59 LS 事件
午後 収録会場 sideユウキ
MC「
さーて、残すは決勝のみとなりました!!」
………第2回戦も無事、僕達の勝利に終わり……、生放送もいよいよ大詰めを迎えた決勝戦………。
ここまで、フライ、スーナ、リーフが頑張ってくれたお陰で無事にここまで勝ち進む事が出来た……。
収録が始まる前、交戦を誓ったカレンさんも、無事に勝ち残った。
会場の盛り上がりも最高潮に達し、番組の大トリの決勝戦が{早く始まらないか}と、誰もが待ちわびている………。
……そして何より、決勝進出者のみが知る事実がもう一つ………。
異なる2つの伝説……、[四鳥伝説]と[英雄伝説]の当事者が今、まさに一戦を交えようとしている……。
交わる事の無い2つの伝説が合間見える時、地下に広がる特設ステージに波乱の嵐が巻き起こる!!!
コルド{……ユウキさん? かしこまりすぎてませんか? あらすじ風になってますよ?}
ユウキ{……あっ、そうだった!?}
コルド{はい。 ……確かに、歴史的な瞬間ですけど、大袈裟すぎませんか?}
ユウキ{……でも、その方が決勝の緊張感が伝わるでしょ?}
コルド{………言われてみれば、そうですね? ………ユウキさん自身も、凄く緊張していますよね? ボールの中の僕にまで伝わってきてますよ。}
ユウキ{……そうだったね。 僕達って、たとえコルドがボールの中にいても[心]の一部を共有してるから、そのまま伝わるんだったね?}
コルド{そうですよ!……おかげで、僕まで緊張してきましたよ!………そんな事より、話の内容、ズレてませんか?}
ユウキ{えっ!?}
コルド{今のところ、僕とユウキの[心]の中での会話だけになってますよ?}
ユウキ{………! ごめん! 全然きづかなかったよ! 読者さんに無駄に時間を使わせちゃったね。}
コルド{…僕からも、お詫びしたいと思います。 ……もし良ければ、ここまでをミニコーナーとして楽しんで頂けたら幸いです!}
ユウキ{…………と、いうわけで、そろそろ仕切り直そうか?}
コルド{……そうですね。}
…………
…………
午後 収録会場 sideユウキ
MC「
いよいよ、残すは決勝のみとなりました!! それでは、見事勝ち残ったふたりを紹介しましょう!! ………Aブロックからは……、初参戦、化学者のカレン!! 彼女は一回戦を難なく突破し、二回戦では伝説のポケモン、[サンダー]と[エーフィ]で白熱したバトルを魅せてくれた!! 彼女は決勝ではどのように戦うのか!!? ………対するBブロックからは……、こちらも初参戦、考古学者のユウキ!! 彼は一回戦で前回の優勝者、陸上競技400m走のアツシ選手をいとも容易く下し、二回戦では一度しか指示を出してないにも関わらず、[ジャローダ]と[スワンナ]の絶妙な連携で見事な一戦を魅せてくれた!! 決勝でも、狂う事のない戦闘を見せてくれるのか!! そして、立ちふさがる伝説のポケモンに勝つ事ができるのか!! 番組史上最も白熱するバトルの幕開けだ!!」
………仕切り直しても、大して変わらなかったね……。
Aブロックを勝ち抜いたカレンさんと、Bブロックを連覇した僕は、司会が番組を盛り上げている間に、声援に応えるようにフィールドに足を踏み入れた。
カレン「…ユウキさん、いよいよやね!」
ユウキ「はい! お互い、正々堂々闘いましょう!」
カレン「そやな!!」
向かい合って立った僕達は、それぞれに互いを奮い立たせあった。
MC「
決勝戦は1対1で公式ルール採用のシングルバトル……。どちらかのポケモンが戦闘不能になれば試合終了だ!! ………それでは、バトルスタート!! 」
………よし、遂に始まった!!
カレンさんのメンバーは[エーフィ]トリさんと、[サンダー]のイカヅチの二匹……。
……でも、トリさんは戦闘不能で戦えない……。
カレン「イカヅチ、全力でいくよ!!」
イカヅチ〈もちろんだ! カレンこそ、頼んだぞ!!〉
………なら……、
ユウキ「カレンさん、僕も同じ様にいきますよ!! ………[絆]の名の下に………、コルド、いくよ!!!」
コルド〈伝説同士のバトルですか!! もちろんです!!〉
僕は[コバルオン]のコルドで!!
MC「
なっ………なんと、ユウキも伝説のポケモン、[コバルオン]だ!!!」
会場は驚きと興奮で、ドッと湧いた。
……声援が、半端ない……!
