[アンケート結果発表中]絆の軌跡 〜繋がりの導き〜 - 第8章 師に仰ぐ恩
57 LS 第2回戦第1試合
午後 武道場 sideテトラ

ハート〈……大分、かたちになってきたわね。〉
ライト〈本当ですか?〉

私は嬉しそうに話すライト達に聞き耳をたてながら、目の前の事に集中する………。

……ライトは何を教えてもらってるのかわからないけど、私達は集中力を高める練習をしてるんだよ。

私、[瞑想]とか[遠吠え]みたいな技を発動させないと自分のステータスを強化出来ないのかと思ってたけど、集中力と精神力を高めても強化できるんだって!

心理を戦法に採り入れてるラグナでさえ知らなかったみたいで、{ライトを守るためにも、ぜひ教えてくれ!!}つて、ルクスさんに迫ってたよ。

ティルはティルで、{俺、特殊技は自信あるんだけど、物理技はイマイチなんだよね……。……だから、さっきやってたあれを教えてくれる?〉って言って、ルクスさんに直接稽古をつけてもらってるよ。

……で、私はというと、得意な変化技の効果を高めるためにラグナ座禅………? ……っていうのかな……?

座りながら目を閉じて、心を無にする練習……。

リョウさんのメンバーの[エルレイド]に見てもらってるよ。

………でも、案外難しいかも……。

自分ではそうしてるつもりなんだけど、何故か上手くいかないんだよね………。

エルレイド〈…こら! よそ事を考えるな!〉
テトラ〈……あっ、はい!〉

彼は私に檄を飛ばした。

……だから、私からはこのくらいにさせてもらうよ…。

……もっと、集中しないと………。

………

sideティル

ルクス〈……ティル君、なかなか筋がええね! 初心者とは思えんよ!〉
ティル〈本当?〉

背の高いルクスさんを見上げながら、俺は声をあげた。

……今、俺が習ってる[柔道]っていう護身術はどうやら俺の体格に合ってるみたいなんだよ!

本当は人間の護身術なんだけど、ルクスさんの[デンリュウ]も同じ二足歩行だから、一回進化した時にハートさんから習ったんだって!

人間にもできるから俺達の場合、技のエネルギーを使わずに闘えるんだよ。

ルクスさんは犯人と対峙した時に使ってるみたいで、それと[電磁波]を組み合わせて相手の身動きをとれないようにしてるんだよ。

………それに、俺達ポケモンの技と同じように、[柔道]にも色んな技があるって言ってた。

相手を背負って投げ飛ばす技とか……、相手の体勢を崩して転かす技………、相手を押さえ込む技………。

習得できる数に制限がないから凄く楽しいよ!!

……それに、案外簡単だし!

ルクス〈……さあ、次はいよいよ{背負い投げ}やよ!〉
ティル〈あの、最初に見せてくれた技でしょ?〉
ルクス〈そうやで!……? この光は……?〉

あの格好いい技をとうとう教えてくれるんだ!!

俺は期待と共に、力が突然溢れ出すのを感じ……………えっ!?

この感覚………、もしかして……。

ライト〈!!?ティル!?〉
ハート〈使える技を考えると、それしか有り得ないわ!〉
テトラ〈ティルって、もう一回できる種族だったの!?〉

………[進化]!?

俺の[テルーナ]としての身体はたちどころに眩い光に包まれる……………。

………すぐその後に、身体のかたちに変化が表れる………。

………俺の場合、これが人生最後の急激に力が解き放たれる瞬間………。

………痛みは………ない……。

……というか、凄く心地がいい……。

………しばらくすると、光と共に変化が収まった。

閉じていた目をあけると………、やっぱりね……。

[テルーナ]の時より、視線が高くなってる……。

ティル〈俺………、[マフォクシー]になれたんだ……。〉

進化し太くなった声で、呟いた。

……この姿、間違いない。

テトラ〈ティル、格好いいかも………。〉
ライト〈最近ティルの勘が冴えていたのも、進化の兆候だったんだ……。〉
ラグナ〈エスパータイプなのも、納得だな。〉

………だから、最近予想がよく当たるんだ……。

俺達のなかなかでは一番強いライトと、{それ以上に強いポケモンがいるの?}っていうぐらいの、次元が違いすぎるシルクと同じエスパータイプ………。

身近なエスパータイプはみんな強いから、嬉しいよ………。

俺はしばらく、進化あとの余韻に浸った……。


………

同刻 収録現場 sideユウキ

コルド{ユウキさん! 収録、どのくらいまで進みましたか?}

!?

