60 S 不完全な加護の代償
夕方 収録会場 sideシルク
ユウキ・シルク「《[絆]の名に誓って、絶対に阻止 してみせる!!》」
???「やれるものなら、やってみろ!!」
私達兄妹は僅かに残る守備力の全てを捨て、[チカラ]を解放した。
…………くっ………。
………流石に護る対象が百を超えると……、正気を保つのも難しいわ……。
[絆の加護]を発動させた私達は、護るべき人数が多すぎて、危うく気を失いそうになった……。
カレン「ユウキさん、シルク! そんなんで本当に大丈夫なん!?」
ユウキは頭を抑えながら何とか立ち上がり………、
ユウキ「……この状況で……、{無理}だなんて……言えませんよ……。」
シルク《私達は……[絆]としての責務を果たしただけ………。 私達さえやられなければ………、カレンをはじめ……、味方全員の安全は保障されるわ……。》
……くっ!
頭痛まで………!!
ユウキも顔を歪めてるって事は………あなたも……私と同じ状況ね………。
…………初代の[絆]………、よくこんな状態を耐えれたわね……………。
私も顔を歪めながらも……何とか言葉を紡いだ……。
アツシ「……ユウキさん!? 目が!?」
ヒロ「黒でしたよね!?」
シルク《驚くのも……、無理はないわね……。》
コルド《ユウキさんとシル……[エーフィ]は僕と同じで伝説の当事者なんです!! 目が蒼くなっているのは、[チカラ]を使っている影響なんです!! ………そんな事より………、ユウキさん、シルクさん!! この人数を僕抜きで護るとなると……[命]を落とす事になりますよ!!》
シルク・ユウキ《「……コルド!? どういう事!?」》
………コルド!?
今、何て言った!?
薄れゆく意識の中………、私は何とか言葉をつなげた……。
……私達がこうして話している間………、オルト達が……交戦してくれている……。
………すぐにでも………加勢しないと……いけないのに……。
コルド〈……説明なんかより………今はお二人の[命]の方が大切です!! …………[神秘の護り]!!!〉
………[命]……が……?
私達が聞き返すまもなく、……彼は技を……発動させた……。
………でも……待って!!
………いつもの[神秘の守り]と……違う……!?
彼は直接………私達に淡い光のオーラを纏わせるのではなく………、口元に純白に煌めくエネルギーを蓄えはじめた。
コルド〈ユウキさん、シルクさん!! そこから動かないで下さい!!〉
ユウキ「コルド………? 一体何をする………つもり……なの……?」
適度な大きさまで溜まると、………それを……今にも倒れそうな私達めがけて………放っ………!!?
どういう………事!?
私は全く訳が分からず………、咄嗟に……目を閉じた………。
………コルドに限って……、私達に攻撃なんて………するはずがない………!!
純白のそれはコルドの口元から離れ、目にも留まらぬ速さで………2つに分裂し………、体を動かす事が出来ない私達に………命中した……。
ユウキ「………痛く…………ない!?」
シルク《それに、頭痛が治まった!? コルド!? 私達に一体何をしたのよ!?》
!?
命中した直後から、私の頭からまるで波が引くように痛みが治まっていった……。
何!?
コルド!?どういう事!?
コルド〈僕も、[絆の守護者]としての[チカラ]を使わしてもらいました! ……話した事、ありませんでしたが、[加護]は本来、[賢者]、[従者]、[守護者]の全員が揃わないと完全には発動しないんです!! 歴代の[絆]に、全員揃わずに[命]を落とした例がいくつもあります!! ………ですから、僕の[神秘の護り]が無ければお二人とも………。………でも、もう大丈夫です!!〉
えっ!?
まだ完全じゃなかったの!?
……って事は、コルドが[チカラ]を使って無かったら私達、{死}んでたって事!?
私とユウキは、[加護]の真実を聞かされ、互いに目を合わせた。
………この瞬間、私は何か、ゾッとするものを感じた。
カレン「………という事は、2人はもう大丈夫って事なんやな?」
コルド〈その通りです!!〉
アツシ「カレンさん!! 独り言を喋ってないで……早くお願いします!!」
……!
そうだったわ!!
ゆっくり話している時間なんて微塵も無かったんだわ!!
私達は彼の言葉で我に返った。
カレン「……いいえ、{独り言}なんかじゃないわ!!」
アツシ「ならユウキさんも……何故ですか!?」
切羽詰まった様子の彼は、凄い剣幕でユウキとカレンに迫った。
ユウキ「伝説の当事者はポケモンの言葉が解るんです!!……カレンさん! カレンさんが使える技は何ですか!?」
ユウキ……、あなたも、闘うのね!?
カレン「うちは[高速移動]、[燕返し]、[電光石火]、[10万ボルト]です!! ユウキさんは!?」
ユウキ「僕は[10万ボルト]、[目覚めるパワー]、[気合いパンチ]、[エレキボール]です!!」
アツシ「……って、全部ポケモンの技じゃないですか!?」
シルク《その通りよ! ………2人はクドいようだけど伝説の当事者………。それ故に特殊なのよ!》
アツシ「特殊と言っても……、人がポケモンにかなう訳ないじゃないですか!!」
ユウキ・カレン「「あくまで………[人間]……ならね。」」
アツシ「!?」
当事者の2人は、迫るアツシさんを説き伏せた。
ユウキ「アツシさん、先に言っておきますが、今から僕達がする事は全て[現実]です!! 決して[夢]なんかではありません!」
ユウキは意を決して言い放った。
カレン「………やから、{驚くな}とは言いません! {信じろ}とも言いません!! ………でもこれだけは言っておきます! {姿は違っても私達は私達で変わりない}と……。」
彼女も、私の兄に続く……。
ユウキ・アツシ「…カレンさん、そろそろ行きましょう!」「{姿}!? 一体どういう……」
カレン・カレン「そやな!! 一匹の……[ポケモン]として!」「…事ですか!?」
互いに頷き、2人とも目を閉じた。
シルク《見てもらった方が早いわ。 ……あと、1つ言っておくわ。 [人間]だからと言って見くびらない方がいいわ。》
アツシ「それはどういう意m…………!!?」
変化が、始まったわね。
2人の姿はレンズの焦点がズレるように歪み始めた……。
………そうかと思うと、2人とも別々の種族へと姿を変えた。
ユウキ〈カレンさんは[ハトーボー]ですか!?〉
カレン〈ユウキさんは[ピカチュウ]やな? 《〉アツシさん、うちらには特殊な[チカラ]が有るからこうして姿を変えれるんよ!》
アツシ「あっ……いや………えっ………!?」
………パニックになるのも、無理ないわね……。
姿を変えて見上げる二匹に、アツシさんは言葉を失った。