62 LS 流星群を発動させたのは…
夕方 収録会場 sideリーフ
???「……クソっ…。[エレキブル]、[雷]、[ヘルガー]、[大文字]!!」
ヘルガー〈……っ! [大文字]…!〉
エレキブル〈トレーナーもいないクセに……。[雷]!!〉
スーナ〈…だからと言ってナメない方がいいよ♪ [ハイドロポンプ]!〉
リーフ〈[ソーラービーム]!〉
相手のポケモンはかなり焦った様子で技を発動させた。
[エレキブル]っていう種族は何かをボソボソ呟きながら電気を蓄え、超高圧の電撃として放出した。
去年対峙したことがある種族の[ヘルガー]も口中に炎を溜めて炎塊として打撃ちだした。
対して、軽くあしらっているスーナは旋回しながら圧縮された水流を炎塊めがけて放ち、僕は予め吸収していた照明の光を草のエネルギーに変換し、スーナにとって脅威となる電撃に狙いを定める……。
4つの上級技は計算されたように衝突し、派手な衝撃音と共に消滅した。
……威力、それなりにあるけど、やっぱりまだまだだね。
この状況で言う言葉じゃないけど、ちょっと期待ハズレだよ……。
何しろ、僕達が闘っている相手はこの次元の主犯者、[ロケット団]とかいう組織のボスだから…。
ううんと、さすがに一般のトレーナーよりは強いけど、物足りないよ……。
スーナ〈リーフ! そろそろ終わらせよっか♪〉
リーフ・ボス〈OK! じゃあスーナ、あれ頼んだよ!〉「っ! 何故だ!? 親父と違って俺は星持ちなのに……、有り得ん!?」
スーナ〈リーフもね♪〉
スーナ、分かったよ!
僕は速すぎて視覚では捉える事が難しいスーナの声を何とか聞き取り、手短に作戦会議をした。
………シルクが特殊技に特化しているように、スーナは素速さに特化している。
その代わりに技の威力はそれほど高くはないけど、それを十分に補えてるよ。
僕は一緒に闘っている仲間が苦手な部分……、例えばオルトなら遠距離攻撃、シルクなら近接闘……を補ってるから、バランス型になるのかな?
……どれも得意でも苦手でもないから、たぶんそうなるね。
僕達は次なる作戦に移った。
………さあ、相手も今闘っているメンバーだけしか残ってないから、一気にいくよ!!
ボス「……こうなったら、連射しろ!!」
僕は相手の声を無視し、意識を集中させ始める……。
リーフ・エレキブル・ヘルガー〈[リーフストーム]…………〉〈[雷]!〉〈[大文字]!!〉
まず、元となる技……[リーフストーム]のイメージを身体全体に行き渡らせる……。
相手からまた技が放たれた。
スーナ〈[冷凍ビーム]!〉
集中している僕に意識を向けさせないために、文字通り{目にも留まらぬ}速さのスーナはありとあらゆる方向から凍てつく冷気の光線を放つ……。
その間に僕は、そのイメージを少しずつ別の技のものへとシフトしていく………。
スーナが放った冷気が相手の技に迫る………。
スーナ〈[ハイドロポンプ]!!〉
間髪を入れず、彼女は広範囲に少しずつ高圧の水滴を相手の頭上に降らせる……。
……そうこうしているうちに、僕は別のイメージーで満たされた。
スーナ〈[冷凍ビーム]……〉
ある程度放つと、彼女も上空で集中し始めた。
そして、僕はそれを元に、尻尾に残っているエネルギーの2/3をかき集め……、
リーフ〈……[ハードプラント]!!〉
地面に思いっきり叩きつけ、[派生技]である[ハードプラント]を発動させた。
エレキブル〈っ! 冷たっ!! !?〉
ヘルガー〈!? 今度は……何だ!?〉
ボス・スーナ「!!? 嘘だろ!?」〈…[吹雪]!!〉
相手の二匹とトレーナーの足元が突然ひび割れ、急速に極太の
荊群生し始める……。
それは相手の身体全体に絡みつき、ミシミシと音をたてながら締めつけた。
それと同時に、スーナの水滴が深翠の蔓を湿らせた。
最後に、彼女も[派生技]である[吹雪]を発動させた。
スーナを中心に一瞬冷たいそよ風が吹いたかと思うと、突然彼女の背後から凍てつく暴風雪が吹き荒れはじめた。
相手「〈〈っぐ………!!!〉〉」
スーナのそれによって、露の着いた蔓が凍りつきはじめた。
そして、僕達の連携プレーによって相手は気を失った。
スーナ〈………ちょっと手荒だけど、これで相手は総崩れになるよね♪?〉
リーフ〈うん………。組織のトップを倒したんだから……そうなるはず……〉
ドーンリーフ〈だ……!? 何!? 今の!?〉
スーナ(爆発♪!?〉
頭領を倒し、スーナと言葉をかわそうとしたその時、僕達の背後から途轍もない爆発音が反響した。
何!?一体!?