Bブロックの第2試合が行われている最中、僕の脳内にメンバーの一匹、別行動をしている[コバルオン]のコルドの声が響いた。

[絆の賢者]の僕と[絆の守護者]のコルドは、[チカラ]の影響で[心]の一部を共有してるんだよ。

これはどの[賢者]、[英雄]にも同じ事が言えるんだ…。

今まで触れたことはなかったけど、こういう理由で会話ができるんだよ。

ユウキ{僕達は戦い終わって、今はBブロックの第2試合をしてる最中だよ。……コルド達はどの辺まで来た?}
コルド{ちょうど、[シオンタワー]が見え始めたぐらいです。}

そっか。

………でも、

ユウキ{なら、二回戦までには間に合いそうだね? ……にしても、始発に乗ってる割には時間がかかってるけど、何かあったの?}

始発に乗ってるなら、僕達が戦う前には着いてるはず……。

僕は共有してる[心]を通じてコルドに質問した。

コルド{はい……。こっちはどうって事なかったんですが、[ナナシマ]の方は海が荒れてて……、運航を見合わせていたんです。}
ユウキ{そっか……。それで……。}

なら、仕方ないね。

自然にはさすがにかなわないよ……。

僕は何かよからぬ事が起きていたのかどうか思っていたけど、彼の言葉を聞いてホッと肩をなで下ろした。

……よかった、何事もなくて……。


…………

数十分後 sideカレン

MC「………続いて第2回戦は…………、2対2のダブルバトルだ!!
カレン「えっ!?嘘やろ!?」

うちはMCの発言に思わず驚きの声をあげた。

よりによって、何で今回だけ!?

いつもの二回戦も1対1のはずやのに……!?

何故!!?

うちのメンバー、トリとイカヅチしかいないのに……。

[エーフィ]のトリならともかく、[サンダー]のイカヅチは伝説の種族………。

それも結構有名な上に全国放送………。

………マジで……ヤバい…。

騒ぎにな……

MC「それでは、化学者のカレン、お笑い芸人のヒロ、前へ

ヒロ・カレン「はいはい。」「えっ!? あっ、はい……。」

る……!

うちは名前を呼ばれて我に返り、ハッとした。

………ええい、もう、どうにでもなってしまえ!!

もう、開き直るしかない!!

うちは腹をくくって立ち上がった。

………

sideトリ

カレン・ヒロ「トリ、イカヅチ、頼んだわよ!!」「[トドグラー]、[ゴーリキー]、魅せるで!!!」

トリ・イカヅチ〈うん!……えっ!?イカヅチも!?〉〈ハァ!? 俺も!?〉

トドグラー・ゴーリキー〈よ〜し、やって……/一発、かまして……〈!!?〉〉

MC「!!! これは一体どういう事だ!!?

えっ!?イカヅチが出ちゃっていいの!!?

ワタシはもちろん、会場全体が騒然となった。

ユウキ「カレンさん!? 正気ですか!?」
イカヅチ〈カレン!! 俺が出てもよかったのか!?〉
トリ〈そうだよ!! イカヅチは伝説の種族なんだよ!! カレン、一体何を考えてるの!?〉

カレン、本当に大丈夫なの!?

カレンならこの後どうなるか分かってるはずなのに……。

事情を知っているワタシ、イカヅチ、ユウキさんがざわめく会場の中で彼女に迫った。

カレン《二回戦はダブルバトル……、メンバーがトリとイカヅチしかいないうちにはこれしか選択肢はないんよ……》

たぶんワタシ達だけに、冷静に語った。

トリ〈でも、途中棄権する手もあったよね!??〉

出れない理由があるんだから、こういう方法も有るはずなのに……どうして……?

カレン《トリ、それは失礼に値するのは知っとるやんね? そんな事したらモラルがなってないと思われる………。オマケに全国に放送されている……。仮にそうしたらうちらは今後白い目で見られて{臆病者}の烙印を押される事になる……。……トリ、イカヅチ、よく考えて!! 一生不快な目に遭うのがいいか、短期間の取材攻めに遭うか…。》

!!

……いわれてみれば……。

世の中全ての人、ポケモンが善良は心を持っているとは限らない……。

実際、ワタシ達兄弟以外の森のポケモンは酷かった……。

誰もが、{色違い}のテトラに虐待同然の事をした…。

………だから、人間の中にもそういう人は絶対にいる……。

………なら………、

トリ〈カレン、ワタシはカレンに従うよ! [誹謗中傷]を浴びるのはイヤだよ!!…だから、イカヅチもいいよね?〉

ワタシは取材攻めに遭う方を選ぶ!!

ワタシは自分の経験と照らし合わせて、結論を出した。

カレンを………そんな目に遭わせる訳には………いかない!!

イカヅチ〈………トリとカレンがそういうなら…。〉

ワタシは納得したけど、イカヅチも納得したのかな……?

