[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜























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補章Y 長い1ヶ月、短い1ヶ月
μ 武術
夕方 イワヤマトンネル Sideティル

ハート「……今日はこのくらいかしらね。」
ティル〈…あっ、もう!?〉

俺は師匠の言葉を聞きながら、額から流れる汗を拭った。
正面に目を向けると、白い鬣を生やした黄色くて大きなポケモンが、俺と同じように一息ついていた。

やっぱり、練習してると時間が経つのが早いね。
ちょっと前に昼を食べたばかりなのに、もうこんな時間だよ…。

……えっ!?
状況が全然掴めないって!?

…そっか!
俺が出るのって久しぶりだから説明しないといけないね。

まず、俺はみんなと別れてから修行の毎日なんだよ。
…だって、俺はライトのパートナー。
だから俺が率先してライトを守らないといけないでしょ?

そういうことで、俺は彼女の師匠のハートさんに{武術}を習うことにしたんだよ!
俺の種族、[マフォクシー]の体のつくりは尻尾とか体毛とかを除くと人間に近い。
それに{武術}は人間の護身術……、だから二足歩行をする種族は練習さえすれば簡単に身につけられる。

ハートさんのパートナー、[デンリュウ]のルクスさんがその例だね。

それは人間の技で、格闘タイプじゃない。
よって、技の数に制限はない!

俺が{武術を習いたい!}って思ったのは、こういう理由だよ!

そうすれば、種族上特殊技が多い俺は接近戦に強くなる。
ライトにつきまとっているあの人に出会っても対処できる!!


…{武術}についてはこんな感じかな?

じゃあ、次にいくよ?

俺たちが何でこんな暗い洞窟にいる理由は、簡単に言うと{思いっきり特訓ができるから}。
それに、ハートさんは今日非番みたいだから、一日中みてもらえるんだよ。

ルクスさん自身も、{最近のティル君は実力もめっちゃ上がって来とるからええ練習相手になるわー!}って言ってくれてるんだよ!

……本当に、うれしいよ!

だって、ルクスさんを見ただけだ{本気を出してくれてる!}ってわかるからね!

…なぜかって?

それは、今のルクスさんはいつもと違う姿……、[メガ進化]してる状態だからね!
俺の出身の地方ではジムリーダーとかリーグのチャンピオンのメンバーしかできないっていう噂が流れている……。

実際に俺も向こうでは一回も見たことが無かったからね。


…最後に、{武術}を教えてもらうのと一緒に俺自身の技のほうも見てもらったんだよ。

…忘れてるかもしれないけど、ハートさんはルクスさんただひとりだけでリーグを突破したことで巷で有名……。

言い換えたら、バトルのプロなんだよ!

俺以上に[マフォクシー]について知ってたのはさすがにビックリしたね。


………この三週間ぐらいの事については、こんな感じかな?
…ちょっと長くなっちゃったね?
…じゃあ、そろそろ話に戻るよ?


俺はハートさんの終了の合図を聞いて、上がっていた体温をちょっとずつ下げ始めた。

ルクス〈やっぱり、あっという間やな! …それにしてもティル君、こんなに短い間に凄く成長したよね!〉
ハート「そうね。 日に日に伝わってくる熱が高くなってるから、それがよくわかるわ。」

{流石、ライトのパートナーね。 ライトの時を思い出したわ。}

ハートさんは、多分昔の事を懐かしみながら呟いた。

ハートさんが言うには、ライトは技を覚えるのがすごく早かったらしいよ。

ヒイラギさんは姿を変えるのが上手いって言ってたけど、ライトはそれが得意だったんだね?
ライトの強さにも、納得だよ……。

ティル〈本当ですか?〉
ハート「ええ! 人間の姿の私にここまで汗をかかせたのだから、間違いないわ。」
ルクス〈確かホウエンにいるアオイ(〜kizuna〜参照)以来初めてやな〉

アオイっていうひとは確か……、ヒイラギさんのお姉さんだったっけ?

ハート「そうね。 ……さあ、そろそろ山を下りましょ。」
ティル〈もうすぐ暗くなるからね、たぶん。〉

そうだね。
シオンタウンまでちょっと距離があるから、そろそろ出発しないといけないね。

特訓を終えた俺達に、ハートさんはこう提案した。

ルクス〈そうやな。 …やけどティル君、先に行っとって。〉
ティル〈元の姿に戻すんですね?〉

ハートさんが言うには、{ポケモン同士だから〔メガリング〕はいらないけど、その分時間がかかる}らしいんだよ。

一応確認だけど、ハートさんもライトと同じ、それも色違いの[ラティアス]…。

ここまでスルーしてきたけど、大丈夫だよね?

俺は前に聞いた事を思い出して言った。

ハート「そういうことよ。 ティル君、道はわかるわよね?」
ティル〈はい、大丈夫です!〉

だって、署の武道場で練習する前に毎日ここで朝練してるんだよ?
ここはもう俺にとっては庭みたいなものだから、問題ないよ!

俺は真っ直ぐな返事と共に大きく頷いた。

ルクス〈じゃあ、頼んだで。〉
ティル〈はい!〉

ルクスさん、大丈夫です!