リーフ〈まさかあれって……[大爆発]!?〉
スーナ〈あれは絶対にそうだよ♪!! ………!!リーフ! あの場所ってシルク達が闘ってた場所だよね!?〉
うん!
間違いないよ!!
リーフ〈うん! そのはずだよ!! スーナ、先に行ってきてくれる?〉
スーナ〈…リーフは攻撃の反動で動けないもんね!……わかったよ♪ じゃあ先に行ってるよ♪〉
スーナ、頼んだよ!
彼女は僕の方を真っ直ぐ見て、大きく頷いた。
高度をあげ、風を斬りながら、彼女は爆心地めがけて羽ばたいていった。
その彼女の後ろ姿を、大技の反動で動けない僕はただならぬ不安を感じながら見送った。
………
sideフライ
フライ〈…[目覚めるパワー]!!〉
ココロモリ〈っぐ!〉
ボクは溜めていた紺の弾丸を敵対している相手に2、3発命中させた。
ダメージをうけた相手は、力が抜けて下へと堕ちていった。
A「くっ……、負けた……。」
フライ〈よし。 ある程度は倒せたかな…?〉
空中で体勢を維持したまま、ボクはひと息ついた。
………ここまで5戦ぐらいしてきたけど、種族上相手も虫タイプとか飛行タイプばかりだね……。
???〈……ええっと、君はユウキさんの[フライゴン]やんな?〉
フライ〈っん? あっ、はい。 そうですけ……ど!?〉
!?
ビックリした……。
背後から突然呼ばれ、ボクは驚きで裏がえった声と共に振りかえった。
!?
その先には、……!?
左脚に黄色いリングを着けた♀の[ハトーボー]と、その彼女の脚に捕まっているアツシさんがそこにいた。
どういう事??
???〈声でわかるかな……?〉
フライ〈声……? ……? {黄色いリング}ということは……、もしかして化学者のカレンさんですか!?〉
シルクの話によると……、たぶんそう。
声も似てるし……。
ボクは自信はないけど、思いあたる人物の名前を言った。
カレン〈そう。 あたりやよ! この辺、まだまだ大そうやからうちらも手伝うよ!〉
アツシ「………あっ、はい。 僕も手伝います! [ファイアロー]、頼んだ!」
ファイアロー〈……よし。 戦えなかった分、ここで活躍させてもらおうか!〉
……たぶん、[テレパシー]を使ったのかな……?
カレンさんの脚に掴まっているアツシさんは片手を離して、何とか自分のメンバーをボールから出した。
……始めて見る種族だ……。
アツシさんってどこか遠くの地方の出身なのかな?
