49 LS 後遺症
午後 クチバシティーポケモンセンター sideシルク
スーナ〈……とにかく、無事に終わって良かったね♪〉
シルク〈そうね。〉
正式に[水冷の防人]になったエレン君と別れてから、私達はまっすぐ………とはいかなかったけど、センターの方に戻ったわ。
気温が少し下がり始めてきたから、多分午後3時ぐらい……かな?
この時間ならセンターもすいてるから、ロビーでもゆっくり休めるわね。
フライ〈それにユウキ?明日は[シオンタウン]に行くんでしょ?〉
ユウキ「うん。 シルクには言ったけど、生放送の番組に出演する事になってね、急遽行くことになったんだよ。」
フライ・スーナ〈〈生放送の?〉〉
ええ、そうよ。
私は前にユウキから聴いていたから、知ってたわ。
ユウキの話によると、正午から夕方までと夜7時から10時の二部に渡って放送する特番らしいのよ!
ユウキをはじめ、私達が出演するのは前半の方で、芸能人やアスリート達がバトルで腕を競いあうっていう企画みたいだわ。
どの人も最近話題の人物ばかりで、昼にもかかわらず視聴率が高いのよ!
フライ〈へぇー。……でも、[1の島]に行ってるオルト達はいいの?すぐには帰って来れないはずだけど……。〉
シルク〈島に行くのでも軽く3時間はかかるから、今日中に合流するのは無理ね……。〉
フライに続いて、私も人間の姿に戻っているユウキに聞いた。
昔行ったことがあるけど、かなり時間がかかったのを覚えているわ……。
ユウキ「それなら多分大丈夫だよ。 [渦巻き島]から帰ってくる途中で連絡が入ったんだけど、明日の始発で帰るから心配ないって。それに、今丁度[陽炎の化身]と話してる最中だって言ってたよ。」
スーナ〈……って事は、向こうも順調なんだね♪?〉
ユウキ「うん。 コルドにしては異様にテンションが高かったから、それだけが気になるけど。」
……つまり、リーフ達は[ファイヤー]のエンさんに会えたって事よね?
スノウさんの話によると、彼だけがまだ野生だって言ってたから会えるか心配だったけど、何とかなったようね。
……それにしても、コルドのテンションが高いって珍しいわね。
何か良いことがあったのかしら?
シルク〈きっと思いがけない発見があったのかもしれないわね。〉
たぶん、そうね。
私はとりあえず、って事で結論をだした。
私達は雑談を止めず、近くの椅子に腰かけた。
フライ〈かもね。………あれ? あの人って……ライトじゃない?〉
?
スーナ〈えっ?どこ!?〉
私は彼に言われるままにカウンターの方に目を向けると……、
フライ〈ほら、カウンターの前で男の人と喋ってる女の人、そうじゃない?〉
ユウキ「……隣の人は知らないけど、あれはそうだよ。」
シルク〈ええ、間違いないわ!〉
[ギャロップ]を連れた青年と、たぶんメンバーを回復してもらったばかりで3つのボールを持っている、トレーナーのライト。
絶対にそうだわ!!
ここにいるって事は、[タマムシシティー]のジムは制覇済みね?
私達ははやる気持ちを抑えながらも、彼女の元へ駆け寄った。
ヒイラギ〈………じゃあ僕はそろそろ戻るよ。調査結果をまとめないといけないからね。」
ライト「うん。 今日はいろいろとありがとね!」
フレア〈俺達はただ当然の事をしただけだ。こちらこそ、貴重な情報をありがとな。〉
……見た感じ、仲良さそうね。
知りあいなのかしら?
