58 S 第2回戦第2試合
午後 収録会場 sideユウキ
MC「
……それでは、これから30分間の休憩時間とします。」
第1試合が終わり、カレンさんが達がメンバーを戻すのを確認すりと、司会のアナウンサーがマイク片手に宣言した。
………それにしても、まさか[サンダー]で挑むなんて……、度肝を抜かれたよ……。
あの後、カレンさんが[テレパシー]で言ってたんだけど、彼女には[エーフィ]と[サンダー]しかメンバーがいないらしい……。
初めは伝説の当事者として{軽率な行為だ}って思ったけど、二匹しかいないなら仕方ないか……。
……僕も、コルドも出場させるつもりだったし……。
イッシュとカントーは直接行き来出来ないって事で、[コバルオン]も伝説の種族だってバレないはず……。
リーフの[ジャローダ]でさえ、知られてるか際どいし……。
……話に戻ると、MCの宣言と共に、僕を含めた出演者が散り散りになっ……
アツシ「カレンさん、どこで[サンダー]を捕まえたんですか!?」
ヒロ「出逢う事さえ不可能なのに……。」
カレン・A「えっ………あっ…………。」「ユウキさん、考古学者なら生息場所を知ってますよね!?」
…………た……とはならなくて、さっきのバトルの興奮が冷めやまぬまま、出演者が揃って[豪雷の防人]を取り囲んだ。
………こんな状態だから、カレンさん、誰から話したらいいのか分からず、目線が泳いでる……。
……僕も、そのうちの1人だけど……。
ユウキ「……いや、流石に僕にも分かりませんよ……。僕が解明したのはイッシュとホウエンだけ……。カントーはまだですから……。」
まだ………じゃなくて、調査中だし……。
カレン《………ユウキさん、この状況、どうしたらええかな……?》
と、そこに困ったような声と共に、カレンさんが目線だけで僕に助けを求めてきた。
………そう言われても………。
……{はい、自分は伝説の当事者です!}……なんて、公の場では口が裂けても言えないし………。
うーん……………。
???{僕なら、直接語りますけど?}
?
僕の脳内に、また別の声………。
ユウキ{コルド……? もしかして、聞こえてた?}
コルド{はい。 二回戦の所から、全部聞こえてましたよ? [豪雷の防人]の方が[サンダー]で挑んだんですよね?}
僕と[心]の一部を共有しているコルド……。
……やっぱり、彼には隠し事は出来ないね。
…僕の方も、コルドの思考は手に取るように伝わってくるし……。
ユウキ{あっ、うん。 コルドなら、どうする?}
僕も同じ立場である以上、こういう事が有るかもしれないからね……。
僕は彼に、心の中で訊いてみた。
コルド{ええっと………僕なら……、《}僕自身が直接話しますけど?》
?
コルドの声が、別の手段で伝わってきた。
……という事は………、
リーフ〈……やっぱり、有名人ばかりだね。〉
オルト〈……それも、今話題の人ばかりだな。 ……ユウキ、遅れてすまない。〉
着いたんだね?