飛行タイプの彼も勢いよく飛びだした。
フライ〈あっ、ありがとうございます。 助かりました! …ならカレンさん、アツシさんをボクの背中にお願いします!〉
カレン〈マジ!? ……じゃあ、頼んだよ!〉
……その方が、闘いやすいでしょ?
ボクの方が身体が大きいし……。
ボクの言葉を聴いて、彼女は{待ってました!}と言わんばかりにボクの背後に回りこんで、アツシさんがボクの背中に跨がったのを確認すると脚を離した。
アツシ「……なら、それでお願いします! ファイアロー、有星者ルールでいくよ!!」
ファイアロー〈……了解だ!〉
カレン〈…いくで! [高速移動]!〉
フライ〈はい!〉
……よし!
行きましょう!
彼女のかけ声と共に、中断していた連戦が再開した。
B「[クロバット]、[エアーラッシュ]!」
C「[チルタリス]は[竜の舞]!」
D「[ガーメイル]、お前は[虫のさざめき]だ!」
相手3匹〈[エアーラッシュ]!〉〈楽しませてもらうよ![竜の舞]!〉〈[虫のさざめき]!〉
フライ〈アツシさん、しっかり掴まっていて下さい! [ストーンエッジ]!〉
ファイアロー〈[火炎放射]!〉
まず、カレンさんは身体を身軽に動かして素速さを強化した。
対して、相手の一匹はカレンさんに切りかかろうとし、チルタリスは何かの舞を踊って志気ゎ高め、最後の一匹は羽を羽ばたかせて風をつくりだした。
それに対して、見方のポケモンは嘴に炎を溜めてブレスとして放出し、最初の一匹の進行を妨げた。
ボクは少し下の方にいくつもの岩石を出現させ、虫を秘めた風を妨害するように打ち上げた。
ボクはそれを確認すると、アツシさんを乗せたまま翼を羽ばたかせ……、
カレン〈[10万ボルト]!〉
ファイアロー・フライ〈〈!!?〉[燕返し]!/[ドラゴンクロー]!〉
両手に竜のオーラを纏わせた。
カレンさんは急上昇しながら高い電圧の電撃を放ち、もう1人の彼は[クロバット]との間合いを詰め、翼で斬りかかった。
クロバット・フライ〈!!? グワッ……!……強い……。〉〈カレンさん! 技、借りますよ! くっ!〉
必中の技は華麗にヒットし、相手の一匹を倒した。
それと同時に、ボクはカレンさんの放った電撃に潜り込み、手元にも電気を纏わせた。
ガーメイル〈!!? 中にも!?〉
黄色い波に紛れて、ボクは相手の一匹に迫り、雷の爪で思いっきり切り裂いた。
物理、特殊の両方の技がヒットし、バランスを失った相手は気を失った。
……よし、あと一匹……。
ボクは電気の余波から脱出して……、
フライ〈[目覚めるパワー]、[ストーンエッジ]!!〉
上から悪、下は岩で相手を挟み込んだ。
……この状態で、相手の逃げ場は殆どない……。
チルタリス〈!!?〉
相手は何とか突破口を見つけ出し、囲まれた状態を何とか打破しようとした。
……だけど、
ファイアロー〈逃がさないよ! [ブレイブバード]!!〉
彼が先回りして、淡い光を纏いながら立ちはだかった。
チルタリス〈!!? 挟まれた!? …っ!! まさか……作戦………?〉
想定外の事態に対応できず、相手は彼の捨て身の攻撃をまともにうけた。
そして、前二匹と同じ結果になった。
カレン〈………とりあえず、倒せたわね。〉
フライ〈はい。 ふたりとも…〉
ドーン{なかなかの実力ですね}………、
そう言おうとしたその時、少し離れた所から轟音が響いた。
何!?
今のは!?
ボク達は揃って咄嗟にその発生元をハッと見た。
………
同刻 収録会場廊下 side???