勝手に彼のことを推測しながらすれ違った。
………私の勘だけど、ライトと同じぐらいの年齢ね、きっと。
スーナ〈ライトー、久しぶりだね♪!〉
ライト・シルク「……よし………えっ!!?スーナ!?」〈その様子だと、ジム巡りは順調のようね。〉
フライ〈ボクとスーナに会うのは一年ぶりじゃないかな?〉
ライト、突然だったからびっくりしてるわね。
ライト「そっ……そのくらいになるね。……あれ?合流するつもりって言ってたけど、オルトとリーフとコルドは?」
……そうね。
ライトは合流した後の事はしらなかったわね。
シルク〈オルト達は今頃[1の島]にいると思うわ。 私達もちょうど調査から帰ってきたところなのよ!〉
ユウキ「……ちょっとジョウト地方までね。」
ライト「ジョウト地方に? [ニビシティー]で会った時に話していた、[四……]何とかっていう伝説の事?」
スーナ〈そうだよ♪ ちょっと遠かったけど……。〉
スーナは軽く笑いながら言った。
フライ〈ライトの方は?〉
ライト「わたし? わたしはさっき、ここのジムに挑戦してきて回復してもらったところだよ。」
シルク〈結果は?〉
ライト「ティル達のおかげで勝てたよ!」
そっか……。
無事に勝てたのね?
マチスさん、英語と混ざってるからバトル以前の問題があったけど、何とかなったのね?
ユウキ「おめでとう! ……って事は、あと何ヶ所になる?」
ライト「ううんと、6つ手に入れたから……、あと2ヶ所だよ!」
シルク〈[シオンタウン]と[セキチクシティー]ね?〉
ライト「うん、そうだよ!」
彼女は無邪気な笑顔でこう答えた。
ライト、リーグ挑戦まであと少しね。
応援してるわ!!
この後、立ち話もあれだからって事で、ユウキが予約していた部屋に場所を変えたわ。
………
夕方 部屋 sideシルク
スーナ〈ライト、ライトのメンバーって何匹いるの♪〉
ライト「3にんだよ。 みんな、お待たせ!」
ライトはスーナの問いに笑顔で答えた。
フライもだけど、ライトのメンバーに会うのは初めてだったわね。
まずはじめに、
ティル〈……あれ?この人達はだれ?〉
[テルーナ]のティル君。
この2、3日で逞しくなったわね!
次に、
テトラ〈……えっ!?シルク!?〉
私を見つけて少し驚いてる、色違いで[ニンフィア]のテトラちゃん。
そして、
ラグナ〈………あ………。〉
去年まで敵対関係にあって、気まずそうにしている[グラエナ]のラグナさん。
私はほんの少ししか一緒にいなかったけど、ティル君達に馴染めたみたいね。
ユウキ・スーナ・フライ「!?君は確かガンマの!?」〈えっ!?どうして!!?〉〈ガンマの[グラエナ]!?〉
あの事を知らないさんにんは、ラグナさんだと言うことを確認すると、血相を変えて身構えた。
ティル・テトラ〈〈えっ!?何!?〉〉
当然、ティル君達も慌てる……。
ラグナ〈こう思われるのも、無理ないな……。〉
フライ〈何でいるのかは知らないけど………〉
まさに………修羅場ね……。
フライ・スーナ〈ライトには手出しはさせないよ!![ドラ……]……〉〈ライトには近づかせない!![ハイ……]……〉
シルク〈
[サイコキネンシス]!!!……くっ……!スーナ、フライ、[グラエナ]の彼………、ラグナさんを攻撃するのは………止めて!! もう彼は……ガンマのメンバーじゃ……ないから!!〉っ!!!喉が………!!