収録会場の片隅に、残りのメンバーの姿を確認……。
……なんとか、二回戦までには間にあったね。
ユウキ「
僕なら、直接語ってもらいます。」
カレン《やっぱり、そうした方が手っ取り早いですよね?「》イカヅチ、あとはたのんだよ!」
無事に到着した調査班を手招きしながら、僕は彼女に小声で伝えた。
オルト達も、この人混みの中から僕の姿を見つけたみたいで、急いで駆け寄ってきた。
リーフ・イカヅチ〈……ユウキ、ごめん! 待たせ……えっ!!? 嘘でしょ!?〉〈!? オイ、カレン、いくら何でもそれは無いだろ!?〉
オルト〈!? コルドが言うことは本当にだったのか!?〉
うん、そうだよ。
[サンダー]のイカヅチをボールから出したカレンさんと、事情を知っている僕以外は、それぞれ別の意味で驚きの声をあげた。
カレン「イカヅチ、ごめん! 説明、頼んでもええかな?」
イカヅチ〈ハァー……。………わかったよ……。《〉………なら、話そうか……。》
彼は呆れたようにため息をつき、{仕方ない……>といった感じで言葉を念じた。
………もちろん、[テレパシー]を経験した事がない周りの人は普通に聞き流す事が出来ず………、
B「!!? ポケモンが喋った!?」
ヒロ「言葉が脳内に!?」
アツシ「もしかして、これが[テレパシー]!?」
[サンダー]の声に驚き、伝説に何の関係も無い人達は騒然とした。
……無理ないか……。
使えるエスパータイプがいたら別だけど、普通に暮らしていたら触れる機会なんてないもんね。
リーフ〈………僕達、完全に蚊帳の外だね……。〉
オルト〈気づかれてない訳だから、これはこれで良しとしたらいいんじゃないか?〉
コルド〈そうですね。……[サンダー]のイカヅチさん…?に感謝しないといけないですね。〉
……本当に、そうだね。
どの出演者もイカヅチさんに意識が向いていて、オルト、コルド、リーフに全く気づいてないもんね……。
コルド{本当にそうですよね……。イカヅチさんには申し訳ないですけど……。}
うん、そうだね。
ユウキ{……コルド? 気づかれないうちに僕達は準備をしておこうか?}
コルド{………ですね。もし気づかれたら僕達それぞれに対して相手のいい方で挑んできますから…。}
そうなると、作戦に影響するもんね。
僕達は[心]の中で意見が一致した。
僕達がこっそりと話している中、……何を話しているのかはわからないけど……出演者の誰もが[豪雷の化身]の話しに聞き入っていた。
ユウキ「みんな、お待たせ。」
僕達は足音を忍ばせて、群がる群集からこっそりと抜け出した。
オルト〈………やっと、話せたな。〉
リーフ〈本当はユウキも[テレパシー]を使えたら良かったんだけど……。〉
コルド〈古からの[チカラ]なので、仕方ないですよ。〉
ユウキ「……第一に、こうして皆と話せるだけで十分だよ!」
…だって、世間一般ではポケモンの言葉は聞きとれない事になってるし……。
……きっと、人がポケモンの言葉を理解出来ないのは発声方法が違うからだね。
……例えるなら、英語の発音で{l}と{r}の発音に違いがあるけど、日本語にはその違いは無い………。
コルド{……なので、それと同じようにパッと聴いただけでは同じ{鳴き声}にしか聞こえなくても、声のトーンや長さの微妙な違いで若干意味が変わるんですよ。}
………ううんと、そんな感じだね。
MC「間もなく休憩終了5分前です!」
ユウキ「あっ、もうそんな時間!?」
……やっぱり、時間が経つの早いね。
僕がメンバーとやっと話し始めたところで、番組の司会がマイクを使って出演者全員に呼びかけた。
リーフ〈もう!?〉
オルト〈………なら、俺達はボールに戻るべきだな?〉
コルド〈シルクさん達はずっと中なんですよね?〉
ユウキ「うん、そうだよ。 ……闘ってない間はなかなか出してあげられないけど……。」
……仕方ないよね。
リーフ〈………じゃあ、その時が来たら頼んだよ!〉
コルド〈みなさん、途中からですが精一杯楽しみましょう!〉
オルト〈ああ、もちろんだ!!〉
うん!!
僕達は声を揃えて志気を高めた。
………みんな、こちらこそ、頼んだよ!!
そして、一匹ずつの顔を確認してから、出たままのメンバーをボールに戻した。
………さあ、休憩が終わったらすぐに出番……、気合いを入れて頑張ろう!!
………
数分後 sideスーナ
ユウキ・C「[絆]の名の下に………、リーフ、スーナ、いくよ!!」「[レントラー]、[ミミロップ]、この調子でいくわよ!!」
スーナ・ミミロップ〈うん♪……あっ、リーフがいるって事はみんな間に合ったんだね?〉〈もちろん! 今日も、魅せるわよ!!〉
リーフ・レントラー〈うん! 一回戦は無理だったけど、みんなそろってるよ!〉〈当たり前だ! いつも通りやる…、ただそれだけだ……。〉
リーフ、間に合ったんだね?
ウチは別行動をとっていたリーフと一緒にフィールドに飛び出した。
……ダブルバトル……、久しぶりだよ♪!
