λ ミドリ
午後 ヒウンシティー Sideリーフ
ラグナ 〈……やはり、イッッシュとなると知らない種族ばかりだな。 …[悪の波動]!〉
リーフ〈イッシュとホウエンはほとんど交流が無いからね……。 [リーフブレード]!〉
ラグナさんは横目で僕を見ながら黒い波を放出し、僕はその波を追いかけるように接近をはじめ、尻尾に深緑の刃を構えた。
A「[ペンドラー]は[ジャローダ]に[ポイズンテール]、[エモンガ]も[ジャローダ]に[アクロバット]!!」
ペンドラー〈[悪の波動]を盾にしても無駄だ! [ポイズンテール]!!」
エモンガ〈[アクロバット]!〉
対して、相手のトレーナーは僕を集中的に狙うように指示する。
……えっ!?
どうして戦ってるのか分からない?
…そっか、説明しないといけないね。
まず、ベルと別れる前に彼女から[ビリジオン]のヒュウナさんがこの街のどこかに来てるって聞いたんだよ。
ベルも丁度その瞬間に知ったみたいで、ちょっとびっくりしてたね……。
……で、ふたりは[心]で相談して……、噴水の前でヒュウナさんと合流することになったんだよ。
{ベルも一緒にどう?}って誘ったんだけど、生憎予定が詰まってるみたいで、そこで別れた…。
着いたらついたで、僕達、ポケモン
だけでいるから、バトル続き……。
この地方にはいない[グラエナ]のラグナさんがいるから、尚更だね。
…こんな感じだよ。
…じゃあ、話に戻るよ?
ペンドラーは黒い波を難なく受け止め、自身の全体重を乗せた毒の重撃の体勢にはいる……。
エモンガは持ち前の俊敏さを生かして僕の背後にまわり込んだ。
……どうやら、相性的に有利な僕から倒すつもりみたいだね?
トレーナーの指示があるとはいえ、そう簡単には攻撃させないよ!!
ペンドラー・エモンガ〈!?〉〈うわっ!!〉
僕は瞬時に深緑の刃をアスファルトに叩きつけ、その反動で跳びあがった。
リーフ〈っく! ラグナさん!〉
ラグナ・エモンガ〈あれだな? 任せろ!〉〈 くっ!〉
リーフ〈頼みましたよ!! [リーフストーム]!!〉
苦手な飛行タイプの攻撃をうけた僕はもう一度それを発動させ、攻撃してきた相手に反撃した。
僕に切り裂かれたエモンガは突然の不意打ちに驚き、体勢を崩した。
その隙に、僕はもう一体に向けて深緑の嵐で牽制した。
ラグナ〈……フッ……、俺達に攻撃をかわされるとは、お前等も雑魚だな。 …トレーナー無しが相手となると、尚更だ……。〉
ペンドラー〈!? 図に乗るな!!! [ハードローラー]!!」
A「!!? ペンドラー!?」
…よし、作戦成功だね?
ラグナさんが密かに発動させた[威張る]によって、ペンドラ―は怒り始めた。
[威張る]は相手を混乱させるのと同時に攻撃力をかなり上げる技……。
なら……、
リーフ〈ラグナさん! 僕にもお願いします!〉
ラグナ・A〈ハァ!? お前、正気か!?〉「[10万ボルト]!」
リーフ〈大丈夫。 ちゃんと考えがあるから!〉〈ペンドラー!? これは罠だよ!! 惑わされないで!! [10万ボルト]!〉
それを利用して自身を強化する!!
そう言いながら、僕は{キーの実}を取り出しつつ相方のほうをチラッと見た。
ラグナ・ペンドラー〈! そういうことか! なら……。〉〈クソッ! 外れたか! [ハードローラー]!!〉
エモンガは滑空しながら高電圧の電撃を放ち、我を忘れている紫の巨体は同じ技を立て続けに発動させた。
……自制が効いてないね……。
一方、僕の行動を見たラグナさんは僕の無言の合図に納得し、その対象に[威張る]を発動した。
そして、僕は五感が不鮮明になるのを確認すると、すぐに持っている木の実を口に放りこんだ。
エモンガ・ペンドラー・リーフ〈!!? 嘘でしょ!?〉〈エモンガ、邪魔だ!!〉〈くっ! …ラグナさん、ここから一気にいきますよ!!〉
ラグナ〈了解だ!!〉
エモンガ……、お気の毒に……。
我を失っているペンドラーの重撃が滑空しているエモンガにクリーンヒットし、巻き込まれた彼は力尽きた。
元々威力が高いうえにラグナさんの[威張る]でさらにあがってるから………、本当に痛そう……。
A「!?エモンガ!! ペンドラー……、まさか、混乱…? いつの間に…?」
相手のトレーナー、やっと気づいたみたいだね。
…でも、もう手遅れだよ?
ラグナ・リーフ〈[噛み砕く]!!〉〈[逆鱗]!!〉
ペンドラー〈!!?〉
一定の距離を保っていたラグナさんは一気に間を詰め、相手の左前脚に噛みついた。
僕も落下しながら全身に力を溜め、強化された最高威力の攻撃を開始した。
A「!!?」
ペンドラー〈……っ!!〉
A「ペンドラー!!」
……よし、倒したね。
僕達の連携が功を制して、紫の巨影は崩れ落ちた。
……ラグナさんは技をかわすので精一杯みたいだっだけど、僕は十分に楽しめたよ。
相手の技の威力と動きからすると……、たぶんこのトレーナーは星を持ってるね。
メンバーからすると……、イッシュだね、きっと。
リーフ〈…ふぅー。 ラグナさん? 体力のほうは大丈夫ですか? たぶん相手は星、持ってたけど……。〉
ラグナ〈問題ない。 ライトのおかげで……〉
???《リーフ君、流石ね。》
とりあえず、戦闘は終わったね。
ひと息ついて、バトルで止めていた歩みを再b…………?