伝説と伝説とのバトル………
興奮しないほうがおかしいよ!!
イカヅチ〈!? まっ……まさか、[絆]か!!?〉
コルド〈その通りです!! あなたも、[豪雷]ですね!〉
カレン「ユウキさん、あなたも伝説の種族を連れていたんですか!?」
ユウキ「そうですよ!! シルクから聴いていると思いますが、僕も当事者ですから!! ………カレンさん、そろそろ始めましょう!!」
カレン「そやな!! 歴史に残るバトル……、精一杯楽しみましょ!!」
………もちろんです!!
[絆の賢者]の僕、[豪雷の防人]のカレンさん………、その両方がバトルの第一声を言い放つ為に、大きく息を吸い込んだ。
………そして……
カレン・ユウキ「イカヅチ、/コルド、「いくよ!!」」
合間見える戦友の名前を高らかに言い放つと共に、歴史に残る勝負の
烽火があがった。
カレン・ユウキ「まずは[充……]…」「いつも通り[奮い立…]…」
???「
そこまでだ!! この会場は我々が占拠した!!!」
カレン・ユウキ「で……!?何!!?」「て………!!?」
技を指示しようとしたその時、どこからか大声が発せられ、僕達のバトルを妨害した。
……!? 何者!!?
突然現れた黒ずくめの集団に、会場は騒然となった。
………!?
いつの間に!!?
辺りを見渡すと、その声の主が声を荒げると同時に、下っ端と思われる同じ衣装の集団が大量に流れ込んできた。
………でも、あの衣装……、どこかで見たような………。
MC「
なっ………何者なんですか!? あなた達は!!」
???「
俺達はポケモンマフィア…[ロケット団]………、十五年の時を経て、今日ここに復活を宣言する!!!」
カレン「ロケット団!?」
アツシ「何なんですか!?」
ユウキ「10年以上も前、カントーとジョウトを中心に活動していた………言わば非社会的集団です!! 二回に渡って伝説のトレーナーと[ワカバタウン]の少年が壊滅させたはずなのに………何故!?」
………その集団が活動していた頃はまだ僕はスクールに行ってなかったし、シルクとも出逢ってなかったから……軽く15年以上前…。
物心つく前からあったから、どんな悪行をしていたのかは知らない……。
社会の授業でチラッと聴いた程度……。
???「……それは夢半ばで潰された親父の目標を達成するため………。
お前等、景気づけの第一歩だ!!! あの[サンダー]を捕まえろ!!! 邪魔する奴は消しても構わない………。 やれ!!」
下っ端達・イカヅチ「「「了解!!!」〈!!? 俺!?〉
赤毛のリーダーらしき男の人が、声を荒げて言い放った。
ユウキ・カレン「「そうはさせない!!」[サンダー]はうちの大切なメンバー……。だから絶対に、させない!!/何の関係のない人に危害を加える事は[絆の理]に背く行為……。[絆の賢者]として、見逃す訳にはいきません!! みんな、戦闘準備!!」
………非社会的行動をするのなら………、[絆]の名の下に、全力で阻止しないと!!
………おまけに、今この状況は全国にリアルタイムで放送されている………。
……もし、阻止出来なければ、社会に及ぼす影響は多大なものになる……。
………だから、何としてでも!!
僕は頭領らしきその人に言い放ち、メンバー全員をボールから出した。
スーナ〈えっ!!? 何が起きたの!?〉
フライ〈収録は!!? 決勝のはずでしょ!?〉
オルト〈……まさか、そこにいる集団に妨害されたのか!?〉
リーフ〈……だとしたら、何故!!? コルド、どういう事!?〉
コルド〈簡単に説明すると、決勝が始まった直後に乱入してきたんです!!……そして、{[サンダー]を捕獲しろ!!}と言い出して、現在に至ります!!〉
シルク《………大体、状況は掴めたわ! ………その悪行、許せないわ!!! ……皆さん、メンバー全員を出して!! 多勢に無勢だけど、闘うわよ!!》
この状況………1人でも多くいた方がいい……。
僕達の側で戦えるのははせいぜい十数人………。
対して、向こうは軽く百人以上………。
僕のメンバー全員、最初は驚いたけど、何とか状況を掴んだ。
シルクに言われた出演者の皆さんも、最初は戸惑ったけどすぐに自身のメンバーを出した。
シルク《ユウキ! あれ、いくわよ!!》
ユウキ「もちろん! 闘う前に味方の安全が最優先……。最初からそのつもりだよ!!」
???「お前等少数で挑んでも無断だということが分からないのか!?」
ユウキ「……何もしなければ、です!! シルク!!」
シルク《ええ!!》
いくら何でも何の対策もなしに無謀なバトルを挑むほど、僕は馬鹿じゃない!!