調査中はウチ、誰にも会わなかったから、全然出来てなかったんだよ♪
……でも、その代わりに野生相手に1対複数っていうのが殆どだったから、周りの状況を把握するのは自信があるよ♪
………技は去年とは変わらないけど、その分威力が上がってるはずだから、きっと大丈夫♪
ミミロップ〈あら? あなた達は見かけない種族ね?〉
リーフ〈君達こそ、カントーにはいない種族でしょ?〉
レントラー〈俺達はシンオウ出身だ。 …だからここにはいないのも当然だな…。お前達こそ、別の地方だろ………?〉
スーナ〈当たりだよ♪ ウチらはイッシュ出身、……だからウチら4匹とも注目を集めてるんじゃないかな?〉
シンオウなら、間違いないね♪
ウチらは挨拶代わりに一言ずつ話し合った。
………見たところ、電気タイプとノーマルタイプだね?
……対してウチらは飛行、水タイプと草タイプ……。
ウチさえ気をつければ相性的には何とかなりそうだよ♪
MC「それでは、バトルスタート!!」
リーフ〈スーナ、いくよ!〉
スーナ〈うん♪ リーフこそ!〉
司会の人の宣言と共に、ウチらにとっての祭典が幕を開けた。
ウチらは互いにに目を合わせ、頷き、バトルに備えた。
C・ユウキ「レントラーは[放電]、ミミロップは[跳び跳ねる]!」「リーフ、スーナ、いつも通りの作戦でいくよ!!」
ミミロップ・スーナ〈[レス]、先に行かせてもらうわね![跳び跳ねる]!〉〈……じゃあ、ユウキも必要なところだけ頼んだよ♪[アクアリング]!〉
レス・リーフ〈……でないとマキノ、お前までダメージをうけるだろ? [放電]!〉〈最初から、そのつもりだよ!! [リーフブレード]!!〉
ウチらはユウキの指示と同時に行動を開始した。
……まずウチは、力強く羽ばたきながら水のベールを身体に纏わせる……。
水が保護してくれるから、多少の物理技なら威力を軽減してくれるんだよ♪
……続いて、[マキノ]という[ミミロップ]は種族上発達している脚力を行かして跳びあがる……。
その間に、[レン]という[レントラー]は瞬時に電気を練ってフィールド全体に放出する……。
…でも、無駄だったね?
電撃の壁が届くまえにリーフは尻尾の草刀を地面に打ちつけて跳びあがったから……。
……オルトもだけど、コルド以外はみんな空中戦が得意なんだよ♪
……自由に行動できるのはウチとフライとシルクだけだけど……。
リーフが打ちつけた地面が一瞬だけ若草色に色づいた。
反動で空中に投げ出されたリーフはウチがいる高さ位まで達し、
リーフ・C〈スーナ、あれ、頼んだよ![リーフストーム]!」「そのまま[冷凍パンチ]!」
スーナ・マキノ〈シルクの戦法を使うんだね♪ [冷凍ビーム]!〉〈空中戦ね? [冷凍パンチ]!〉
リーフ〈まず僕から潰す作戦だね?……でも、そうはいかないよ![リーフブレード]!!
技の関係でリーフの上をとっているマキノは、右手に冷気を纏わせて急降下し始めた。
その間にリーフは瞬時に深緑の嵐をレンに向けて放ち、またすぐに技を切り替えた。
ウチも速攻で嘴に冷気を蓄積させ、ブレスとして深緑の嵐めがけて放った。
スーナ・〈リーフ、援護するよ♪[ブレイブバード]!!〉
C・リーフ・マキノ「今のうちに[充電]!」〈ごめん、助かるよ!〉〈!? 後ろから!? くっ!〉
スーナ・レン〈っ!〉〈俺は完全に孤り……!? 何だ!?あの技は!?〉
ウチが淡い光を纏ってマキノに接近する間に、深緑と淡青色の二色は互いに混ざり合った。
そして、一瞬薄い黄緑色になったかと思うと、状態を維持出来ずに元の配色に戻った。
間髪を開けずに、リーフの草はエネルギーに還元され、その周りにウチの氷のエネルギーが渦を巻くように回り始めた。
……ある程度進むと中心の緑は小さくなり始め、外の水色は次第に回る速さを増していった。
一方その頃、ウチらはというと、降下している二匹にウチが追いつき、まさに殴りかかろうとしているマキノに捨て身の攻撃を食らわせた。
リーフ・C〈もらった!!〉「二匹めがけて[雷]!!」
マキノ・レン〈くっ!!〉〈俺を忘れてないか? [雷]!!〉
そこにすかさずリーフは長い身体を鞭のようにしならせ、尻尾の草刀を相手に打ちつけた。
………!