俺はもう一回頷いて、彼女達を背に地下都市を麓に持つ山脈を下りはじめた。


…………


数十分後 Sideティル

ティル〈…ふぅ、ここまで来ればあと少しかな?〉

西の空が朱色から紺色に変わり始めた頃、俺はようやく険しい岩山を下山し終えた。
暑かった夏風もある程度冷め、心地いい温度になって俺の体毛を靡かせる……。

そんな涼しい風で火照った身体を冷ましながら、俺は南にそびえ立つ地下都市の観光名所(シオンタワー)に目を向けた。

…このペースで歩けばあと5分ぐらいで着くかな?
順調にいけばそのくらいだね。

ティル〈ライトとテトラとラグナさんは今頃何してるのかな……?〉

ライトとテトラはヤマブキ、ラグナさんはリーフさんとイッシュに行くって言ってたね、確か…。
三週間前に分かれたばかりなのに、なぜか凄く昔なような気がするよ……。
みんな、元気かな…?

俺は数週間前に分かれた旅仲間に思いを馳せながら……

A「…? この辺では見かけないポケモンだな…? まあいい、今日の総仕上げといくか。

…?

俺は俺自身に注意が向けられているのに気付き、その方に振りかえった。
するとそこには、空手家風の男の人が腕を組んで仁王立ちしていた。

…確かに、俺はこの地方では珍しい存在だね。

A「[カイリキー]、今日の締めだ、全力でかかるんだ!」
カイリキー〈見たところ炎タイプか…。 まあいいだろう…。〉

どうやら、簡単に通してくれそうにないね。
…まっ、いっか!

相手は格闘タイプ。
練習の成果を試すのには丁度いい相手だね!

ティル《言っておくけど、俺は野生じゃないから油断しないほうがいいよ!》

俺は言葉を念じて直接相手のトレーナーに肯定の意を伝えた。

……実は俺、{武術}以外にもハートさんから{テレパシー}を習ったんだよ!
[マフォクシー]はエスパータイプ。
おまけに俺は[サイコキネンシス]も使えるからね!
ルクスさんの提案で教えてもらうことにしたんだよ。

トレーナーとしてのライトを見ても分かるでしょ?
{〔テレパシー〕の便利さ}を……。

ポケモンである俺の思いがけない言葉に、空手家は驚きの声をあげた。

ティル〈さあ、始めようか!〉

…キリがないから、相手の反応は割愛するよ?

…ということで、俺は特訓の成果を試すべく相手との距離を詰めた。

A「[瓦割り]だ!」
カイリキー〈守りを下げるのは戦闘の基本だな? [瓦割り]!〉

確かに、戦いのセオリーだね。

相手は接近する俺の脳天めがけて4本あるうちの1つの手を振りかざした。

…でも、あまいね。

カイリキー〈何っ!?〉

俺はその軌道を見切り、左手でそれを掴んだ。
そしてそのまま背中をつけるように向きを変え、

ティル〈背負い投げ!!〉
カイリキー〈っく!!〉

勢いをそのままに相手を投げ飛ばした。

…ダメージはほとんどないけど、隙を作るのには十分だよ!

俺は掴んでいた左手を放し、バックステップで距離をとった。

ティル〈[火炎放射]!!〉

それと同時に、口内に炎を溜めて一気に放出した。

…本当は俺の種族は隠し持っているステッキで炎を起こして攻撃するんだけど、性に合わないんだよね……。

そもそも、[火炎放射]は口から放つのが一般的だから問題ないでしょ?

A「!? [怪力]だ!」


もしかして、駄洒落?

カイリキー〈くっ…! なかなかやるじゃないか…。〉
ティル〈うわっ!〉

くっ!

俺がつまらないギャグに気を取られている間に、相手は種族の特徴であるパワーを生かして大岩を投げ飛ばしてきた。

…ダメージは被けたけど、効果はいまひとつ…。
全然問題ないよ。

ティル〈[未来予知]……。〉

……さあ、次の作戦にいこうかな?

俺は目を瞑り、次なる作戦の準備に移った。

A「今のうちに気合いを溜めるんだ!」
カイリキー〈…あれだな? ……。〉

どうやら向こうも攻撃に備えるつもりらしいね。

相手は溢れる力を溜め始めた。

……でも、気づいてないかもしれないけど墓穴を掘ってる事になるよ?

溜めを妨害すれば阻止できるのに、勿体ないね……。

ティル〈……よし……。 さあ、ここからが本番だよ! [火炎放射]!!〉
A「! [気合いパンチ]だ!」
カイリキー〈……その言葉をそのまま返させてもらうぞ!!〉

望むところだよ!!

俺は燃え盛る炎を放ちながら接近を開始した。

相手も集中を切らさないように注意しながら走りはじめた。

ティル〈[サイコキネンシス]!!〉
カイリキー〈何っ!? [サイコキネンシス]だと!?〉

…やっぱり、ビックリしてるね。

俺は途中で技を解除し、そのまま超能力でそれを拘束した。

その光景を目撃した相手には、焦りの色が見え始めた。

ティル〈黙ってたけど、俺は炎・エスパータイプ。 君にとっては脅威になる存在だよ!!〉
カイリキー〈っ!?〉
ティル〈[サイコキネンシス〉!!〉

俺によって操られた炎は余すことなくカイリキーに命中した。

そんな敵には構わずに、俺はカイリキー自身に技をかけた。

……俺の予想が正しければ、そろそろだね……。

見えない力によって、相手は上空に放り出された。

ティル〈ダメ押しの[火炎放射]!!〉
カイリキー〈くっ……! っ!!!〉

放たれた火炎は真っ直ぐ相手を捉えた。
それと同時に、俺の予想通りに予言された大ダメージが丸腰のカイリキーを襲った。

A「カイリキー!!」

敵はそのまま落下をはじめ、無防備のまま地面に墜落した。
受け身をとれなかった相手に衝撃がまともに入り、その彼は意識を手放した。

……よし、作戦は成功だね!


@ ( 2014/06/16(月) 00:20 )