56 LS 第1回戦
正午過ぎ 武道場 sideライト
ハート〈ええ、そうよ。 本当の私は[ラティアス] ………!それも色違いのね!〉
リュウ「……でも、本当にびっくりですよ……。 まさか人の中に姿を変えたポケモンがいるとは想像できません出したから……。」
ライト「だって、それがわたし達の習性……?本能…?だから。 ……伝説って言われてるのも、わたしとハートさん、アオイさんの3匹しかいないからかもしれないね。」
………これが、わたし達が伝説って言われてる理由……かな?
テトラ〈[アオイ]……さん?その人も、そうなの?〉
ティル〈[ラティアス]って事は、ライトと一緒で人間に姿を変えてるんだよね?〉
ティルとテトラ、ハートさんに興味津々だね?
特にテトラは自分以外の色違いに会うのは初めてだからね。
……わたしも、テトラとハートさんしか知らないし……。
ライト「ううん、アオイさんだけは人間に姿を変えられないんだよ。 ラグナは一回会ってるから知ってるよね?」
ラグナ〈ああ、そうだったな。 あの人達だけは特殊だったな。〉
ティル〈えっ!?人間に変えれないってどういう事なの!?〉
テトラ〈[ラティアス]の能力って人間に姿を変えれる事だよね!?〉
……そうそう。
伝説って言われてるのはむしろアオイさんとソウルさんだがら。
ルクス〈そうやけど、あのひとは伝説の当事者で特殊なんよ。〉
ハート〈あの鈍感電気狼……、私の双子の兄もだけど、人間に変えれない代わりに別の種族に姿を変えれるのよ。〉
ラグナ〈………確か、決戦の時の[ライボルト]だな?〉
ラグナ、そうだよ。
……〜kizuna〜を読んでくれた人なら知ってると思うけど、ソウルさん、凄くつよいんだよ!
……多分、シルクでも勝てないかもしれない……、それくらいの実力を持ってるんだよ!
ライト「そうだよ。」
ハート〈あれはわたし達の中では一番の実力だけど……、恋愛には疎いのよね……。アオイの反応を見れば分かるはずなのに、それでも気づかないくらいだわ……。〉
ハートさん………、自分のお兄ちゃんを{あれ}って………。
昔からそうだったけど……。
ハートさんは小さくため息をつきながら言った。
ハート〈……ところでライト? 話、逸れたけど、そろそろ始めましょっか。〉
ハートさん、……気持ちを切り替えるの早いかも……。
わたしの目線ぐらいを浮遊しているハートさんは、2、3度頭を降って話題を変えた。
ライト「あっ、はい。……じゃあその間……、〈」ルクスさん、ティル達の技とかを見てもらっても良いですか?〉
ルクス〈ええよ! 待ってる間、ウチも暇やからそうしようって事になったんよ!〉
姿を戻しながら、テトラ達と盛り上がっていたルクスさんにお願いした。
………と言っても、その必要は無かったみたいだけど……。
ティル〈ルクスさんが!? いいの?〉
ハート〈もちろんよ!《〉リョウ、あなたもお願いしますわね。》
リョウ「そういう話だからね。 ……じゃあ、始めようか。」
リョウさん、ルクスさん、お願いしますね。
ルクスさんが言うには、リョウさんもそれなりの実力を持ってるみたいだから、大丈夫だね。
ティル、テトラは元気よく返事をして、ラグナは遠慮気味に頭を下げた。
……わたしも、浮遊したまま彼女の方に向き直り、
ライト〈ハートさん、わたしのほうも、お願いします。〉
ハート〈ええ!〉
技………じゃなくて、まだ技が習得していない能力の練習を始めた。
ハートさん、今回もよろしくお願いします!!
…………
一時間前 控え室 sideシルク
フライ〈……今度はみんな揃って行きたいよ。〉
スーナ〈うん♪ ……でもまずは調査結果をまとめてからだね♪〉
シルク《そうね。》
あの後、トリちゃんと一時間ぐらい話したわ。
彼女、カレンと一緒に[氷雪]のセツさん達に会いに行ったそうだわ。
話の殆どが[四鳥伝説]の事で、私達が調べた事を調べて終わったのよ。
……で、{控え室の鍵、ワタシが持ってるからそろそろ戻るよ。}って言って帰っていったわ。
………カレン、凄く賢そうなのに忘れっぽいのね?