E《……あとどのくらいで着きますか!?》
F《そうね……。このペースだとあと2、3分ってところかしら?》
わたしの頭の中に、一つの声が響いた。
………今、わたしとこの声の持ち主がいる場所は、襲撃事件の現場になっている地下スタジアムの廊下……。
大事件が起こっているにもかかわらず、この場所には誰もいない………。
あるのは、どこからか聞こえる物音と、わたし達が疾走する風だけ………。
文字通り{風}になっている
わたしの隣り……、いや、周りには声の持ち主はいない……。
わたしの身体でさえ、視覚では捉えられない……。
気配だけを頼りに、見えざる声と同じ様に言葉を伝えた。
E《……なら、あと少しですね!……とにかく、急ぎましょう!!》
F《そうね。 怪我人が出てからでは遅いもの……。……飛ばすわよ!!》
E《はい!!》
不安と焦りに満たされているわたしの言葉とは対称的に、もう一つの
風は冷静に言葉を伝えた。
わたしはその声を聞き取り、肯定の意味を添えて言葉を伝えた。
………そして、2つの
風はさらに風速を速めた。
…………
収録会場 side???
ドーン!!?
今のは何!?
狭い廊下を抜け、視界が一気に広がった瞬間、突然に鼓膜をも破りそうな轟音がわたし達を出迎えた。
……この爆発は………、[大爆発]!?
………にしては、規模が大きすぎない!?
F《…遅かったか………。 ……なら、援軍が来るまであなたは怪我人の救護を頼んだわよ!!》
E《あっ、はい!》
もう一つの声でわたしは我に返り、返事と共に飛ぶスピードを速めた。
………あの爆発だから……、怪我人もいるよね………きっと。
……みんな、無事だといいけど……。
……、ソレどころじゃない!!
わたしは私情を何とか心の中に押し込んで、状況を把握するために高度………!!?
ウソでしょ!?
わたしはそこで、衝撃的な光景を目撃した。
……まず、爆心地から吹き飛ばされている、目に大量の波を溢れさせている[エーフィ]……。
もう一つは、大規模な爆発に巻き込まれ、為す術なく吹っ飛ばされている[ピカチュウ]……。
………[シルク]に[ユウキ]くん………。
わたしがよく知っている人物が、大ダメージを被っている瞬間だった……。
………くっ!
今のわたしの状態では、喉から声を出すにも出せない!!
……元に戻してさけぶにしても……種族上、リスクが大きすぎる!!
……でも、この、
ふたりのピンチを何とかしないと!!
………なら、さっき口頭で同族の師匠に習ったあの方法で……。
わたしは意を決して技を発動させた。
………[竜の波動]のイメージを最大まで膨らませる………。
同時に集中力を高め、別の技へと徐々に変えていく………。
…………よし、………これなら……。
わたしの身体は、こんどは、今から[派生]させる技のイメージで、満たされた。
……そして、それを元に口元にエネルギーを蓄え、天井めがけて撃ちだした。
わたしの2/3のエネルギーを費やした暗青色の弾丸は、一度発光したかと思うとすぐ消滅し、間髪を入れずに大量の隕石が甲高い音をあげて降り注ぎはじめた。
………これで、相手集団の気は逸れたはず………。
わたしはその事を確認しながら、高度を急速にさげ、天に祈りを捧げた。
すると、戦場に心地良い音色が響きはじめた。
……おかけで、エネルギーを全部使い果たしたけど…。
E《ハートさん!! 倒れている[ピカチュウ]をお願いします!》
わたしはどこに飛ばされたか分からないユウキ君の種族名を、ハートさんに伝えた。
ハート《……[ピカチュウ]ね? ……ライト、分かったわ。》
ハートさん、お願いします!
種族固有の能力、[ステルス]で姿を消しているわたし………、[ラティアス]のライトは、それだけ伝えると飛ばされたもう一匹……、[エーフィ]のシルクの行方を捜しはじめた。
………ふたりとも、何ともないといいけど……。