η 誤魔化せない
午後 ハナダシティージム sideショタ
ショウタ〈……[マジカルリーフ]!!〉
スターミー〈!?〉
リヴさんと合流した後でたまたま見かけた[ベイリーフ]として戦っている僕は、一時的に浮かんでいるイメージを元に鋭い葉っぱを沢山放出した。
[葉っぱカッター]のよりも黒いそれは相手の[スターミー]めがけて飛んでいった。
……でもまさか僕がポケモンとしてジム巡りをするとは旅立った時には想像できなかっただろうね……。
しかも[ミュウ]は色んなポケモンになれるから、楽しすぎるよ!!
今の僕の姿の[ベイリーフ]……、何かしっくりきてるんだよ。
4足歩行だけど首もとから蔓を出せば普段通り物を持てる!
それに、頭の葉っぱで攻撃って……格好良くない?
僕が放った黒い葉っぱが命中して、ジムリーダー最後のポケモンは倒れた。
カスミ「負けたー。 ショウタ君、はい。 ジムバッチ。」
リヴ「えっ……あっ……」
ショウタ〈リヴさん、今は君が
ぼくでしょ?〉
リヴ「あっ、うん。 はい。」
リヴさん、今のリヴさんはトレーナーのショウタだよ?
忘れないでね?
僕の言葉で
ぼくだって事を思い出したリヴさんは、ジムリーダーのカスミさんから慌ててジムバッチを受けとった。
………かたちは違うけど、これで3つ目。
残りは5ヶ所だけど、ライトさん達と旅してたから対策もバッチリだよ!
[ヤマブキシティー]はエスパー。
ここは悪タイプで[グラエナ]のラグナさんに姿を変えれば楽に突破できる。
[タマムシシティー]は草。
コロナは炎タイプで、[ピジョット]のフェズさんは飛行タイプ……。
ここはこのふたりで大丈夫だね。
[クチバシティー]は、スクール時代に英語の先生として来たことがある人で電気タイプ。
ここも、たぶん大丈夫。
……あとは分からないけど、何とかなるよね?
…………
数分後 ハナダシティー sideショウタ
コロナ〈ショウタ、お疲れ様。〉
フェズ〈ひとりで勝ち抜くのも大変でしょ?〉
ショウタ〈うん。 ありがとう。〉
ジム戦が終わって外に出てから、リヴさんは慣れない手つきでボールで控えていたコロナとフェズさんを出した。
……ちなみに、僕の今の姿はさっきと変わらず[ベイリーフ]。
元々の姿ぐらい違和感が無くて居心地がいいんだよ。
コロナ〈リヴさんも、慣れないバトルで疲れたんじゃない?〉
リヴ「うん、確かにそうだね。 ……なにしろ、僕はいつも戦う側で慣れないからさ。」
そっか……、リヴさんも一緒なんだね?
……確かに、そうだよね。
リヴさんは25年間ポケモンとして生きてきたもんね。
僕は14だから、軽く十年以じ………
A「あら? ショウタ、仲間が増えたのね?」
リヴ・ショウタ・B「? ……誰……ですか?」〈はい?……!?〉〈コロナも、順調のようね。〉
…ょう………えっ!?
嘘でしょ!?
和気あいあいと話す僕達の背後から、2つの声が話しかけてきた。
その声の主は………、
ショウタ・コロナ〈〈お母さん!?〉〉
リヴ・フェズ「〈えっ!? {お母さん}!?〉 一体どういう事なのさ!??」
ブリーダー風の女の人と、彼女のパートナーで♀の[キュウコン]……。
何でお母さん達がこんな所に!?
[ベイリーフ]の僕と[ロコン]のコロナの声が反響した。
A・ショウタ「スクールの同窓会かあってね、たまたま来たのよ。」〈この人は僕……人間
だった時のお母さんなんだよ!!〉
リヴ・フェズ・コロナ「そうなの!?」〈それって……まずくない!?〉〈あと、[キュウコン]の彼女もわたしのお母さんなの!〉
キュウコン・リヴ〈はい!? [ベイリーフ]が!? それにあんた……私のパートナーの息子と声が凄く似てるだけど、気のせいじゃないわよね!?〉「えっ!? 嘘でしょ!?」
リヴさん!!