言葉が……濁ってたけど……。

イカヅチ、{超}が付くほど真面目だから……、まだ納得してないかも……。

カレン《トリ、イカヅチ、ありがとね。…「》あの……、そろそろ始めてもらってもええかな?[サンダー]もポケモンには変わりない訳やし、問題ないはずやろ?」
MC「えっ………あっ………はあ………はい……。化学者のカレンがくり出したのはなんと、伝説のポケモンの[サンダー]だ!! 今回は波乱の展開になりそうだ!! ……果たして、伝説のポケモンに芸人のヒロはどう立ち向かうのか!! ………それでは、バトルスタート!!

流石、司会のプロだね?

騒然としている会場を見事にまとめてるよ……。

………これは、負けるわけにはいかないね!!

ワタシも、司会と同じように気持ちを切り換えた。

トリ〈カレン、イカヅチ、気を取り直して行くよ!!〉

奮い立たせるように、ワタシは戦友に声をかけた。

イカヅチ〈……こうなったら、とことん楽しむか!! トリ、カレン、すまんな!〉
カレン《トリ、イカヅチ、ありがとね! 「》………じゃあ、いくよ!!」

トリ・イカヅチ〈うん!!〉〈よし、任せな!!〉

やっぱり、そうこないとね!!

ワタシは威勢良く飛び出し、イカヅチもたたんでいた翼を勢いよく羽ばたかせた。

……さあ、いくよ!!


カレン「イカヅチは[充電]、トリは[スピードスター]で援護して!!」

イカヅチ〈溜めだな? [充電]……〉
トリ〈うん! イカヅチ、溜めてる間はワタシが守るから! [スピードスター]!!〉
イカヅチ〈頼んだ!〉

もちろんだよ!!

ワタシは空中で電気を練り始めたイカヅチの前に立ち、口元に無族のエネルギーを蓄える……。

ある程度溜めてるから、星形に形成して一気に放出した。

ヒロ「……!? [トドグラー]は[サンダー]に[アイスボール]。 [ゴーリキー]は[エーフィ]に[空手チョップ]!!」

トドグラー〈………あっ、うん。[アイスボール]!!〉
ゴーリキー〈………はっ! よし!〉

やっと、我に返ったみたいだね?

トドグラーは口から氷塊を飛ばし、ゴーリキーはワタシめがけて走り始めた。

カレン「正接30°方向に範囲を広げて!!」

最初から、そのつもりだよ!!

相手に2、3発当たる中、ワタシは維持したまま上を見上げる……。

地面の距離と垂直方向の距離の比が√3:1の場所を狙えば……、あの氷塊の速度と角度なら、撃ち落とせる!!

ワタシはカレンに教えてもらった三角比を駆使して、その場所に狙いを定めた。

イカヅチ〈……よし、溜まった!〉
カレン「なら、余弦45°方向からゴーリキーに[ドリル嘴]!!〉
イカヅチ〈要するに、1:√2だな? [ドリル嘴]!!〉

トドグラー・トリ〈!? 防がれた!?〉〈よし! 次は[穴を掘る]だよね?〉

ワタシはなんとか、氷塊を打ち消せた。

……でも、その間ゴーリキーへの注意が散漫になってるから、そうした方がいいよね?

カレン・トリ《うん!》〈[穴を掘る]!〉

{う}って聞こえたから、ワタシはすぐに地中に潜った。

その間に、イカヅチは回転しながら斜めに急降下を始めた。

……その先には……、

ゴーリキー〈!? オレ!? くっ!! ………流石は伝説………。[空手チョップ]!〉
イカヅチ〈っ!〉

声でしか判断出来ないけど、効果抜群の攻撃がゴーリキーにヒットして、それに負けじと相手も命中させた。

ヒロ「[地震]だ!!」

トドグラー・ゴーリキー〈よし、任せて〜![地震]!!〉〈オイ……待て……!オレを忘れて…………〉

!!?

トリ・ゴーリキー〈きゃっ!! [地………震]………?〉〈…………っ………。〉

[地震]、覚えてたの!?

イカヅチ・カレン「〈トリ!!〉」

………くっ!!!

地中に潜っているワタシは…………大ダメージと共に………知人に………引きずり出された………。

ワタシと同じで、ゴーリキーも……ダメージをうけて、………力尽きた。

……ワタシも………、限界かも………。

前が………霞んできた………。

カレン《トリ!!大丈夫!?》
トリ〈…………うん………。でも………あと一発…………耐えられるかどうか………。〉

ワタシは消えそうな意識を何とかつなぎ止めて、ふらつきながらも……立ちあがった……。

イカヅチ《無理はするなよ!》

トリ・ヒロ〈うん……。〉「チャンスだ! トドグラー、[吹雪]!!」

トドグラー〈倒れる寸前の[エーフィ]に、伝説とはいえ飛行タイプ……。勝負逢ったね〜。[吹雪]!!〉

トリ・イカヅチ〈!!? [念……力]………っ!!!…〉〈何っ!? …〉

また………そんな………大技を………!?