後遺症が残る喉を駆使して、誤解を晴らすべく叫んだ。
今にも攻撃しそうなふたりを、超能力で止める………。
………ヤバい………痛み始めてきた………。
私は思わず顔を歪めた。
ライト以外「〈〈〈〈シルク!!?〉〉〉〉」
シルク〈彼の身元は…………っ……私が保証する………。だから……攻撃するのは………やめて………。〉
私は喉の痛みで波を浮かべながら………スーナやフライに想いをぶつけた…。
………焼けるように…………痛くなってきた………。
ライト「シルクの言う通り、彼はもう違って、わたしの大切な仲間だよ。……ラグナも後悔してたみたいだし、和解したんだよ。………そんな事より、シルク、大丈夫なの!?」
スーナ・シルク〈シルク、大声出せないはずなのに……そこまでして………。〉〈………っ……意識が…………とびかけてるわ………。〉
………こんな痛み………、今まで無かったのに………。
……でも、止めてくれて……良かったわ……。
………目の前が………霞んできた………。
フライ〈シルクがそこまでして言うなら………、信じるよ……。それより、速く炎症を抑えないと!!ライト、[チー…]……〉
…………ダメだ………意識が…………
フライの言葉を最後まで聞き取れず………、私は喉の痛みが酷くて………気を失った……。
………
sideライト
フライ〈シルクがそこまでして言うなら………、信じるよ……。それより、速く炎症を抑えないと!!ライト、[チーゴの実]、もってる!?スーナは水をお願い!!〉
テトラ・ライト〈えっ!? なっ………何が起きたの!?〉「!!? えっ!?あっ、うん。あるけど、シルク、大丈夫なの!?」
ティル〈シルク、どうしちゃったの!?〉
!?
シルク、どうしたの!?
シルク、大声で叫んだら急に苦しみはじめて………。
一体、何が!!?
ティル、テトラ、わたし、ラグナも訳が分からず慌てふためく……。
ユウキ「ライト、説明は後でするか! 昔からそうだけど、シルクはいつも無茶をするから……。」
ティル〈なら、早く治癒してもらわないと!!〉
スーナ〈シルクにはそれができないんだよ!!聞いてるかもしれないけど、[代償]の影響でセンターとか道具を使っての治癒ができないの♪!! シルクが開発した薬品でさえ、応急処置が限界………、完全には治せないんだよ!!〉
テトラ〈えっ!!?回復できないの!!?〉
フライ・ラグナ〈残念ながら、そうなんだよ!!〉〈俺のせいで……こんな事に……。〉
そういえば、前に言ってたような………。
………なら、一刻も早く何とかしないと!!
わたしはその事に気づくと、体中から血の気が引くのを感じた……。
ラグナ………、すごく落ち込んでる………。
わたしは慌ててその木の実、[チーゴの実]を取りだした。
ライト「ユウキ君、フライ、スーナ、わたし達は何をすればいい!?」
スーナ〈なら、ライトは[サイコキネンシス]をお願い!!〉
ユウキ「ええっと、確か君は[ティル]っていう名前だったね!? 君は炎タイプの技で加熱をお願い!![テトラ]さんは木の実から〈」果汁を搾って!!〉
ティル・テトラ〈…………あっ、うん。〉〈うん、わかったよ!!〉
ライト「うん!!〈」[サイコキネンシス]!!〉
わたしはテトラが搾った果汁を集めればいいんだね!?
わかったよ!!
わたしはすぐに[ラティアス]の姿に戻して、超能力を発動させた。
テトラは火傷に効果がある[チーゴの実]を、フライは[ヒメリの実]を搾る。
ユウキ君もわたしと同じように姿を変えて、帯電し始めた。
スーナは、嘴に水を蓄え始める………。
………何をするんだろう………。
わたしは搾られた果汁に意識を向け、拘束した。
スーナ〈[ハイドロポンプ]!〉
ユウキ〈ティル君!! [10万ボルト]!!〉
ティル〈うん!! [炎の渦]!!〉
それに向けてスーナが少しずつ水を加え、ティルがそれを環状の炎で温める……。
ユウキ君は、溜めていた電気をそれに向けて放出した。
…………{シルクが開発した}………って言ってたから、喉に効く薬を造ってるのかな……?
ユウキ〈………よし、もういいよ。 ライト、そのままシルクの口の中に流し込んでくれる?〉
ライト〈えっ?うん!!〉
口の中に………だね?
うん!!
わたしはユウキ君に指示されたように、………できあがった薄緑色の液体を流し込んた。
………これで、大丈夫なのかな……?
わたしは不安と共に、気を失っているシルクを見つめた。
………シルク、意識が戻るといいけど……。