……意外だわ。
トリちゃんが帰った後、調査で巡った場所の景色の話になったわ。
スーナは私と同じで特に変わった場所は無かったって言ってたけど、フライは色んな種類の木の実がなった森を見つけたらしいの。
[オレンの実]や[ナナシの実]はもちろん、手に入れるのが難しい[ハバンの実]や[パイルの実]もあったって言ってたわ!
木の実はよく実験の材料に使ってるから、調達のついでに行ってみたいわ!
………と、そんな感じで話が盛り上がって、現在に至るってわけ。
フライ〈船着き場からは結構距離があったけど……〉
ユウキ「……ふぅ。 やっと終わった…。」
フライが何かを話し始めようとしたちょうどその時、突然部屋の扉が開いたかと思うと、若干疲労の色が伺えるユウキが入ってきた。
………打ち合わせ、終わったのね?
フライ〈…日帰り……あっ、ユウキ、お帰り。 どうだった?〉
ユウキ「…有名人ばかりで、緊張したよ……。」
シルク《流石、全国放送ね。 ……で、どんな感じなのかしら?》
……たぶん、プロデューサーとかディレクターさんの話が長かったからかもしれないわね。
……でも、私達もバトル形式を知っておきたいから話してもらってもいいかしら?
部屋のパイプイスに崩れるように座り込んだユウキに、遠慮気味に伺った。
ユウキ「……ううんと、まず僕達はBブロックに割り振られて、一回戦は2つ星の有星者ルールで、1対1のシングルバトル。……二回戦の形式はその後で発表されるって。」
スーナ〈有星者ルールなら、ウチらは何の問題もないね♪〉
………むしろ、いつも通りのバトルができるからかなり有利ね?
著名人で星を持ってる人は殆どいないから、楽に勝てそうね!
でも、楽しみだわ!
迫り来る開戦の刻に、胸の高鳴りを感じた。
ユウキ「うん。 ……あっ、そういう。 オープニングから出ることになったから。」
シルク《オープニングに?……という事は、時間的にも私達は戻っておいた方がいいって事かしら?》
スーナ〈出たままだと、メンバーがバレるもんね♪〉
ただでさえ全員揃ってないのに、知られたら流石に不味いわね……。
私、スーナ、フライだと相性が偏ってるし……。
相手が氷タイプなら、尚更だわ……。
ユウキ「……だから、しばらくの間ボールの中だけど、いい?」
……そんな事、最初からそう思っていたわ。
シルク《ええ、構わないわよ。》
フライ〈ボクもいいよ!〉
スーナ〈…だって、そういう決まりなんでしょ?……だからユウキ、後はお願いね♪〉
ユウキ「うん。」
ユウキ、頼んだわよ!
私達は一度頷き、赤い光に包まれた。
………さあ、いよいよ、バトルの祭催が始まるわね!
楽しみだわ!!
………
数分後 収録会場 sideユウキ
ユウキ「……そっか。 確か公開収録だったっけ?」
僕は収録の直前でにぎわい始めた地下のバトルフィールドに足を踏み入れた。
昼にも関わらず、観客席は沢山の人で溢れかえり、バトルの開始を今か今かとまちわびている……。
……流石は特番。
まだ始まるまで30分はあるのにもう満員だよ。
僕は独特の緊張感を………
???「あなたはユウキさんやね?」
肌で感じながら……?
?
僕は突然、打ち合わせの時にいた出演者のうちの1人に話しかけられた。
ふりかえると……、
ユウキ「……ええっと、化学者のカレンさんですよね?」
[ディフェンダー]を開発した事で有名な、化学者のカレンさん……。
……確か、彼女が[豪雷の防人]だったっけ?
僕は以前テレビで見た情報とシルクの話を照らし合わせながら伺った。
カレン「そうです。《」ユウキさん、[四鳥伝説]の件は助かりました!》
ユウキ「!?
