ε その後
午後 クチバシティー sideエレン
シルク〈………また会うかもしれないけど、私達はそろそろセンターに戻るわね。〉
エレン〈うん。〉
ユウキ〈あと、何か困ったことがあったらいつでも電話して! 相談にのるから。〉
スーナ〈だって、[チカラ]の事は他の人に分からないもんね♪〉
うん!
だってオイラ、同じ能力を持っている人に会うの初めてだもん!
[シキジカ]っていうポケモンの姿のオイラは大きく頷いた。
ニアロ〈だよね! ……その時は、お願いします!〉
ニアロも、溌剌とした声で言った。
………オイラ、伝説のポケモンって何か畏まってるというか、堅苦しいイメージがあったけど、ニアロは全然違うよ。
……大きいのは大きいんだけど、凄く親しみやすくて話しやすいんだよ!
オイラと年もあまりかわらないからかもしれないね…。
それに[ルギア]、カッコイいし。
一生かかっても滅多に会えない伝説の種族………。
トレーナーだったお父さんとお母さんでさえ[伝説]に会ったことが無いって言ってたから、オイラ、凄いのかな……?
……ユウキさんについていったらこうなったから、あまり実感無いけど……。
………でも、どうしてオイラにはポケモンの言葉が分かってポケモンになれるのか分かったから、まっ、いっか!
オイラはここで、[ピカチュウ]の姿のユウキさんから名刺を受けとった。
ニド〈今度会った時にまた、バトルとか教えてくれる〜?〉
フライ〈うん、もちろんだよ!〉
……ニド、バトルするのが好きだから、それが一番なんだね?
オイラ達の言葉に、みんなは笑顔で答えてくれた。
ニアロもだけど、みんな強そうだよ。
ユウキさん、学者なのに3つ星だって言ってたし……。
お父さんが1つ、お母さんは無いから相当凄いよ。
一言ずつ言うと、ユウキさん達はオイラ達がいる茂みから街のセンターの方へと歩いていった。
ニド〈……エレン、僕達も戻ろっか。〉
エレン〈うん。ニアロはどうする?〉
……そうだね。
この後は宿題ぐらいしかする事が無いからその方がいいね。
オイラは背が高いニアロを見上げながら聞いた。
ニアロ〈うーんと、そうだね。……これからエレンのお世話になるから、ご両親に挨拶がしたいよ。〉
ニアロ、礼儀正しいんだね?
ニド〈でも、人間と話せるの〜? 僕達の言葉って、むこうには分からないはずでしょ〜?〉
ニアロ〈ニド君、それなら大丈夫。自分、[テレパシー]が使えるから。〉
エレン〈なら心配ないね。じゃあ行こっか。〉
………[テレパシー]……?
…あつ、そっか!
つい最近習ったばかりだけど、確か伝説の種族が持ってる能力だったよね?
………どんな風にしてるのかは分からないけど……。
ニアロ〈うん。……でも、流石に自分は身体が大きくて目立つからボールに戻してくれないかな?〉
エレン〈あっそうだね。〉
だって、見た感じ3mぐらいはあるもんね?
わかったよ。
オイラは一度頷いて鞄からボールを取り出そうとした。
エレン〈……!そうだった!この姿だと手は
蹄になってるから指がなかったんだ。〉
……すっかり忘れてたよ。
立ってるだけだったけど何か違和感があったけど、原因はコレだったんだね?
オイラはその事に気づいて、慌てて姿を元に戻した。
エレン「……じゃあ改めて。」
ニアロ・ニド〈〈うん!〉〉
………気を取り直して、オイラは5本の指でふたりのボールを探って、すぐにそれに戻した。
エレン「………せっかくの機会だから全部話そうかな………。」
オイラは二つのボールをしまいながら、ボソッと呟いた。
………実は、オイラの事は言葉が分かるってだけしか話してないんだよ……。
これだけでも珍しいからお父さんもお母さんもオイラに対して過保護すぎるけど………。
気持ちはわかるけど煩わしいよ……。
オイラはその言葉を自分に言い聞かせながら、家へと歩き始めた。
………
数十分後 自宅 sideエレン
エレン「ただいま。」
オイラは若干ため息混じりに玄関をくぐった。
……ため息の理由?
……それは……
エレン母「エレン、昼にも戻らないで何してたの!?私、心配したのよ!拾い食いでもしてお腹でも壊してないでしょうね!?……」
……これ。
学校から帰ってもいつもコレなんだよ……。
オイラの悩みの1つかな?
オイラ、もう10歳で今年11になるのに心配し過ぎなんだよ……。
………どこの地方かは忘れたけと、10歳でトレーナーになれる所もあるのに……。
親離れ出来てるんたけど、親がコレだからね……。
お母さんのメンバーは全然こうじゃないんだけど………。
オイラはいつものように適当に相づちをうちながら聞き流した。
………
数分後 sideエレン
エレン母「……で、何しに行ってたの?」
………やっと終わったよ……。
エレン「実はこの人に会いに行ってきたんだよ。」
オイラはズボンのポケットからさっきもらった名刺を取り出した。
きっとお母さん、びっくりするだろうな……。
エレン母「……? {考古学協会 ……ユウ……キ}!? エレン!? これは一体どういう事なのよ!?考古学者のユウキって、今話題の人物じゃない!!」
やっぱり、こうなるよね?
エレン「そうだよ。 オイラがポケモンの言葉分かるのは知ってるよね?昨日たまたま出逢ってその事についていろいろ質問してきたんだよ。」
エレン母「でも、それとどういう関係が!?」
エレン「話すと長くなるんだけどちょっと話が複雑でね。家の中では無理だから庭に出てくれる?」
エレン母「庭!?」
もちろん、お母さんは不審そうに聞き返した。
普通、大切な話は中でするものだからね。
………庭でする理由は分かるよね?
エレン「うん。外でしか出来ない理由があってね…。……とにかく来て!」
エレン母「えっ、あっ、ちょっ……」
オイラは訳が分からずにあたふたしてるお母さんに構わず、手を引っ張って家の庭に出た。
………何か、緊張するよ……。
………
庭 sideエレン
エレン母「……で、どういう事?」
エレン「びっくりしないで見てて!…」
庭出てすぐに、オイラはふたりが控えるボールを手に取った。
エレン母「あんた、[ニドラン♂]だけのはずよね?」
エレン「そうだけど今日新しく加わったんだよ。 ニド ニアロお待たせ!」
オイラはお母さんの事は気にせずにボールから出してあげた。
ニド〈絶対にびっくりするだろうね〜。〉
ニアロ〈間違いないね。 《〉初めまして、あなたがエレンのお母さんですね?》
エレン母「!!! エレン!!? このポケモンって………」
エレン「うん見ての通りだよ。[ルギア]のニアロっていうんだよ。」
やっぱり、こうなったね。
お母さんは驚きと衝撃で腰を抜かした。
ニアロ《エレンの言う通りです。やっぱり、驚きますよね?自分を含めて伝説の種族にはまず会えませんから…。》
エレン「それにお母さん。お母さんの夢は伝説のポケモンに会う事だったよね?夢が叶ったんじゃない?」
ニアロ母「………………」
お母さん、完全に言葉を失ってるよ……。
顎、外れてるみたいだし……。
エレン「それにもう一つ黙っていた事があるんだ……。」
放心状態………。
エレン「ニアロここからは説明頼んでもいい?」
ニド〈姿、変えるんだね?〉
ニアロ〈うん、いいよ。〉
オイラはここからの説明をニアロに頼んで、自身の姿を歪ませた。
…………どうなったかは、想像に任せるよ。