の思い通りにはさせねぇーよ![鬼火]!〉
ラグナ〈そのセリフ、そのままお前に返すぞ![影分身]!〉

サドンデスの第2戦の烽火が上がった。
 相手は滑空して真っ先に距離を詰め始め、怪しく燃える炎を放ってきた。

…火傷状態にして物理技の効率を下げる気だな?
 …だが、そうはさせん!

 対する俺はその前に2体の分身を作り出し、攻撃に備えた。
 作り出された分身達は左右別々の方向に跳び、俺自身もななめ前に跳んでかわした。

サマヨール〈何っ?[影分身]だと!?〉
ラグナ〈初めに相手の出方を伺うのは当然だろぅ?…〉

…何も牽制は特殊技だけとは限らない……。相手が接近する間に自分のステータスを高めるのもそれに含まれる……。状態異常にするのもまた然りだな。
 ……だが俺の場合相手への牽制は戦闘が始まった時点で既に済んでいる…。

……ん?何故かって?
 忘れているかもしれないが、俺の特性は{威嚇}だ。よって相手の物理技の威力は減退している……。……そういう事だ。

 相手の攻撃をかわした俺は言葉の毒を盛り、次なる作戦に移る……。

ラグナ〈…ここで問題だ。この中で本物の俺を当てろ。解答権は1回、制限時間は3秒だ〉

 そう言い俺は分身と共に、向きを変えた敵の目の前に横一例に並んだ。

サマヨール〈問題!?こんな時に…〉

 当然、相手は苛立ちと共に俺の言葉に異議を唱える。

サマヨール〈何を……〉
ラグナ〈3……、2……〉

 そんな相手に構わず、俺はカウントダウンを開始する……。それと同時に次なる技のイメージを膨らませ始めた。

ラグナ〈1………〉
サマヨール〈今はバトル中だ!そんな遊びに付き合ってられるか!![シャドーボール]!〉

 そんな俺に苛立っている相手は言葉を遮り、感情を乗せた漆黒をいきなり放ってきた。

………よし、作戦成功だ。

ラグナ〈残念、ハズレだ。[影分身]!〉

 俺の目論み通り漆黒は吹き抜ける風を捉え、明後日の方向に飛んでいった。
 俺に対する苛立ちのせいで狙いの定まらない漆黒の弾を見届けた俺は、その結果を告げると再び分身を作り出した。

…もちろん、元々の分身もな!

ラグナ〈ペナルティーとして分身を更に追加だ〉
サマヨール〈!!いい加減バトルに集中しろ!!〉

 分身の数は9体となり、それらは相手を完全に包囲した。
 それに対し相手の苛立ちはピークに達し、怒号と共にその感情を吐き捨てた。

……これが、俺の二つ目の戦法だ。制限時間付きの問題を出して相手の気をバトルから逸らせ、集中出来ない事に苛立たせる……。勿論、そこには俺に対する“怒り”も色濃く含まれている。[威張る]が効果を成さないゴーストタイプにも有効という訳だ。それ以外にも、“苛立ち”のせいで心が乱れて技を闇雲に放つようになる……。

……“相手を苛立たせる事”は悪タイプの専売特許だろ?トレーナーと意志疎通出来ないという事もあって野生でない奴はその事を忘れている奴が多い…。それを利用すれば相手にもトレーナーにも気づかれる事なく流れを掴むことが出来る。

 罵声を浴びせる相手に構わず、俺は分身と共に敵の周りを走り回りながら半径を徐々に狭めていく……。

…ここまでで相手の苛立ちはピークに達しつつある……。次の罠にはまれば、俺の独壇場の完成だ!

ラグナ〈続いて第二問。“パニック”という単語を10秒以内に説明せよ〉
サマヨール〈ハァ!?お前、本当に戦う気あんのか?〉
ラグナ(分身A)〈この問題はお前如きが解けるとは思っていないがな!〉
   (分身B)〈答えられたら特別に攻撃をうけてやる〉

 俺は立て続けにトラップを仕掛け、相手を心理的に自滅へと誘い込んだ。分身たちも口々に相手に言葉の毒を盛り、精神的に追い詰めていく……。

ラグナ・サマヨール〈[穴を掘る]〉〈!?[噛み砕く]か!?[シャドークロー]!!〉

……ここまで来たら、もう勝ったも同然だな。

 1〜2体の分身が敵を挑発する間に別の分身は中心にいる標的に飛びかかった。そしてある者は鋭い牙で噛みつき、また別の者は前脚の爪で切り裂こうとする……。
 その間に本物の俺は分身達に紛れて地中に潜り、そこで痛恨の一撃を与えるべく息を潜める……。

……[影分身]の重ね掛けは便利だが、エネルギーの消費が尋常じゃないのが玉に瑕だな……。

分身C〈くっ!〉
サマヨール〈ちっ、分身か〉
分身B〈[影分身]!〉
サマヨール〈また[影分身]か!!〉
分身D〈時間切れだ〉

 地上では一体の分身に暗黒の斬撃が命中し、それを消滅させた。しかしその直後に別の個体が更に技を重ね、結果的にそれはただ対象を増やしただけとなった。
 その間に俺自身は地上からの相手の怒号を頼りに位置を掴み、丁度真下に移動した。

……これで、ゲームセットだな。

 俺は地上へと帰還して相手の背後をとり……、

ラグナ〈正解は、『“コスト”と“ベネフィット”……、つまり“損”と“得”が隣り合わせにあり、どちらの発生確率も同等にある状態での精神の乱れ』だ〉
サマヨール〈なっ……!!しまっ……〉

ラグナ・分身達〈〈〈〈[悪の波動]!!〉〉〉〉

犇めく(ひしめく)分身達と共に邪悪な波で敵の退路を完全に絶った。結果的に全方向から黒い波が迫る事となり、分身をも巻き込んでいった。

ラグナ〈[穴を掘る]〉

 このままでは俺自身も波に巻き込まれるので、着地と同時に地中へと避難した。

サマヨール〈っ………!!……嘘……だろ……。こんな………戦う気なんか………無い奴に………負ける………とは………〉
ラグナ〈だから初めに言っただろ?〈よっぽどの事が無い限り問題ない〉と……〉

 地上から轟音が響き、それが試合の終結を知らせる事となった。
 技の効果が無くなった事を確認すると再び地上に戻た。それと相手が崩れ落ちるのはほぼ同時だった。


…これで、ライトの勝利は確定したな。



@ ( 2015/02/10(火) 23:10 )