ι 雨と雪
午後 クチバシティースクール sideスーナ
ニド・A〈……[毒針]!〉〈!?…[泡]!〉
メル・B〈[草結び]!〉〈[火の粉]!〉
スーナ〈うん、いい感じだよ♪〉
ニド君は紫色の小棘を地面に飛ばして、相手の進行を妨げる。
それに対して、放たれた相手……、[コダック]は驚きながらも水泡で小棘を打ち消そうとした。
棘のうち泡に当たったものはそれを弾けさせ、辺りの砂を湿らせた。
…それとほぼ同時に、メル君は[ガーディ]の足元に草を生やして罠をつくり、彼は相性を考えて距離をとった。
一方のガーディはメル君とは対照的に、罠をものともせずに火片を放出しながら接近した。
エレン・C「そのまま「[体当たり]!」」
シン・D「[電光石火]!」「[火炎車]!」
ニド・コダック〈OK〜。〈[体当たり]!〉〉
メル・ガーディ・エレン〈[電光石火]!〉〈[火炎車]!〉「!二ドガーディに[つつく]!」
ニド・メル〈!? うん! [つつく]!〉〈うわっ!〉
エレン君、いい判断だね!
メル君に苦手な炎で迫るの前に、突然ニド君が立ちはだかり、角でガーディを受け止めた。
ニド〈うわっ!〉
ガーディ〈!? 毒っ!?〉
衝撃でニド君は吹き飛ばされたけど、何とか立ち上がった。
見たところ、ガーディは毒状態になったみたいだね。
メル〈ニド君、大丈夫!?〉
ニド〈うん……、何とか……。〉
ガーディ〈でも、まさかあんたが竪になるなんて……思わなかったよ。〉
コダック〈ビックリだよ。〉
スーナ〈…でも、[つつく]ではちょっと不十分だったかな♪〉
ウチは…ええっと、こういうのってコーチみたいだけど、彼らの行動を評価した。
…何か教えるのって慣れないけど、何とか伝わっているみたい……。
ウチがアドバイスしたおかげで4匹とも動きが機敏になったし、何よりみんな周りをよく見れてるよ!
…ちょっと、嬉しいよ♪
エレン「ならこういう時はどうすれば良かったの?」
スーナ〈ウチなら、[毒々]で防いだ…かな♪?〉
だって、盾代わりにすれば相手は大抵かわせないし、意表を突いてるから毒状態にできる可能性が高いからね!
エレン「[毒々]で?」
スーナ〈うん♪〉
E「……はい、終了ー!! 集まってー!!」
シン「!?もう終わり?」
D「やっぱりあっという間だね。」
スーナ〈やっぱり楽しい時間はあっという間だね♪〉
45分って結構長いのかなーって思ってたけど、案外短いね。
ちょっと離れたところからエレン君達の先生の声がすると、彼らを含めた十何人がその人の元にかけていった。
……エレン君が言うには、この後にもう一限あるみたいなんだよ。
確か歴史の授業って言ってたかな?
ってことは、ウチらの専門分野だね!
…………
一時間後 屋上 sideスーナ
スーナ〈……エレン君、終わったね♪〉
エレン「うん! スーナさんお待たせ!」
授業、終わったんだね?
ウチが待っている校舎の屋上に、鞄に荷物をまとめたエレン君が中からの扉を蹴破る勢いで飛び出してきた。
スーナ〈エレン君、ここには誰も連れてきてないよね?〉
エレン「うん。 オイラだけだよ。」
なら、すぐにでも行けるね!
……えっ?
どこに行くのかって?
そういえば、ウチがここに来た目的、言ってなかったね。
…うっかりしてたよ。
まず初めに、エレン君の様子見……。
これは言わなくても分かったよね?
だから、省略するよ?
で、二つ目は、時間つぶしのついでに授業の見学。
たまたまバトルの演習だったから凄く楽しかったよ!
そして最後に……、
スーナ〈なら大丈夫だね! じゃあ、ニアロ君を出してくれる?〉
エレン「だから屋上にしたんだね! いいよ!」
[ルギア]のニアロ君……、[四鳥伝説]関係の用事。
調査報告を兼ねてね!
ウチに促されたエレン君は、多分スクールでは手に取ることはない二つ目のボールからメンバーを出した。
ニアロ〈…あれ? エレン? 自分がここで出ても良かったの?〉
エレン「ううんちょっと手早く去ったほうがいいいね。」
スーナ〈伝説の種族はあまり人前に姿を現さないのが一般的だからね…。〉
{でもこれはあくまで、[野生]だったらの話しだけどね♪}
さっきは暗めに言ったけど、すぐに明るく付け加えた。
スーナ〈だから、その事は後で話し合っておいたほうがいいと思うよ♪ …さあ、立ち話はこのくらいにしてそろそろ行こっか♪〉
エレン「さっきの授業中に言ってた事だよね? [タマムシシティー]でしょ?」
ニアロ〈[タマムシシティー]に?〉
うん、そうだよ。
事情を知らないニアロ君は、ウチらを見下ろしながら首を傾げた。
スーナ〈うん♪ ニアロ君達に凄く関係ある事だから! …待ち合わせしてる時間が迫ってるから、その説明は空でしていいかな?〉
飛んでるついでにね!
