ζ 姉妹の里帰り
午前 ヤマブキシティー高層マンション sideテトラ
ライト・トリ「〈…えっ!? テトラ、本当に行くの!?〉」
テトラ〈うん!〉
トリ姉に
あることを提案した私は、{当然}っていう感じで大きく頷いた。
……だって、私が決めた事だし、せっかくトリ姉と二匹で出かけれるから!
……ん?
どこに行くのかって?
それは……、
トリ〈……だって、[トキワの森]だよ! テトラ、本当にいいの!?〉
テトラ〈ライト達と旅しているうちに吹っ切れちゃってね!〉
私とトリ姉の生まれ故郷……、辛い思い出しかない[トキワの森]……。
旅立ってすぐは{もう戻りたくない!}って思ってたけど、考え方が変わったんだよ。
私は猛反対するトリ姉に{だから心配しないで!}って付け加えた。
トリ〈吹っ切れた? …でも、どうして? あんなに辛かったのに?〉
テトラ〈うん。 ……何て言うか………{けじめ}……かな?〉
……それとも、{自己満足}?
……何か言葉で言い表せないけど………、何なのかな…?
いい言葉が見つからないけど、これだけは言えてるよ!
トリ〈{けじめ}?〉
テトラ〈うん。 あの辛い[過去]も私のには変わりないでしょ? ……むしろ今では[感謝]してるぐらいだよ!〉
{
[過去]があるからこそ、今の私がある}
テトラ〈それに、私が
私であることを誰にも否定出来ないでしょ? トリ姉はトリ姉、私は私。 同じ人、ポケモンはいないからね!〉
そして、{
自分以外に自分自身を貶す事は出来ない}
これはシルクが教えてくれたこと……。
例え自分が
色違いでも………、例え自分に両親がいなくても、他人に自分の[生い立ち]、[個性]でああだこうだ言われる筋合いは無い……。
もし、そんな事をするひとは、[心]が幼稚なだけ…。
そういう奴はどうせ、自分に素直になれずに他人にあたってるだけ……。
……ライト達に出逢ってから私の受け売りにしていた事が、シルクと同じだった……。
彼女もまた、私と同じで弱い立場だった……。
なのに、あんなに明るくて強い……。
……それで、悟ったんだよ……
例え[色違い]でも、普通のポケモンと何も変わらない……ってね!
だって、そうでしょ?
[色違い]で[ラティアス]のハートさん。
あのひとも私と同じなのに全然気にしている様子はない。
……むしろ、長所にしてる!
……だから、ね!
私はまっすぐ、トリ姉を見て私自身の持論を説いた。
……きっと、この事はトリ姉はうっすらと感じてるかもね!
だって、トリ姉はエスパータイプ……、{気質}として、勘が鋭いもんね!
トリ〈そっか……。 ……トリ、わかったよ。〉
ねっ?
トリ〈成長したんだね? ……それに、ジル兄には5年以上会えてないし、丁度良いかな……。〉
この感じだと、感づいてるでしょ?
トリ姉は遠い目で[トキワの森]にいるジル兄に思いを馳せながら呟いた。
テトラ〈でしょ?〉
それに、私も進化した事を早く言いたいんだよ!
トリ〈うん! …じゃあ、準備しないとね!〉
テトラ〈そっか……。トリ姉は自分の荷物があったんだね?〉
テトラ〈そうだよ。 ……本当はカレンに研究の書類とかを全部持ってもらうのが一番いいんだけど……、〉
{昨日見たとおり、忘れっぽいからね。 私がいないと必ず何かを忘れるんだよね……。}
トリ姉はポロッとカレンさんに対する愚痴をこぼした。
……だから、自分の鞄を持ってるんだね?
…………って事は、文字も読めるのかな……?
そしてこの後、自分たちのトレーナーに一言、伝えに行った。
……{出かけてくる}…ってね!
………
数分後 屋上 sideテトラ
テトラ〈………で、何で屋上なの?〉
あの後、トリ姉について行ってエレベーターに乗ったんだけど……、何で?
降りたその先は一階じゃなくて、風が吹き抜ける屋上だった。
トリ姉?
どうして?
私は首を傾げながら彼女に質問した。
トリ〈ワタシの仲間に頼んできたんだよ。 イカヅチは飛行タイプだから、乗せてもらおうと思ってね! それに、イカヅチも[タマムシシティー]に用事があるって言ってたんだよ。 方向は同じだから、丁度良いでしょ?〉
テトラ〈うーんと、そうだね。 ……でも、帰りはどうするの?〉
行きは乗せてもらうから良いとして、その後は?
トリ〈カレンがまだ学生だった時にたまたま抜け道を見つけてね、それを使おうと思ってるの ……あっ、言ってたら来たよ!〉
テトラ〈!?〉
{抜け道}?
……なら、大丈夫だね?
私は{それなら、いい………}……えっ!?
イカヅチ〈すまん、待たせたな。〉
テトラ〈えっ!? イカヅチさんって、[サンダー]だったの!?〉
トリ〈そう。 ……そういえば、あの時は近くにいなかったから会うのは初めてだね?〉
嘘でしょ!?
トリ姉と、あの伝説の[サンダー]が仲間!?
私はあまりの事に驚いて、腰を抜かした……。
テトラ〈うっ………うん……。〉
イカヅチ〈…確かお前はトリの妹だったな?〉
トリ〈そう。 [ニンフィア]のテトラ。 前に話したでしょ?〉
イカヅチ〈そう言ってたな。 俺はアイツとは違ってむやみやたらに他人の乗せない主義だけどトリの妹となれば話は別だ。 ぜひとも乗ってくれ!〉
テトラ・トリ〈えっ……あっ、……はあ………はい…。〉〈{アイツ}ってエンさんの事?〉
トリ姉……タメ口って………。
ライトとコルドさん以外の伝説の種族に会うから………緊張するよ……。
……あっ!
身体が入れ変わったショウタ君も伝説だったっけ?
私はイカヅチさんの、{伝説}としての威圧感に圧倒されながらも、何とか頷いた。
そのイカヅチさんは、たたんでいた翼を地面につけて、体勢を低くした。
トリ〈やっぱりね……。 さあ、テトラ、乗って!〉
テトラ〈えっ………、うん。〉
そして、私は半ば誘導されるかたちで彼の元に向かった。
………で、されるがままに彼の背中に乗って、
イカヅチ〈……さあ、しっかり掴まっていてくれよ!〉
トリ・テトラ〈うん!〉〈あっ……、はい。〉
彼……?なのかな?
声的に……。
イカヅチさんの警告で我に返った私は、前脚と触手の両方で彼の背中……?
いや、羽毛をしっかり掴んだ。
……[サンダー]の羽根って、意外と堅くて丈夫なんだね……?
でも、柔軟性があるというか…何というか……。
……とにかく、ライトのとは違った肌触りだよ……。
ちょっとした発見をしたのも束の間、イカヅチさんは大きく羽ばたいて離陸した。
…そして、目的の場所……、[トキワの森]を目指した。