本当だよ!!
……それに、コロナのお母さんは僕の声が聞こえてるから感づかれてる!?
突然の事でパニック寸前の僕、コロナ、リヴさんは互いにチラッと見合わせた。
ショウタ〈コロナのお母さん……、こうして話すのは初めてだけと、そうです。〉
……バレちゃったし……、もう誤魔化せないよね……。
急に冷静になった僕は悟り、意を決して重い口を開いた。
コロナ〈お母さん! 実はそうなんだよ!! 旅あの後すぐにちょっとした事故があって…、[心]と[体]が入れ替わっちゃったんだよ!〉
キュウコン〈{[心]と[体]が入れ替わ}るですつって!? そんなドラマみたいな事、有り得ないわ!!〉
ショウタ〈それが本当なんですよ!! この人の名前は[マキノ]で、シンオウ地方出身の1つ星のトレーナーですよね? あと、あなた以外のメンバーは[レントラー]と[ドンカラス]……、どっちも♂ですよね?〉
僕のお母さん、現役時代は僕と一緒でジム巡りをしてたんだよ。
お母さん自身は{いいよ}って言ってたんだけど、お父さんが反対しててね……、だからなかなか旅立てなかったんだよ……。
……でも、[ミュウ]になった今では、あまり関係なくなったけど…。
[ベイリーフ]の姿の僕は、家族しか知らない彼女の経歴を淡々と話した。
キュウコン〈!? 嘘よね!? 家の一員しか知らないはずなのに……。 …コロナ、これは一体……〉
コロナ〈見ての通りだよ。 ねっ? ショウタ!〉
ショウタ〈うん。 《〉……リウさん、聴いてたよね?》
リヴさんには聞こえてるから、話は分かってるよね?
戸惑いながらもお母さんと話しているリヴさんは、横目でチラッと見てから頷いた。
……ちなみに、これはリヴさんだけに伝えた。
リヴ「……うん。 大体は聞いてたさ。」
ショウタ・ショウタ母《……なら、お母さんに僕達の事、話しちゃって。》「…あんた、誰に話してんの……?」
リヴ「……ちょ……ちょっとね。 うん。」
ショウタ〈僕も、姿を戻すから。〉
リヴ「…わかったよ。……ええっと、マキノさん、実は僕、[ショウタ]じゃないのさ……。
……よし、この際……。
ショウタ母「はい!? また冗だ……」
ショウタ《母さん、冗談じゃないよ。 本当の僕はこっち。 メンバーのうちの一匹の[ベイリーフ]を見てて!》
母さんの言葉を[テレパシー]を遮ったまま、[ベイリーフ]の姿の僕は目を閉じて光を纏った。
……母さん……、これが今の{僕}だから………。
キュウコン・ショウタ母「〈!!」 姿が………変わった……!?〉
ショウタ《うん。 この姿が僕と入れ替わったポケモン……[リヴ]さんの本当の姿なんだよ。 ……確か、図鑑、持ってたよね? それで今の僕を認証してみてよ。》
身体より長い尻尾をゆらゆらと風に靡かせている僕は、いつものように浮遊しながら言った。
ショウタ母「…………。」
母さん……ビックリして言葉を失ってる……。
……なら……。
ショウタ〈[サイコキネンシス]!〉
僕は、母さんの鞄の中に意識を向けて、目的の物を超能力で取りだした。
…母さんはトレーナー時代の癖でいつも持ち歩いているんだよ。
リヴ「…簡単に岩瀬でもらうと、僕元々ポケモンの[ミュウ]……、つまり伝説の種族って訳さ。」
ライトさんの[ラティアス]はそうじゃないみたいなんだけど、大抵がそうだもんね?
……だって、スクールでは結構早いうちに習う……一般常識だからね。
ショウタ《そういうこと。》
キュウコン・ショウタ母「〈……………………………………〉」
僕達の言葉を聞いたふたりは、暫くの間言葉を発する事ができなかった。
………理由は、言わなくても分かるよね?