そのほうが効率がいいんだよ。
ニアロ〈…うん。 じゃあエレン、乗って!〉
エレン「お願いね!」
ニアロ君、悪いけどそれで勘弁してね。
彼はエレン君が背中に乗りやすいように身をかがめた。
エレン君も、その様子を見て彼によじ登った。
……そういえば、ニアロ君、前より少し大きくなった?
ちょうど成長期だから、気のせいじゃないよね?
スーナ〈行こっか♪〉
そして、かけ声と共にエレン君を乗せたニアロ君とウチはほぼ同時に飛びたった。
……目指すのは放送局がある[タマムシシティー]…。
ウチはジム巡り以来だよ♪
…………
数十分後 タマムシシティー上空 sideスーナ
ニアロ〈……あれ? 下には降りないの?〉
エレン「用があるのは街じゃなかったの?」
スーナ〈うん♪〉
…とりあえず、待ち合わせ時間には間に合ったよ。
目的の街についたウチらは、適当な場所に着陸せずに空で維持を続けている…。
当然、エレン君達は訳が分からずにウチに訊いてきた。
…これにはちゃんとした理由があるんだよ!
スーナ〈ここはあくまで待ち合わせ場所。 本当はエレン君達を
ある人達に会わせるために来たんだよ♪〉
エレン・ニアロ「〈{会わせる人}?〉」
うん!
[タマムシシティー]の放送局って言ったら、もう分かったよね?
スーナ〈うん♪ 上を見てみて!〉
エレン・ニアロ「〈{上}?〉」
そうだよ。
ウチは羽ばたいたまま、真っ直ぐ見上げた。
ふたりも、ウチに言われるままに視線を上に向けた。
スーナ〈二匹の鳥ポケモンがいるでしょ? あの二匹に会いに来たんだよ♪〉
…実は、その二人に会うのは初めてなんだけどね。
ウチらの視線の先には、右脚に水色のリングを着けた黒い鳥ポケモンと、大きくて水色の…鳥ポケモン……。
……やっぱり、聞くのと会うのでは伝わってくる感覚が違うよ!
ニアロ〈ふたりに?〉
スーナ〈うん♪ ついてきて!〉
…とにかく、きて!
ウチは満面の笑みで、真っ先に高度をあげた。
エレン「?うん。」
スーナ〈ええっと、あなたたちは[氷雪]のセツさんとスノウさんですね♪?〉
ユウキから話はいってるはずだから、ウチが来ることは知ってるはずだよね?
ウチは一戦を交えているふたりに声をかけた。
セツ〈? あっ、はい。 っということは、あなたはユウキさんのメンバーですね?〉
スノウ〈話は聞いてますわよ。 [スワンナ]のスーナさんね?〉
よかった。
ちゃんと伝わってたね!
ウチの問いに、[ムクバード]のセツさんと[フリーザー]のスノウさんは快く応えてくれた。
スーナ〈はい♪〉
ニアロ〈…スーナさん? この人たちは?〉
エレン「誰なの?」
スーナ〈ニアロ君、エレン君、紹介するね♪ [ムクバード]の彼は気象予報士のセツさん。 彼女は[フリーザー]のスノウさん。 ふたりともエレン君達と同じ伝説の当事者なんだよ♪ …で、こっちは[水冷の防人]のエレン君と、[水冷の化身]で[ルギア]のニアロ君。 ……実はどっちにとっても、重要な存在なんだよ♪〉
だって、[水冷]も[氷雪]も、[四鳥伝説]の一柱だもんね!
ウチもそうだけど、初対面の二組をそれぞれに紹介した。
スノウ・エレン〈…あなたが、[水冷の化身]なのね?〉「気象予報士のセツさんなの!?」
ニアロ・セツ〈あっ、はい。 …[フリーザー]ってことは、[氷雪]ですか?〉〈そうだよ。 …スノウ、背中、借りるよ?〉
スノウ〈ええ、そうよ。 …セツ、姿を戻すのね? 分かったわ。〉
セツさん、証明するにはそれが一番手っ取り早いね!
スノウさんは凛とした様子でニアロ君に話しかけて、ニアロ君は慣れない敬語に若干戸惑いながらも同じ内容を聞き返した。
エレン君は{そうなの!?}って驚きながらウチが言ったことを繰り返して、セツさんはニアロ君と話しているスノウさんの後ろにまわり込みながら答えた。
スノウさんの答えをもらったセツさんは、彼女の背中に両翼でしがみつくと、
セツ〈エレン君って言ったね? 僕を見ていてくれるかな?〉
エレン「うん。」
一度エレン君をチラッと見てから姿を歪ませた。
彼の姿はユウキのそれと同じように変わっていき、少しすると一人の青年に姿を変えた。
エレン「うわっ!ホントだ!お天気のお兄さんだ!!」
セツ「知っていてくれて嬉しいよ。 …改めて、よろしくね。」
エレン「うん!!」
そして、これから長い付き合いになるかもしれない[防人]の二人は、[化身]のふたりから落ちないように注意しながら握手をした。