この声は……、もしかして……。
歩きはじめながら言葉を交わしている僕達の脳裏に、自身のものでない別の声が反響した。
ラグナ〈!?〉
リーフ〈[テレパシー]って事は……、ヒュウナさんですね?〉
ヒュウナ《正解よ。〈》ベルから話は聞いているわ。 リーフ君、久しぶりね。〉
たぶん、一年ぶりだね。
僕は確信と共にその彼女の名前を呼んだ。
………厳密には、種族上性別、無いんだけどね……。
僕が声をかけるのとほぼ同時に、コルドと同等の種族……、[ビリジオン]のヒュウナさんが姿を現した。
リーフ〈カイナで会って以来だから……、一年ぶりですね。〉
ヒュウナ〈そうね。 ……あなたははじめましてね。 …確か…[ラグナ]と言ったわね?〉
ラグナ〈っん!? 俺!? ……だが何故俺の名前を…!?〉
ラグナさん、やっぱりビックリしてるね。
突然話をふられて、ラグナさんの声が少し裏返った。
ヒュウナ〈ベルから聞いたのよ。 さあリーフ君、モミジちゃんが待ってるわ。 行きましょ。〉
リーフ・ラグナ〈はい!〉〈近くにはいないと言っていたはずだが………。〉
……確かに、そろそろ出発しないと着くのが夜になるからね。
僕はヒュウナさんに二つ返事で応じた。
……ラグナさん、どうしてヒュウナさんがラグナさんの事を知ってるのか分からないみたいだね…………。
一応解説すると、ヒュウナさんは[友情の守護者]、ベルは[友情の賢者](第一作 参照)。
ユウキとコルドとおなじで、ふたりは[心]の一部を共有してるんだよ。
だがら、会ってなくても会話でできるってワケ。
……という訳で、僕達は姉さんが住む…………、僕の故郷の[ホワイトフォレスト]目指して歩きはじめた。
……………
夕方 ホワイトフォレスト Sideリーフ
ヒュウナ〈…なるほどね。ラグナ君はモミジちゃんの上司だったのね?〉
ラグナ〈…直接の関係ではなかったが、そうなるな。〉
……ふたりとも幹部のメンバーだったもんね。
ラグナさんはガンマのパートナー、姉さんはアルファのメンバー……。
ラグナさんは入団当初からだけど、姉さんは2年半ぐらい前……、それも半ば強制的に入れさせられた事になってるし…。
……どんな事をさせられてたのか聞く勇希はないけど………。
……そにしても、ここに来るのはいつ以来だっけ?
ユウキ達に助けてもらってから来てないから……、二年以上になるね。
あの時はまだ[ジャノビー]で、スーナの事も知らなかったから、そのくらいだね。
僕は自分の故郷を若干感じつつ、元に戻りはじめている疎林を見渡した。
……森が焼失してから2年以上経つけど、自然ってやっぱりそう簡単には元に戻らないよね……。
…こうして戻ってきたけど、ちょっと悲しいよ……。
ヒュウナ〈…u君、……リーフ君!?〉
リーフ〈…んっ!? あっ、はい!〉
ヒュウナ〈モミジちゃんに{着いた}って伝えておいたわよ。 多分すぐ来ると思うわ。〉
!!?
リーフ〈[テレパシー]で、ですか?〉
ヒュウナ〈ええ。 いつもならこの辺にいるはずだから、届いてるはずよ?〉
{それに、ベルから聞いた時一緒にいたから、リーフ君が来ることを知ってるはずよ?}
ヒュウナさんはそう付け加えて、僕に視線を移した。
……ふぅ…。
急に話をふられたからビックリっしたよ…。
僕はてっきりラグナさんと盛り上がってたから、油断したよ…。
だって、ラグナさんは26でヒュウナさんは29。
年齢的にも僕より近いらしいからね。
ラグナ〈ライトもそうだが、一般的なエスパータイプより伝説の種族のほうが伝達距離が長いらしいからな。〉
リーフ〈そういえばシルクがそんな事言ってたよ。 それに、姉さんが知ってるなら話が早いです……〉
???〈ヒュウナちゃん、案外早かっ……!? ラグナさん!!?〉
!
リーフ・ラグナ〈姉さん!〉〈モミジ、久しぶりだな……。〉
姉さん、1年ぶりだね。
話の最中に、僕と同族で♀の[ジャローダ]が驚きの声を漏らしながら会話に参加した。
……姉さん、ラグナさんを見てちょっと硬くなっちゃってるけど……。
ラグナ〈……身構えなくてもいい。 …俺はもう[グリース]……、お前の上司じゃない。〉
リーフ〈姉さん、ラグナさんはもう違うよ。 聞い
た話だけど、ラグナさんは自らパートナーの元を離れたらしいんだよ。〉
ラグナ〈あいつに嫌気がさしてな……。 ……だから、今はもう組織とは何の関係もない……、お前と同じでな。〉
モミジ〈……はあ………。〉
姉さん、何か再会の感動より驚きのほうが勝っちゃってるね……。
姉さんは僕達の発言に言葉を失った。