…………やられた………。

トリ・イカヅチ〈………イカヅチ………、あとは………頼んだよ……………。〉〈……?…!トリ!!〉

ワタシは……朦朧とした意識の中で、………何とか………イカヅチに………届かないように………超能力で………彼を………保護した………。

そして、凍てつく突風が…………ワタシに達したところで………ワタシの視界は…………暗転した。

………

sideカレン

イカヅチ〈トリ!!〉

まさか、[地震]に[吹雪]………、2つも上級技を使えたなんて………想定外やよ………。

ヒロさんは一回戦では別のメンバーやったから………。

トリは自分の技で何とかイカヅチを守り、力尽きた。

カレン「トリ……、ごめん……。ゆっくり休んどいて……。……イカヅチ、トリの分まで………いくよ!!〉
イカヅチ〈………もちろんだ! トリの思いは、無駄にはしない!〉

イカヅチ、当たり前やろ?

倒れたトリをボールに戻して、気持ちを切り換えた。

………今の状況はまさに1対1のシングルバトル……。

相性的には不利やけど、持久戦に持ち込めば………勝てる!

カレン《イカヅチ、持久戦、いくよ!》
イカヅチ《俺の特性を利用するんだな?》

何しろ、イカヅチの特性は[プレッシャー]……。

普段よりも多く相手のエネルギーを減らせる……!

おまけに、大技2つを使ったトドグラーには、あまり残されてないはず……。

彼はすぐにうちの意図を察してくれて、大きく頷いた。

カレン《そう!……「》[放電]で牽制!」

イカヅチ・ヒロ〈溜めたものをここで使うのは勿体無いが、やむを得ないな……。[放電]!!〉「[冷凍ビーム]で迎え撃て!!」

トドグラー〈さっきは失敗したけど、今回はそうはいかないよ〜![冷凍ビーム]!!〉

お互い、様子見やな?

イカヅチは溜めていた電気をバチバチ音を鳴らしながら放出し、相手も冷気を口内に溜めて、一直線に放った。

技は互いに衝突し、轟音と共に消滅した。

ヒロ「[(あられ)から[吹雪]!!」

トドグラー・カレン〈流石にこれはかわせないでしょ〜?[霰]!〉「[充電]しながら旋回して!」

イカヅチ〈当たり前だ!! ……[霰]か……。スノウを思い出すな……。〉

相手は勝利を確信したように青白いエネルギーを打ち上げ、細かい氷片を降らせた。

……でも、無駄やよ?

イカヅチ〈……だが、あいつに比べたらこの程度の技………、俺には通用せん!! [雷]!!〉

[サンダー]のイカヅチは[豪雷の化身]……。

[雷鳴]を司ってるから、天候に関する技は通用しない!

……でも、あんな技の出し方、初めて見た……。

イカヅチは一般的なポケモンとは違って、身体から直線電撃を放出せずに、黄色く輝くエネルギー塊を嘴から打ち上げた。

……もしかして、イカヅチ、伝説の種族に備わってる特殊能力………使ってる……?

一同「「「「〈!!?〉」」」」

エネルギー塊は天井付近まで達すると、一度激しく発光した。

……その瞬間、数え切れない程の稲妻が、轟音と共にフィールドに落ち、吹き荒れていた霰をいとも容易く打ち消した。

………流石は固定技……。

……それに、昔話に登場する、{内乱を鎮めたと言われる天の閃光}………、凄すぎる…。

イカヅチが[チカラ]を使う所を一度も見たことがないから…………こんな光景………初めて………。

うちを含めて、誰もかその技に圧倒された…………。

イカヅチ《カレン、今だ!!》
カレン「…………………!!」

!?

突然イカヅチの声が脳内に響き、ワタシは我に返った。

カレン「……あっ………、そうやね……![雷]!!」
イカヅチ〈そう来ると思った! [雷]!〉

……今度は、普通の技やね?

イカヅチは体内から超高圧の電気を、呆然と立ち尽くすトドグラーめがけて放出した。

トドグラー〈……………はっ! !!?〉

相手が気づいた時には、すでに目前に迫っていた。

トドグラー〈……っ!!! やっぱり……………伝説………。………強い………。〉

そう言って、トドグラーは崩れ落ちた。



……そういえば、あれだけ凄い電撃やったから、機材とか大丈夫なんやろうか……?

普通に考えて、電磁力が半端なく高いはずやし………。

……でも、会場のスクリーンを見る限り、大丈夫なんかな?

…………何事もなく映像が映っとるし……。

…………杞憂………やった……かな?

@ ( 2014/03/05(水) 00:12 )