……あっ、はい。 僕のパートナーのシルクが言ってました。……本当に、[テレパシー]を使えるんですね?」
彼女が会釈したあと、それと同じ声が僕の脳内に響いた。
……[チカラ]は、本当だったんだ……。
トップシークレットだから、僕は周りに聞こえないように声を潜めた。
カレン《この[チカラ]には凄く助けてもらってるんですよ…。「》……ええっと、確かユウキさんはBブロックでしたよね?」
ユウキ「あっ、はい。 カレンさんはAブロックでしたね。」
伝説に関わる話じゃなくなったから、言葉での会話に変えたのかな?
カレン「ええ。 ……やから当たるのは決勝だけですね。」
ユウキ「そうですね。 ……その時は、正々堂々と戦いましょう!」
カレン「そやな。 楽しみにしてますよ!」
カレンさん、僕もです!
………もしそうなったら、歴史的にも貴重かもしれないね……。
カレンさんは[豪雷の防人]、僕は[絆の賢者]……。
たぶん異なる二つの伝説の当事者が一戦を交えるのは史上初かも……。
僕は、彼女と互いの健闘を誓い合った。
………
正午 sideトリ
カレン「トリ、いくよ!」
トリ〈うん!〉
ワタシは会場の全員が注目する場所…、バトルフィールドに飛び出した。
……本格的なバトル、久しぶりだなー。
普段はカレンが研究者って事もあってなかなかできないから、大丈夫かなぁー。
……でも、そうは言ってられないよね!
ワタシは大きく頷いた。
MC「
化学者のカレンは[エーフィ]だ!!」
トリ〈……カレン? あの声の大きさ、どうにかならないの?〉
……ううっ…。
音、大きすぎて耳鳴りが……。
拡声器の音に耐えかねて、ワタシは顔を歪めた。
………正直、五月蝿いかも……。
A「[ナエトル]、収録開始だよ!!」
ナエトル〈うん。 いつも通りやらせてもらうよ。〉
相手は……ええっと、草タイプの[ナエトル]だね?
ワタシの技だと……、相性は普通……かな?
トレーナーは……、名前、忘れたけど、最近出始めた若手俳優。
……種族的にも、大丈夫だね!
とっておきの作戦もあるから!
トリ〈絶対に、負けないからね!〉
ワタシは自信満々に言い放った。
ナエトル〈こっちだって、遠慮なくいかせてもらうよ!〉
MC「
それでは、バトルスタート!!」
トリ〈やっぱり五月蝿い!!〉
頭がガンガンする……。
……とにかく、気持ちを切り替えないと!
ナエトル〈[葉っぱカッター〉
相手はワタシめがけて走りながら、網状脈に分類される植物の葉っぱを飛ばした。
……ワタシまで4m。
トリ〈そう簡単には当てさせないよ!![穴を掘る]!!〉
迫る葉に対して、ワタシは瞬時に地面を掘って身を隠した。
ナエトル〈えっ!?消えた!?〉
やっぱり、戸惑ってるね。
……おまけに、トレーナーから指示がもらえないから、為す術がないって感じ……。
………勝負あったね!
ワタシは地上から聞こえる相手の声で、勝利を確信した。
………何故かというと……、
カレン《そこで[瞑想]!》
ワタシの頭の中にパートナーの声が響いているから!
カレンさえ平然としてくれていたら、ただ見守ってるだけにしか見えない……。
使える[チカラ]があるなら、利用しないとね!
トリ〈[瞑想]…………。〉
カレン、了解!!
ワタシは一度掘り進むのを止めて、目を閉じ、精神統一を始める…………。
…………………………………。
………よし、このくらい溜めれば……。
地上からは、慌てふためく対戦相手の声が響いている………。
………自ら居場所を教えてるのに気づいてないね…。
トリ〈[穴を掘る]。〉
相手の声を頼りに、止めていた掘削を再開した。
……さあ、一気にいくよ!!