僕はそれだけ言い放つと、妹と共に目を閉じ、意識を集中させる………。
ユウキ・シルク「{[絆]により………我らを護り給へ……}」〈
{[絆]により……我らを、護り給へ……}」
そして、発動のきっかけとなる呪文を唱え、自分の全守備力を犠牲に[チカラ]の全てを解き放つ………。
目を開け、僕が青、シルクは水色の瞳で事の元凶を睨みながら………、
ユウキ・シルク「《[絆]の名に誓って、絶対に阻止してみせる!!》」
???「やれるものなら、やってみろ!!」
臨戦態勢に入った。
…………
同刻 武道場 sideライト
館内放送{[シオンタウン]地下スタジアムにて事件発生。 被疑者は人質数百人………}
リョウ「!! 事件!?」
ルクス〈ティル君、悪いんやけどここで中断や!〉
!!?
わたし達の特訓もいよいよ大詰めを迎えた頃、突然の警告音も共に緊迫したアナウンスが流れた。
ハート〈ライト! 今日は「〉ここまで! すぐに行かないといけ……」
……でも、待って!!
確か[地下スタジアム]って………、
ハート・テトラ「…ないわ……。だから……」〈ライト![地下スタジアム]ってシルク達がいる場所だよね!?〉
ハート・ラグナ「ライトを危ない目に遭わせる訳にはいかないから…」〈本人から聴いたんだ、巻き込まれているのはまず間違いない!〉
ハート・ライト「ライトはここで待って!!」「うん! ……だから、ティル、テトラ、ラグナ、わたし達もいくよ!!」
ユウキ君達が仕事で行くって言ってた場所……。
絶対に、巻き込まれてる!!
ユウキ君達がいなければ今のわたしは存在しない!!
恩師のピンチに駆けつけない弟子がどこにいるの!?
いたら恩知らずにも程があるよ!!
それに、アナウンスを聴く限りではユウキ君達の中で交戦しているのが十数人に対して、相手は数百人……。
少しでも戦力が多い方が良いに決まってる!!
わたしは決意と共にハートさんの言葉を遮った。
ルクス〈!? ライト!? 正気やよね?? この事件はライトには関係……〉
ライト「
大ありだよ!! ルクスさんやハートさんにとってはただの事件かもしれないけど……、わたしにとっては今後に大きく影響する事なの!! 巻き込また人の中にはわたしにとってティルやテトラ、ラグナ……、ハートさんとルクスさんと同じくらい大切な人がいるの!! ……例えハートさんに止められても、わたしは行くから!! ティル、テトラ、ラグナ、戻って!!」
……ここでわたしが駆けつけなくてもしユウキ君達に何かあったら………、絶対に後悔する!!
足手まとい………自己満足って思われるかもしれないけど、行かないとわたしの気が済まない!!
………それに今のわたしはもう護られてばかりで弱い[ラティアス]じゃない!!
……あの時、ユウキ君達が助けてくれたんだから………、今度は
わたしがみんなを救う番だ!!
テトラ〈ライト、当たり前でしょ? 私達が黙って見過ごすとでも思った?〉
ラグナ〈ライトがそうであるのと同じ様に、彼らがいたからこそ、俺達は変われた。〉
ティル〈……だから、行くよ! 俺達も!! ……そして、助けだそう!!〉
みんなも、わたしと同じ想いを……。
………うん、よし!!
わたしは[ニンフィア]のテトラ、[グラエナ]のラグナ、[マフォクシー]のティル……、メンバー全員の[決意]を正面から受け止め、彼らをボールに戻した。
ルクス〈……でもライト! そういう訳には……〉
ハート「ルクス! こうなったらもうライトは聞かないよ! ライトはスカイと似て仲間想いで{決めた事は最後までやり通す}性格だから……。 ………ライト、分かったわ! ……その代わり、捕まったりやられたりしないで!」
ライト「……そんなの、当たり前ですよ! わたしがやられたらティル達は誰が守るんですか? ………それに、ハートさんが思うほどわたしも弱くないですから!!」
……昨日は危なかったけど、もうあんな風にはならない!!
自分の身は自分で守れる!!
ルクス〈ハート!? 本気でそう思っt………〉
ハート「ルクス、十分に分かってるから……。」
反論を続けるルクスさんを、ハートさんは問答無用でボールに戻した。
ハート「……ライト、教えた通り荷物ごと姿を変えるのよ!! リョウ、私達は先に行ってるわ!」
ライト・リョウ「「はい!!」」
持ってる荷物ごと、ですね?
私は大きく頷き、ハートさんと一緒に光を纏った。