ε ある昼休みの出来事
昼過ぎ クチバシティースクール sideエレン
エレン「……ねえニド? 次の授業って何だったっけ?」
ニド〈ええっと、確か体育だったと思うよ〜。〉
エレン「体育だったっけ?」
A「うん。グラウンドでバトルの演習をするらしいよ!」
オイラはパートナーのニドと友達と同時に話しながら小走りでグラウンドに飛びだした。
……オイラがポケモンと話せる事はクラスのみんなが知ってるんだよ。
みんなとは違うから一部の子から妬まれてるけど、殆どの子からは良くしてもらってるよ!
休み時間はみんなと普通に遊んだり、バトルをしたり……。
時には先生に呼ばれてポケモンの通訳を頼まれる事もあるけど、楽しくやってるよ!
……ううんと、流石にポケモンに姿を変えれる事は隠してるんだ…。
だって、現実的に有り得ない事でしょ?
……スクールの成績は、体育は学年一位だけど、あとは全部中位……かな?
きっと、体育の成績が良いのはオイラは[ブイゼル]に姿をかえれるからだね、きっと。
球技は[水鉄砲]と同じような感じで狙えば上手くいくし、テニスとかの打つ競技は[燕返し]で練習したから自信があるよ!
水泳なんてオイラは水タイプだから歩くのとほぼ変わらないし、他のスポーツもポケモンとしての身体能力で簡単にできる……。
……それに、今年からするようになってきたバトルも、ポケモンにしか分からないことを利用すれば簡単に勝てる……。
……まさにオイラのためにある強化だね!!
それ以外の強化は……、あまりパッとしない……かな?
……オイラの事はこのくらいにして、そろそろ話に戻ろうかな?
2つのボールをベルトにセットしているオイラは、気の合う友達とグラウンドに飛びだした。
エレン「シン君確か今日からマルチバトルだったよね?」
シン「うん! エレン君、もし自由だったら一緒に組もうよ!」
エレン「うんいいよ!」
シン君、あたりまえだよ!
だって、こういう時はいつも一緒でしょ?
いつものようにお願いしてきた親友に、オイラも当たり前のように答えた。
ニド〈本当に〜? やった〜!〉
B〈……じゃあいつも通りいこうよ!〉
ニド〈うん!〉
……オイラ達だけじゃなくて、
エレン「メルも嬉しいって!」
シン「本当?」
エレン「うん!」
シン君のパートナー……♂の[メエークル]のメルとニドも仲が良いんだよ!
組むには一番相性がいいね!
……ちなみに、シン君は去年カロス地方から引っ越してきた転校生。
それに、オイラの秘密を知ってる数少ない人物のうちの1人なんだよ!
オイラ達は仲良く話ながら集合場所にたどり着い……
先生「……わかったよ。」
シン「……あれ? あのポケモンって誰のなんだろう……?」
…た……?
着いたけど、先生がしゃがんで一匹のポケモンに話しかけて……じゃなくて、筆談していた。
その相手は、全体的に白や水色の羽毛をもった鳥ポケモンで、鉛筆を嘴でくわえている……。
文字……書けるの…?
そのポケモンの足元には、細かくて綺麗な字がびっしり書かれたノート……。
メル〈僕もそうだけど、見かけない種族だね。〉
エレン「ええっとスクールにはいないはずだよ。 ……確かあの種族は[スワン……ナ]!?」
さっきまでは見えなかったけど、鞄を斜めに掛けた[スワンナ]が嘴で器用にノートをしまっていた。
[スワンナ]といったら……あの人のメンバーしか知らないよ!!
ニド〈あの[スワンナ]って、スーナさんだよね!?〉
ニドも気づいたんだね!?
シン「エレン君? 知ってるポケモン?」
エレン「知ってるも何も有名人のメンバーだよ!!」
シン・メル「〈有名人の!?〉」
そうだよ!!
ふたりは声を揃えて驚いた。
エレン「うん! 考古学者のユウキさんのメンバーだよ!! この前の生放送は見てたよね? あの時の[スワンナ]だよ!!」
シン「えっ!?本当に!? でも、何で!? ユウキさんてまだ入院してるはずだよね!?」
エレン「そうだけど間違いないよ! だって[スワンナ]ってカントーにはいないでしょ?」
それに、オイラはユウキさんの[スワンナ]しか見たことがない!
メル〈本当なの!? ……なら、名前を呼んでみてよ!〉
エレン「うん! スーナさん! 何でここにいるの!?」
絶対にそうだよ!
オイラは驚きながらも、彼女の名前を呼んだ。
スーナ〈……? この声は……、エレン君♪ それにニド君も、久しぶりだね♪〉
ニド〈うん、久しぶりだね〜!〉
やっぱりね。
オイラに名前を呼ばれたスーナさんは落ちついた様子で振りかえって、大きな翼を羽ばたかせながらこっちに飛んできた。
メル〈ニド君も!?〉
ニド・エレン〈うん。 ぼくも前に会った事があるんだよ〜。〉「久しぶり! …ユウキさんの状態はどうなの?」
スーナ〈とりあえず、容態は安定してるよ。 今回の火傷の跡は応急処置が上手く出来てたみたいで、殆ど残らないんだって!〉
エレン「そうなんだ。 退院する時には跡も残らずに回復できるんだね?」
スーナ〈うん♪〉
……綺麗に、治るんだね?
…それに、さすがって感じだね!
あの時はたまたまその瞬間が映ってなかったからバレずに済んでるけど、ユウキさんもオイラと同じだもんね。
たった1ヶ月で治るのも、そのおかげかもしれないよ。
テレビでは報道されていないユウキさんの状態を聞いて、オイラはホッと肩をなで下ろした。
シン「仲良さそうに話してるし、{入院}とか言ってるみたいだから、本当なんだ…。」
{そうだよ。}
オイラがそう言おうとしたところで、授業開始の予鈴が鳴った。
……凄く中途半端だけど、そろそろ行かないと……。
オイラは何故スーナさんがここにいるのか聞けず、昼の授業が始まった。
……後で、聞いてみようかな?