掘り進む正面に、一筋の光が差し込んだ。
……ワタシが姿を現したのは……
トリ〈足元ががら空きだよ!!〉
ナエトル〈!!? 下から!? ………くっ!!〉
対戦相手の足元……。
地中から這い出し、そのまま地面タイプの一撃をくらわせた。
ワタシの攻撃で相手は何mか飛ばされる……。
トリ・カレン〈[念力]!!〉《正面45°方向に飛ばして[スピードスター]!!》
ナエトル〈っ!!〉
そしてワタシは容赦なく相手を拘束した。
[サイコキネンシス]はまだ練習中………。
………でも、3回に1回は成功するところまではきてるんだよ、
カレンに言われたとおり、念じる力を更に強めて………10m……、正弦にして約7m飛ばした。
空中に投げ出されて、相手は身動きがとれない……。
……よし!
ワタシは技を解除して、
トリ〈[スピードスター]!!〉
口元に無族のエネルギーを溜め、一気に放出する……。
放たれたそれは星形に形成され………、
ナエトル〈うわっ…………!!………強い……………。〉
1/3ぐらいが命中した。
………そして、地面に落下する頃にはもう目をまわしていた。
…………よし、一回戦突破!!
…………
数十分後 sideフライ
ユウキ「[絆]の名の下に……フライ、いくよ!」
フライ〈久しぶりの公式戦……、思う存分楽しんでくるよ!〉
ボクはボールから飛び出すと、2、3度羽ばたいて着地した。
番組の企画だから、対戦相手も言うほど実力はないだろうから、この一年で考えた新しい戦法とか技を試すには最適……かな?
……どの人も著名人でまともにバトルをする暇なんてないはずだから、よっぽどの事が無い限り大丈夫だね。
MC「
おーっと、いきなりドラゴンタイプの登場だー!!」
…司会の人、気合いが入りすぎだよ……。
拡声器によって反響した声にエコーがかかり、賑わっていた会場が更に盛り上がった。
B「ユウキさん、いきなり切り札ですか? [ゲッコウガ]、気を抜くなよ!!]
ゲッコウガ〈当たり前だ。 ……まっ、今回も俺達が優勝させてもらうがな!〉
………初めて見る種族だ……。
見た感じ水タイプ………?
……いや、虫タイプ……?
……うーん、分からない……。
相手のトレーナーも、自身のメンバーを出した。
MC「
さて、前回優勝のアツシ選手に考古学者のユウキはどう戦うのか!? ……」
ゲッコウガ〈……こういう事だから、せいぜい楽しませてくれる事を期待してるよ。〉
……絶対に、挑発してるよ。
相手はボクを見下すように言い放った。
フライ〈優勝してるみたいだけど、そう簡単にはいかないから!〉
ゲッコウガ〈さあ、どうかな? お前は地面、ドラゴンタイプだろ?水タイプの俺に勝てるとでも思ってるのか?〉
フライ〈………なら、その定説をここで覆してみせるよ。〉
ボク達は開戦前に言の葉で火花を散らす……。
………話した感じだと、相当の自信家だね。
態度から凄く感じるよ。
相手は、癪に障る言い回しでボクを挑発し、眉を釣り上げた。
ゲッコウガ〈絶対王者に対して……やれるものならやってみな!![水手裏剣]!!〉
フライ〈望むところだよ!!〉
相手は宣戦布告にも似た言葉を言い放ち、同時に手元に幾つもの水塊を出現させた。
………所要時間から推測すると、それなりに実力はあるようだね……。
……でも、まだまだ。
ボクは正面から滑空し、相手との距離を詰める……。
………その距離、5m………。
3m………、
ゲッコウガ〈正面からとは……血迷ったか?〉
フライ〈さあ?それはどうかな?〉
飛び交う水塊の軌道を完全に見切り、体を左右に捻ってそれをかわす………。
3m………、
ゲッコウガ〈お前みたいな口だけの奴は五万と見てきた……。お前もどうせそうなんだろ? [冷凍ビーム]!〉
相変わらずのいらつかせる発言と共に、ボクにとっては脅威となる冷気の光線を瞬時に放った。
………でも、遅い………。
フライ〈[ストーンエッジ]!!〉
ボクは詰まりかけた相手との間合いに幾多の岩塊を出現させ、真上に飛ばす事によってそれを防いだ。
………その間に、急に進路を変え、横向きに飛びながら左に逸れる…。
2m…………、
ゲッコウガ〈ほう、技で防いだか……。〉
余裕の笑みを浮かべて、相手は岩の先にいるはずのボクに向けて言い放った。
その余裕が命取りだよ?