しまった!
地上にもいたのを忘れてた!!
リーフ〈残念ながら、忘れてないよ! [ソーラービーム]!!〉
レン〈何っ!?いつの間に!?〉
ウチらに会心の一撃を食らったマキノは派手に地面に飛ばされ、叩きつけられた。
……対して、ウチらに向けて放たれた超高圧の電撃を、リーフは咄嗟に光をかき集め、口元な凝縮させてから放出した。
リーフ〈君は僕達が一匹だけに集中してると思ったでしょ? [リーフブレード]!〉
スーナ〈[アクアリング]重ねがけ!!〉
電気と草のそれは降下しているウチらの目前で衝突し、派手な爆発音と共に消滅した。
リーフ、お陰でたすかったよ♪
……その代わり、リーフがダメージをうけちゃったけど………。
地面が目前に迫ったリーフは、得意の草刀を地面に打ちつけ、落下の衝撃を逃がした。
……対してウチは、纏っていた水のベールで少し回復した。
マキノ〈……なかなかの……連携ね……。〉
スーナ〈君達も凄いよ♪ さっきのは本当にやられるかと思ったよ♪〉
リーフ〈僕の方も、{凍らされるかもしれない}って、正直焦ったよ。〉
レン〈……なら、お互い様だな……。〉
………流石、一回戦を勝ち抜いた実力なだけはあるね!
マキノ、ウチらの連携プレーをうけたにもかかわらず、何とか立ち上がったよ…。
C「ユウキさん、全く指示を出してないのに、強いですね!」
ユウキ「レナさん、そちらこそ、どの技の威力も高くて付け入る隙が無いですよ!……でも、これならどうですか? スーナ、[ハイドロポンプ]から[ブレイブバード]。 リーフは[リーフストーム]から[リーフブレード]!!」
………って事は、一気に攻めるんだね?
レナ・スーナ「……なら、私だって……![レントラー]は[放電]で接近しながら[雷の牙]。 [ミミロップ]は[冷凍ビーム]で援護!!」〈うん♪ これで決めるんだね♪ [ハイドロポンプ]!!〉
レン・リーフ〈やっと俺の出番か……。[放電]!!〉〈[リーフストーム]!〉
マキノ〈……[冷凍…ビールム]……!〉
ウチは急速に加速しながら高圧の水流を放った。
………加速するなら……この技が一番!!
リーフもウチとほぼ同時に接近を始め、さっきよりは威力が落ちてるけど、吹き荒れる鋭利な木の葉の突風を発生させた。
対して、ふらついているマキノは一歩下がって冷気を放ち、ほぼ空気になりかけていたレンはバチバチ音をたてながら電気を放出し、思いっきり駆けだした。
スーナ・リーフ〈[ブレイブバード]!!〉〈[リーフブレード]!!〉
続いて、ウチは倒れる寸前のマキノに狙いを定め、淡い光を纏いながらさっき放った水流に突っ込んだ。
リーフは緑の壁を囮代わりに使い、そのすぐ後ろで同じ要領で今度は斜め前方に跳びあがった。
レン・マキノ〈くっ……! [雷のき…]…!? いない!?〉〈!?……早い!?〉
リーフ・スーナ〈上だよ!! [逆鱗]!!!〉〈これで最後!!…〉
レン・マキノ・スーナ〈!? いつの間に!? ………っぐ………!!〉〈っ!!!〉〈くっ!〉
水流を利用してマキノの目の前まで迫り、そのままの勢いで突っ込んだ。
……くっ!
ウチは攻撃の反動でダメージをうけた。
リーフは降下しながら切り札である[逆鱗]を発動させ、凄い勢いで流れるような猛攻を食らわせた。
元々大幅に体力を削られていたマキノはウチの捨て身の攻撃に耐えきれず、崩れ落ちた。
レンのほうも、リーフの全身を使った攻撃に耐えきれず、意識を手放した。
MC「[レントラー]、[ミミロップ]、共に戦闘不能………。 よって勝者、考古学者のユウキ!!」
………そして、司会の宣言と共に休憩直後の戦闘は幕を閉じた。