1m………、
ボクは悟られないように射程距離まで接近し……、
フライ〈もらった!!〉
ゲッコウガ〈何っ!? っ!〉
体勢をそのままに、地面と平行に宙返りをして尻尾を思いっきり叩きつけた。
………[通常攻撃]………。
5000年後の世界で習得した攻撃方法で、技のエネルギーを必要としない物理技……。
……いや、技とは言えないね。
人間に当てはめるなら、拳で殴るようなものだし……。
相手は予想外の攻撃に反応出来ず、派手に飛ばされた。
ボクはその相手を逃さず追跡する……。
相手まで5m………。
ゲッコウガ〈くっ………、[叩きつける]か……。……だが、初級技では俺は倒せんぞ!〉
体勢を立て直し、未だに自信満々に言い放った。
………絶対に、マグレだと思ってるね……。
…3m……。
ゲッコウガ〈……まっ、所詮[叩きつける]程度では俺には勝てない事は明らかだな?〉
ボクは体勢を戻して低空飛行をし、
フライ〈…なら、初級者って見越しているボクの組み合わせを避けきれる?[地震]、[目覚めるパワー]!!〉
尻尾を思いっきり地面に叩きつける。
……それと同時に、手元に紺のエネルギーを蓄積させる……。
………これも、この一年で身につけた戦法……。
シルクに技の同時出しのコツを教えてもらって、一年がかりで習得したんだよ。
……その時、ユウキやオルトをはじめ、みんな一緒に学んだんだけど、みんなうまくいかなかった……。
……だから、これができるのはボクとシルクだけ……。
ボクもまだできるようになって一週間しか経ってないし…。
打ちつけられたボクの尻尾によって、フィールドは唸りをあげて揺れはじめた。
ゲッコウガ〈!!? 嘘だろ!?〉
余裕綽々な相手は意表を突かれ、慌てふためく……。
対して、ボクは打ちつけた反動で急上昇して、何十もの紺の弾丸を矢継ぎ早に撃ち出す……。
……この瞬間、相手から笑みが消えた……。
……やっと、気づいたみたいだね……。
でも、もう手遅れだよ?
ゲッコウガ〈ぐっ……!! あり得ん……。〉
大地の躍動によって身動きがとれない相手に、まともに命中する……。
……あと一発当てれば、勝てるね………。
フライ〈これで決めるよ!! [目覚めるパワー]、[ドラゴンクロー]!!〉
右手に竜のオーラを纏わせ、空いている左手で悪のエネルギー塊を生成する……。
ゲッコウガ〈何を………するつもりだ……?〉
次に、左のそれに竜を纏った右手を突っ込む……。
フライ〈くっ…。[ドラゴンクロー]!〉
すると、左のそれは右に移り、悪のオーラに変換された。
………これは自分の思うように物理技の属性を変えれるんだけど、自分もある程度ダメージを受けるからあまり使えないんだよね……。
おまけに、10秒以上維持出来ないから、結構な量のエネルギーを消費する……。
…まさに、{諸刃の剣}なんだよ……。
ボクは空いた左手に再び竜を纏わせて、標的めがけて急降下を始めた……。
ここまでに費やした時間は6秒……。
残り、4秒……。
3………、
ボクは竜と悪の双爪を構え、急降下…………。
2…………、
ゲッコウガ〈……!?[辻……切り]……!〉
ボクの行動に何とか反応し、相手も技を構えた。
1…………………、
ボクは腕を交差させ……、
フライ〈これで最後!!〉
射程に入ると同時に力いっぱい切り裂いた。
ゲッコウガン〈ぐっ…………!!………クソっ!……この俺が…………負けた……。〉
竜、悪の二色の斬撃を悪の手刀で防ごうとした相手は堪えきれず、凄い勢いで吹っ飛ばされた。
……この瞬間、会場全体がざわめいた。
………何しろ、前回の優勝者を破ったのだから……。